Hatena::ブログ(Diary)

Tech Mom from Silicon Valley このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2008-03-18 企業の「成長という幻想」

[] 企業の「成長という幻想」 22:10

久しぶりに、金融関係のスモール・ビジネスを立ち上げようとしている友人(↓女です、念のため)と電話で話した。日本株の人気がないとか、昨年日本の株式市場は世界の株式市場52中、51番目の成績だったとか、日本じゃ投資先がなくて企業でキャッシュが寝ている、という話の流れで、こんな会話になった。

友「だからさぁ、成長しない安定した『キャッシュカウ』(じっとしていてもミルクが出てくる)になったら、そのお金は配当にして株主に還元すればいいのにさー、日本の企業はそれもしないから、投資家はぶーたれるわけヨ。」(当たり前のことを知らん素人に向かってめんどくさそうに説明する友)

私「そー、そーなんだよねー!」(実は目から鱗のくせに、いかにも前から知ってたように返答する私)

そりゃ、そうだわ。

ときどき、日本企業の戦略話を聞いていて、どーもしっくり来ない気分になることがあるのは、そういうことだ、と合点がいった。もう産業としては成熟産業なのだから、「成長、成長」とあせらなくてもいいんじゃない?少し前までは、団塊の世代がたくさんいて、どうやってその人たちを食わせるかということで苦労していた伝統的大企業も、彼らが卒業してもう手を離れた(完全にそういうことでもないのだが、一応・・・)のだから、もう楽隠居して、企業の寿命が尽きるまで、安定したキャッシュカウになったらいいんじゃない?と思うことがあるのだ。

私の本「パラダイス鎖国」では、「成長戦略」のほうの面から「終身雇用の罪」について書いたけれど、実はこちらの「楽隠居戦略」も日本の企業ってダメで、その意味でも「終身雇用」に罪があると思っている。本では字数が足りなくて(10万字でも足りなかった・・・)、書けなかったけれど。

これも、本の中でも書いた「これまでの成功体験に引っ張られて、成長戦略がやめられない」「これまで楽隠居の身分になったことがなかったので、どうすればいいかわからない」ことなどが影響しているだろう。「楽隠居戦略」では、若い人に対するイメージが悪くなって採用に悪影響があるとかなんとか、言いそうだけれど、そもそも「安定した地方公務員」とか(昔なら)「安定した銀行員」になりたい若者がいっぱいいるんだから、別にいいじゃないの。

隠居フェーズの産業は、どんどん統合して競争を減らし、安定してはいってくるキャッシュは、投資家へのお小遣い(配当)や、若い産業への教育投資(ベンチャー投資)などにまわせばいい。自前で無理やり、体に合わない新しいことをやろうとする必要はないんじゃないか。また、政府やマスコミも、なんでもかんでも「競争、競争」といわなくてもいいんじゃないか。

それで、がんがんベンチャー興して儲けたい「変人」組は、そういうお金もらってベンチャーを興して頑張り、安定志向の人は、安定した隠居会社で、そこそこ給料もらって、ノルマだの締め切りだの、ありもしない成長ビジネスづくりだので消耗させられることもなく、子供の相手や家庭菜園や地域ボランティアなどする時間がたっぷりある、という生活はいいと思うよ。

さらに言えば、そういうお金は「社会的事業」に還元してもいいんじゃないかと思う。それも、ハコモノつくったり、芸術品を買うとかいうだけじゃなくて、例えば、私がよくブログに書く、学習障害の子供だとか、もっと深刻な障害児へのケアなどが、日本はアメリカより全然貧弱なので、そういうことをやる、とかどうだろう。政府の仕組みでできないことを、企業や裕福な個人がもっと堂々とできるようになれば、こうした社会事業ももっと機動的にできるだろう。

貧乏な時代が長かった世代は、お金がたくさんあるときの使い方が下手なのかもしれない。

また話がそれてきたが、とにかく、「企業は成長しなきゃいかん」というのは、幻想だ。みんながみんな、成長する必要はない。企業も産業もいろいろ。むりやり延命するより、若い芽が出てくるのを育てるような仕組みに変えていくほうがいいと思う。

