けろこ堂日乗(β版)

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Ubuntu Studio10.04にリアルタイム・カーネルを導入

Ubuntu Studioは、有志の手によって開発が進められているクリエイティブ系アプリケーション向けに最適化されたディストリビューションだが、特に音楽製作系の対応が優れている。その中でも特筆に値するのはリアルタイム・カーネルが提供されることだ。現在のUbuntu Studio10シリーズは、通常はGenericカーネルがインストールされるが、リポジトリからリアルタイム・カーネルを取得してインストールすればよい。ただし、最新の10.10は現在のところリアルタイム・カーネルがまだリリースされていないようだ。詳細はUbuntuのコミュニティを参照のこと(https://help.ubuntu.com/community/UbuntuStudio/RealTimeKernel)。
亭主のオーディオ用PCはWindows7Ubuntu Studio 10.04のマルチブートにしてあるので、これにリアルタイム・カーネルをインストールしてみた。これまでのカーネルはPreemptといって、 Geniricカーネルのリアルタイム性を強化したものと説明されているが、果たしてどの程度の差があるだろうか。
サウンドサーバや再生ソフトウェアの設定なども絡んでくるので厳密な比較は難しいが、結論から言えばリアルタイム・カーネルの方が良い。再生環境は、サウンドサーバとしてJackを使用し、出力ドライバはALSAで44.1kHzに設定した。Jackコントロールで表示されるレインテンシは約 3msecである。これにAqualungのLINEOUTを接続して鳴らすのだが、このAqualungは、リポジトリからインストールしたものではなく、ソースを入手してサンプリングレートコンバータやLADSPAの機能を外してビルドしたものだ(configureのオプションで、--with-src=no --with-ladspa=noを指定する)。音楽データのサンプリングレートが変わる度に、Jackの設定を変更して再起動しなければならないのが面倒だが、理屈では標準ビルドよりもレイテンシが下がっているはずである。もっとも亭主はレイテンシ云々にはあまり興味がないのだが。
具体的にどう良くなったかを、書いてみよう。
お馴染みの綾戸智絵の「Life」から"New York State of mine"を鳴らしてみると、まず音がなめらかになったと感じた。最初はアップサンプリングされているのかと疑ってしまった。さらに、ヴォーカルの息づかい、微小な音、残響が良く再生され、音像の立体感、ライブ感も向上した。
また、同じ綾戸の「GOOD LIFE」24bit/96kHz版から、"When the world turns blue"を聴いてみたが、冒頭のピアノソロが明らかに違う。しっとりとして、かつ艶がでてきた。もちろん、24/96ソースの場合はJackを96000kHzの設定で起動しないといけない。(下記のリンクはCD。24/96ソースは、HDTracksから入手可能。https://www.hdtracks.com/index.php?file=catalogdetail&valbum_code=HD4580244640058
さらにマイスターミュージックの優秀録音、平尾雅子の「ダニューヴ河のこだま」からD.ブクステフーデのカンタータ”主に向って歓呼せよ”では、オルガンの中低音の重心が下がり、腰が強くなった感じ。また、カウンターテナーの高音もすっきりした。この録音はダイナミックレンジが広く、ヴォーカルがうもれがちになるのだが、かなり上手く再生できた。

Life

Life

GOOD LIFE

GOOD LIFE

ダニューブ河のこだま ~ドイツ・ヴィオラ・ダ・ガンバ・音楽~

ダニューブ河のこだま ~ドイツ・ヴィオラ・ダ・ガンバ・音楽~


以上、音質面でいえば、JRMCを上回ったといってよいと思う。使い勝手はJRMC並みとはいかないが、それを十分補ってくれる音質だ。
実はこの他に、亭主にとってはもう一つの利点がある。それは、Jack対応のツールであるJAMinが使えるということだ。JAMinは、大雑把に言えば、 30バンドのイコライザー、リミッター、マスターボリウムを組み合わせたようなツールで、Ubuntu Studioのリポジトリからインストールできる。以前にも書いたとおり、亭主はPCオーディオ移行を機にバイアンプによるスーパーウーファーの使用を止めたので、再生には高性能なイコライザーソフトが必須なのだ。
邪道というそしりを受けるのは、もとより覚悟の上である。
けろこ堂のシステムはフルレンジ1発の大型バスレフなので、ダクト共振周波数の関係でf特はかなり暴れている。50Hz周辺は出過ぎているし、100Hz付近に谷がある。これをPC側のイコライザーで補正する前提でスーパーウーファーを切ったのだが、そのおかげで定位も音場も格段に向上したのだから、亭主としては妥当なトレードだと思っている。JAMinの30バンドイコライザーは、まさに亭主の用途にうってつけで、これを使うとほぼフラットな特性を達成できる。バイパスの指定ができるので、何度も試してみたが亭主の耳では劣化が感じられなかった。この補正を含めて、トータルな音質はJRMCと同等以上であると感じている。
そんなわけで、現在はとりあえずJRMCとJack+Aqualungに落ち着いているが、今度は24/192再生環境の構築が気になりだした、今日このごろである。
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JAMinの30バンドイコライザー
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JAMinとAqualungによる再生