Web2.0と対立する2つの世界(その2)なぜネット企業がいつまでたっても異端視されるのか?

これはWeb2.0というより、1.0の人たちも含めてネット企業全般に言えることだ。ライブドア騒ぎのおかげで、「ネット企業」と言えば「アブク銭」「ヒルズ成金」みたいな扱われ方をされるようになってしまった。なぜそんなに手のひらを返すように変わるかといえば、味方が少ないからに違いない。なぜ味方が少ないかというと、一言で言えば、雇用への波及効果が低いからだ。

まず、ハードな設備投資をほとんどしない。その時代を担うトップ産業は、製品を売って稼ぐだけでなく、製品を作ったりサービスを提供したりするために、巨大な設備投資をして、裾野業界を潤し、スパイラル的に雇用を創出して、その雇用者は消費者となって製品を買うという、経済規模を拡大再生産する役割を期待されている。自動車産業しかり、電話産業しかり。たとえば、先日の日経に、今年度の携帯電話向けのインフラ設備投資予測は約2000億円という話が出ていた。さっき読んでいたニュースでは、アメリカでベライゾンが映像サービス向けに計画している投資額の規模が30億ドル、円にしたら3000億円強と、こちらもだいたいそんな桁の話になる。このお金は、機器メーカーや素材メーカーの売り上げとなり、それらの業界の従業員の給料となる。さらに、機器メーカーが素材を買う会社とか、工事をする人とか、工場の設備をつくる会社とか、従業員にお弁当を売る会社とか、通勤に使う電車とか、仕事のあとにのみに行く居酒屋とか、「産業連関表」の左上から右と下へと、玉突き式に波及する。だから、その会社が直接あげる売り上げや利益以上の貢献をその国に経済に対しているワケだ。

これに対し、グーグルやヤフーほどのネット大企業でも、それほどの設備投資はしない。ましてや、ライブドア楽天は、企業買収という形の投資はしても、モノを買って他の企業を潤し雇用をふやすという形の投資は極めて少ないと思う。

さらに、以前のエントリーに書いたように、販売ルートという別の産業セグメントを支えることもない。

ブロードバンド、著作権と経済の雑感(その2)- 著作権から経済のエ - Tech Mom from Silicon Valley

だから、いわゆる「産業界」といわれる人々になかなか認知されないし、直接の従業員も関連産業の従業員も少ないから、一般の人からも本気になって支持されない。もしトヨタやNTTがつぶれたら、関連産業も含めて数十万人が路頭に迷うだろう。お弁当屋さんや飲み屋まで含めたら、どれほどの数になることやら。しかし、ライブドア一つつぶれたところで、どうということはない。

一方、孫さんは、電話キャリアを抱え込むことにより、設備投資と販売ルートを持つ、雇用創出産業を内部化した。だから、いわゆるヒルズ族ネット企業とは一線を画した扱いをされる。

巨額な投資も煩雑な販売ルートもない、低コストの身軽さが2.0的企業やネット企業の本来の強みなのだから、立派な雇用創出産業になってしまったら、その強みを失うことになる。2.0的企業が、立派な大企業となる障壁がここにもある。

一応断っておくが、私は梅田さんの「橋を架ける」試みに異論を唱えているわけではない。私は旧型産業出身で、先端的でない「普通の人」の代表格である主婦ともつきあいが多いので、考え方も旧型に近いところがある。だから、ネットにあまりプレゼンスのない旧型世界の言い分として、そちら側から議論に参加してみたいと思っているだけである。