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2018年04月09日

[]白い箱 白い箱 - 僕が線を引いて読んだ所                        を含むブックマーク 白い箱 - 僕が線を引いて読んだ所                        のブックマークコメント

「なぜ?」から始める現代アート (NHK出版新書)

「なぜ?」から始める現代アート (NHK出版新書)

 「なぜ?」は大事。理解の深まりは「なぜ?」から始まる。
 ところが次の「なぜ?」は思い浮かんだことがなかった。

なぜ、多くの美術館の展示室は、そろいもそろってこんなに真っ白なのでしょう。

 絵を白いカンヴァスや紙に書くのが当然であるように、絵を白い展示室に飾るのは当然のように感じていた。ところが、白い壁に囲まれた展示空間(=ホワイトキューブ)の始まりは1929年開館のニューヨーク近代美術館からだというから、意外と歴史は浅い。
 ホワイトキューブは、「政治的、社会的、思想的な場の関係と作品の関係を切断して、作品に自立性を与える」という効用を持つ。つまり、そこでは鑑賞者は予備知識がなくても、自分の感覚や思考力を頼りに目の前の作品と向き合うことができる。そこは現実社会から解放され、アートの鑑賞に集中することのできる、非日常の空間である。
 一方では、そのように非日常の空間に閉じ込められたアートを、もう一度外に引っ張り出そうという様々な試みも存在する。現代アートは実に混沌としている。

2018年04月03日

[]絵を描く詩人 絵を描く詩人 - 僕が線を引いて読んだ所                        を含むブックマーク 絵を描く詩人 - 僕が線を引いて読んだ所                        のブックマークコメント

 清宮質文(せいみやなおふみ)の作品に初めて触れたのは昨年、横須賀美術館でのことだった。作品の前で立ち止まらずにいられない不思議な魅力を感じたことが、記憶の片隅に残っていた。その作品展水戸茨城県近代美術館で開催中であると知り、観に行ってきた。
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 絵や写真に「詩情」を感じるという場合、なぜかその作品は決まって静謐さやはかなさを感じさせる。詩は、喜怒哀楽といったあらゆる感情を表すものなのに、喜びにあふれた絵画や怒りに満ちた絵画を「詩を感じる」と評することはないようだ。なぜだろう? 清宮の作品を評するときに使われる言葉は「詩情ゆたかな」や「詩情あふれる」である。清宮自身も、自分を「絵を描く詩人」と呼んだそうだ。そしてその作品が感じさせるのは哀しさであり、静けさである。音のない世界。しかし、観る者に確実に何かを語りかけてくる。
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 館内には、木版画制作を体験できるコーナーが設けられている。写真手前に写っているのが、僕の作品。

2018年02月10日

[]その絵のメッセージは? パトロンは? その絵のメッセージは? パトロンは? - 僕が線を引いて読んだ所                        を含むブックマーク その絵のメッセージは? パトロンは? - 僕が線を引いて読んだ所                        のブックマークコメント

西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書)

西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書)

 歴史を学ぶときに重要なのは「単なる固有名詞や年号を暗記することよりも、構造について思考することにこそある」、との考え方に基づいて書かれたこの本が教えてくれるのは、個々の作品についての知識よりも、作品鑑賞に入る前に知っておかなければならない、絵というものの基本機能。
 その一番目。一般大衆がまだ文字を読めなかった頃の絵は、観る人に何かを伝えようというメッセージ性が強かった。それはキリスト教の教義であったり、教訓であったり。それが何かを考えながら観なければ、絵を観たことにはならない。
 もう一つは、次の点。

 純粋に趣味的な創作活動が登場する近代以前には、すべての芸術作品に、それを創る人とそれを買う人がいるという事実です。その両者が揃わないかぎり芸術など存在しなかったのですから、創る側の美的探究の側面だけでなく、買う側の経済原理も知らなければなりません。順序からいって、美的追求よりもまず経済原理のほうを先に理解する必要があります。

 平たく言えば、その作品のパトロンは誰か、ということだ。
 これらの点を意識するようになるだけで、絵の見方は今までと違って、ぐっと深まるように思う。
 しかし、「現代美術」となると、上の二点ともに話は大きく違ってきている。

