JGPチェコスケート2016 女子FS

JGPチェコスケート2016 リザルト
ジュニアのGPシリーズ第2戦。女子FSは、現地時間2016年9月3日(土)に行われた。

にて、第4グループからライブ放送を見た。その中で、特に印象に残った選手の演技について、感想を書いていきます。

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●第4グループ
20 エリザベータ・ウコロワ(チェコ

  • SP順位:12,得点:44.20
  • 楽曲:The Master and Margarita (soundtrack) by Igor Korniliuk

ユーロ名物、ふしぎ音楽プロであった。映画のサントラらしいけど、どんな映画なんだろう。
上半身をやわらかく使えてるんだけど、力強さとかシャープさも出せるようになると、曲想の変化がもっと表現できるようになるのではないか。
フリー77.03、総合121.23。

22 Lutricia BOCK(ドイツ)

  • SP順位:9,得点:46.88
  • 楽曲:The Artist (soundtrack) by Ludovic Bource

3Lzで2本とも豪快に転倒していて、痛そうだったが、高さと幅があったので、決まればGOEの加点がもらえそう。
プロトコルを見ると、3Lzと3Fが2本ずつ跳んでいる。シニアのトップ選手でも、なかなかお目にかかれない、意欲的な構成なんだけど、ルッツはどちらともeマークが付いてる…(涙)。
いろんな曲が使われてるようだが、残念ながら、曲想の違いはあまり出せてなかった気がする。
フリー77.70、総合124.58。

23 Fruzsina MEDGYESI(ハンガリー

  • SP順位:8,得点:48.42
  • 楽曲:Yo Soy Maria by Astor Piazzolla

女性ボーカル入りの、女の情念を感じさせる曲で、なまめかしい振付が随所に入っているのだが、それをものにしていた。後半、音楽が変わるのだが、そこの変化も表現できていたと思う。
プロトコルを見ると、ジャンプ構成に3Lzも3Fも入れてないんだな。
フリー80.54、総合128.96で、どちらも自己ベスト更新! 選手もコーチも嬉しそう。

24 キム・ハヌル(韓国)

  • SP順位:7,得点:51.08
  • 楽曲:Romeo and Juliet (musical soundtrack) by Gerard Presgurvic

衣装はそれっぽかったので、何となくロミジュリかなと思ったけど、よく耳にするロミジュリの音楽と違っていたし、彼女の演技から、恋する喜びや切なさ、悲しさが伝わってこなかったので、さっぱりロミジュリな感じがしなかった。
腕がもっと大きく使えるようになるといいのだが。今はまだ肩の可動域が狭い印象を受ける。
フリー98.17で、自己ベスト更新! 総合149.25。
第4グループが終わった時点で総合1位はハヌルちゃん。

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●第5グループ
25 ディアナ・ニキティナ(ラトビア

女性の合唱が印象的に使われている音楽で、好きだなぁと思った。今までフィギュアスケートではあまり聴かなかったタイプの曲。個性的でいいと思うのだが、表現は難しいのかも。どどーんと盛り上がるところもないし。
冒頭の3Lz+3Tは、キレイに下りたのだが、他のジャンプでミスが出たり、スピンのレベルの取りこぼしがあったりして、得点が伸びなかった。
フリー87.16、総合139.61。現時点で総合2位。

26 メーガン・ウェッセンバーグ(アメリカ)

  • SP順位:5,得点:53.91
  • 楽曲:
    • James Bond Theme
    • Writing On the Wall
    • Diamonds Are Forever

おっきなジャンプを跳ぶし、スピンの軸はまっすぐだし、ボディームーブメントもなかなか素敵だった。007の音楽をきちんと表現できていたと思う。
フリー94.91、総合148.82で、どちらとも自己ベスト更新! でも、選手もコーチも笑顔がないんだが、なぜだろう…。現時点で総合2位。

27 青木祐奈(日本)

  • SP順位:4,得点:56.60
  • 楽曲:On My Own by Claude-Michel Schoenberg

レ・ミゼラブル」のサントラはよく使われるけど、その中の「オン・マイ・オウン」だけというのは、珍しいんじゃなかろうか。歌詞を調べてみたら、「あの人を愛してるけど、あの人はわたしをいらない。わたしはひとり」っていうヘビーな歌。
…これ、ジュニアの選手が演じるのはかなりハードル高いんじゃないかな。プログラムの初めと終わり以外は、ずっと女性ボーカルが朗々と歌い上げているので、一本調子になりがちだし、へたするとBGMになりそう。
ステップシークエンスは、ボーカルに寄り添うように演じられていて素敵だったので、それが全体にも広げられれば。
ジャンプは転倒や両足着氷、オーバーターンなど、ミスが目立ったが、スピンはやっぱり上手いなーとうならせられた。
フリー99.19、総合155.79で、どちらとも自己ベスト更新! 現時点で総合1位。

28 アリサ・ロスコ(ロシア)

