言いたいことも言えないこんな世の中は―反町隆史自伝


反町隆史にとって初めての自伝であり、ご存知のとおり人気俳優で歌手でもある彼が、今まさに隠されたベール
を脱ぎ捨て、これまでの半生を熱っぽくかっこよく語りつくした渾身の一冊である。「永いあいだ、私は自分が
生れたときの光景を見たことがあるとなんて言い張っていた」という一節から始まるこの自伝は、まさに誕生し
たその時からスタートする。神童と巷間で呼ばれ、世界中の国旗をすべて覚えた幼少時代、「盗んだバイクで走
り出す」「夜の校舎窓ガラス壊して回っとった」不良少年時代を経て、暴走族「惨痢王」のヘッドとして立川周
辺で名を馳せることとなるが、やがてドラクエひったくりの容疑で逮捕されてしまう。しかし、彼は豚に乗って
少年院を脱獄することに成功し、とりあえずジャニーズ事務所のオーディションを受けて、ついに光GENJI
のバックダンサーとして芸能界デビューらしきものを果たす。なお、ジャニーズ時代のエピソードについては、
既刊「光GENJIへ」等ですでに語られているため、本書では詳述されていない。その後彼は「萬有の真相は
唯だ一言にして悉す、曰く「不可解」」などという言葉を残し、事務所を去ってしまうことになる。事務所を辞
めた本当の理由についてはこれまで謎といわれていたが、それが「川島なお美カンニング事件」の衝撃による
ものだったことを本書で初めて明らかにしている。それから、保険外交員・喫茶店従業員・ボウリング場支配人
等の職を転々とするも、西海岸出身のパンクバンド・デッドケネディーズの招聘により渡米してバンドを結成、
再びステージ上に立って、熱いメッセージをロックのリズムに乗せた。その頃残したとされる「俺はカート・コ
バーンの生まれかわりだ」という名言については、その当時カート・コバーンがまだ存命中だったことから、彼
のずば抜けた先見性が窺われる。また、MBAをアメリカで取得した後、日本へ戻って俳優業にも進出。唐十郎
の下での下積みの後、TVドラマ「GLA」(グレート・ラブリー・アリヅカ)にて、晴れて主役のシンジを演
じることとなる。そのドラマで共演したRAY役の松嶋奈々子とは、後に結婚することになることはあえて語る
までもないだろう。また、「ビーチクBOYS」にて毎回裸の上半身を披露し、若い女性を中心に絶大な人気を
博したのもこの頃である。現在の彼は、40代を前にしてこれまでのワイルドなムードに加え、演技力の円熟と
大人の渋みによって最も魅力的に見える時を迎えているように思える。それらが、彼自身の不断の努力によって
培われてきたことが、この書籍によって明らかとなった。最近コンビニ弁当とかがおいしく感じられない人達に
も是非おすすめしたい一品である。発売日・出版社未定。

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