<追記>

下記、小飼弾さんのトラバ先に、このカラクリの解説があります。ありがとうございます。また目から鱗が落ちました。↓

KK 2008/03/19 07:58 2008年度の経常収支黒字は30兆円を突破します。これはもちろん史上最高であり、日本の名目GDPの5%を上回ります。日本経済は最近の人口動態の問題、つまり少子・高齢化現象もあり、内需は冴えない状態が続いておりますが、海外ではうまくやっていることが分かると思います。
巨額の経常黒字は、貿易黒字のみならず、所得収支黒字によってももたらされています。
つまり日本企業は、輸出のみならず対外投資でも成功していることになります。
http://tameike.net/pdfs8/tame387.PDF

KK 2008/03/19 08:19 英国病のススメみたいです。
成長しなくて良いというのは、衰退だと思います。
放っておいても、そのううち成熟した債権国になるでしょうが、出来るだけ先延ばししたいものです。

Takuya_STakuya_S 2008/03/19 10:06 とても興味深く読みました。問題の根はとても深いのだと思います。でも、アバンダンスの中で生まれ育った僕達の世代が、ポジティブになんとかしてみせましょう。

日本は日本は 2008/03/19 11:02 ここなんかをみたら果たして衰退程度ですむんでしょうかKさん・・・
日本の博士課程が定員割れしたのでベトナムから学生を呼ぶということなのだろうか
http://shinka3.exblog.jp/8362002/

日本は 日本は 2008/03/19 11:08 特にこの書き込みが気になるのです


独法化以降、国立大学や研究所、博物館、美術館などは、官僚の天下り機関のような扱いです。国立だった頃は、有力大学の教授や有力研究所の部長などの幹部は、本省のキャリアと渡り合って、意見を通すことが出来ました。

しかし、独法化以降は、官僚統制が非常に強まり、上意下達です。官僚は、高等教育は殆ど素人同然で、問題が多いです。独法化前なら、大学の反対で潰れたと思います。

この種の政策は、官僚がたたき台を作り、有識者を集めた会議(省庁や政策ごとに名称が違う)を開き意見を聞き、政策を作ります。推測ですが、上記の会議に、ベトナムへの投資を強力に勧める人が居たのでしょう。

最近ベトナム関連の報道が多いですが、それもマスコミ対策の一環でしょうね。上記の「〆切に追われる者」さんも、そんなマスコミ関係者の一人かなと思いました。


企業を支えるべき大学などの知の世界が、今がんがん政官によっておかしく成っているとのことです。
それを真剣い考えている企業もいるとそこにも書かれていますが、
このまま行けば日本は成長以前の話しになりかねませんよ。

KK 2008/03/19 12:08 >ベトナム留学生
リーズナブルな知日派作りだと思う。ロビー活動に大金を払うよりよいでしょう。
UAEとかとも、留学生受け入れ計画があるようですよ。
少子化対策など、複合的な目的があるのだと思います。
それと、高等教育機関の硬直化は別問題でしょう。

それより、成長しなくてもやっていける、業界・業種を教えてほしいなあ。

ううむううむ 2008/03/19 19:07 あえてここに貼っておきますが(確かに疑問だらけだわと思うから)
日本の労働環境についてこんなことが呈されていますドイツの労働環境と生産性のナゾ - サンフランシスコへの道 〜the long and winding load〜
http://d.hatena.ne.jp/sfujita180/20080204/1202135655

フジテレビのあいのりを見ていて、ドイツの労働環境の話しが。

年間の休日日数は5ヶ月。1日8時間労働、残業しても最大10時間。夜8時以降や休日に労働させることも法律で禁じられているそうな。

・・・すげー。IT関連や製造業の研究開発なんかでも例外無くなのかな?

SAPやメルセデスなんかもそうなのかな?

だとしたら、ドイツ人の生産性って、凄まじくないですか?それとも、なんだかんだで家で仕事してる??


成長云々以前に英日米のC/Pって実はめちゃくちゃ低いんじゃ?
それを改善するだけでも全然違ってくると思う

てか何で誰もこの手の疑問を持たなかったんだろう、この三カ国・・・

zosojhzosojh 2008/03/19 21:29 安定した隠居会社というものが実在するのであれば、このエントリに書かれていることは実現できると思いますが、、、例えば、どの企業なのか、実名を挙げて頂けますか?