自然に囲まれた美術館

きのうからシトシトと降り続く秋の長雨。ちょっとした外出にも傘を手放せない。どこからか甘い香りが漂う。キンモクセイの香りにシトシト雨。この風情に何か一句が出て来そうなものだが、それが出来ないかなしさよ。



アムステルダムゴッホミュージアムに次いでゴッホの作品の展示数が多い美術館も訪れた。ベルギーのブルージュからバスでオランダのアムステルダムに移動する途中、ブルージュから260km余り、アムステルダムへ80km余りの距離。ホーフェ・フェルウェオランダ国立公園の広大な敷地の自然保護区に囲まれた中に「クレーラー・ミュラー美術館」がある。



この美術館はコレクターとして知られたクレーラー・ミュラー夫妻が国に寄付した膨大なコレクションを展示するために建てられたもの。ゴッホの作品270点あまりのほか、ルノワールゴーギャンピカソなどの名画、ロダンの彫刻なども彫刻庭園に展示されている。


箱根や北海道などの自然に囲まれた中に美術館が点在している。どうして交通の便のよい都会でなく、こんな山の中に美術館を造るだろうと疑問を持っていた。”自然に囲まれた中でアートに浸ることのすばらしさ”をオランダのこの地に来てわかり、疑問が解けたような気がする。



美術館の周りの彫刻庭園は広大な森の中に四通八達した散策路に沿ってある。散策路の分岐点に来ても案内板はない。どこに通じるのかまったくわからない。トイレもない。とにかく、自然のままだ。こういう中でアートに浸れるのはすばらしい。ただ、悲しいかな、集合時間大丈夫か気にかかる。団体ツアーの悲しさかな。


アートの庭園の外側にはサイクリングロードがもっと広い範囲で広がっている。なにせこの国立公園5500万平方kmだそうだ。この美術館では3時間以上のフリータイム。絵画の鑑賞、彫刻庭園の散策、サイクリングを楽しんだ。サイクリングロードも案内板がひとつもない。




庭園にもサイクリングロードにも案内板がひとつもない。この国の国民性を表していると思った。「まもなく発車します。ドアーが閉まります。手を挟まれないようご注意ください」式の我が国。発車のベルも鳴らず、突然ドアが閉まって発車する欧州の列車。これと同じだろう。この延長線上に「安楽死、麻薬、売春の公認」があり、一定限度の自由は認め後は自己責任といったオランダの国民性に通じるのではないだろうか。