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Tech Mom from Silicon Valley このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-09-20 米国電力自由化とスマートグリッドについて

[][] 米国電力自由化とスマートグリッドについて 22:49

KDDI総研 R&Aに寄稿した「米国スマートグリッドの現状」が本日一般公開されました。@May_Roma さんのイギリス編に続いて米国編を、と頼まれたのですが、スマートグリッド事情を理解するためには、まず米国の電力業界のおおまかな構造と、90年代の「電力自由化」の失敗についても頭に入れておく必要があるので、前半はその話を書いています。

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この前段として、昨年5月に日経ビジネスオンラインにも、米国電力と再生可能エネルギーについて書いていますので、ご興味のある方はこちらもあわせてお読みください。

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さて。

電力と通信における「自由化」の時代背景およびミクロ経済学的な動きについては、両者で共通する部分が多いように感じており、その件および通信屋から見た「スマートグリッド」の今後の可能性、というのがテーマなのだが、今回いろいろ勉強してみて、日本で話題の「脱原発」についてもいろいろ考えるところがあったので、ちょっと書いてみたい。

私はご承知のとおり、電力の専門家ではないので、電力業界や原発についてはなんら見識を持っていない。専門外のモノの見識を得るために勉強して意見を発表するのは大変な手間がかかるので、これまでやってこなかった。ただ、一個人としての漠然とした意見というのはある程度あり、それはこの1年半ぐらいでちょっと変わってきたと思う。

昨年5月に上記の記事を書いた時点では、「原発やめるなんて、そりゃー無理でしょ」というのが正直なところだった。もちろん、原発事故の後遺症について皆心配しているのはわかるし、原発が本質的に「善きもの」であるとは思っていない。しかし、原発を全部止めたら電力が足りなくなる、上記記事のように再生可能エネルギーはぜんぜん現実的じゃない、コストの高い他のエネルギーを使わざるをえない、電気料金が高くなる、貿易赤字になる、日本企業がますます海外脱出する、失業が増える、国際競争力がますます低下する・・といった、マクロ経済への影響が大きいだろう、と思った。それに、現在の発電事情はそれなりの背景があって今の状態になっているのだから、それを変えようとしたら、現状固まっている部分をいろいろと強権発動して動かさなければならず、そんなことは今の弱い政府では無理だし、それを力で動かすということは、現状維持が大好きな日本国民にはできるわけない・・・と思ったのだ。

でも、その後フェースブックで私の友人たち(お母さんが多い)の議論を聞いたり、首相官邸デモの話を読んだりすると、もしかして、一番最後の「日本国民に・・」の部分はちょっと考えなおすべきかも。

そして、今回のお勉強で強く印象に残ったのが、「発電における絶望的なほどのイノベーションのなさ」だ。別に批判しているのではなくて、とにかく「あー、そうなんだ、この業界においてはこれが現実なんだ」と納得した感じ。イノベーションには、「発電効率の上昇」と「発電素材の多様化」という二つの方向があるが、どちらもあまり進んでいない。いや、それでも、多少は進んでいて、2001年から2008年までで、再生可能エネルギーのシェアはアメリカでは2倍になっているけど。でも、2%→4%ね。それも、ずぶずぶの補助金漬けでやっと。

米国においては「基礎電力」を供給するのが石炭と原子力で、止められない代わりにコストは比較的安い。天然ガスはコストが高いが、つけたり消したりしやすいので、ピーク時のスポット電力に使う。*1石炭もやしてボイラーでお湯わかしてタービン回すなんて、「きかんしゃトーマス」と同じ原理。サー・トップハムハットの時代から続いている技術で、発電効率は60年代にほぼ成長が止まったとのことだ。

天然ガスは主要エネルギーで唯一、80〜90年代に技術革新があってコストがやや下がり、これが90年台の「自由化」につながったが、下がってもまだ石炭・原子力にはかなわない。この点が、「自由化」したら電力料金が上がり、かえって電力が不足しちゃった、というトホホな状態(特にカリフォルニア州が一番トホホだったのでもろに実感)につながったワケだが、詳しくはレポートを参照してほしい。*2

