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Tech Mom from Silicon Valley このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-07-01 日経ビジネスオンラインとKDDI R&Aに記事掲載

[][] 日経ビジネスオンラインとKDDI R&Aに記事掲載 14:16

もう7月ですね。日経ビジネスオンラインに「ほぼ月例コラム」が掲載されました。

no title

それと、KDDI R&Aに寄稿したレポートもちょうど掲載されましたので、こちらもどうぞ。

「米国のパーソナル・コミュニケーションの今」

キャピタリストキャピタリスト 2012/07/01 18:51 NBオンラインのコラムを読ませて頂きました。ご指摘ごもっともで、全くそのとおりだと感じます。
一つだけ付け加えさせていただきたかったのですが、日本のベンチャーが「ゾンビ」のような状態になってしまう理由の一つは、起業家個人による個人保証もあるのではないかと考えています。成長資金を間接金融に頼ることの負の側面あるように思います。直接投資を増やさないと、やめるにやめられないゾンビが増える、ということではないでしょうか。

2012-05-02 大阪維新の会 トンデモ条例案の黒幕

[][] 大阪維新の会 トンデモ条例案の黒幕 23:29

今朝から、わがツイッターのタイムラインがこの条例案なるものへのすごい批判の嵐でいっぱいになっている。大阪維新の会自体についてはあまり知見がなく、政治的な評価などの意見は私は全くもっていないが、この条例案祭りが、ツイッター以外の場所にあまり出ていないようなので、少々ツイッターを深読みしてみた。

条例案は下記参照。あまり長くないので、ご興味のある方はまずは見てほしい。「これって虚構新聞でしょ」というツイートが的を射ている。本気でこんなことを公の場で言う人がいるのかと驚いた。ツッコミどころが多すぎる。

大阪市・家庭教育支援条例 (案) ――― 全条文 (前文、1〜23条)

特に私の周囲で批判が多いのが、第4章第15条。

乳幼児期の愛着形成の不足が軽度発達障害またはそれに似た症状を誘発する大きな要因であると指摘され、また、それが虐待、非行、不登校、引きこもり等に深く関与していることに鑑み、その予防・防止をはかる

いまどき、こんな話を信じる人がいるのだろうか?確かに、極端な虐待などの環境で育った子供は発達障害のような行動をするかもしれないし、また「普通の子とのボーダー」のような軽度発達障害の子へのケアが現在の日本では抜け落ちていて、親が過剰ストレスから育児放棄のような状態になったり、きちんとしたケアがされなかったために二次障害として引きこもりなどになったり、といったケースはたぶん多くあるのだろうと思う。それにしても、この言い方は「親の育て方が悪いから発達障害になる」と言わんばかりで、「予防」ができるとはこれいかに??

さらに18条がこれだ。

わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できるものであり、こうした子育ての知恵を学習する機会を親およびこれから親になる人に提供する

「ゲイは後天的で治せる」というアメリカの超保守共和党かよ、というツイートがこれまた当たっている。

それにしても、あまりに無茶苦茶なので、逆に一体どういう人が何の意図でこんないかにも批判を浴びそうなものを持ちだしてきたのか、もしかして「炎上マーケティング」の一種なのでは?などと疑ってしまう。

この条例の背景などに関する報道はあまり見当たらないのだが、このトゥギャッターを読んでいくうちに、少々気になる手がかりが見つかった。

大阪維新の会: “家庭教育支援条例案”が、驚愕以前にツッコミどころ満載…な件 - Togetter

私はたまたま、発達障害には個人的にも関わりが深く、まずこれに反応したのだが、これだけでなく条例全体で使われている用語やトーンが、トゥギャッターの中で指摘されている「高橋史朗」なる人のトーンに確かに共通する。「発達障害は予防、改善できる」とか、「伝統的子育て」とか、まさにぴったり。

高橋史朗 - Wikipedia

no title

さらに、第5章第21条のこの用語。

親としての学び、親になるための学びを支援、指導する「親学アドバイザー」など、民間有資格者等の育成を支援する

この「親学アドバイザー」というのは、この高橋史朗氏のやっている「親学推進協会」というところで出している資格だそうで、講義料や資格取得にお金を払うという商売。

親学アドバイザー認定講座:親学推進協会?親が変われば、子どもも変わる?

