2007-06-27 ばばぁの繰言だけど、「ポケモンは自然に売れたんじゃない」という話
■[コンテンツ] ばばぁの繰言だけど、「ポケモンは自然に売れたんじゃない」という話
いつもながら、この件は私には、生活レベルでのアメリカと日本のことしかわからないので、その範囲に限定して書く。
なんだか盛り上がってきて、面白くなってきた。
Life is beautiful: 日本は世界経済にとってのガラパゴス諸島
そこそこに大きく豊かで単一的な日本市場という特徴を利用して、中だけに閉じた、高度に発達したコンテンツや文化や製品が生まれるということ自体はいいし、その成果であるゲームやアニメが海外にも売れてるというのは事実。
ただ、こっちに住んでアニメ適合年代の子供たちと生活を共にしていて、全体のコンテクストから見たその影響度合いとかが、相変わらず日本で過大評価されているような気がしてならない。ゲームのことはあまり知らないので、とりあえずアニメのことについて書くが、この話は、1年半ほど前にも「パラダイス鎖国」連載の中で言及した。
アンチ・パラダイス鎖国 (その6)--- 日本製アニメは「東洋の魔女」時代のバレーボールか? - Tech Mom from Silicon Valley
ポケモンがアメリカで売れた背景は、ここにも書いたように、当時のポケモン関係者の「火事場の馬鹿力」(by渡辺千賀、言いえて妙)であったわけで、確かにその頃、ポケモンが一般アメリカ人の目にも明らかに見える、メジャーな流行となっていた。しかし、アメリカでは2-3年ほどで失速し、現在は日本ガラパゴス諸島にお帰りになって、息の長いヒットシリーズとして生息している。この記事を書いた頃ちょっと話題になったPuffyはほんとに一瞬のことだった。今はもう覚えている人もいないんじゃないだろうか?
ちなみに、私でも入手しやすい劇場版映画のアメリカ国内興行成績を暦年でみると、こんな感じ。
- 1999 Pokemon: The First Movie $85,744,662
- 2000 Pokemon: The Movie 2000 43,758,684
- 2001 Pokemon 3: The Movie 17,052,128
- 2002 Pokemon 4Ever 1,727,447
- 2003 Pokemon Heroes 746,381
ついでに、「世界に誇る宮崎駿」はこんな感じ。
- 1999 Princess Mononoke $2,375,308
- 2002 Spirited Away(千と千尋) 10,055,859
- 2005 Howl's Moving Castle 4,711,096
(「ゲド戦記」は、同じ原作で制作したアメリカのテレビ・シリーズの版権がまだ切れていないため、アメリカでの劇場公開は早くても2009年以降)
(出典はいずれもBoxofficemojo)
どちらも日本の実写映画と比べれば格段の立派な成績だが、ずっと好成績を保っているわけではないのがわかると思う。
過去30年にわたって、地道にアメリカで日本の漫画やアニメを紹介・販売して、現在に至るアニメ文化の基礎を営々と築いてきたVizMediaという会社がサンフランシスコにある。この創業者であり、「萌えるアメリカ」という著書もあり、最近は「電車男」などの実写映画配給も手がける、堀淵清治さんにインタビューさせていただいたことがある。このとき、「ポケモン・バブルのおかげで仕事がメチャクチャになり、立て直すのに数年かかって大変だった」と話しておられたのが印象に残っている。
2000年代初頭頃の「火事場の馬鹿力」のおかげで、日本アニメの認知度や子供たちの間での親和度が高まり、日本からアニメ・コンテンツをアメリカに持ち込んで販売する販路ができ、カテゴリーとして成立した。ただ、当時よりもアメリカのアニメ調達力は格段に上がっていて、またテレビで流れるアニメの全体の物量がすごい。日本ではゴールデンアワーからアニメがほとんどなくなったということで、夕方や土曜日朝のテレ東あたり程度がアニメのニッチなので、その中でポケモンという一つの番組の存在感は大きい。しかし、アメリカでは、当時からあるNickelodeon、Cartoon Netowork、Fox Kidsなどのほか、ディズニー系のJetixとか、24時間アニメ(または子供・ティーン番組)を流している専門チャンネルがいくつもある。