そして、原子力は石炭と比べて新しい技術であるにもかかわらず、70年代に新規建設が止まり、その後発電効率も上がらず、供給も増えず、廃棄物の処理などに関しても、大きなイノベーションが起こっていない。原子力だけでなく石炭など他の技術も同じだが、現状をベースに次の世代の技術が出てくる、とかいうこともない。「原発2.0」とか「3G原発」とか、聞いたことないし。イノベーションがない原因が、石炭のようにすでに技術的に枯れてしまってどうしようもないのか、それとも人気がなくて研究者が集まらないからそうなのか、私にはわからない。

そうやって作った電力を素材として供給していただくおかげで、わが通信やネットの世界は成立している、というのも皮肉なものだ。こちとらは2.0だの3Gだのと、次々と新しい技術が出てますます効率化が進む、というサイクルがあってこれが当たり前のように思っていたのだが、発電の世界では、本当に、画期的に効率が上がってみんながハッピーになるようなイノベーションがない。(ということで、イノベーションによる大幅な効率上昇・コスト低下・供給増加がない環境では、自由化・競争導入は効果がない、あるいは逆に悪影響がある、というのが私の意見。)

さらに。国によって多少感じが違うにしても、ほとんどの国で原発を「諸手を上げて歓迎」ではなく、「必要悪」的な扱われ方で、もう30〜40年やってきている。技術者が集まらないという話も同じ流れだ。これだけ長期にわたってみんなの意見がそうだということは、どうも原発という技術は、誰も面倒を見てくれない「オーファン・テクノロジー」というか、次の技術を生まないという意味で「ユーナック・テクノロジー」というか、そういうものに見えてきた。

だから、長期的に見ると、やはり原発はなくす方向になるのが自然なのだろう、と思えてきた。ただ、「いつ」「どうやって」というところが問題。日経ビジネスに書いたように、「短期的には節電、中期的には蓄電、長期的には発電」という段階になるのかなぁ、というのが私の漠然とした印象で、アメリカのスマートメーターを使ったスマートグリッドの「第一歩」は、この「短期的には節電」の部分をまずやろうとしている。そこまでなら私も多少は感じがわかるが、中長期の基礎技術に関してはまるでわからない。たとえば太陽光発電って、本当に今後、画期的に効率が上がることがあるのかな?原発ぐらいのボリュームを供給できる代替エネルギーが本当にあるのかな?補助金なしでも成立するのかな?どうして家庭のプラグイン・ハイブリッド車に蓄電をさせようとしてるのか、なんで産業用のでかい蓄電装置、たとえば電話局やデータセンターにある、あれじゃダメなのかな?など、わからないことだらけだ。

・・というわけで、結局オチがなくて、これ以上勉強してる暇がなく、ここまでですいませんごめんなさい。

蛇足。この記事の資料として読んだ米国議会報告書の中で「スマート家電」が言及されているが、これは「スマートメーター」と呼応して動かせる家電のことで、某社の「スマホ(トホホ)洗濯機」のことではない。

もうひとつ蛇足。レポート執筆のために使った資料は、すべてレポートの脚注にリンクを入れてあるのでそちらを参照のこと。

*1:石油は、70年代の石油危機以来、安全保障目的で発電に石油を使わないように政策的に誘導して、現在ではほとんどなし。

*2:カンケイないが、昨日も我が家は数時間ブラックアウトしたらしい。私はいなかったからよく知らないが。

2011-05-09 日経ビジネスオンライン「送電・節電編」掲載されました

[][] 日経ビジネスオンライン「送電・節電編」掲載されました 09:13

昨日予告どおり、日経ビジネスオンラインのアメリカ電力問題についての記事、「電力不足解消のカギを握る『スマート』と『超電導スーパーステーション』」が掲載されました。前回に引き続き、Cando Advisorsの安藤千春さんと阪口幸雄さんにお話をうかがったものです。

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2011-04-12 日経ビジネスオンライン「代替エネルギー」掲載されました

[][] 日経ビジネスオンライン「代替エネルギー」掲載されました 12:20

電力問題が話題を集めているので、当地クリーンテック・コンサルタントである安藤千春さんと阪口幸雄さんにインタビューして記事を書いてみました。

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