金髪の少女

メゼグリーズの散歩道の途中、タンソンヴィルのスワン家の生垣のあいだから、一本の小道が見え、赤褐色に近い金髪の少女が、手には庭いじりのシャベルを持ちながら、黒い瞳を輝かせて、バラ色のそばかすのある顔をあげて、語り手たちを眺めているのだった。少女は『さあ、ジルベルト、おいで。何をしているの?』と、きんきんした命令口調で、それまで見たことのなかった白い服の婦人が叫んだので、少女は、従順に、だが心の奥を見せない陰険そうな様子で、振り向きもせずに行ってしまうのだった。

冒涜と快楽

サディズムについての観念を語り手に抱かせたある体験は、メゼグリーズの散歩道をタンソンヴィルからさらに歩を進めたモンジューヴァンで起きたことなのだった。
ピアノ教師であり、作曲家でもあったヴァントゥイュはメゼグリーズの散歩道を先に行った、モンジューヴァンというところに住んでいたのだったが、、オリコンのヒット・チャートに載ることはおろか、作曲した曲を楽譜に残すこともままならず、同性愛者の娘のことを心配しながら亡くなったのだが、或る暑い夏の夜、語り手はふとした偶然から、ヴァントゥイュのお嬢さんと、その愛人の女性が、ある“行為”をなすところを目撃し、深い衝撃を受けるのだった。
語り手が衝撃を受けたワン・シーンというのは、少し前にヴァントゥイユは先立たれた妻のことを思い、娘の将来を思い煩いながら亡くなったので残された娘と娘の愛人の女性は喪服姿だったが、その愛人女性が暖炉棚の上のヴァントゥイユの写真に唾を吐いたのだった!