はてなさん、長い間お世話になりました。引越します。

正確な時期は未定ですが、近々準備が整い次第、このブログを別のところに引っ越すことにいたしました。はてなさん、近藤さん、本当に長い間、お世話になりました。

黙って去るのも申し訳ないので、引越しに至る事情を書いておくことにします。ちょうど、少し余裕ができたので、今のうちに。私特有の事情でもあると思うので、他の方の参考になるかどうかはわかりませんが。

はてなでブログを始めたのは2005年2月1日でした。どのプラットフォームを使うかあまり深く考えず、友人に勧められてなんとなくはてなで書き始めました。まだブログというものが目新しい頃。

AT&Tの落日 - Tech Mom from Silicon Valley

雑誌に記事などはすでに書いていましたが、締め切りも文字数制限もなく、好きなことを好きなように書けるのが魅力でした。だんだんブクマがつくようになって、読者も増えてきて、反応をすぐもらえるのも楽しかったですね。勢いで、ブログで書いたネタをもとにした本まで出していただきました。初めて会う方に「ブログ読んでますよ」と言われるようになり、その流れで、今までなら会えなかったような方に割に簡単に会えるようになりました。

しかし、読者の数がある閾値を超えると、罵倒コメントを書く人が急に増えます。気にしないようにしても、やはり気になります。少なくとも、事実の間違いとか理論の破綻とかがないように、書く前に気を使うようになり、書くときにはものすごく気合が必要なようになってしまいました。好きなことを好きなように書ける魅力が減ってしまったのですね・・・一方で、最近は原稿料をもらって書く記事が増え、私の限られた「執筆キャパシティ」を超えるようになってしまいました。カネもらわなきゃ書かないよ、というワケではなく、お金もらう記事は制約が多いので、ブログはそれとは違うのですが、自分の中でモノを書くことに割けるエネルギーが限られているので、どうしてもコミットメントの大きい有料記事が優先となってしまい、最近はブログ執筆のペースが大幅に落ちています。それでも残っている記事というのは、どちらかというと「仕事向け」のオフィシャル的なものか、かなり気合を入れて主張したいことを書くかどちらかになり、雑感的なものは、ツイッターフェースブックで済ませるようになっています。

一方、「はてなダイアリー」は、はてなの中では見捨てられた存在になっていることがヒシヒシと感じられるようになってきました。儲からないですからね。でも有料会員なんですけどね、私。ふと気がつくと、入力画面のインターフェースは開始当初とほとんど変わらず、なんか古臭い感じになってるし、ツイッターへの吐き出しはやっていただけていますが、FBには吐き出せないし、カテゴリーは相変わらず自力ではてな記法で書かないといけないし、関連エントリーの自動引用もないし、写真の挿入も面倒だし見栄えもいまいちだし。サイドバー部分のカスタマイズが難しく、自分で見よう見まねでやったら、箱の幅がバラバラになって醜いままほったらかしだし、AMNの広告を貼り付けてある関係もあって、あまりデザインもいじれないし、サイトの見栄えも何年たっても変えられない。あれもできない、これもできない・・・いや、最初からそうなんですよ、だから別に、はてなダイアリーが何か悪いことしたワケでは全くなくて、ただ「何もしなかった、進歩しなかった」ことが私にとっては問題に感じられたのです。

やがて、「はてなブログ」というのが始まり、どうやらダイアリーはますます見捨てられそうな雰囲気がしてきました。それでも、引越しはなかなか大仕事です。URLが変わることで、常連読者さんにご迷惑かけたくないし、AMNの広告も引っ越さなければいけないし、新しくフォーマットを準備しなければいけないし・・・

すでに、状況は変わっていました。ブログへのアクセスは、以前ははてブから来ることが多かったのに対し、今はツイッターから最初にはいってきて、その後はてブが伸びるという順序になってきました。つまり、ツイッターにさえ吐き出せれば、URLを変えても、読者へのご迷惑はあまりかからないのでは、と思われるようになってきました。

もともと、試しに始めた英語ブログが、種々の事情で、それまで使っていたTypepadをキャンセルすることにして引越し先が必要だったこと、2004年に作った仕事用ウェブサイトがいかにも古臭い感じになってきたので更新しなければいけなかったこと、などがあって、いっそ仕事用のウェブサイトをブログベースにし、既存ブログを全部統合してしまおう、と思い立ちました。それで今年の春、読者が少なくしがらみのない英語ブログからまず始めて、ENOTECHの新しいサイトをWordPressベースで立ち上げました。WordPressオープンソースなので、たくさんツールがあっていろんなことができますが、ホスティングも必要だし手間はかかりますので、有料で友人に手伝ってもらって作成しました。最近、アメリカの企業サイトはWPベースのモノが多く、「企業サイト」としての体裁を整えるのに、とりあえずWPで作っておけばそれらしく見えるだろう、と思った次第です。つまり、お金の問題ではありませんでした。これで、FBの吐き出し先ページも細かく指定できるし、本体は変化のないパンフレット・サイトだけど、ブログ記事のヘッドラインと写真をスライドで入れれば少し変化がついて格好がつくし、次に古臭く見えてきたらWP対応の新しいThemeに着替えるだけでいいし、とりあえずはめでたしめでたし。

