2007-06-24 お久しぶりの「パラダイス鎖国」と「情報発信」を閉ざすことについて
■[日本] お久しぶりの「パラダイス鎖国」と「情報発信」を閉ざすことについて
「パラダイス鎖国」という話をこのブログに書いたのは2年前のことで、そろそろ書くことも尽きているので今更なのだが、たまたま雑誌に「パラダイス鎖国について書いてください」という依頼があり、まーいっぺんぐらい活字になるのも悪くないかな、と思って、短いコラムを「月刊アスキー」に寄稿した。6月24日発売。
・・・という話を書こうと思っていたところ、ちょうど今日、渡辺千賀さんと梅田望夫さんが、まるでみんなでsyncしたように、関連するエントリーを書かれており、タイミングのあまりのよさにちょっとビックリ。
On Off and Beyond: 日本は世界のブラックホールか桃源郷か
海外に住んでも母国語中心に生きること - My Life Between Silicon Valley and Japan
それと、私も書いたことのある、携帯電話のパラダイス鎖国問題のこんな記事も、ちょうどはてブを集めている。
第1回:世界を席巻するはずだった「日本発W-CDMA」 - 「日本発 W-CDMA」の挫折:ITpro
パラダイス的新鎖国時代到来(その4)- 産業編・携帯電話端末のケー - Tech Mom from Silicon Valley(→こちらは私の過去のエントリー)
千賀さんが言うように「パラダイス鎖国でいいじゃん」「ガラパゴスは桃源郷」と割り切る考え方もあるな、と私も思う。パラダイス鎖国の一連のエントリーでも、「これでもいいのかな?いけないのかな?」と煮え切らない態度で書いていたのが本当のところ。ただ、携帯や通信の世界では、どうも「パラダイス鎖国」の影響がボディブローのように効いてきて、特に機器メーカーの競争力や収益力に悪影響が出ているような気がするし、世界の中で日本がrelevancyを失っていくのは、やっぱりどうもイヤだなー、という気持ちもある。(まー、これは私のサラリーマンライフの出発点がホンダだったから生まれてくる一種の「偏見」なのかもしれないが。)だから「パラダイス鎖国」のエントリーでも、後半は「脱パラダイス鎖国」というトーンに変わったわけだ。
一方、梅田さんのエントリーにも共感するところは多い。私も、初めてアメリカに来た30年前は、1年の間、日本語は家族や友人との手紙と、年に3回ほど他の日本人留学生と会うときしか使わなかったが、今は無理してそんな世界に住む必要もない。ただ、コメントでは主に、情報を受容するケースを念頭に置いているものが多いが、逆方向の「発信」をしないで閉じこもって、それでもやっていけるんだけど、それだけじゃぁちょっと面白くないよなー、というひっかかりが相変わらず残る。
いや、もしかしたらそんなことはどうでもいいのかもしれない。千賀さんが例に挙げている、「日本にはワンセグっていうすごいテレビ携帯があって、こんなに進んでるんだゾー」といったようなことを、私は敢えて英語でブログに書いた。「モバゲータウン」のことも、「顔ちぇき」のことも、書いた。そういうことを、携帯のconferenceで英語でしゃべろうと思って応募もしている。でも、どうせこんなもの、読む人も聞く人も少ない。誰も興味持たない。商売にもならない。世の中的には、なんの足しにもならない。そうなんだろうな。
Michi.newsvine.com - Michi Kaifu
Newsvine - MediaFLO and ”One-seg” - Japanese ”mobile TV” myth busters
それは、私がしばらくやっていた「邦画の英語情報」サイトを「やんぴ」しようと思った状況と同じ。一連の自分のやっていることをいまだに疑問に思ってはいるが、でも、邦画サイトについては、「ヤンピ」宣言をしたら、「やめないで」というコメントが思いがけずたくさんはいってきて、ちょっと驚いて、細々と続けることにした。だから、「ワンセグ」の話も、表面化はしないけれど、実は面白いと思って読んでいる人がどこかにいるのかもしれない。
パラダイス鎖国を、国家とか全産業とかのレベルでどうすべきだ、なんぞという大きな話は私にはよくわからない。きわめて個別の話で言えば、携帯端末に関しては、いかに大きいといっても日本だけの市場(特に日本ではメーカーの数が多すぎ)では、世界で売っているメーカーと比べてスケールが違いすぎ、(一方海外の安い端末は日本のあまりに進んだ市場に合わず)明らかにコストが高く、そのためにメーカーは儲からない、キャリアは高い補助金をはらわにゃならん、ユーザーは高い料金をはらわにゃならん、という、誰もハッピーでない状況になっているのは間違いなくて、これはやっぱり、なんとかしたほうがいいと思う。ネットワーク・インフラ機器はもっと深刻な状況。でも、それ以外の産業についてはよくわからないし、ケースバイケースなんじゃないの、としかいえない。
情報のやりとりについても同じ。別に、誰もが英語でどんどん話ができて情報発信ができるようにならなきゃいかんことはない、というよりそんなの無理。でも、個人のレベルでいえば、英語で書いてみたら、思わぬところで興味を持っている人に感謝されたり、友達ができたり、思わぬ発見や役得もある。日本の情報を知って面白がってくれる人がどこかにいる。日本独特のアイディアや製品をアメリカに持ってくることで、もっといいものができあがるかもしれない。日本人だけが中で楽しくやっていくという話だけじゃなくて、その外側にいる人も仲間に入りたい人もいるんじゃないか、そしたら入れてあげてもいいんじゃないか、という話。そういった「発信側」の役割を、楽しいとか意義があるとか感じる人だけがやってればいいのだけれど、極めて個人的な感覚としては、そういう人がもっと増えてほしいなぁ、とは感じている。
私なぞ、英語が下手だから苦労しながらやっているのだけど、私の子供たちは、きっと苦労せずにごく自然体で、「dude, Japan is so high tech, like you wouldn't believe.」なんてやるんだろうなぁ。外国出身の友人たちも、訛り丸出しの英語で、別に構えることなく自然体で、自分の国のことを語っている。それはそれで、面白いんじゃないかな。その延長に、何か新しい世界ができてきたら、面白いんじゃないかな。
