ネイティブ・モンゴロイドの言葉


 いっさいのものは、相互に依存しあって生きている。ネイティブ・モンゴロイドに広く共通する聖なる伝統の認識である。
 北米大陸の北に、マリシート族という、自分たちの言葉を持ったネイティブ・モンゴロイドの一部族がいる。彼らは狩猟の民である。この部族の狩人の、興味深い会話が記録されている。


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 ムースはわしらにはとても大切なもの、生命の糧なのだ。それは着るものとなり、履物になり、食料となる。
 このムースが、わしらにとっていかに重要なものであるかは、わしらの言葉をみれば分かる。大切なもの、尊敬されるべきものはなんであれ、その名前の中に、ムースという言葉が使われているからだ。
 いいかね。おじいさんのことを「ムース・オムプス」と言うし、おばあさんは「ノコムース」だ。
 それから、誰かを愛するという意味である「ムーセラー」だって、ムースに語源がある。
 「ムーセラー」、私は彼を愛している。
 「ムーセラーム」、あの人は私を愛している。
 「ムース・アルト」、彼は愛されている。
 という具合に、ムースという言葉が、わしらの大切なものには全部入っているんだ。薬草や特別な木にも、ムースの入った名前を持つものがある。


 

         「ネイティブマインド  北山耕平」より