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Tech Mom from Silicon Valley このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2009-01-15 家事と「グーグルの検索」が似てる件

[] 家事と「グーグルの検索」が似てる件 10:09

こういう話が流行ると、黙っていられないTech Momが来ましたよ。

とある夫婦の離婚序章

一時「発言小町」にはまったとき、同じような「家事と仕事とどっちが大変か」という男女の水掛け論を散々読んだのだが、女性の多い「小町」と男性の多い「匿名ダイアリー」の空気の違いがあって、なかなか面白い。

で、私の直接の反応はPollyannaさんとほぼ同じなのでそちらを読んでいただくとして、スレを読みながら、「家事とグーグルって似てるなぁ」とつれづれに思った話を書く。

グーグルのトップページは、ほとんど検索窓しかない。そこに何かほうりこんで検索すると、検索結果は味も素っ気もないリンクの羅列で出てくる。ユーザーインターフェースは昔からほとんど変わらない。使っている方からすると、極めてシンプルな表面しか見えない。しかし、そのウラには、10年にわたって蓄積した膨大なリンクとユーザーのデータを、ものすごいアルゴリズムで処理する、巨大なシステムがあり、それが徐々に進化している。ぴったりした検索結果を短時間で返すために、何千人もの博士号をもったスーパーエンジニアたちが、日々格闘している。ユーザーが何気なくサーチした過去の履歴や、GmailやDocsで何気なくやりとりしている情報の断片を、気が遠くなるほどの丁寧さで拾って、それをアルゴリズム化している。

主婦が晩ご飯にカレーライスを作って、子供を含む家族がそろってテーブルについて食事するという、何気ない日常の風景の裏には、これと似たような、ものすごいデータの蓄積と、気が遠くなるような情報の断片の収集と、それを一気に短時間で処理するアルゴリズムが動いている。冷蔵庫にある材料の在庫は何か、じゃがいもがないから帰りに買っていかなきゃ、子供の好き嫌いや今日の給食で食べたものは何か、誰かはアレルギーがあるからこれはダメ、自分の仕事が締め切り前だから本当はマクドナルドのテイクアウトで済ませたいけどそれでは亭主が文句を言うだろう、上の子が塾から帰ってくる時間と下のチビがお腹すく時間とのかね合わせからいって夕食はこの時間しかない、その時間に完成しているためには自分は何時から準備を始めなきゃいけない、そのためには仕事をこうやって段取りしてその時間までに自分の手をあけておかないと、子供の送り迎えの時間と重なるのでそれはベビーシッターに頼んで、今日は何時から子供の好きなテレビがあるから宿題は食事前にやらせなきゃ、自分は調理している時間だから両方をいっぺんにやらなきゃ・・・・などなど、膨大な小さな情報の断片を拾って最適化するアルゴリズムが主婦の頭の中では動いている。この作業は大変なエネルギーが必要で、間違った判断をすると、子供や亭主というスーパークレーマーからすぐに文句が出る、というストレスの多い仕事だ。

一方、奥さんから「今日はカレーライスにするので、6時までに作ってちょうだい。材料は冷蔵庫にはいってるから。」と言われてダンナが作る場合。上記のデータ処理のほとんどの部分はすでに済んでいて、最後の「肉体労働」の部分しか担っていない。そして、コトは夕食の献立にとどまらない。いや、夕食は毎日決まった時間にちゃんとあるからまだいい。子供は突然熱を出したり鉄棒から落ちたりするし、勉強のここが遅れているからおかあさんしっかり指導してくださいとか言われるし、学校の行事があればそのためにあれを提出しろ、これをやれ、といろいろ不定期な追加仕事が年がら年中発生する。でも1日は24時間しかなく、子供は決まった時間までに寝かせなければいけないから、すでに忙しい日々の時間内にどうやって追加事項を押し込むかは難題。そうした非定型判断の裏にも、上記と同じようなアルゴリズムが動いている。

ダンナが頑張って買い物に行ってくれるのはありがたい。しかし、買い物メモに書いた「ユーザーインターフェース」部分しか彼には見えておらず、データベースとアルゴリズムが欠落しているから、微妙に「このブランドじゃないのに・・」「もっと小さいじゃがいものほうが使いやすいのに・・」といったズレが生じて、主婦はかえって面倒になってしまう、という経験をお持ちの皆さんは多いだろう。

