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2008-02-14 出版ロングテール続きと「子供の本離れは返本制度のせい」という話

[][] 出版ロングテール続きと「子供の本離れは返本制度のせい」という話 12:19

私の本ばかり宣伝しているが、実は梅田さんの新しい本が出る。私の本と、中島さんの本は、すでにアマゾンで「いっしょに買う」でしっかりペアになっているが、是非こちらも一緒にどーぞ。

新著「ウェブ時代 5つの定理」2月27日刊行 - My Life Between Silicon Valley and Japan

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

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もちろん、しつこく、自分の本と中島さんの本も・・・

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)

おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)

さて、前回私が感じた「出版のロングテール」話について、出版社の方からいくつかご指摘をいただいた。面白かったので、差し支えなさそうな部分だけ、ここにご紹介したい。

出版の「ロングテール」を実感、「ブロガーの書く本」 - Tech Mom from Silicon Valley

まず、「新書のほうがハードカバーよりライフサイクルが短い」というのは間違いだそうだ。むしろ、ハードカバーのほうが、装丁も立派で初期費用が大きく、その代わり単価が大きくて、新刊のときにたくさん売って回収する必要がある。(追加→文庫にして売るという話があって、私もそれを意識して「ライフサイクルが長い」と書いたのだけど、文庫にするときまたコストがかかるので、やっぱり新書のほうが利益率がいい、ということなのではないかと。)確かに、新書というのは、それぞれ表紙に新しい絵やデザインもいらないし、初期費用が小さくて、細々と長く売れるという性質があるようだ。

それから、ケータイ小説とのアナロジーでいうと、確かにライターの発掘という意味ではブログもUGCの一種に近いところがあるが、結局は(私の場合もそうだったが)ほぼ完全に書き直しが必要。ところがケータイ小説は、すでに完成した小説になっている。つまり、ケータイ小説の初期費用は小さい。にもかかわらず、ブログよりもはるかに大量の「お得意さま」をすでに抱えており(桁がちがうらしい)、ほとんど宣伝しないでも売れる。考えてみたら、ケータイ小説とは、なんと利幅が大きく、リスクの低い、魅力的なジャンルなのだろうか・・・

流行るのも無理はない。ただし、当然ここでも経済論理がはたらき、参入が増えれば、だんだんにそんなにおいしい商売ではなくなっていくだろうが。

究めつけが、「ハードカバーになぜするか」という話。日本では「返本」という制度があるので、倉庫と店を行ったり来たりする間に、ちゃちな装丁の本は壊れてしまう。それで、ハードカバーにする、という話。これは、実は子供の本を探す中で、アメリカのように「一冊3ドル、読み捨てぺらぺらペーパーバック」の子供の本が日本になぜないか???という深刻な疑問への、見事な解となった。アメリカは、書店に対して「売り切り」なので、ちゃちなペーパーバックでもいいのだそうだ。

日本では、読むか読まないかわからない、読んでもすぐに卒業してしまう子供の本が、一冊1500円もする。図書館へ行け、というのもわかるけれど、時間のほうが大切な、私のような限界労働者では、図書館に行くことはむしろ贅沢。読み捨てぺらぺら本があれば、あまり気にせずどんどん買って読ませてもいいのだが、1500円では躊躇してしまう。なかなか買ってくれないから、単価を高くせざるを得ない。新しいライターがどんどん出てくるわけにはいかなくなる。こうして、市場縮小スパイラルにはいる。

子供の本離れを非難するメディアは、この話はどこにも書かない。でも、子供のせいだけじゃないように思う。

どちらがいいかというと、消費者にとっては、アメリカ式のほうがいい。書店にとっては、短期的には日本のほうがリスクが少ないわけだけれど、長期的に「縮小スパイラル」になるのなら、やっぱりアメリカ式のほうがいいんじゃないだろうか。というより、こうして「児童書」というカテゴリーが縮小・消滅の危機にあるとしたら、うーんと長い目で見ると、日本の社会全体にとって、とても問題なのではないかと思う。

