しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

SFマガジン2005.3月号感想

2004年度・英米SF受賞作特集。ヒューゴー賞とかローカス賞とか、受賞作品だからって手放しで褒めるわけじゃないけれど、今月号に掲載された海外作品はどれも楽しむことができた。もうあと2篇くらいあってもよかったのでは? そういえば昔は確か、毎年ある月の号がヒューゴー賞特集で、次の月がネビュラ賞特集だったような気が。受賞作ってけっこう多いんだから、英米SF受賞作特集は2号連続とかでやってほしいっていうのが正直な気持ち。

  • 「クッキー・モンスター」ヴァーナー・ヴィンジ +1

 人格アップロードというネタそのものは珍しくないが、処理の仕方が絶妙。真相が明らかになっていくにつれ、ぐいぐい引き込まれて読んでしまった。カスタマーサポートのバイトで変なメール受け取って犯人探し…という出だしから、まさかこんな展開になろうとは。それにしても登場人物みんな、なんで自分の置かれてる特殊な(そして絶望的な)状況を、こんなに易々と受け入れられるのかが不思議。状況だけ解明されて、そこで唐突に終わってしまうような消化不良な読後感のため(まあ、リセットされちゃうから仕方ないんだけど)「+2」には少し届かないか。

  • 「アイスクリームの帝国」ジェフリイ・フォード +2

 コーヒーアイスクリームを食べたら少女が見える…とだけ書くとよくあるファンタジーみたいだが、こうした現象が、外からの刺激が脳の異なる領域を刺激する生まれながらの特殊な感覚=「共感覚」の産物として描かれている点が本作の特徴。物語は、本来の共感覚の定義を逸脱した、コーヒーを飲んでいるあいだだけ顕現する少女の正体が明らかとなっていくが、甘いだけのストーリーを想像していたため、シニカルなラストは予想外だった。でも、こうしたテイストの作品はけっこう好み。

  • 「時の軍勢」マイクル・スワンウィック +1

 冒頭、奇妙な味の「異色作家短編」かといった出だしだが、そこからあれよあれよと話が拡がり、物語はとんでもない(いや、ある意味お約束の)方向に。これ、絶対、作者は確信犯で書いてるんだろうなぁ。こういう馬鹿馬鹿しい話はけっこう好きだったりする。

「反復者」とか「酩酊船」とかランボーとか、なんか無茶苦茶面白くなりそうなオープニングだが、林哲矢さん曰く「冒頭の天才」で「いつか尻すぼみになる」のではとのことなので、期待半分程度で今後を見守っていくことにしよう(笑)。次回は6月号で「そんなに先かよ!」と思ったけど、よく考えたら次の次の号だった…(どうも最新号が4月号というのがピンとこないので…)。

 今月はちょっと低調かな?