草の勢い


 ジャガイモの二畝をやっと掘り切った。
 ドイツの旅から帰ってきたら、黒豆畑の草は腰の丈ほどにもなっていた。あまりにひどい。
「怠けたらこのありさまです」
と、クルミのおばさんに言い訳したくなるほど。
 それを取り切ってから数日後、大阪で滝尾君と森君に会う前に、ジャガイモを四分の一ほど掘って、それまでに収穫したタマネギとニンニクとを合わせ、適当な量を二人の土産にした。その時すでにジャガイモ畑はかなりの草ぼうぼうだった。
 腰の丈ほどにもなっていたのはアカザだ。この草の成長スピードには目を見張る。スベリヒユの生命力も尋常ではなく、地をはって広がっているのを引き抜いて土の上に置いておくと、生きのびている。カモジグサは無数の根っこをはりめぐらして土をつかんでいる。夏の炎暑で土がからからに乾燥しても、わずかな水分を細い根っこ集団が吸い上げる。
 雨の日は畑へ行かず、かんかん照りの日も敬遠すると、この時季の草の生長は猛烈で、数日で畑はジャングルだ。
 畑に残したジャガイモ四分の三を、息を切らしながら掘った。備中鍬を畝の両脇から、イモに傷つけないように打ちこみ、草の根を掘り起こす。根株のすごいのは、鍬を根の下に打ちこんで、鍬の柄を前方に押してテコの応用で掘り起こす。これが少々力がいる。そうしてジャガイモを土の中から備中鍬でかくと、ころころ転がり出る。一メートル進むだけで息がはずむ。汗がだくだく流れ、シャツを絞れば流れるほどになる。昨日一日と今日の午前で、イモは全部収穫した。さらに草刈り機で黒豆の畑の畝間と周囲を刈った。
 地這いトマトが稔りだした。赤いのを今日3個、味見で持って帰った。ニジュウヤホシテントウが発生している。ジャガイモの葉もこの虫でやられた。今トマトが食べられている。
 大阪へお土産にもっていったジャガイモを蒸してバターで食べたらおいしかったと、滝尾君が電話で言っていた。彼も150坪ほど野菜作りをしていたが、今はひざが痛くて、仏壇の前に正座もできず、野菜作りはしていないと言う。ひざの故障は二足歩行の人間の宿命だろうか。杖をついて歩く高齢者の姿をよく見かける。