  • SP順位:3,得点:60.10
  • 楽曲:Milord by Edith Piaf

衣装のスカートが、シフォンを何枚か重ねてあって、ロスコさんにとっても似合ってて、ステキ〜☆☆
14歳の女の子にピアフをやらせるのかと思ったが、曲想の変化をよく表現していて、まったく背伸びした感じを受けなかった。指先まで神経の行き届いた演技で、腕全体をしなやかに動かしていて、とても美しい。SP同様、超高速&超個性的ポジションのスピンも見ごたえがあった。
ジャンプで転倒やオーバーターンが1つずつあったが、他はタノりながら、しゅるしゅるっと決めまくっているように見えたんだけど、プロトコルを見たら、<が4つも刺さっていた。
フィギュアスケートの使用曲で、ずっとボーカルが入っているのは、正直苦手なのだが、こういうのだったら飽きなくていいな。
キスクラでまじまじとロスコさんの顔を眺めていたら、昔の少女漫画に出てくるヒロインみたいだと思った。大きな目を、濃くて長いまつげが縁どってるの。
フリー102.18、総合162.28。現時点で総合1位。

29 アナスタシア・グバノワ(ロシア)

  • SP順位:2,得点:63.51
  • 楽曲:Romeo and Juliet by Abel Korzeniowski

衣装を見てロミジュリかと思ったら、当たりだった。ロスコさんといい、グバノワさんといい、衣装がセンスよくてちょっと意外。…ほら、ロシアの選手って、時々めっちゃ変衣装着てくるじゃないですか。
3Lz+3Tで転倒した以外は、全てのエレメンツでGOE加点をもらっている。すごい。SPほどじゃないけど、各エレメンツがプログラムの流れの中で行われており、しかも3Lz+3T+2T込みのジャンプ5つが後半に組み込まれてるんだよ〜。加えて、スケーティングも音楽表現もすばらしいときた。まさに、おそろしあ〜☆
フリー122.08、総合185.59。段違いの高得点が出たわ〜。現時点で総合1位。

30 紀平梨花(日本)

ラプソディー・イン・ブルー」を滑る女子選手は、青い衣装が多いけど、紀平さんのは白を基調にして、スカートの裾にグラデーションの青、胸のあたりに青いスパンコールをあしらっていて、とっても素敵☆
冒頭の3A<<で、痛そうな転び方をしたので、大丈夫かなと思ったが、まったくの杞憂であった。ミスといえば、3Aの転倒と3F+3T+2Lo<でステップアウトしたくらいで、他のエレメンツでは全てGOEの加点が付いている。
もっとも印象的だったのは、表情豊かに滑っていたこと。ところどころ、本当に素敵な表情を浮かべていて、思わずはっとさせられた。
118.73、総合185.51で総合2位。うっわー、0.08点差! 惜しかったなー。紀平さんも濱田先生も少し残念そう。でもこの上なく素晴らしいJGPデビューでしたよ!

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◆総合順位
女子シングルの総合順位は下記のとおり。総合順位、名前、国名、得点、SP順位、FS順位の順に記されている。

  1. Anastasiia GUBANOVA RUS 185.59 2 1
  2. Rika KIHIRA JPN 185.51 1 2
  3. Alisa LOZKO RUS 162.28 3 3
  4. Yuna AOKI JPN 155.79 4 4
  5. Hanul KIM KOR 149.25 7 5
  6. Megan WESSENBERG USA 148.82 5 6
  7. Diana NIKITINA LAT 139.61 6 8
  8. Fruzsina MEDGYESI HUN 128.96 8 10
  9. Michaela-Lucie HANZLIKOVA CZE 125.89 17 7
  10. Alicia PINEAULT CAN 125.21 10 13
  11. Heloise PITOT FRA 124.86 11 9
  12. Lutricia BOCK GER 124.58 9 14
  13. Elzbieta KROPA LTU 122.36 13 12
  14. Elizaveta UKOLOVA CZE 121.23 12 15
  15. Alexandra FEIGIN BUL 113.65 22 11
  16. Amanda STAN ROU 113.01 18 16
  17. Natalie KRATENOVA CZE 111.52 16 17
  18. Ceciliane Mei Ling HARTMANN SIN 104.96 15 18
  19. Bronislava DOBIASOVA SVK 100.74 19 19
  20. Lara ROTH AUT 99.70 14 23
  21. Emma JANG TPE 96.31 20 21
  22. Sophie Davida ABRAMS ISR 95.63 23 20
  23. Josephine KAERSGAARD DEN 95.14 21 22
  24. Jiayin LI CHN 88.22 24 24
  25. Agnes Dis BRYNJARSDOTTIR ISL 78.36 26 26
  26. Agnieszka REJMENT POL 75.43 25 28
  27. Priscilla June CHAU HKG 70.86 29 25
  28. Alua MUKHAMETKALIYEVA KAZ 70.86 28 27
  29. Komila FARADJAEVA UZB 66.71 27 29
  30. Yekaterina TYAN KAZ 50.49 30 30
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◆総評
表彰台に上がった3人は、みな今大会がJGPデビューというだけでなく、ジュニアとしても1年目という、凄すぎる3人である。
特に優勝したグバノワさんと2位の紀平さんは、頭一つ抜けてる感がある。
3位のロスコさんは、ジャンプが低くて回転不足が取られやすいという課題はあるけど、彼女のピアフのフリー・プログラムすっかり気に入ってしまった。次に演技が見られるのが今から待ち遠しい。
4位の青木さんは、ジャンプの不調が昨季から続いてるんだよなぁ(ため息)。他の部分はどんどん洗練されているのだが。
今大会で、「これから注目していくぞ〜」と新たに思った選手は、8位のハンガリーのフルジナさん(という呼び方でいいのか)。まだ難しいジャンプはプログラムに入れられないようだけど、音楽表現とかボディームーブメントが素敵なんだよね。「演じる」ことに対し、並々ならぬ意欲を感じる。