都電で飲んだ珈琲は夢の味


ちょっと離れた街の駅。チェーン店が並ぶよくある風景。路地裏を抜けると静かな住宅街で、次第に誰ともすれ違わなくなりました。日差しが強く照り返します。暑い…。くらくらしてきます。更に進んでいくと

高い空と野っ原が広がっていました。と思ったら奥に見えるのは

列車?ん? なんだ?
ぐるっと向こうに回り、ゆるやかな坂道を少し下ると

不思議な建物が…。閉ざされていたものの中を覗くと、駅舎のようだった。

外階段を上ってみます。 

わわ!ほんとに列車だよ!中に入ってみる。


歩くとギシギシ音がする…。かつての都電の車両みたい。夢見心地でキョロキョロとしていたら、いらっしゃいませ、と声をかけられ、臙脂色のシートに座り、珈琲を頼みました。ふわんと薫り、きちんと美味しい珈琲。”走らない”車両から外の緑を眺めながら、なんとも落ち着きます。

外はテラスになっていたり電話ボックスがあったり

遊園地のコーヒーカップが?! なんで?

ここは一体なんなのだろうかと店主さんに尋ねたところ、ここのオーナーは界隈の大地主さんであり有名な変わり者?らしく、この車両も遊具も全て払い下げたもので、とにかくいろいろな所有物があるそう。この場所自体の造成もご自身でやっておられ、地域開放し、都電も自ら改造して喫茶店にしたものの暫くは閉じていたのですが賃貸することになり、名乗りでたとのこと。ええー!
す、すごい道楽…。でもこういうの、素敵だなあ。

都電を出て、階段を降りるとそこは再び住宅街。振り返ると雑木林があるだけで、さっきまでいた都電も駅舎も何もなかったのです。夏の幻だったのでしょうか。