で、日本語ブログも、どうせ苦労して引っ越すなら、はてなブログよりも会社のウェブサイトに引っ越したほうが、管理が一ヶ所で済むし、また新しいログインやインターフェースに慣れる必要もない、ということで、今年の初め頃からの既定路線で、ようやく日本語ブログのほうも、引っ越す準備が整った、という次第です。正直、私の会社ブログに人を集めて何か商売になるというワケでもないので、日本語ブログをここに入れてアクセスを誘導しようという意味もあまりなく、単に「管理を一元化したい」というだけです。上記のようなワケで、一応アメリカの企業サイトとして体裁を整える必要から、引越し先としてはてなブログだけでなく、日本のブログ・サービスは全く検討しませんでした。

そうこうするうちに、来年年初から、はてなブログがベータから本サービスに移行し、はてなダイアリーはその傘下にはいる、というニュースを読みました。(そういえば、近藤さんのツイッターではこれを読んだけれど、はてなからは特にユーザーあてのメールなどのお知らせは来ていないな・・)おそらく、ダイアリーのほうは徐々にフェードアウトするのでしょう。なので、多分、ずっとダイアリーに居座っているよりも、出て行ったほうがむしろご迷惑が少ないかも、と思って、少々気持は楽です。(なお、ブックマークは引き続き利用するつもりです。)

ちなみに、有料ユーザーになっているのではてなポイントが余ってしまうので、どうするか調べたら、アマゾンのギフトカードにできるとわかりました。ミニマムが2000ポイントだというので、少し足して2000にしてギフトカードにしようと思いました。しかし、ポイント購入のミニマム単位が1000ポイント、ギリギリ1000でいけるかな、と思って購入したら、実はギフトカード購入のための手数料が「上乗せ」されるので、51ポイント足りないと言われちゃいました。説明には手数料が200ポイントかかるよ、ということだったので「差し引かれる」のかと思ったのでしたが・・ちょっと考えればわかるのですが、頭悪かったです。さらに1000ポイント買ったらまたたくさん余ってしまうし、取り消しはできないし、もういいわい!頭にきて、ポイントは友人に譲渡することにしました。

それにしても、私の古巣である通信キャリアでも、例えば新しいネットワークや周波数に移行するときや、ユーザーが新しい端末に買い換えるときというのは、ユーザーが流出しやすいもので、ここをどうマネージするかがポイントの一つなのですが、ライブでユーザーがついている定額会員制サービスは、放置してもいけないし、引っこ抜いたりいじくったりするのも大変で、長期にわたってユーザーを維持するのは本当に大変ですね。改めて思います。

ブログのマネタイズは一般に難しいようなのですが、日本ではいったん始まったブログサービスはみなさんなかなかやめないので、過当競争が続き、いつまでたっても儲からず、従って先行投資ができない、既存ユーザーへのサービスを向上させることにカネをかけられない、というジレンマに陥っているように見えます。アメリカでは、最初の頃にとある無料サービスを試したところ、数ヶ月でさっさと商売たたんでしまったので、そういう手間や面倒がイヤだったので私は大手Typepadの有料サービスにした、という経緯があり、現在はアメリカではブログサービスはかなり数が減っているように思います。そうでなきゃWPのようにオープンソース。日本でも、儲からないならやめたり買収したりすればいいのに、とどこかでつぶやいたら、「プラットフォーム統合するのが大変なのがオマエはわからんのか」という罵倒コメントがまた山のように来ました。わかってますよ、楽じゃありませんよ。上記のようにユーザーも流出するし、買ったほうはしばらく流血をじっとガマンですよ。でも体力があるうちに誰かがどこかでそれをやらないと、今の日本の家電メーカーや、欧州の携帯キャリアと同じで、「先行投資ができない」「ジリ貧」の罠にはまります。これは、技術屋の話ではなく、経営の話です。一方、ユーザーとしては、私だったら、いずれフェードアウトするサービスに放置されるより、もっと安定したプロバイダーにサービスを売却して、その移行になんらかのサポートをしてもらうほうがいい、と思ってしまいます。

・・なにしろ、いろいろ不満もありましたが、開始から8年弱、はてなさんのおかげで、いろいろな人に出会えたし、執筆の仕事もいただいたし、世界が広がりました。それは本当に、本当に感謝しています。最後に苦言を呈するかっこうになってしまい、ホントに申し訳ないと思うのですが、おそらくはマイノリティである一ユーザーの声として、敢えてお伝えいたします。はてなさんには、進化していくサービスとして、今後とも頑張っていただきたいと思っています。

<12/26 追記>

はてなさんから、わざわざご連絡をいただきました。はてなダイアリーからブログへは、非常に簡単に引っ越せるようになっているとのご説明でしたので、ご興味のある方は調べてみてください。私は上記のような事情から、どうせ引っ越すなら、引越し先は会社ブログと心は決まっていたので、「ブログ試してみてください」とのご案内メールをいただいたのですが、全く試すこともしませんでした。(どんなに簡単でも、引っ越すというだけでめんどくさいというズボラ人間なもので・・すみません。)