 ひとつは、誰もがネットなどに自由に投稿できる時代にあっては、芸術家の「プロ」と「アマ」の区別が失われていくという点です。プロフェッショナルである必要があるのか、そもそもプロの芸術家とは何者か。お金を稼ぐかどうかだけの差なのか―。なかなかやっかいな問題です。
 もうひとつは、識字率が低い時代において絵画が最大のメディアだったような、伝達手段としての必要性が失われつつあるという点です。美術は、当初与えられていた存在理由をほとんど失い、純粋に趣味的な表現の場、自己表現のツールとなっているのです。

 長い美術の歴史の中で、現代美術の時代はほんの短い期間に過ぎないが、きわめて変化の大きな世界の中で細分化されている。「純粋に趣味的な表現の場」というのもその細分化された中の一つの在り方に過ぎないはずで、上のような書き方には違和感を持つが、そのあたりはこの本の守備範囲の外ということだろう。

2018年01月25日

[]続けて原田マハをもう一冊。 続けて原田マハをもう一冊。 - 僕が線を引いて読んだ所                        を含むブックマーク 続けて原田マハをもう一冊。 - 僕が線を引いて読んだ所                        のブックマークコメント

パリに10日間くらい滞在して、美術三昧の日々を送ることができたら、幸せだろうなあ!

2018年01月15日

[][]初めての原田マハ体験 初めての原田マハ体験 - 僕が線を引いて読んだ所                        を含むブックマーク 初めての原田マハ体験 - 僕が線を引いて読んだ所                        のブックマークコメント


f:id:mf-fagott:20180116001922j:image:w200:left 『楽園のカンヴァス』読了。ミステリーや冒険小説を読むようなワクワク感を味わわせてくれる一方で、読者を陶然とさせるファンタジーの雰囲気も漂う。国境を越えた切ない恋の物語としても読める。
 そして、西洋絵画に興味を持つ読者にとっては、業界の裏側を覗き見る楽しさもあるし、20世紀初頭の美術史の魅惑的な舞台に立ち会えたような面白さも感じさせてくれる、とにかくサービス満点の小説だ。さらには、どこまでが史実でどこからが創作なのか、美術史の本を調べないではいられなくなる、罪作りな作品でもある。
 以前から気になっていて今回初めて読んだ原田マハだが、読者を最後まで惹きつける、なかなか才能豊かで魅力的な作家だと感心した。

2017年11月01日

[]ゴッホと日本 ゴッホと日本 - 僕が線を引いて読んだ所                        を含むブックマーク ゴッホと日本 - 僕が線を引いて読んだ所                        のブックマークコメント

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 東京都美術館でやっている「ゴッホ展」の売店で売っていた文庫本サイズの布製ブックカバーがなかなか良かったのだが、ちょっと高くて買えなかったので、同じ絵を紙に印刷してブックカバーにしてみた。

 今回の展覧会は、ゴッホと日本との相互関係に焦点を絞ったもので、とても面白かった。都美術館では一年前にも「ゴッホとゴーギャン展」をやっている。同じ美術館が二年続けて同じ画家を取り上げたわけだが、違う光を当てることで、一人の画家の違う魅力を引き出すことに成功している。
 展覧会は、有名な絵を集めて並べましたというのは印象が散漫になってしまうせいか満足度が低く、今回のようにテーマを絞って見せられた方が見応えを感じるようだ。そういう意味では、同じ上野の西洋美術館でやっている「北斎とジャポニズム」も面白そうだなあ。

 ところで、ブックカバーの中身については…次回書く予定です。

2017年08月27日

[]萬鐵五郎展 萬鐵五郎展 - 僕が線を引いて読んだ所                        を含むブックマーク 萬鐵五郎展 - 僕が線を引いて読んだ所                        のブックマークコメント

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 置き場所に困るし、安い買い物じゃないからやたら手を出さないようにしている展覧会の図録だが、これは迷わずに購入。(「没後90年 萬鐵五郎展」神奈川県立近代美術館にて)
 当時の画家として、当然ヨーロッパの印象派〜キュビスムあたりの動向にも目がいく。しかし、日本画への興味も尽きない。様々な技法を取り入れ、実験的な作品を多く手掛けながらも自分らしさを貫き、どこかユーモラスな雰囲気を湛えた独自の画風を打ち立てた萬鐵五郎。日本人画家の中にこんなに魅力的な人もいたんだ! 皆さんはご存知でしたか?