ついでに言えば、日本の小さい子供向けの本って、なぜ「昔話」ばかりなのだろう、という話もある。「パブリック・ドメイン」だから、作家にカネを払わなくていいし、リスクが少ないからなんだろう。昔話が悪いわけじゃないけれど、新しくて魅力的な作家の本があまり出てこなくて、つまらない。返本なしのぺらぺらペーパーバックで、「ケータイ児童書」ジャンルをつくり、若いお母さんたちに書かせたらどうかなー。ついでに、挿絵もウェブでユーザーがつくる。面白いと思うけど、どうでしょ。

(追加もういっちょ→はてブコメントで「安い子供の本もありますよ」と書いてくださった方があります。どこに行けば買えるか、ぜひ教えてください!私の立ち回り先からあまり遠くないところなら、今度日本に行ったときに、ぜひ買ってきたいです。)


同じネタ話の英語ブログ・エントリー:

NBC News - Breaking News & Top Stories - Latest World, US & Local News

参考記事:

KAGOY時代にあった児童書を! - Tech Mom from Silicon Valley

Kenji RikitakeKenji Rikitake 2008/02/14 16:19 再版価格維持制度という社会主義的な仕組みがまだ残っている世界ですからね.

huhu 2008/02/14 19:39 コンビニのマンガを思い出した
ラノベでも、絵本でもアレでだしゃいいんだよな

KK 2008/02/15 02:41 >再版価格維持制度
GHQ体制の残り物。
ただ、ヨーロッパでも復活させている所が多いようだ。

mohrimohri 2008/02/15 04:33 >一冊3ドル、読み捨てぺらぺらペーパーバック
「こどものとも」はいかがですか?
http://www.fukuinkan.co.jp/magazine.php
http://www.amazon.co.jp/dp/B0012RQMIE
http://www.fujisan.com/online/shopping~sj~?navi=890

5番5番 2008/02/15 14:32 コンビニで安く出してますね(あくまで再編集もの)。あまり安くないですが(あと100円は安くしてほしい。すぐ上に漫画の単行本価格が見えるので)。紙質はペーパーバック版と同じザラ紙です。

出版社のお客は流通ですから、どうしてもその先の消費者には目がいかない。だから流通の都合ですべて決まってしまう。流通に切られると事実上廃刊だそうです。週刊誌が配本を一回回収したそうですが、その費用を誰が負担をしたのかなど、いろいろ流通は怖いです。ちなみに戦前の統制経済の名残です。


日本は過剰に?質が良いように思えます。特に文房具は日本製以外使えません。もちろん外国製という元々日本に馴染まない(大きすぎる)ものという欠点があります。化粧品でもアジア圏は日本製が一番いいとか。欧米のものでは肌に合わないという話を聞いたことがあります。

michikaifumichikaifu 2008/02/15 19:40 なるほど、アマゾンなどだとバラで「こどものとも」の雑誌版が買えるのですね。実家の近くの書店では、同じものをハードカバーにした1500円コースしか見つけられなかったものですから・・・ありがとうございます。

ちなみに、化粧品に関しては、「欧米製が肌に合わない」のではなく、「欧米製は日本の気候に合わない」というのが正しいと思います。日本の化粧品を乾燥したカリフォルニアで使うとパサパサ・バリバリになるし、こちらでちょうどいい、保湿用脂分がたくさんはいった口紅を日本に夏持って行くと、熱で溶けてベタベタになります。同じ理由で、日本のケーキのレシピで当地で作ると、パサパサになりますし、アメリカ製クッキーはバターが多すぎて日本で食べにくいです。

mohrimohri 2008/02/16 02:29 確かに1500円くらいする絵本も多いですけど
「こどものとも」のハードカバーはそんなには高くないですよ
たとえば「ぐりとぐら」で840円ですし
http://www.amazon.co.jp/dp/4834000826/

5番5番 2008/02/16 17:24 ご指摘ありがとうございます。重要なのは気候なんですね。

風太郎風太郎 2008/02/17 22:27 私は日本で、電子書籍というビジネスをやっています。これは紙の本をスキャンで、電子化し、流通させるものです。そうすれば紙代印刷代流通経費など、出版のコストを上げているものをすべてゼロにすることができます。
またカミに編集されたもの(挿絵など)をそのまま生かしてパソコンで読むようにできるのです。
参考URL=http://www.ebookjapan.jp/