さらに、「大阪市」の話のはずなのに、序文には下記のように「本県」とあるため、どこかのコピペだろうというのがツイッター論壇のもっぱらの推測だが、確かに高橋史朗氏は前埼玉県教育委員会委員長であり、埼玉県と関わりが深いようだ。

 このような時代背景にあって、本県の未来を託す子供たちの健やかな成長のために、私たち親自身の成長を期して、本条例を定めるものである。

そして、これもトゥギャッター情報からすると、高橋史朗氏が大阪維新の会で講演をやったこともあるらしい。

以上、少し調べただけなのでもちろんこれが真実とは言い切れないが、ツイッター論壇から見たトンデモ条例案の黒幕推理である。それにしても、だからといって何がどうなって、こんな見るからに炎上ネタが、これだけ今微妙な立ち位置にある維新の会の発言に登場したのか、私には全く理解できない。どなたか、解説してほしい。

一応付け加えておくと、日本でも発達障害の支援体制はだいぶ整ってきているが、「医療」「療育」の範囲に届かない、軽度・ボーダーラインのケースについてはまだまだ手薄で、教育現場も親も、個人が背負いこんで頑張るしかない状況であると聞いている。上記に書いたように、それが原因で親や教師が燃え尽きたり、本人がいじめにあったり自信をなくして引きこもったり荒れたりすることもある。アメリカの中でも対策が手厚い学区で、しっかりサポートしてもらっている私ですら、しばしば燃え尽きそうになるので、支援も周囲の理解も得られない親御さんがどれほど大変な思いをしているか、想像を絶する。だから、「軽度」に対する支援体制の強化、という言葉ヅラだけとればどんどんやってもらいたいと思う。ただ、この条例の中身では困る。

もう一つ、ご参考に、この条例案に対する反論ブログを掲げておく。

大阪市「育て方が悪いから発達障害になる」条例案について - 泣きやむまで 泣くといい

<追記1>

コメント欄にいただいたように、安倍元総理などもからんでいるとのことです。

no title

<追記2>

橋下徹氏は、自身で弁明ツイートを出しています。

「いま」を見つけよう

no title

<追記3>

「親学」推進派に関する追加情報を盛り込んだブログです。これで、私にはこの件の構造が理解できました。「利益誘導」も絡むかもしれないけれど、結局アメリカの「ティーパーティー」さんたちと同じような思考回路の有力者+有権者がかなり存在する、ということらしいです。このブログのコメント欄にもその片鱗が見られますね・・

「俺の邪悪なメモ」跡地

あと、こちらもご参照。

大阪維新の会のエセ科学的「家庭教育支援条例(案)」逐条批判 (1/3)

<追記4>

参照ループになってしまいますが、やまもといちろうどののエントリーもご参考に。

大阪維新の会の新条例が面白すぎて笑える: やまもといちろうBLOG(ブログ)

<追記5>

もうさすがにこの記事を読みに来る人はあまりいないと思いますが、自分のメモとしてさらに関連リンクを追加しておきます。「大批判を浴びている発達障害の部分を削除するという『譲歩』をすると、なんとなく受け入れられてしまう、それをあらかじめ狙って壮大なトンデモ案をわざと最初に持ってきた、という戦術では」という指摘は面白いです。

カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクル : 大阪維新の会「家庭教育支援条例(案)」に反対します

はてなダイアリー

Artane.Artane. 2012/05/02 23:56 はじめまして。
21条みるとそのものズバリ親学の推奨していますよ。(これが、仕掛け人を高橋と安倍元総理と推測した決定打でした)
ご存知でしたらすいません。

Artane.Artane. 2012/05/02 23:58 既出でしたね、すいませんm(_ _)m
消しちゃって下さいませm(_ _)m

michikaifumichikaifu 2012/05/03 00:18 え、安倍元総理もからんでるんですか、コレ。それは面白・・・いえいえ、なんの、コメントありがとうございます。

あ 2012/05/03 00:35 条例を読んだが何か大きな問題は無いと解釈しております。大まかな方針として捉えると自然な発想でしょう。なぜ貴殿がそんなにヒステリックになるのか逆に理解できません。現状維持よりよっぽど建設的な条例案でしょう。

にょにょ 2012/05/03 01:48 先天性であることをもっと強調すべきというお話ですかね。

ばかおやばかおや 2012/05/03 04:10 余りにも異常な親が多い現状を、少しでも良くしようと言う事でしょう。
貴殿はひょっとして「バブル期青春世代」でしょうか?