なお、「罵倒コメント」については、別にはてなさんのせいではなく、どのプラットフォームに書いても、英語ブログでも、全く同じですので、その点はどうかお気になさいませんよう。

あわせて読もう!オバマの「ソーシャル+ビッグデータ選挙戦」

日本でも選挙直前ということで、米国大統領選におけるソーシャル・ビッグデータ・ネット・ITに関して二つのレポートを書いた。少し前に、ZDNetの記事にも事例として活用したもので、それぞれ前半部分は共通化してあり、そのプラットフォームにそれぞれ別々の点にフォーカスして考察し、コラムを展開した「API型3部作」(^^ゞである。実はもう一つあるが、これは少々後に出る。

米国大統領選に見るソーシャルとビッグデータの役割(KDDI R&A)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121212/240898/
【海部美知 for Cloudian】AWSを使ったオバマのケチケチ「マネーボール」作戦を企業も活用へ - トピックス - ZDNet Japan

私は2008年の前回大統領選の後にも、この件についてのかなり詳細なレポートをクライアントのために書いている(非公開)。このときに集めた情報や考察したベースがあり、この時点から進歩している点を積み上げて今回のレポートとなっている。多くの点に思いを馳せるお題で、一つだけでは収まり切らないため、3部作となった。

ちょっと今急いでいるので、続きはのちほど。まずは、あわせてお読みください。

現代ビジネスとZDNet記事のお知らせ

現代ビジネスにて、「ビッグデータ文明論」の連載が始まりました。「新書カフェ」というメルマガの枠内です。一ヶ月に2回、数ヶ月程度の予定です。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34267

志としては、「フツーの人のためのビッグデータの話」です。特にネットやクラウドやシステムの背景知識のない方が、「ビッグデータ」というコンセプトや、シリコンバレーにおける「哲学」と「技術趨勢」を理解していただけるように、ということです。例えば、技術動向に明るい現場の方が「わが社のデータ戦略はこうしたい、でも上の人がなかなかコンセプトを理解してくれない」といった場合に、「まずはこれを読んでください」と渡せるような感じの線を狙っています。

ビッグデータも、あちこちで本が出てすっかりお馴染みの用語となりましたが、どちらかというとシステム屋さんたちの範疇の技術的な話か、またはビッグデータを使ってどうやって儲けるかの話が中心であるような気がします。それはそれでいいのですが、それ「だけ」じゃ寂しいね、ということで、ビッグデータというものが世の中にどういうインパクトを与えるのか、何に使えるのか、ネットやITに関わる人間として、これを新しいツールとして使って何をなすべきか、といった大きな話まで持って行きたいと思っています。

また、連載中のZDNetビッグデータクラウドストレージ」のシリーズでは、オバマの選挙に関する話を書きました。

【海部美知 for Cloudian】AWSを使ったオバマのケチケチ「マネーボール」作戦を企業も活用へ - トピックス - ZDNet Japan
http://www.gemini-bigdata.com/2012/12/aws.html

こちらは、まさに具体的な技術動向の話ですが、オバマの選挙戦略は前回にも「ソーシャル」がらみで少々勉強したので(記事には簡単にしか書いていませんが)、その続きとして取り上げました。別の角度からのもう一つの記事も今週出る予定です。

メルマガ2・3号のおしらせ

先週は多忙にて、メルマガ発行のお知らせをしませんでしたが、先週月曜日に第二号を出しました。そして、本日第三号が出ましたのでお知らせします。

2012/11/26 第二号 ◆「ガンナム・スタイル」のPSYの考察 ◆【連載】育てにくい子供たち(その2)〜 予習の効果
2012/12/3 第三号 ◆お台場ゴーストタウン ◆【連載】育てにくい子供たち(その3)〜 「聴覚過敏」の話

お申込みはこちらから→
海部美知のTech Mom from Silicon Valley 生活編

自閉症のもっと詳しい話を読みたい方は、久保由美さんのメルマガをどうぞ→
久保由美のシリコンバレーで自閉症児を育てる

連載第五回、OpenStackについてのゆるめレポート

ZDnet Japanおよびクラウディアンのブログに掲載されましたのでお知らせします。

【海部美知 for Cloudian】クラウドにおけるオープンソース勢力がアマゾンに対抗 〜 シリコンバレー「Cloud&BigData Expo」会議報告 - トピックス - ZDNet Japan
http://www.gemini-bigdata.com/2012/11/cloud-expo.html

来日ライブ:「M2Mセミナー」で講演します

もうあと2週間に迫りましたが、11月30日(金)午後、東京にて、リックテレコム主催「M2M技術セミナー」で講演いたします。私の他には、KDDI、シンテリオン、テレノールなどの方がお話されます。

ワイヤレス技術セミナー

M2Mは2年ほど前にレポートをKDDI R&A誌に寄稿しましたが、その頃と比べて、最近はやや風向きが変わってきており、「不連続点」を迎えている気がしています。このあたりの変遷を中心にお話する予定です。

詳細情報とお申込みは、上記リンクからどうぞ。