2017年04月17日

[]発見! 長谷川利行 発見! 長谷川利行 - 僕が線を引いて読んだ所                        を含むブックマーク 発見! 長谷川利行 - 僕が線を引いて読んだ所                        のブックマークコメント

 企画展と常設展を同時開催するような大きな美術館では、企画展のチケットで常設展も観覧可能となっているケースが多いと思う。とはいえ、企画展を見た後ではもう疲れちゃって、常設展の方はおざなりというか、観たとしても駆け足、という感じになってしまうことがほとんどだ。だから常設展は見られなくていいから、企画展の値段、もっと安くならない? などと言いたくもなってしまう。ところが、先日の東京国立近代美術館は違った。
 目的は今も開催中の「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」と「マルセル・ブロイヤーの家具」の二つの企画展。この二つだけで十分お腹一杯、という感じだったので、いつも通り常設展示の方は、ささっと済ませてラーメンでも食って帰ろう、というつもりだったのに、いざ観始めたらあっちこっちで捕まってしまって、常設展示だけでも一日たっぷり楽しめるじゃん、というくらいの充実ぶりにびっくりしてしまった。
 岸田劉生の「道路と土手と塀」とか、佐伯祐三の「モランの寺」とか、古賀春江の「海」とか、いい絵がいっぱいで。そんな中で、作者は初めて聞く名前だけれど、魅了させられた作品群があった。長谷川利行。人物も静物も風景も、温かみがあっていいんだなあ。(展示作品は、一部を除いて撮影可能でした。) 
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 これは、カフェ・パウリスタという題の油彩だが、解説を読むと、ここに展示されるまでの経緯が書いてあって、面白い。
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 下宿屋のご子息が鑑定に出したというテレビ番組は、僕も時々見るなんとか鑑定団というやつだろう。番組の中でいくらの値段が付き、美術館はいくらで購入したんだろう、作品を手放した下宿屋のご子息は生活が一変しただろうか、などと下世話な興味が尽きないのである。
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2017年01月14日

[] 向きが違う!  向きが違う! - 僕が線を引いて読んだ所                        を含むブックマーク  向きが違う! - 僕が線を引いて読んだ所                        のブックマークコメント

 先週の土曜日、葉山の神奈川県立近代美術館で観た「谷川晃一・宮迫千鶴展」は期待以上の面白さだったが、中でも宮迫のコラージュ作品が興味をひいた。展示作品は撮影可能だったので、写真もたくさん撮った帰った。これを参考にして、自分でもコラージュにチャレンジしてみようかな、なんて… 
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 帰宅してからすぐに宮迫千鶴の『コラージュ・ブック』という本をネットで注文した。当日美術館の図書室に置いてあったのを見て、ぜひ家でゆっくり見たいと思ったのだ。それが今日届いた。さっそくパラパラとめくってみて、一つ面白いことに気付いた。今回観た中でも特に印象に残った一つ、「熱帯のテーブル」という題の布のコラージュが、本の中では展覧会で見たのと天地が逆になって載っているのだ。
 僕が撮ってきた写真はこれ。
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 さっそく絵葉書にして、こんな風に額に入れて部屋の壁に飾ってしまったくらい、本当に僕のお気に入りだ。
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 ところが、本にはこういう向きで載っているというわけ。
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 これはどういうことだろう。これはどちらを上にしても良い作品なのだろうか。それとも展覧会の展示が間違っていたのだろうか。まさか、美術館の職員が間違えるわけはなかろうけれど…
 改めてじっくり観ているうちに、どうも本の方が正しいような気がしてきたのだが…

絵のある生活 コラージュ・ブック

絵のある生活 コラージュ・ブック

2016年04月28日

[]やわらかな感受性 やわらかな感受性 - 僕が線を引いて読んだ所                        を含むブックマーク やわらかな感受性 - 僕が線を引いて読んだ所                        のブックマークコメント

 さあ、連休。どこへ行こうかと考えたとき、真っ先に思いつくのが、どこか美術館へ行ってじっくり絵と対話して来よう、ということ。かといって、都心のメジャーな美術館の企画展は超混雑するのが目に見えているので、この時期は避けたい。地方の美術館の常設展をじっくり眺めるというのもシブくていいかもしれないな。
日本にある世界の名画入門 美術館がもっと楽しくなる (知恵の森文庫)
 赤瀬川原平のこの本は、やわらかな感受性を全開にして絵の前に立ち、細部にまで目を凝らした時に初めて見えてくるものがある、ということを教えてくれる。もっともそれが、易しいようで実はなかなかできないことなんだけどね。