昨年末dipの1stアルバム「i'll」がEMIから再発され驚きましたが、他のアルバムもUKPから再発されることを知り、一瞬固まってしまった。長らく廃盤になっていたアルバム。私は既に持っているけれど、新たな人の出逢いを狭めてしまうから勿体無いなあと思っていたのです。
今回この発売に連動して
「ファンの方々のdipに対する熱い思いを聞いてみたい!!」
dipのメンバーはエールに突き動かされるという意外と可愛い所が有ります!
是非Twitter、blog等でdip感想文を書いて下さい!
という企画がアップされ、私はカーーーッと燃え上がったのですが、燃え上がりすぎてキモい文しか書けそうになく、むしろ気持ちがイッパイイッパイで文が書けないまま、1ヶ月が過ぎ。ここでエエイッと書き記すことにしました。
dipのファン以外の方に読んでいただけると嬉しいです。
dipとはどんなバンドであるか。紹介文にはよく「サイケデリック」「シューゲイザー」と書かれているけれど、正直言って違うと思うのです、よ。なにしろ「サイケデリック」と「シューゲイザー」は魔法の言葉*1で、それ使っとけばOKな雰囲気があり、それでいて各人が持つイメージに囚われやすいと思うのだなぁ。こういったサウンドに強く影響を受けているのは確かだれど、それでくくってしまうのは誤解を招くと思うのです。
dipにとってそんな「端的な要素」が全てではない*2。
ヤマジは幅広い音楽リスナーであると思う。数多いカバー曲やSEにも表れる「音楽的語彙の豊かさ」が楽しい。演奏することが「自己アピール」ではなく、「音楽を聴いたり演奏することが好き」という純粋な気持ちから始まっていて、それが今も(ここが重要)続いているように思います。案外そういうバンドって少ないと思うのヨ。"具体的なこと"を叫んだり語りかけることもない、ただ、弾くだけ。私はdipのそういうところが好きだ。しかし世間的にはそのへんがとらえどころがないように思えるのかもしれません*3。
いつの時代も「”あのバンド”っぽい何処かで聴いたことある」よなものが多い。どこぞの音の雰囲気を「借りてきたコート」みたく羽織っているだけのバンドが如何に多いことか。dipにも「アレじゃんか!」とツッコミいれてしまう曲は多いわけですが、「雰囲気を取り入れました」ではなく、聴きこんで血肉になった曲から「これカッコイイ!じゃあこうゆうのつくってみよう、コレとコレ合わせてみよう」なんて具合に嬉々として音遊びしているみたい。恐らくはその時その時の自分内流行があるだろうから、アルバム(時代)ごとに印象が異なる部分がある。
以下、今回再発の4枚を挙げます。amazonにジャケがアップされたら貼ります。
【2nd: love to sleep】1995年
- アーティスト:dip
- 発売日: 2012/04/11
- メディア: CD
【ミニアルバム :13 TOWERS/13 FLOWERS】1996年
- アーティスト:dip
- 発売日: 2012/04/11
- メディア: CD
どれか選ぶならコレ!この2枚にはdipの二面性ある魅力がぎゅっと詰まっている。ロックでポップ、性急さと緩やかさ・直線と歪み・重厚感と繊細さ…。ヤマジのギターワークも冴え渡り、どの曲も一筋縄でいかない濃密な構成で凄まじい。「Pink Fluid」の不可思議なうねりが好きで聴くたびにトリコ仕掛けになる。猫ジャケに駄作なし…ってアレ、ライオン?!
【3rd :TIME ACID NO CRY AIR】1997年
- アーティスト:dip
- 発売日: 2012/04/11
- メディア: CD
泣きメロ満載の唄アルバム。当時は世界観の変化に戸惑った。でも後に気がついたのは、そのpopさこそがdipだなってことだ。ソングライターとしての側面が立っていながら、これまで同様の深淵を覗かせる。特典が「カバー曲満載のカセット」ってのが今じゃあり得ないんだけど、pavementからジェーン・バーキンまで多彩で楽しい。こうゆうところにもdipらしさがある。ジャケのエフェクター(Fuzz Ace)とか!
【4th : WEEKENDER】1999年
グランジの果てで鳴る音。ヒリヒリして行き場のない徒労感さえある音。世紀末を迎えた時代の空気もあるのかもですが、統一感に掛け、バンド自体の空気を濃密に表していたと思われます。当時の私には違和感があり、ライブも怠慢な印象が強くなって足が遠のいてしまいました。しかしあるとき聴き返したらそのヒリヒリさが胸に来たのです。「AMP HATE MINE」「NOW GOTTA THE SUN」のポッカリとして深い深い余韻。
再発が「懐古」ではないことは、今もライブで聴いていればハッキリわかる。昔の楽曲を盛り上がるからでも手馴れで弾くのでもなく、「今だからこその表現力」で新たな音を聴かせてくれる。歳を経て落ち着いた様相を見せつつも、実のところ攻めているその音を聴きに、是非ライブに足を運んでほしいと強く思う。今回の「事件」のような再発がそのキッカケになれば、とっても嬉しい。