KK 2012/05/03 04:51 発達障害への誤解から色々問題を生じているので、それを予防・防止しようとも読める。
トンデモではなく、トンデモを解消しようという話かもしれない。
よく確認してから批判すべきではないか。

SS 2012/05/03 05:42 この条例は親の子育てが悪いから発達障害の子供が生まれるという「トンデモ」です。
発達障害に理解がない、発達障害の子どもを持つ親の気持ちに理解がない人にはまともに聞こえてしまうのか?
こんな条例が通ったら大阪市の発達障害をもつ子どもたちと家族は住みにくいでしょうね。
発達障害の理解が普及することを願います。

mionhimionhi 2012/05/03 06:32 発達障害に興味の無い人にはちょっとアナクロな子育てにしか見えないのかもしれませんね。知ってると怒りを通り越して悲しくなります。

びびるびびる 2012/05/03 08:18 医学という科学があるのに。あきれますな♪

軽い発達障害者軽い発達障害者 2012/05/03 11:03 これの条例を前向きに評価されている方々。発達障害を先天的な肉体の障害(例えば四肢欠損)と読み替えれば、この条例のとんでもなさが分かるんじゃないでしょうか。親の愛情が足りないから、手がない子が生まれるのでしょうか? 伝統的な教育で、手を生やしてあげることはできるのでしょうか?

TakahashiMasakiTakahashiMasaki 2012/05/03 17:54 コメ欄のいちぶに維新の工作員みたいなのがいるな

rararara 2012/05/04 06:08 大事なことなので私にも言わせてください。

発達障害は、先天性の障害です。生まれつきのものです。

ちょめちょめ 2012/05/04 07:23 はじめまして。

無知はほとんど犯罪でありましょう。
怒りで何も手がつきません。

さて、高橋史朗氏ですが、今年2月に大阪維新の会主催
「教育基本条例早期制定を求める緊急集会」で講演しています。
http://mid.parfe.jp/gyouji/H24/2-25-takahasisirou/top.htm
写真ばっちりなので、ぜひご覧ください。

TimtamTimtam 2012/05/05 20:41 "研究を続けているうちに、実は、「発達障害の予防法」と「子どもが健やかに成長するための育児法」は、同じであることがわかりました。本書で紹介している育児を実践していただければ、子どもの心と体は健常に発達し、これが発達障害の「予防」にもつながるのです。"

と書いてある下記の本

「発達障害を予防する子供の育て方」推薦の言葉 bit.ly/ILdrNR
一般財団法人親学推進協会理事長・明星大学教授 高橋史朗
開善塾教育相談研究所所長 金澤純三
NPO法人教育研究所所長 牟田武生

産経新聞に開善塾教育相談研究所(埼玉県狭山市に所在)の藤崎育子氏(松下政経塾卒業生)が高橋史朗氏と同じ快刀乱麻というコーナーにコラムを書いています。

ルネッサンス・ユニバーシティが主催する自己啓発セミナーの代表 小田全宏氏
http://www.odazenko.jp/index.html

ルネッサンス・ユニバーシティの講師名に高橋史朗氏も金澤純三氏もいます。
http://www.odazenko.jp/renaissance/kousi_list.html

高橋史朗氏が理事長を務める 師範塾 の副理事長に小田全宏氏
http://www.shihanjuku.com/profile.html

小田全宏氏は日本政策フロンティアというNPO法人の代表でもあり、東京大学→松下政経塾出身のコネクションを生かして財界や政界に人脈を持っているようです。
http://www.jpf.gr.jp/

発達障害は親の育て方に問題があるので原因であり、そのせいで学級崩壊が起きている。故に発達障害について理解するために親や教師がセミナーを受けて対応すれば問題解決、という流れで維新の会の誰かがコロリとやられたんじゃないかと推測しています。

ちさちさ 2012/05/06 00:20 あー、またこれで親子とも奇異な目でみられるのか…と。
愛情込めて育ててるのに、時代錯誤だ。
不登校や引きこもりも、いじめからのトラウマがきっかけの人も居るのに、何でも都合の良いように一括り。
そんなこと決め付けられ世間から冷たい目で見られたら、逆に最悪な事態を誘発しねない。
どうせ他人事の人には理解し難いんでしょうね。

meimei 2012/05/07 08:16 発達障害の子供を持つ親です。悲し過ぎる…維持の会の方はどれだけの現実を見たのか?親の気持ちを聞きましたか?