膨大な量のコンテンツの中の日本アニメの存在は、「ドンキホーテ」だか「Costco」だかの、ものすごい物量の量販店の一角にひっそりだが着実に売り場を確保している、といった感じが正しいような気がする。そして、物量だけでなく、人気度からいって、ポケモンのあと、それをはるかに上回る規模の大ブームとなった「スポンジボブ・スクエアパンツ」(注!このリンクをクリックする前に、パソコンのボリュームを下げてください!特にオフィスで見ている方!)などのメジャーとは比べ物にならない。サブカルチャーとして、大人のオタクの間で好まれるものというのは私にはよくわからないが、いわゆる「普通のアメリカ人でも目にする、消費する」タイプのメジャー・コンテンツとしては、「one of them」程度だと思う。
いや、「だからダメ」と言っているのではない。過大評価しないほうがいいよ、ということ。それと、日本の生んだすばらしい文化だからといって、ほっといても自然に売れたのではない、ということ。堀淵さんなどの方々が長いことかかって築いてきた、販路や日本アニメ文化のコア・ファン層といった「下地」があった、ということ。馬鹿力だろうがなんだろうが、当事者の努力とアイディアの賜物だった、ということ。「開国」できている自動車だってゲームだって、同じことだ。
さらに言えば、自動車会社などの米国進出日本企業が、貿易摩擦時代から、良いものを売るだけじゃなくて、営々と地元との関係改善に努め、地元の人を雇い、地元のものを買い、地元のリトルリーグ・チームのスポンサーになり、メディアや政治家にも対応し、キレイゴトだけじゃないさまざまな努力をして、「日本」や「日本人」のイメージを変えてきたことも、一つの根本的な時代の流れとして、あるんじゃないかと思う。
ガラパゴス諸島の住人が、その文化を享受して楽しく暮らすのはいい。だけど、鎖国して壁の花のように黙っていても、ある日外から白馬の王子様があらわれて、世界中が好きになってくれると思うのは甘い。「鎖国」するなら、王子様が来ることは期待しないでね、ということ。
当事者が努力をやめた途端、いろんな「下地」はだんだんに擦り切れていく。誰もが当事者になれ、とは言わない。消費者として楽しく享受している人はそれでいい。でも、当事者になるべき人は、相当の数、存在し続けないと困るんじゃないかなぁ。そういう人を大事にしないといけないんじゃないかなぁ。
萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか
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日本は当事者ばかりがすり切れて、アニメ産業もあと10年くらいで消えるのでは、と当事者たちが語っていても
メディアあたりは口当たりのいいことしか言わない、と
実際、世界でアニメは大人気、というのを日本に広めたのはオタキング岡田斗司夫ですが、かれがかなかばロビイストとして、そのときの日本メディアに「間違った」言説を売り込んだ理由は昔の宮崎事件でおたくが国家的バッシングを受けたあと生き残りのための戦略だったなることをその後自分の著書で暴露していました
しかし、部分的に現実がこのプロパンダと合致してしまったのがこの問題を見えづらくして、アニメとアメリカの関係を日本のナショナリズムで見てしまう流れを生んだんだと思います
で、そのことの後始末をするのも現場と。
…今日本のあらゆる現場は壊死寸前まで追い込まれているのに、なかなか気づきたくない、と思う人が大勢いるのが
何にせよ、日本は元気だ、という材料に使われてしまったアニメもマンガも、なかなかそれと現実が一致しないことを認めたくない人々の手でどんどん壊されているのも事実なんですよね
同じ番組を複数のグループが、翻訳スピードや出来を競っている。
多くは全く利益にもならないのに、その情熱にはあきれる。(海外で海賊版DVD販売は多数存在する。アマゾンなどの大手でも売られていている。)
もちろんそれは、日本側のビジネスに全くつながっていない。アングラな世界なので、どの程度視聴されているのかもわからない。
しかし、パレスチナのデモで、海外放送されていない最新のアニメキャラクターが看板に使われていて(フランスの通信社の写真で)、話題になった。
その情報発信力は侮れないと思う。
ご指摘のあったような現状に対して、売る側は向こうの数少ないオタク市場に選択と集中をかけるようです。