iPod映画とDVDは競合しない(私的には)

iTMSの映画ダウンロードが好調らしい。一方、下記のようなご意見もあり、興味深く拝読した。

ジョブスマジックもこれまでか? - California Sky - アメリカのビジネスと株を考える
Expired

世の中的には、特に価格設定をめぐり、アップルとウォルマートとの競合関係を中心として、オンライン配信が既存のDVD市場が競合するという観点からいろいろと書かれている。アマゾンやCinemaNowとアップルの競合関係もしかり。しかし、きわめて個人的に私の頭の中では、これらは全く競合していない。別物である。

なぜかというと、昨日iTunesで買った「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、私の大好きなiPodの価値をさらに高めるための「iPodの付加価値」だからだ。Netflixで借りるDVDとは全く意味が違う。一応、この作品もNetflixのQueの下位にははいっているが、新しく見たい映画が出てきていつも上位に別のを入れてしまうので、きっとここまでは永遠に到達しないだろうな・・と思われる作品群の一つでしかない。ましてや、15ドルとか出して店でDVDを買うとは全く思えない。「パイレーツ」が見たいから買うのではない。iPodで見られるものが増えるから買うのだ。

iPodにはいっていれば、他の娯楽手段が全くないところで、ものすごーく手軽に見ることができる。アメリカで生活している者にとって、最大の難物ニッチ時間は車の中ですごす時間である。それも、家族で車で旅行というと、すぐに4時間や5時間、全く変わることのない風景の中を延々走らなければならない。田舎に行くと、ラジオはカントリー・アンド・ウェスタンしかやっていない。運転している大人も退屈だが、後部席の子供はもっと大変だ。そういう時間が、iPodのおかげで生産的になった。運転時間のほか、ジムでエクセサイズする時間や、飛行機の中、さらに今日はこれから歯医者で結構長時間かかる治療が待っているが、そういう時間が、だーっと流しておいて聞けるiPodでいろいろに使える。私自身は、音楽を聴くことよりも、ポッドキャストでテック系トークを聞いて情報収集していることが多い。飛行機では、「サタデイ・ナイト・ライブ」を見たり、昨日書いたように子供たちにマンガを見せたりする。マンガばっかり見てないで!と、NASAの子供向け教育番組のポッドキャストなどを見せることもある。相当に質の違う種々の娯楽を、あの小さいiPodの中に詰め込んで持ち歩ける。

つまり、家でDVDを見る時間と、iPodを使っている時間というのは、全く質が違う時間である。全く競合しない。そして、iPodが活躍するこの難物ニッチ時間というのは、まさに難物で、ここで活用できる娯楽というのは、とても提供するのが難しい。本も読めない、携帯でも遊べない、テレビも見られない。そこで、iPodで聴いたり見たりするものの種類が増えれば、ますます私の持っているiPodの価値は高くなる。だから、iPodのハードも、コンテンツも、ちょっと高くても買ってしまう。子供のテレビ番組を持ち歩くようになってから、ビデオiPodをもう一つ購入した。今回、車の中で「パイレーツ」を見るために、新しくビデオiPodを購入する人はきっと他にもいるだろうと思う。だから、アップルはこれをやったのだと思う。