ジャスティスジャスティス 2012/05/21 12:24 発達障害って先天的なものなんですか?以前から疑問に思っていたのですけど、例えば海部さんもベビーシッター推奨の記事を書いていましたよね?英語も日本語もまともに喋る事の出来ない移民に子育を外注して、まともに育つと考える発想が信じられないのです。

2012-04-09 現代の「タブー」

[] 現代の「タブー」 10:53

何を隠そう、大河ドラマの「平清盛」にはまっている。昔から時代劇が好きで、ここ数年大河はだいたい毎年見始め、途中リタイアする年も多いが、最近では「篤姫」や「龍馬伝」などは最後まで見通したし、「新選組!」はあとになってDVDで見た。(そういえば幕末モノばかりだな・・)当地ではTV Japanというケーブル局でやっていて、英語字幕つきバージョンを2ヶ月遅れぐらいでやっているので、「あー、この話ってあれの伏線だったのね」などを見つけられたりするのもまたヘンな楽しみ方。

これ、超低視聴率らしい。確かに、面白いとは思いながら、どこかに違和感というか、居心地の悪さをずっと感じていた。普通、大河ではなにかしら「メッセージ」が繰り返し語られることが多く、これがうまくはまらないとひたすらウザくなってしまうのだが、「清盛」では「メッセージ」が私には明確にわからないまま、ここまで来てしまった感じだったし、とにかくなにか「ザラザラ」した感じがある。私自身はヘンな映画とか、こういう「ザラザラ」を感じるものがかえって好きなのだが、普通の人はそうじゃないのだろうから、低視聴率も頷ける。

でも、先週の「祇園闘乱事件」でそのメッセージがようやくはっきりした形で出てきたように思った。それは、「タブーへの挑戦」。いや、NHKの方々が本当にそう思っているかどうかはわからないが、私が心惹かれる理由というのが自分でわかった気がする。

そう思ったら、ずっと感じているザラザラ感というのがソレだったというのもわかる。このドラマは小さなタブー破りをあちこちでやっているし、大きなものとしてずっと疑問に感じていたのが「朝廷の描き方」だ。

そういえば、と思って過去の大河ドラマを調べてみたら、80年代に3回ほど現代に近い時代を取り上げたものと、1978年「黄金の日日」という例外を除くと、1963年の第一回以来、テーマはほとんどすべて「武家」の物語。天皇や院が出てくることももちろんあるけれど、どちらかというと本流の話からは超然とした記号として存在するような扱い方だったように思う。(全部見ているわけではないので、違う例もあるかもしれないけれど、私の中ではそういう印象)これに対して、「清盛」では、これも主人公は武家だけれど、朝廷のドロドロ愛憎劇がこれでもかというほど本流の話として描かれている。(三上博史さんの鳥羽院の熱演、崇徳天皇と佐藤義清のあの描き方っていいの?などなど・・)「王家の犬」という言い方が最初の頃に叩かれたようだけれど、「タブー破り」はそもそも、この描き方にあるように思う。今までなんとなく日本の映像ソフト界にあったタブー(例えばロシア制作の昭和天皇の映画が日本では公開されない、というような・・)が、今やOKになったのか、それとも反発覚悟でNHKがあえてやっているのか?単に私の無知か?などといろいろ考えたりしていた。

祇園闘乱事件は、当時の、まさにタブーにがんじがらめにされた社会に対して文字通り挑戦したお話。史実としては本人が「神輿に矢を射た」わけではないのかもしれないが、まぁいいじゃない、これはわかりやすい。ストレートなタブー破り。そして、昨日の回では藤原頼長と平家盛の関係。頼長の男色趣味は知っていたが、まさかそれをこういうふうに使うか!(山本耕史さんがノリノリ不気味なのに美しくてすばらしい・・)これは当時タブーではなかったが、現代のテレビドラマにおいては明らかに「タブー」の領域だったようで、ネットで話題になっている。

ザラザラ感が理解できて、すっきりしたところで、この先ますます楽しみである。タブー破りは、普通の人にとっては「不快感」「違和感」を引き起こすものなので、おそらくはこの先も低視聴率が続くのだろうが、幸い視聴率とスポンサーに振り回されないNHKだからこそ、私としては是非このままの路線で堂々と続けてほしいと思う。

