TOHOシネマズなんばで「プレステージ」

mike-cat2007-06-09



〝運命さえトリック〟
バットマン×ウルバリンの対決(?)も話題の、
世紀のイリュージョン娯楽超大作がいよいよ公開!
主演に「X-メン」ヒュー・ジャックマンに、
「バットマン・ビギンズ」クリスチャン・ベイルを迎え、
マジックに取り憑かれた、2人のマジシャンの運命を描く。
監督・脚色は「メメント」「バットマン・ビギンズ」で、
その類い希なるセンスを見せつけた、クリストファー・ノーラン
原作「〈プラチナファンタジイ〉 奇術師 (ハヤカワ文庫 FT)」は、「双生児 (プラチナ・ファンタジイ)」でも注目のクリストファー・プリースト
ちなみにタイトルの「プレステージ」は、
確認<PLEDGE>、展開<TURN>、偉業<PRESTIGE>の、
マジックにおける3つの段階の最後の部分を指す。


19世紀末、ロンドン。
「グレート・ダントン」ことアンジャーと、「プロフェッサー」を名乗るボーデン。
互いに競い合い、憎み合い、奪い合う、2人のマジシャンの対立は、
ある驚愕のイリュージョンをめぐり、ついにとんでもない事件を引き起こす。
マジックのタネをめぐる果てしない反目、そして想像を絶する策謀の数々…
そして、最後の決着をつけるべく、命を懸けた壮絶なマジックが幕を開ける―


とんでもない作品である。
デビッド・カッパーフィールドが監修を手がけた、という
瞬間移動などのイリュージョン、マジックの応酬だけでも、
もうすでにエンタテインメントとして十分すぎるほど成立しているのに、
そこにアンジャーとボーデンの2人による、激しい反目のドラマが加わる。
さらに、ノーランお得意の、時間軸を前後するトリッキーで劇的な脚色&演出。
そして、最後に明かされる、驚くべき真実…
その魅力を挙げていったら、きりがないほどである。
そうそう忘れていたが、「メメント」などノーラン作品の撮影を一手に引き受ける、
撮影監督のウォーリー・フィスターの織りなす映像も、これまた見ものである。


だが、何よりも印象深いのは、絶妙ともいえる後味の悪さ、だろうか。
この反目し合う2人の主人公には、どこか共感できない部分が多い。
娯楽大作としては、まさにあるまじきことなのだが、
あえてその奇妙な味わいを取ったというところだろうか。
マジックのためにすべてを犠牲にし、観客の叫声という名声のために何もかも捧げる2人。
その2人がたどる、あまりに苦い結末は、
単なる普通のストーリーとはまったく違う、奇妙で独特な余韻を残す。


出演陣に目を移せば、ジャックマン×ベイルだけでなく、
マイケル・ケイン「サイダーハウス・ルール」)、スカーレット・ヨハンソン「ロスト・イン・トランスレーション」)、
パイパー・ペラーボ「コヨーテ・アグリー」)に、あのデビッド・ボウイまで… という豪華布陣。


2人の看板俳優や名優マイケル・ケインは、もちろん抜群なのだが、
(個人的にはいまだにベイル=「アメリカン・サイコ」のイメージが抜けないが)
交流×直流で、かのトマス・エジソンと激しく対立したという、
ニコラ・テスラを演じたボウイの異様な存在感も格別だ。
そして、2人のマジシャンの間を揺れ動くファム・ファタールとなる、
オリヴィアを演じるスカーレット・ヨハンソンも、その魅力を存分に発揮している。


ノーランの最高傑作、との呼び声も高かったし、
期待値は相当に高まっていたのだが、それを遙かに凌駕する。
すべてのネタを明かされてなお、もう1回観たくなるほどの強い引力を放つ傑作だ。
巧妙なミスディレクションと、奇妙なテイスト、そして独特の映像タッチ。
決して単純明快な娯楽作品とは言い難いが、観るべき、見逃せない作品である。