前に、「オムツ替える作業は自動車工場でボルト一つ締める仕事、主婦の家庭経営は自動車会社の社長の経営判断の仕事」と書いたことがある。別の見方をすると、上記のように「シンプルなユーザーインターフェースの部分」と「その背後にある巨大なアルゴリズム」とも見ることができる。自分で判断して動ける大人だけの家庭ならまだいいが、子供の責任を担う必要のある家庭では、ますますこのアルゴリズムは複雑になる。

それともう一つ。上記エントリーのコメントに、こういう話が引用されていた。

男心と女心 織田隼人著: 頑張った重要度

この方も、悪気はないのだろうが、無意識のうちに「炊事、洗濯、掃除」というのを、男の目からみて極めて重要度の低いものと点数をつけた上で話をしている。「重要度」というのは何を目的・基準として考えるか、ということが常についてまわる。例えば自動車会社の中で、コピーをとったり郵便物を整理する「メールルーム」という機能があったとすると、それは自動車を作って売るという目的からすると、比較的重要度が低いだろう。工場でボルトを回す仕事のほうが大事に見えるかもしれない。でも、そのメールルームの業務をアウトソースで請け負う会社があったとすると、その会社にとってはメールルームの業務がきちんとできなければ契約を切られて明日から社員は路頭に迷う。だから生きるか死ぬかの仕事なのだ。ここで、自動車会社の業務とメールルーム会社の業務の、どちらが重要か、どちらが高級か、などという話は、せいぜい水掛け論にしかならない。

ここでもグーグルをあてはめてみると、私の「コンサルタント」という仕事において、グーグルの検索はたくさんある仕事ツールの一つにしか過ぎないが、グーグルからすれば、その微妙な検索結果の違いが生きるか死ぬかなのだ。同じように、主婦にとっては、炊事洗濯掃除が、その家庭にとってそれなりに満足な基準でできていなければ、誰かの機嫌が悪くなったり、子供が朝着ていく服が足りなくなったり、ホコリで子供が鼻をつまらせたり、といったことが起きてくるので、それをこなすことは重要なのだ。

私は、「だから主婦の仕事は大変なのだ」ということをことさら言いたいのではない。メディアや役人が「少子化対策=保育園増設、補助金増額」みたいな話をするときに、しばしば「主婦の家事や育児は、価値の低い肉体労働である」という前提で話をしているように思えて、そうすると的外れな対策をたてて税金の無駄遣いをしてしまうかもしれないから、繰り返しこのことを書いているのだ。

<おまけ>

それでも、子供が大きくなってくると、だんだんと子供も自立して、「部下」としても使えるようになってくる。そこまでいかない「新人」のうちは大変だけれど、この匿名氏とその奥様も、あと数年すればまた様子が違ってくるだろう。だから、今は大変だろうけれど、頑張って乗り越えてほしいものだと思う。

wgaraiwgarai 2009/01/15 18:08 このエントリー、とても興味深く拝見しました。

現在共働きで一歳半の子供がおりますが、私が一般に言う”妻の役割(仕事と家事・育児)”を担当しています。最初は育児への興味で引き受けたのですが、この役割がこんなに大変なものだとは想像出来ませんでした。

データベース・アルゴリズムとユーザーインターフェイスの例えのように、家事・育児は単純労働ではなく、その予想不可部分の多さからすると仕事以上に大変です。

「炊事、洗濯、掃除」はきちんとやればやるほど、多くの時間を割かれますが、生活のクオリティを考えると妥協することが出来ません。

勿論、周囲の男性にこの手の話をしても全く通じません。以前の私がそうであったように。逆に外国人(米・中・台等)の男性は割りと理解出来る傾向にあります。

いずれにせよ、仕事と家庭を両立させている女性、特にワーキングマザーの方々は本当に大変だと思います。

ちなみに私は仕事ばかりしている典型的な日本人男性で、フェミニストではありません。(フリーで東アジア各国のネット・携帯ビジネスに携わっております。)