このドラマの放映が決まったのは何年も前のことだけれど、たまたま昨年は日本で「原発」というタブーが否応なしに破られてしまったばかり。私の日々の仕事の中でも、魑魅魍魎の「日本企業にありがちなタブー」のようなものにぶち当たることが多い。先月の日経ビジネスオンラインのコラムで書いた「プライバシー」の件も、タブーの匂いがする。

タブーにぶち当たると、閉塞感を持つ。だから、世の中はその閉塞感を打破するヒーローを求める。メディアはそんな魔法の杖を求める論調でいっぱい。でも、実際にはタブーが破られたら多くの人は「不快」に感じ、反発し、叩く。ホリエモンはつぶされたし、グリーを叩く論調にも似たようなモノを感じる。両方のケースとも、私的には「本人たちももちっと、長期的に考えて行動すればいいのに」と思うこともあるので、タブー破りだけじゃないのだが、タブーにおののく周囲とは勝手なものだとも感じる。

現代にも、タブーはたくさん残っている。それを打破するのは容易なことではない。触りたくないから「タブー化」しているのだから。そして、そこに誰かが小さな小さな矢を射ようとすれば、妨害されたり無視されたりするのは当然で、それは覚悟の上でやらないといけない。クサッちゃいけないね。自戒、自戒。さて、今日はどこに矢を向けようか。

2011-12-14 それでも日本の若者は留学すべし

[][] それでも日本の若者は留学すべし 02:07

こっちサイドの話だけが流れてしまうのもまずいと思うので、「パラダイス鎖国」の著者としては一応反論しておきたい。

議論:留学は就職にマイナスか?

留学といってもいろいろ。日本から大挙してアメリカに留学生が来ていた90年代、私が住んでいたニューヨークには、決まった一角に固まって住んで、ほとんど日本語だけで生活しているという留学生がけっこういた。そういう人でも、NYでの経験がその人なりに役立つならば、それはそれでいいけれど、そういう人が減るのはまぁ別にどちらでもよい。

また逆に、どんな環境にあっても自分の道を切り開いていけるほど優秀で、なおかつ留学目的である研究や勉強内容に情熱を持つ人は、今でも、なんと言われようと留学する。日本で就職できなければ海外で就職する、あるいは自分で仕事を作る。

問題は、あと一押しで後者のグループにはいれそうだけど、ちょっと自信がなくて就職が心配と思う人、あるいは本当はポテンシャルがあるけれど留学というオプションに思い至らず縁がない、という人たちだろう。

後者型の人々が国際的に上位の大学に行くことは、英語ができるようになるとか、就職に有利とか、そんな短期的なレベルの話ではない、はるかに長期にわたるメリットが、本人にも国にとってもある。学校とは、そこで何を学ぶかということだけではなく、そこで共通の考え方や文化を身に付けたグループに属するための「リアルなソーシャル・ネットワーク」の入り口でもある。だから、同じ学校の卒業生とは初対面でも親しみを感じ、共通の話題があり、信頼関係を築きやすい。世界からその分野を志す人が集まる学校に属すれば、その分野でのトップグループのネットワークにはいることができる。そのステータスは一生モノであり、歳を取るほどその価値は増していく。

商売でも政治でも文化でも、本当にトップの世界というのは、人と人のつながりで形成されている。野球選手が安年俸でもメジャーを目指すように、ジャズミュージシャンが食いっぱぐれてもニューヨークを目指すように、志のある人はトップグループの人的ネットワークに属したいという自然な欲求がある。そこにいなければ、どんなに説明してもわからない魅力がある。

また、日本という国にとっても、そういうグループに属する日本人がまとまった数存在することは、長期的に見て日本の国益にかなうことでもある。また「坂の上の雲」の話になってしまうが、日露戦争でアメリカに仲介を頼みにいった金子堅太郎は、ハーバードでルーズベルトと同級生だったから選ばれた。こんな人とか、ノーベル賞をとるとか、世界的企業のトップになるとか、それほどの目覚しい活躍をする人はひとにぎりであり、私のように泡沫なんたらで一生を終わる人も多いわけだが、裾野がある程度なければトップは高くならない。

ここで言う「上位の大学」とは、日本的な「偏差値が高い」といった感覚ではなく、それぞれの分野でのトップクラスの学校のことであり、日本のようになんでもかんでも東大ではなく、世界を見渡せばかなりバラけている。

