音甘映画館 このページをアンテナに追加

Jun 17, 2017

[] 20センチュリー・ウーマン

公式サイト右隅にこっそりある” http://1979.fm/ ”、プレイリストがとっても楽しいので、これ聴きながら読んでいただけるとうれしいです。


母との会話の中で母の若い頃の姿をふと垣間見たときの、祖父の若かりし日の写真を思いがけず見つけたときの、私の知らない姿と風景が目に浮かんで今に繋がったことを思い出した。

マイク・ミルズの語り口、映画としての佇まいが好きだ。柔らかくてキリリとしてて、近くて遠いまなざし。更に今作は、掌の美しくも苦い記憶の断片を積み重ねると同時に、彼らが生きる時代を俯瞰的に見つめ、アメリカの「20th Century Women」を描いたことが素晴らしい。

自分の目は「自分の今」しか見ないものだ。しかしマイク・ミルズは優しく教えてくれる。自分の今は自分が生まれる前から続いていて未来へ向かっているのだということを、自分の暮らし方は時代とリンクしているということを。マクロな視点とミクロな視点を行き交う、パワーズ・オブ・テン。


1979年のサンタバーバラが舞台。マイク・ミルズ曰く「NYパンクがちょっと遅れて入ってくる」土地柄で語られる1979年という年は、世界情勢における分岐点であり現在に至るはじまりだ。あれやこれや、今思えばね。

レインコーツに始まって、当時部屋で鳴っていたであろう曲が彼らの後ろで鳴り続ける。「10代の頃に聞いていたら楽になれたと思う曲だから、今聴いてくれれば私よりずっと幸せな人になれるわ」という言葉の持つ重みに泣いた。と同時に鳴っているのが「あの曲」で、イントロのふわりとした音像だけでもうボロボロと泣いた。そして私のあの頃を思い出して泣いた。更にこういった音楽を母親目線でも描いたところが秀逸で、繊細で大胆な描き方に胸が熱くなりまた泣いた。


私たちは結局のところ理解できないし全ての表情を見ることはできない、”だけど”ね。という思わず口ごもるけれど大切な気持ちをきちんとすくい取り、光を柔らかに照らしてくれる誠実さが素晴らしいし、パーソナルな想いがたくさんのひとたちの協力を経てかたちになって、日本でロードショー公開されてほんとうに嬉しい。映画とはリレーで渡される手紙みたいだなあ。


マイク・ミルズのように、”いまこの瞬間”と”知らない昔”と”知ることはない未来”を行ったり来たりして、思考していきたい。いまこの瞬間だって知らないことばかりで、何をどう知るか、その上でどう考え何をするかが未来に繋がるのだ。何十年か後、私は2017年についてどんなことを思い返すのだろうか。


サテハテそれにしてもこの映画をシネコンで見たことが、なんとも「2017年」なのだよなあ。私は未だに気持ちだけ90年代の渋谷にいる亡霊なので(うわ)、シネセゾンで見て泣きながら階段をテクテク降りて外に出て、パルコブックセンターとWAVEクワトロ店とHMVとシスコオルタナ店寄って帰るんだ……(自分で書きながら震えてる) 


そうそう、以前読んだインタビューでの言葉がめちゃくちゃ良かったのでした。ここにもう一度。

・記憶にピュアなものなんてなくて、事実というものもない。そしてそこに何か甘苦くて美しいと感じるものがあると思っています。

・母がセーラムのタバコを吸ってビルケンシュトックのサンダルを履いていたとか。そんな意味のないような細かいところをしっかりさせていくということ、それには何かとても深いものがある気がします

「記憶を映画へ」→ http://d.hatena.ne.jp/mikk/20170110/p1

Jun 10, 2017

[][]6月サンブンノイチ

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3日 自由が丘の外れで柳本浩市展を見てから呑川緑道を歩いて、都立大の2会場で福田紀子展。これまでの具象とは異なる、大判のモノクロ抽象画で驚くも、樹々のなかでフロッタージュで描いた作品で、静かに湧き上がる生命力が体のなかを貫いた。さっき見た「資本主義な物量の世界」にぐったりしていたのでやっとほどけて息が吸えた感じ。バスで移動して喫茶店。コーヒーとホットサンドが美味しくって、静かで気持ち良い空気が流れてて好きな店。思えば美術展見たあとってここに行くこと多い。この店に置いてあったハガキを見て気になり、近くの画廊へ。伊澤絵里奈写真展「しぐさをなぞる」、日常の風景が切り取られた写真はどこか感傷的な空気を漂わせ、儚くも永遠に続くようだった。画廊オーナーが「いらしてるので、よかったら質問どうぞ」と紹介された作家さんは20代後半と若く愛らしい方だった。「お若いので、携帯で写真を取ることが既に普通だったと思うのですが、日常を携帯で撮った写真とカメラで撮って焼いた写真との捉え方の違いは何ですか」とつい質問をしてしまった。伊澤さんは暫し考えて「カメラで撮ったものは、いったん自分を離れてまた選びなおすという作業が伴うので、そこが携帯で撮るのとは違いますね」と返答したその言葉が自分の胸の奥をキュッと突き、断片が繋がった気分になった。「今ピカーン!って発見したお顔されてましたよ」と画廊オーナーが笑った。



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4日 鎌倉へ久しぶりに向かった。10時に到着し駅周辺を歩いていたら、台湾茶屋さんを見つけて朝のお茶を。さっぱりとした味わいで3煎ほどいただく。静かでいい時間。午前中から陽射しが強いなかもう暫し歩いてからお昼ごはんにカレー。目が見開く美味しさだった!大通りを避けて歩いた先のパン屋さんへ入り、久しぶりのご挨拶をして幾つか買う。そこから切り通しを抜けて神奈川県立近代美術館鎌倉別館へ。「建築家・大眄疑佑罰倉別館」展を見た。昨年の国立近現代建築資料館を見た後では随分とコンパクトな展示だけど、大眄疑誉澤廚侶物のなかで図面を見る楽しさったら。



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5日 サラリーマンはつらいよな事象が続いて窒息しそうだったから、8日木曜は午後休した。あまり行かないエリアへ向かい、久々訪問のカレー屋さんで食べるも特に美味しさを感じなかったのがかなしい。何年ぶりなんだろかと考えて、近くの商業施設出来て以来遠ざかってたんだった。駅前は激変してるし都営APは半分建替わってるしびっくり。映画を見て帰宅後、swimmerが終了する話を知った。たぶんoliveで知って、東京へ遊びに行った時にお店に行ったときの、上京後学校帰りに立ち寄ったときの、ワクワクしたあの感じを今も思い出せる。10代後半〜20代前半の私を彩ってくれた、お守りのような存在だった。もう使っていなくても、淋しい。