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2009年05月24日 学歴分断線 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

学歴分断社会 (ちくま新書)

学歴分断社会 (ちくま新書)

著者によれば、経済的な安定度や、仕事に対する満足度などの様々な意識を上下に分断する線、つまりは格差を生み出す線が、大卒と非大卒の間に存在するという。それを「学歴分断線」と呼ぶ。著者の論は、具体的なデータに基づいており、わかりやすく説得力がある。大部分の読者は「学歴分断線」の存在を疑わないだろう。
この分断線は、親から子へと受け継がれることで、これからの日本社会の真ん中に存在し続けるだろうという。なぜなら、

親が大卒層であれば子どもへの大学進学を願う傾向が強く、親が高卒であれば、子どもが高卒であってもかまわないと考える

からだ。
しかし、「分断線」が受け継がれていくからくりは、そんなに単純なものだろうかという疑問は湧いてくる。大卒の両親を持つ子が大学に進学する傾向が強いことの要因は、環境的なものだけではないだろうと考えてしまうのだが、それは著者の専門領域外のことだろうし、それこそ「タブー」に触れることになるのかもしれない。
大切なのは、なぜ「学力分断線」ができたのかという原因探しより、「学力分断線」の存在を認めた上で、ではそうした「学力分断社会」とどう向き合うかということだろう。その点で、著者の提言は穏当なものとして首肯できるものではあるが、机上の理想論と言われかねない弱さも持っていると感じざるを得ない。

わたしたちは、大卒層と高卒層の関係を、上下関係でみるのではなく、水平関係でみるように心がけるべきですし、学歴というものが、生活上のリスクや希望の大小と癒着しないように気をつけなければならないのです。とりわけ、仕事の内容と報酬に違いがあるのは避けられないとしても、生活の基盤が安定していることと、仕事を奪われないことにかんしては、大卒層と高卒層に差があってはなりません。

このような提言を実現に近づけるには、あってはならない「差」がなぜ生じているのかという地点まで降りていかなければならないはずだ。そして、この「差」がなくなって初めて、「学歴分断線」の世代間の継承は理不尽ではないという著者の発言は、多くの人々の共感を得ることになるだろう。

yossiyossi 2009/05/26 22:03 またまた興味をそそる話題ですね。実はこの本にも触手が伸びましたが、とりあえず他のものにしました。
東野圭吾の「手紙」と郷原信郎の「思考停止社会」です。この社会の混乱はどうにもしようのないもの
かもしれない・・と思ってしまいます。少なくとも自分には解決案を提示できないし、なにが解決なのか
も考えきれない。自分にできることはふやけた言い方ですが、「性善説」に立ち続けたいということ
くらいなものか。小さな世界で素朴な生き方がのぞましいのかも。人類の英知はこの、どでかくなった
世界の問題を解決できるのでしょうか?

mf-fagottmf-fagott 2009/05/29 06:36 yossiさん、何だか悲観的ですね。上の著者は「学歴分断社会」をそれほど悪い世の中だとは考えていないようです。高校でのキャリア教育の参考になることも書いてあるので、読んで損はないと思いますよ。