千賀さんみたいにうまく言い切れないのだけど、まぁこんなところが私の感じているところ、ということで、今日はご勘弁を。
<追記>
なるほど!下記、コメントの「開発者」さんのおっしゃること、目から鱗です。パラダイス鎖国で何がいけないのか、ということについて、なかなか自分でもすっきり言い表せなかったところでした。こうして企業の無理のために個人は「武士は食わねど高楊枝」状態を強要され、しかも「言語の壁」と「すでにある程度の生活レベルのあるぬるま湯の蛙」のために、途上国の移民のようにさらりと国を捨てることもできない。でも、高楊枝はいつまでも続かない。なんか、こういう無理な状態をやっているような気がします。それであっても、グローバル化に正面から戦うよりも、まだいいのかなぁ?パラダイス鎖国が続いているってことは、そのほうがいい、と思っている人のほうが多いんだろうなぁ・・・
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- http://d.hatena.ne.jp/shigepo/20070625
- http://d.hatena.ne.jp/supportista/20070625
- 携帯電話市場のパラダイス鎖国
- ゲーム業界は「パラダイス鎖国」ならぬ「パラダイス開国」
- http://d.hatena.ne.jp/ilovekfc/20070627
- パラダイス鎖国の悪影響?
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- Apple、iPhoneのタッチパネルをマウスにも応用
- http://d.hatena.ne.jp/pinkmac/20070708
- 「パラダイス鎖国」/お久しぶりにSilicon Valleyから
- http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20070915
- keitaro-news - 鎖国のススメ クールジャパンになるために
- 1214 http://ayacnews.blog57.fc2.com/blog-entry-720.html
- 778 http://www.chikawatanabe.com/blog/2007/06/post-1.html
- 430 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20070802/278983/?P=3&ST=oss
- 386 http://www.chikawatanabe.com/blog/2007/06/iphone2.html
- 288 http://gamenokasabuta.blog86.fc2.com/blog-entry-221.html
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- 250 http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/852df1be7017354c79352d8e601effff
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そういう意味ではガラパゴス諸島は良い例えかもしれません。他には見られない多種多様な生物が生きてはいるが、所詮は脆弱な生態系に強く依存した変種でしかない。封鎖が解かれ、人間が犬や猫を持ち込んだだけで絶滅するかもしれない弱者の楽園。それが果たして幸せでしょうか?
>パラダイス鎖国が続いているってことは、そのほうがいい、と思っている人のほうが多い
私もそう思います。痛みある変革はいやだが、「今のままのやり方を頑張るだけでなんとなく状況が改善するといいなぁ」という都合のいい改善を望んではいる、という消極的「望み」ですが。
ちなみに、私はヒジョーに冷たい言い方なのは承知の上で「文句を言わなきゃできないことだったらやめればいいのに」と思います。シアワセじゃない、と思ったらやめればいいのに。・・・・てなことを言うと、「強い人はいいよね」と強いものイジメされちゃいますが。
しかし、chikaさん、見事な釣りエントリーでしたねっ。私も釣られちゃいました。(笑)
痛みのある変革なんて、自分でできる人は少ないですよね。だから、みんながんばれ、とは私は言わない。役人がそう言いかたするのもやだなと思う。でも、私は子供が大きくなったときに、日本が悲しい状態になって渡したくないと思うから、非常に小さいことでも自分でできることをやろう・・と、チャリティに100円寄付するみたいな気持ちなんですな。
http://blog.livedoor.jp/clausemitz/archives/50680086.html
電子素材では、日本メーカーが圧倒的シェアを誇るようです。
ブラウン管テレビも中国に席巻されましたが、中枢部品は全て日本製だそうです。
表面だけ見ていると、見誤るのではないでしょうか。
http://tameike.net/pdfs6/tame303.PDF
2007年の日本経済と貿易動向
http://tameike.net/pdfs6/tame343.PDF
一般に思われている日本のイメージと違い、大変興味深い内容です。
『権力者には』という条件付きであることをお忘れなく。
>シアワセじゃない、と思ったらやめればいいのに。
なに甘いこと言ってるんですか。
「新卒の3割が3年以内に辞める」という統計も出ているでしょう?現場の技術者不足も深刻です。技術力の低下に至っては、もう目も当てられない。
このままだと、あと数年で日本の生産現場は完全に崩壊して手遅れになるというのが、現場の持つ危機感です。現場では人が辞めるという動きが出ていて、パラダイス/地獄鎖国は、もう何年も前から崩壊に向けて動き続けています。
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/net_gyoukai.aspx?n=RSBQU2842%2029062007
人材確保に苦労しているのは、何処も一緒みたいだが。