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洋書空間

2013-06-15

[][] どのような背中を子どもに見せるか To Kill a Mockingbird ( by Harper Lee)

前回の記事で「ポケ金」について書いたときに、Harper Lee の名作、To Kill a Mockingbirdをあげているのですが、「そういえば、感想を書いたことがあったな」と探してみたら、やっぱり「ポケットに金貨を…」のフレーズがありますね。私の人生のポケット、まだまだ金貨が少ないので遅ればせながら、今、一生懸命貯めてるところですが…

以下の記事は二年半くらい前に書いたもので、娘もまだ赤ちゃんっぽさがあった頃ですね。現在、四歳になったばかりですが、予想通り真似して欲しくないことを真似してる気がする…「子どもの振りみて、わが振り直せ」を痛感してるところです。


先日、このブログにコメントをくださったモーリンさんが英語でTo Kill a Mockingbirdのレビューを書いていらっしゃるのでそちらもご覧になってみてください。
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To Kill A Mockingbird: 50th Anniversary Edition

To Kill A Mockingbird: 50th Anniversary Edition




このところ、私たちの真似をするようになった娘(1歳半くらい)。鍵を、鍵穴に入れようとしたり、ブラシを渡せば、髪をとかすまねをするし、電話をもたせれば「ハォ〜(Helloのつもり 笑)」このくらいの真似は無邪気でかわいいなぁと思うのですが、そのうち真似して欲しくないこと、行儀のわるさ、マナーの悪さ、口調・口癖、がさつなところなど、真似していくことになるのかと思うと、恐ろしい気がします。「子どもの振りみて、わが振り直せ」ですね。

もっと大きくなってくると、親の価値観がそのまま子どもに受け継がれていっていることを垣間見られるようになると思います。家庭の教育によるものもあれば、大人同士の会話を子どもが聞いていて、身につけていたりとか。先日、ブックフェスティバルのイベントに参加したとき、12歳くらいの女の子が、Alexander McCall Smithに「大きくなったら何になるの?」と聞かれて「弁護士になりたい」といい、さらに「もし弁護士にならなかったら、ビジネスをやろうと思うの」と答えたときに、その子の家庭の様子が見えたような気がしました。

弁護士もビジネスも素晴らしいので、これはこれでいいのですが、別の例で思い出すのが、数年まえにCruftsというイギリスのドッグショーの番組をみていたときに、ショーに参加している8、9歳くらいの女の子が出てきたのですが、自分がなかなか入賞できないのは「審査員はpoor peopleをひいきしているから」というようなことを言っているのを聞いて、うちの夫が「親がそういっているのを、聞いたんだろうな」。子どもの口には戸は立てられない・・・・

Harper LeeのTo Kill a Mocking Birdが出版されて50周年を迎えたということで、BBC Radio4の Open Bookの特別番組を聴いて、数年ぶりに読み返してみました。再読って面白いですね。一度読んで、理解したと思っていたのに、今回読み直してみて、「あれ?」と思うところがたくさん。おおまかな内容は覚えていましたが、でもほとんど新しく読むような印象がありました。

舞台は1930年代、アメリカ、アラバマ州の小さな町、Maycomb。弁護士の父と、4歳年上の兄 Jemと暮らす少女Scout(9歳)が主人公。お転婆で、ときには男の子にパンチをお見舞いするような元気な女の子ですが、とても賢い女の子。Maycombの町の人々、25年間引きこもっているお隣のBoo Radleyのこと、兄、Jemのこと、夏の間だけやってくるDillとの冒険ごっこ、学校生活、父、Atticus Finchのこと、そして物語のクライマックスである、白人女性への性的暴行罪容疑でつかまった黒人青年、Tom Robinsonの裁判のことがScoutの目を通して語られます。

父、AtticusがTom Robinsonの弁護人を引き受けたことで、ScoutとJemの生活にも大きな影響を及び、Atticusが「普段は善良な人々が、黒人が絡むとまともな判断力を失ってしまうのはなぜか」というように、周囲の大人、子どもから父についての中傷(Ugly talk)を言われ、悔しい思いをすることになるのですが、Atticusから hold your head high and keep those fists downといわれ、ぐっと我慢するScoutとJem。

今回読み直して、強く感じるのは、やはり自分が親であるということを意識していること。自分がAtticusの立場だったら?と考えずにはいられません。どこかで「Atticusは自分の弁護士としての正義感をつらぬき、子どもたちにも理解を求めた」というように考えていたのですが、今回読み直して、ちょっと違うことに気づきました。

もちろん、この難しい仕事を引き受けた理由に、人種差別と闘う正義感もあったと思うのですが、「子どもたちのためにも」引き受けたのだということ。Tom Robinson が本当は無実だとしても、この不運な被告人の弁護を引き受けることで、子どもたちが、学校のみならず町の大人たちからも、耳を覆いたくなるようなことを言われることは分かっていて、親としては辛いはず。「子どもが傷つくのがかわいそう」という理由で、私ならば「逃げる」方を選択するだろうなと思うのです。

