主婦が欲しいのは、「メイド」じゃなくて「執事」(または「秘書」)

いや違う、秋葉原の喫茶の話ではない。昨日、パナソニックのスマート家電戦略として、「洗剤や柔軟剤を入れる量が自動的にスマホでわかるスマート洗濯機」という記事にツイッターで「アホかいな」とツッコミを入れたら、けっこう私と同じように感じた人が多かったらしいので、勇気をもってこの話を蒸し返したい。

パナソニックのスマート家電をシリコンバレー在住者たちがコキおろしていた - Togetter

振り返ってみると、このブログでこ「家事の一番のペイン・ポイントは、肉体労働ではなくマネージメントである」という話を最初に書いたのはもう2007年と大昔の話。

父の日雑感 - マネージメントとしてのお父さん、お母さん - Tech Mom from Silicon Valley

だいたい、家事とか育児とかいう言葉が間違いの元。このタグのように「家庭経営」というべきなんだろう。主婦の最大のタスクは、家事でも育児でもなく、実は家庭経営であり、大変なのは毎日延々と続く小さな決断のストレスである。経営というのは、ヒト・モノ・カネのリソース配分を決めるということで、人事(作業の配分、後進=子供の育成など)総務(ロジスティクス、スケジューリング、医療・介護・義家族・近所付き合い・冠婚葬祭など)財務(予算配分、資産管理など)といったところが、料理洗濯掃除の肉体労働の部分よりも、実は重要だしストレスフルなのだ。

肉体労働は便利な道具のおかげで、かなり軽減されている。その作業の中でも、例えば上記のツイッターやりとりの中で、「洗濯機を回すなんて、楽なもの。本当に欲しい機能は、家の中に散らばる衣類の中で洗濯が必要なものを選んで集めて洗濯機に放り込み、洗濯・乾燥が終わったらたたんで靴下のペアを作りしまう、という機能」という発言があり、これも洗濯という作業の前後に発生する「マネージメント的なタスク」。食事も、作る作業そのものより、献立を考えるほうが大変。買い物は何を買うかよりも、どこで何が買えるからいつそこに行って、いやそんなヒマない、どうしよう・・というスケジューリングのほうが大変。育児ではオムツ替えなんて2-3年で終わるが、子供の学校選択やお稽古事や宿題対策や友達とのトラブル対策などの総合戦略のほうが大変。

つまり、主婦が欲しいのは、こっちが全部指示したとおりに肉体労働をする「メイド」ではなく、かなりの判断業務を伴い家庭経営の「総務部長」的な役割を担う「執事」(そこまでいかなくても、優秀な「秘書」)なのだ、と、少なくとも私は思っている。

また、スマートフォンクラウドビッグデータが担うべき仕事は、少なくともスマート家電については、メイドではなく執事または秘書の役割、と、ユーザーの一人として思っている。