YouTube瀕死説と「Net Neutrality」

またまたYouTube瀕死説がブロゴスフィアで浮上している模様である。

メディア・パブ: YouTubeの瀕死説が浮上
http://valleywag.com/tech/top/feature-why-youtube-is-about-to-die-189535.php
http://valleywag.com/tech/youtube/one-more-reason-youtubes-in-trouble-net-neutrality-is-over-189584.php
John Battelle's Search Blog YouTube Worth $1 BIllion? But Who Will Buy It?

これまでの状況から見て特に変わった材料があるようには思わなかったが、「Net Neutrality」(ネットの中立性)に関する話についてちょっと付け加えたい。

別に揚げ足をとるつもりではないが、これらの記事で言及されている「パケット・シェーピング」については、今に始まったことではなく、すでに多くのISPが実はやっている、というのが私の認識である。ちょうど、たまっていたテック系ポッドキャスト「This Week in Tech」を聞いていたところで、7月初めに「Net Neutrality」を通信法に含めることができなかった(否決というより、賛否同数だったので入れられなかった)ときの、ネット上で大いに失笑を買ったテッド・スティーブンス上院議員の「チューブ」発言の件をやっていた。その話の中でも、パケット・シェーピングはすでに広く行われているし、そもそもネットは中立ではない、という話が参加者から出ている。(なお、ここでいう多くのISPというのは、必ずしもエッジ側の大手(電話会社・ケーブル会社のブロードバンド)だけでなく、リテール系や中継部分の中小ISPも含まれる。)

私がこれまでに展示会などで聞いているのは、おもにBitTorrentを中心とするP2Pパケットがターゲットである。そのほか、電話会社系のブロードバンドISPならVonageやSkypeなどのVoIP、ケーブル会社系ならSlingMedia(テレビ番組を録画しておき、ネット上で別の場所から見られる奇妙な形の機器で、「place shifting」の代表格)が、コア事業への脅威ということで、主にターゲットにされている、とささやかれている。YouTubeのような、伝統的なトラフィック形態だと、ISPへの圧迫度はP2Pに比べると少なそうだが、本当にトラフィックが最近激増しているとしたら、そろそろまな板の上に上がってきているのかもしれない。(上記記事の一つにある、最近YouTubeの画質が落ちているというのは、そういうことかもしれない。)

ここでも言及されているLimelight Networksとは、CDN(Contents Delivery Network)の会社で、この分野ではAkamaiが圧倒的大手である。大容量のコンテンツを配信するネット企業は、皆Akamaiなどに料金を払って高速配信している。今でも、資金力のある企業がそもそも、有利なようにできている。Net Neutralityを主張する人たちが、これにより資金力のない「パパママ・ネット企業」が締め出される、と今更いっているのが、私にはどうしても納得がいかない。

ともあれ、そういうわけで「今更」という感じなので、私はNet NeutralityのせいでYouTubeがにわかに不利になるとは思えない。ただ、これまでどおり、やっぱり私には彼らのビジネスモデルと「インフラの限界」との関係がわからず、いつまで続くのかなぁ、と思っているという点については上記の記事と同感である。

それと、大手のエッジ側ブロードバンド会社たちが、自社コンテンツを優先し、ライバルを締め出すかも、という問題があることは、理解できる。ただ、それって法律で規制することかなぁ?競争の中で自然に解決していくものではないのかなぁ?

<過去の参考エントリー>
ネット映像配信のビジネスモデルが、ついに出現しつつある、のかなぁ〜 - Tech Mom from Silicon Valley