国際ビジネスマンのアキレス腱


いつ降り出してもおかしくない重たい空気が終日漂っていた土曜日とは対照的に梅雨の中休みでカラッとした明るい青空の日曜日だった。ウォーキングコースの雑草地には久しぶりの好天に誘いだされた蝶が乱舞している。特に紫色のマツバウンランに白や黄色の蝶が。畦道にはアザミも咲いている。畑の土手にはナデシコが華やかさを振りまいている。



竹藪や雑木林の薄暗いような場所には、ドクダミの姿がめっきり多くなった。自生している場所からして陰気くさい。名前も不気味。臭いも陰気くさい。まるっきりいいとこなしのドクダミだが、山間の道の駅などでは乾燥したものや袋詰めにして「ドクダミ茶」として売られている。風体や風評だけで判断しては気の毒ダミ。ちゃんと、人様のお役に立っている。


6月に入って”衣替え”とはいうものの、制服のある学校や職場とは縁遠くなった今、”クールビズ”をニュースで見聞きする程度だ。その点、野に咲く花たちは正直に季節感を感じさせてくれる。



ドイツの東北部ポーランドとの国境に近い人口12,000人ほどの小さな町に英国人(正確に云えばウェールズ人)の奥さんと暮らすこの町唯一の日本人Y君。今年45歳になる好青年だ。彼はドイツの大手電機メーカーの系列会社のアジア担当マネージャーをしている。久しぶりに来日し豊田に来たその彼と昨夜食事を共にした。


彼は2年前まで豊田にいてカミさんの通うスポーツクラブの仲間。青い目ブロンドの髪の奥さんのリアンさんがお目当てで我が家でホームパーティーを開いたことも二度三度。とかく最近の若者は内向き志向といわれるご時世に、彼は自分が必要とされるなら世界のどこへでもの気性で英国の会社にいたときにリアンさんに知り合ったようだ。よく言えば、国際派ビジネスマン。悪く云えば尻軽ビジネスマンだ。



そんな彼にもアキレス腱があるようだ。親の介護だ。彼の両親は鎌倉に健在で今は心配なし。リアンさんの母親が心配で、施設に入れるのも簡単でないらしい。フランクフルトとロンドンの飛行時間は1時間だが、空港まで、からのアクセスが双方で6時間ほど。国際遠距離介護をしているらしい。「ゆりかごから墓場まで」の国でさえ、このありさまだ。


彼の両親もやがては面倒を見る時期が来る。終の棲家を日本にすることにはリアンさんも賛成しているようだが、50歳を過ぎて日本の会社で採用してくれるところはないに等しい。悩みは尽きないようだ。美しい奥さんを持って肩で風を切って闊歩する国際ビジネスマンにもアキレス腱はあるものだ。