例えば、シリコンバレーではしばらく日本人ビジネスマンが減った後、最近になってまた戻ってきている印象があるが、若いときに起業のセオリーやソフトウェアなどの技術をアメリカ流で学んでいない人は、「共通言語」がないのでどうもずれて見える。社会に出てから、企業の看板を背負ってからでは、この「ずれ」が即、損失につながってしまう。でも、学生のうちならば、たとえいろいろ失敗があっても、取り返す余地が大きい。

日本に国際的トップクラスの人が集まる学校がたくさんあれば、外国語を苦労して学んだりリスクを冒して留学する必要はない。残念ながら、現実はそうなっていない。だから、志の高い若者ならば、世界でトップクラスの学校を目指してほしい。興味があるけれど「あと一押し」のところにいて迷っている人は、ぜひ現在海外留学をしている、志のある人たちの現実の話を聞いて欲しい。今、アメリカの大学院で学位を目指している学生さんたちは、自分も忙しいのに、後輩のためにこんな活動をボランティアでやっている。

米国大学院学生会

なお、3年前にこんな記事も書いているのでご参考に。余談だが、まだこの頃はシリコンバレーがモバイルでは「田舎感」があった、という自分の記述が感慨深い。たった3年で、今やここはモバイルのメッカになってしまった。ことほどさように、先のことはわからない。留学をあきらめて普通に就職するほうがよいのか、留学して新しい道を開くのがいいのか、先のことはわからない。長期的な視点ももってほしい。ただし、冒頭の記事にあるように、短期的には損という見方もあるし、厳しい世界に挑戦するなら脱落するリスクもあるので、この話は「志の高い日本の若者」だけが対象、と繰り返しておく。

今更、グローバルとは(1) 「平安のイチロー」と「現代の長安」 - Tech Mom from Silicon Valley

きっしーきっしー 2011/12/27 01:18 元記事見ましたが、驚くべき近視眼的な切り口ですね。Tech Mom さんが言及されている志の高い層が必要性なことももちろんですが、フツーの人にとっても大事な問題だと思います。
本当に留学が本当に就職に不利なのかも疑わしいですが(元記事のデータとロジックはあまりにも大雑把なので)、そもそも就職に有利という判断基準自体に意味がないと思います。会社に入ってから何ができるか、どういう会社にするのかというところから考えないと、せっかく立派な企業に就職してもやがて不況や競争激化の波に洗われてあえなくリストラというのがこの20年ほどの経験ではないでしょうか。
たしかに学生にとって最初の就職は大事ですが、留学生を受け入れない、使いこなせないような会社でこの先何十年も勤められるようなところがそんなに多いとは思えないです。むしろ、フツーの日本の会社と思っていたようなところでも、今後は外国人の取引先、同僚、上司、部下が増えると考えるのが自然じゃないでしょうか。国際的な企業買収をする、あるいはされることも増えるだろうし、そうでなくともグローバルなプールからタレントを確保せざるを得ない状況になってきているわけです。純粋な日本人の日本人のための日本人による会社なんて、すでにひとつのニッチです。
留学に行って来れば良いってもんじゃないという意見ももっともですが、日本の大学の場合、大学に行けば良いってもんじゃないということがより強く言えるんじゃないでしょうか。

2011-08-07 ネット対応テレビでの「ガラパゴス」不安

[][][] ネット対応テレビでの「ガラパゴス」不安 15:10

日本では、民放の合弁でネットで番組を個別課金で配信、という話が出ている。ネット上での評判をざっと見ると「ダメに決まっている」、または「最初からガン無視」ということのようだ。私としては、「それでもゼロじゃなくて半歩を踏み出したことを評価すべきか、下記のようにかえってみんなに迷惑をかけることになりそうなのでdisるべきか」悩んでいる。

映像のネット配信は、それこそ90年代の最初のネットバブルの頃から、日本でもアメリカでもその他の国でも、いろんな人がいろいろなものを試していて、「成功例」というのはとても少なくて、それはクリエイティブに考えないとダメなのだけれど、少なくとも「こうすれば必ず失敗する」という経験値は膨大に積み上がっている。それと照らしても、これが成功するとはどうも思えない。

