「ゴジラ音楽祭」で、オーケストラ生演奏つき「ゴジラ」を見る

1月18日(日)、NHKホールで開催された「ゴジラ音楽祭」の報告です。
いまさら私が感想を書くのもおこがましいのですが、得難い体験をしたので記録をしておきます。

ゴジラ
1954年日本 東宝 97分
監督:本多猪四郎、原作:香山滋
音楽:伊福部昭、特殊技術:円谷英二
出演:山根恭平(志村喬。古生物学者)、山根恵美子(河内桃子)、尾形秀人(宝田明。南海サルベージ潜水師)、芹沢大助(平田昭彦。科学者)、萩原(堺左千夫。毎朝新聞記者)、新吉(鈴木豊明)

伊福部昭生誕100年の続きで、2015年年明けにも東京、NHKホールで「ゴジラ音楽祭」が開催された。メインは、東京フィルハーモニー交響楽団の生演奏つき「ゴジラ」の上映であった。
オリジナルの「ゴジラ」を見るのはとても久しぶりだった。最初は子どもの頃テレビで見て、それから大学時代に二番館で見たのが30年くらい前だと思う。ゴジラの鳴き声と「オキシジェン・デストロイヤー」という兵器の名と廃墟に流れる合唱団の歌声が印象に残っていた。

上映前に宝田明氏、平成ゴジラ出演者の佐野史郎氏、オーケストラ指揮者で伊福部昭氏の弟子である和田薫氏の舞台挨拶とトークがあった。
宝田明演じる尾形青年が政府の役人でも軍関係者でもなく、民間の潜水士なのがちょっと意外だった。が、今回、ゴジラを除けば、印象が強かったのはヒロインの恵美子を演じる河内桃子だった。かなりたくさん出番があるし、芹沢博士が悲壮な決心をするのも彼女の存在が大きい。
オーケストラの生演奏つきという普段とは違う環境で映画を見たので、いつになく音楽を意識することができた。普段は映画に夢中になって、音楽のことはあまり気にしなくなってしまい、音楽好きの人に後から、「あそこで流れた○○がよかったね」とか「あそこで○○を使ってくれて感動した」などと言われても、覚えていないことが多いのだが、今回は、音楽が入る段になると、指揮者の和田氏がさっと片手をあげて準備をするので(これが実にかっこいい)、おっ、ここでくるぞと思うことができるのだった。例えば、陸での人間ドラマから海面のカットに変わるところで、指揮者の手が挙がり、ゴジラ出現の泡が浮上するとともに、伊福部音楽の演奏が始まる。もう興奮である。
被災後の焼け野原に流れる合唱団の歌声は、昔も印象的だったが、今回はそれよりたくさんの人数による生のコーラス(合唱:Chor June)で、インパクトがすごかった。
音楽と鳴き声とゴジラの造形とミニチュアの町と白黒画面と、それらが全部うまい具合に融合して、この映画独特の計り知れない重量感とある種の爽快感を生みだしているのだなと改めて思った。

映画上映後のアンコールでは、「ゴジラ音楽祭」のためと昨年12月に亡くなった川北紘一特技監督へ捧げるために和田氏が編曲した「SF怪獣ファンタジー」を初演。指揮者自ら会場へ手拍子を促してくださったので、思い切り手を叩いた。楽しかった。

ゴジラに捧ぐ 伊福部昭 SF交響ファンタジー 全曲

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