でもAtticusは逃げずに、自らが「毅然とする」ということ、自らが正しいと信じることを自分の行動をで示しているのと同時に、子どもたちは傷つくかもしれないけれども、なにかを学び、成長していく力をもっていること、そして子どもたちが自分を信じてくれていること、つまり子どもとの信頼関係があるんですよね。そして、子どもに「こうあって欲しい」と思うなら、自分もそうでなければいけないんですよね。子どもは、「こうしなさい」と言われたことよりも、親自身の言動から多くのことを学ぶのだろうなぁと思うと、親であることの責任の重さを感じます。

この本を読んでると、夫は「なんでそんな重い本を。もっと楽しい本を読めばいいのに」といっていたのですが、たしかに重い主題をあつかっているけれども、Scoutの子どもらしいまっすぐな視線と鋭い観察力、聡明さが伺える語り口がとても魅力的で、ところどころくすっと笑ってしまうユーモアもあり、じんとくるエピソードもあります。読み終わって2ヶ月くらい経つのですが、今でもそのときの温かさが残っているような気がします。

いつも「おもしろかったですよ」と本の感想を書いていますが、人それぞれ好みがあるから、興味があればどうぞという気持ちなのですが、この本に限っては「必読です!」など、私ごときのような人間が言える筋合いはありませんが、なんというか、この本に出会って本当によかったという思いがあり、「重いから」といった理由で手にしないでいるのであれば、もったいないなぁと思うのです。英文学者のJohn Sutherland氏の恩師の言葉を借りるなら、この本は「ポケットに生涯残る金貨を蓄えること」と言ってもいいくらい。日本語訳は暮しの手帖社から「アラバマ物語」というタイトルで出版されているようです。


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ぶるっくぶるっく 2013/06/16 13:11 初めまして。

本の情報、いつも楽しみにしております。

原作は読んだことありませんが、映画を観て、たいへん感動したことを覚えています。

映画に出てくる少年はトルーマン・カポーティがモデルだそうですね。
アメリカ人の友人から教えてもらいました。
彼女は自分も映像製作にかかわるプロですが、その彼女が、「観るべき映画ベスト5」に入ると絶賛していました。

グレゴリー・ペック扮する正義感あふれる父親のことももちろんですが、私の記憶に残っている場面は、主人公の少女を助けてくれた、今で言うところの「精神障害者」?「引きこもり」?の青年の優しい眼差しです。

確かに「重い」内容なので(無実の黒人青年の顛末など)、読むのにためらいを感じますが、金貨の本だと思います。
「読むべきリスト」に加えます!

親の生き方や考え方の影響というのは本当に、子どもの生き方に大きく影響しますね。
私は亡くなった祖母や父の生き方やよく口にしていたことなどをこの頃よく思い出します。

大げさな言い方ですが「ご先祖様に恥ずかしくない生き方をせねば」と50を遙かに過ぎて思うこの頃です。
それが、また子ども達に伝わっていくのでしょうね…。

michibooksmichibooks 2013/06/16 22:48 ぶるっくさん
コメントどうもありがとうございます。私は映画は見たことがないのですが、とてもいいそうですね。グレゴリー・ペックのメガネ姿にくらっとした女性も多いようです。トルーマン・カポーティと交流があったこと、ぼんやりと思い出しました。Dillのモデルかな?主人公のScoutは著者自身と重なるところが多いようです。原作もいいですよ!アメリカ南部の雰囲気が味わえるのも、この作品の魅力です。

「ご先祖様に恥ずかしくない生き方」…耳が痛いですが、そういう心持ちが大切なのかもしれませんね。あまり「立派な」生き方はできないと思うので、尊敬はされないでしょうが、少なくとも子どもに信頼してもらえるように…と思っています。
機会があったら映画も見てみたいです。

モーリンモーリン 2013/06/17 07:32 こんにちは。
私の記事をリンクして頂きありがとうございました。

michibooks さんの昔の記事を読んで私も読んだ時の感じを思い出しました。前半で Scout を好きになり、後半で起こる出来事に憤りを感じてました。
michibooks さんのおっしゃるように、正義の大切さとそれを貫くことの難しさを訴えているのでしょうね。この問題は、学級内のいじめなど小規模なところから、国が軍を持つべきかという大きなところにまで存在すると思います。だからこそ、多くの人に読んでそれを感じて欲しいところです。
日本であまり読まれていないのは、人種差別のような重いテーマは教育界が裂けてきたからでしょうし、いい訳書がなかったのかもしれません。グレートギャッツビーのように再度映画化されれば、注目されるのかもしれませんね。

michibooksmichibooks 2013/06/17 13:07 モーリンさん
そうなんですよね、そちらでも書きましたが、この本、英語圏の学校では必読書のような存在だと思うし、「好きな本」というと必ずトップにあげられるような本ですが、意外に日本では読まれていない印象があります。この本をみんなで読んで真剣に考えてみるという時間を、特に学校にいる間に持った方がいいと思うのですが。映画のリメイク、ありそうな気がするけど、猛反対の人も多そうな…(笑)

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