可哀想なのは、このプランに対応したテレビを作らされる家電メーカーである。ただでさえ、世界的には長期的かつ壮大なシェア争いで刀折れ矢尽きて、地上波デジタルで引っ掻き回されて、日立はテレビから撤退とかいう話が出ているところ。それなのに、日本の民放5社の「ガラパゴス」計画、それも前の携帯のときは日本国内で大成功したのでまだよかったが、今回は成功確率激低のものに、貴重な投資を割かなければいけない、というのはいくらなんでもと思ってしまう。私が読んだ記事では、具体的にどのような技術を搭載するのかわからないので、以下は「独自技術またはインターフェース」を作りこまなければいけない、ということだと仮定している。

さて、アメリカの数少ない成功例の一つが、前回エントリーでもちょっと触れたネットフリックス。

で、彼らが郵送によるオンラインDVDレンタルをやっていた頃は、「提携先」としてソニーや東芝などのDVDプレイヤー・メーカーの名前がよく出ていた。提携といっても、単にDVDなので、どちらかというと「営業提携」という感じだった。

ところが、彼らが2007年からストリーミング配信を始めてから、ユーザーの目から見てもはっきりわかるほど、日本メーカーは出遅れてしまった。

(プレスリリースベースで)2008年になってそれぞれ最初にネットフリックスのストリーミングに対応したのが、テレビはLG、OTTボックス(ネット動画をテレビで視聴するための専用機器)はRoku、ゲームコンソールはXboxと、いずれもアメリカや韓国のメーカー。その後次々と提携が発表されたが、日本勢がようやく追いついたのは、ソニーがテレビ・ブルーレイ・ゲームコンソールで対応すると2009年終わり頃に発表したときで、最初のLGの発表から2年近く遅れている。東芝やパナソニックなどは「その他大勢」扱いで、翌年のCES(家電見本市)でまとめて発表されている。

その後、例えば今年のCESでの「ワンクリック・リモート」(テレビなどのリモートに「Netflix」ボタンをつけたもの)の発表では、これらの日本勢も、LGやハイアールなどと一緒に含まれている。

たとえ日本でネット動画が遅々として進まないとしても、日本勢各社にとってアメリカは重要な市場なのだから、こうした動きにはそれなりについていくはずなのだが、これは「日本メーカーが情報戦に負けている、またはアメリカ市場を後回しにしている」ということなのか、「ネットフリックスから見て、最初に話を持っていくのはLGとかになって日本勢は後回し」ということなのか、などと考えるが、外から見ているとどうも「all of the above」のような気がしてしまう。ちなみに、これはネットフリックスだけの話ではなく、その他の動きも含めた「ネットTV」全体に関して言える話だ。(だからこそ、GoogleTVでは頑張って巻き返し、ソニーと東芝が動いたのだが、GoogleTVが派手にコケてしまい、両社はこれまた大迷惑を蒙った、というなんとも気の毒な話がこれに続く。)

動きについていくには、それなりに人を張りつけて情報収集や水面下の交渉をしなければならず、全く新しいモノを作るにはリスキーな先行投資がいる。いずれも先立つものが必要なので、それだけの投資をする余力が日本メーカーにない、というのが根本原因のような気がする。で、おそらく皆様もそれはわかっておられて、最近になってシリコンバレーにこれら家電メーカーを含め、日本人が戻ってきている様子がある。

そこに、失敗確率が非常に高い(失礼!)民放プランなどに足を引っ張られるというのは、今度はネットTVで「ガラパゴス化」を促進して、家電メーカーはますます体力を失い、裾野産業はますます弱まり、日本の国際競争力はますます落ち、失業はますます増え・・という迷惑スパイラルにはいりそうな気がしてしまう。

民放も、ネット配信を試すのは大いにいいけれど、ぜひ、メーカーがつくった対応機器が世界でも使えるような「国際標準的」な技術でやってほしいと思う。

一つの対応策としては、「日本は家電メーカーもテレビ局も数が多すぎなので、企業統合・部門売却とかをして長期投資ができる体力をまずつけるべし」というのが私の持論である。

・・とはいえ、もしかしてこれでさらにメーカーを追い詰め、本当ならやりたくない「統合」に向かわせよう、という、誰かの「孔明の罠」かもしれない、などと考えたりもするが。

ちなみに、アメリカでのテレビ周辺の「壮絶な混戦」については、下記の日経ビジネスオンライン記事を参照してほしい。

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