it was a dark and stormy night…

10月4日(土) 下北沢 barrack block cafeにて行われた、ヤマジカズヒデ ソロライブのことを今更ながら綴ります。この日は細海魚さんが遂にヤマソロに!

不思議な時間だった。ふたりの音は水の底を細やかに震わせるよな静けさのなかにいた。細海さんによる電子音の調べはどこか懐かしく、昔見た映画を思い出すような感触がある。ヤマジギターはやわらかなまどろみを消さないように弦を響かせる。人里離れた森の中、暗く寒い夜に降る雪のなかにひっそり佇む山小屋。仄かに光が灯っている閉ざされたままの扉。徐々に電子音が空気を侵食していくとともに弦の音は蠢き加速していくと、雪嵐に覆われてなにも見えなくなってしまった。そこには人がいなかった。色も無くて、音だけがそこにあった。
間を空けて、次に爪弾かれたのは柔らかく優しい音色。春の訪れのような、きらきらと光が覗いて心地よいなあとぼーっとしていたら、差し込まれたのはblue bus!・・・わわわ! ああ、今演奏するとこんなにもたおやかな音色なのだな。「ドライブイン蒲生」で使われた空気を切り裂く音ではなかった。じわっと胸に沁みてくる。それからの展開は増幅っぷりが凄かった。体のなかにドンッと落ちて、ぶわぁぁっと光が扇状に拡散していく。深く深く深く・・・。「ドライブイン蒲生」を見た人にも是非聴いて欲しいなあ。続いては「9 souls」、何処へ行くのか何処へ誘われるのかわからないけれど不安なんてなく覚醒していく感じ……ミヒャエル・ローターぽいなーと思いながら見ていた。
これまでに無い感触の、ヤマソロでありました。これからも続いていく予感を残しながら。

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この日は最初にpocopenさんの演奏がありました。pocopenさんの唄声は優しい肌触りに力強い芯があって、声の細やかな震えと翻りが私の胸を刺した。ちょっと乾いた土着的な風合いに中村まりさんを思い起こしたんだけど、実際ふたりでライブやってらしたのね。私のなかでは中村まりさんはpocopenさんとまったく違うベクトルにいたけれど、今日聴いて刷新された。そしてpocopenさんの自由な泳ぎを物ともしない外山さんのリズムのいれ方、すんごいなあ!演奏と唄こそ圧倒されてしまうのですが、pocopenさんの喋りがかわいらしくって!嬉しいって気持ちが伝わって来る。ほんっと魅力的な女性だなあ。最後、「楽しいからもう1曲やります!」って追加された曲も急遽とは思えないほど素晴らしかった。
ところでヤマジさんとpocopenさんは関わりもあったはずですが、ちゃんと喋ったのは今回が初めてだそう。それぞれのパーソナリティとその変化が伺えて興味深い。。。


ライブ自体はよかったけれど、それは今回私が椅子に座ることが出来たからかもしれません。居場所によっては音を純粋に堪能するのは困難だったと思います。また、四方が窓でしかも遮るものがないので、下北のゴチャゴチャした街並みに派手派手しいネオンやそこにいる人々が見えてしまい、なんかこうやるせない気分に……。これを背景としても視界を一掃してしまう音像は逆に凄いんですけど、次回は見たい人がちゃんとチケット購入できて、来場した皆んなが腰を落ち着けて音世界に入っていける場所で開催して欲しいです。贅沢なことをいって申し訳ないけど、せっかくの演奏が勿体ないと思うのです。