けろこ堂日乗(β版)

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夜は短し歩けよ乙女

何でも、この本がTV等で取り上げられているらしい。結構なことである。
亭主が森見登美彦の作品を読んだのは「太陽の塔」が最初。もう何年も前のことだ。この人は「お友だち」かもしれん、と思った。その後「四畳半神話大系」を読んで確信を得た。著者の意向を無視して「お友だち」呼ばわりとは、いかがなものかと思うが、亭主の精一杯の愛情表現だと思って許していただくしかあるまい。
それで本書である。著者独特の「ぼやき」っぽい語り口は健在で、ひたすら上手い。作中の大学は無論京都大学がモデルである。自身が京大生であった筆者が自虐的かつSF的ギャグで日常をずらしてみせるとき、森見的京都という異界の扉が開く。
これまでの森見作品は、この異界のパワーが強烈であったが故に万人受けするものではなかったかもしれない。それに対して本作は、ある種の必殺技の導入により、一気にポピュラリティを獲得した。その必殺技の名は「おともだちパンチ」。美少女にして酒豪、こわいものしらずの無敵女子学生が繰り出すこの技によって森見は新たな境地を切り拓いたといえよう。
亭主の感想としては、上掲の2冊にみられた爆走する不条理感は(それは吾妻ひでおに匹敵するものだが)やや抑制され、ストーリーは大分わかりやすくなった。その反面、怪しさ、SF度、ファンタジー度は若干弱まった。これは亭主の好みの問題に過ぎないが。
そういうわけで、この作品は誰にでも(「非おたく」の方にも)安心してお薦めできる森見作品という記念碑的一冊である。ご用とお急ぎでない方は是非ご一読あれ。
それにしても、森見登美彦といい、京都アニメーションといい、恐るべし京都。

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

四畳半神話大系

四畳半神話大系