KK 2009/01/15 19:31 男の一人暮らしは珍しくないし、「炊事、洗濯、掃除」は皆経験ありだと思うのだが?
逆に、何時の時代の男の事だろうと思う。

DyunDyun 2009/01/15 20:15 会社の中でも、例えば「営業」対「開発」などで、似た様なことが起こりますよね。リンク先のご夫婦の場合「平日」と「土日」などで、仕方がないのかも知れないけれど、役割を分担し過ぎな様な気が。「一緒に」何かをする時間を少しずつでも作れれば。どっちがどれだけ大変とか、そもそも比べ様がないし、公平さとか意識しだすと、よけいにストレスが溜まるんじゃないかなぁ。

minekminek 2009/01/15 20:31 >Kさん
兼業主婦ですが、一人暮らしで自分の都合で自分のためだけにやる「炊事、洗濯、掃除」と、仕事を持ちながら家族の都合に合わせてやる家事業務にはかなり差があるように感じています。

shiroshiro 2009/01/16 01:32 既婚男ですが、minekさんに一票。一人暮らしの時の家事と、家族(特に子供)ができてからの家事は別物です。
前者が、自分だけが使うPCの管理だとすれば、後者は24時間365日常に稼働中のサーバの管理業務に匹敵します。いつ突発事態が発生するかもわからないし、こっちの都合ではなく相手の都合に合わせて作業する必要があります。

ujukiujuki 2009/01/16 06:21 私もminekさんに一票。
自分のためだけならいくらでも手抜きできるし時間制限もないし
最悪「今日はやらない」ができるし第一スーパークレーマーがいない(笑)。
ていうか、もしかして釣り?

KK 2009/01/16 08:36 家族の都合に合わせてなら、母が風邪で寝込んだ時など、母にオーダーを聞いてチビの弟妹を連れて買い物へ行きお菓子を買ってやり料理して・・・とやったものだが。
これとは別?

shiroshiro 2009/01/16 11:06 (1)「オーダーを聞いて」行動するのは楽なんです。全員の状況を把握して妥当なオーダーを考えるところからやるのが大変。というのはこのエントリの趣旨でもありますね。
(2)子育てで大変なのは24/7で休みが無いことである、と私は悟りました。時間がくれば開放されるベビーシッター、風邪が直ればお役御免になる母親代行、とはそこが大きく違うところです。すべてのトラブルの受け皿なんですね(だから「サーバ管理責任者」の感覚)。いつ直るかわからない病気の家族を抱えての家事なら近いものがあると思います。

KK 2009/01/16 17:24 オーダーを聞いてたのは幼い頃だけで、食べたいものを作りますになったけどね。
それこそ、手下ども(弟妹)も育って面倒見る必要なくなるし。

Marseille07Marseille07 2009/01/16 22:05 >しかし、買い物メモに書いた「ユーザーインターフェース」
>部分しか彼には見えておらず、データベースとアルゴリズム
>が欠落しているから、微妙に「このブランドじゃないのに
>・・」「もっと小さいじゃがいものほうが使いやすいの
>に・・」といったズレが生じて、主婦はかえって面倒に
>なってしまう、という経験をお持ちの皆さんは多いだろう。

正論だと思うのですが、では男性はどうすれば良いのでしょうか?という議論になると思いますね。男性は精一杯家事に参加して
いるつもりなのに、アルゴリズムの部分で引っかかって評価
してもらえない。そのやるせなさが一番の問題。下手したら、
変に家事に協力してギスギスするより完全分業の方がうまく
回るかもしれない。女性はそれでも良いんですか?という話に
もつながります。

だから、例えアルゴリズムの部分で不満があっても家事を
手伝おうという気遣いというか心意気の部分は買ってほしいと
私なら思います。

あかまたあかまた 2009/01/17 16:42 クレーマー云々に関しては家族なんかより顧客のほうがよっぽどスーパーです。
その程度のアルゴリズムは普段から会話していれば簡単に共有できます(というかそれを共有しないと一緒に住んでいる意味がない)。
大変大変と思いながら家事をし、手伝おうとする人に肉体労働の部分しか頼まないのではちっとも改善されません。

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