誰よりも狙われた男

アントン・コービンの新作がいつの間にか公開で、しかもフィリップ・シーモア・ホフマンの遺作であることに驚いた。
スパイものである本作はひたすら地味〜〜に展開し、絵的にも地味〜〜でアントン・コービンが監督ということを忘れてしまうほどなのだけど、PSHの、煙草を吸うときの、ピアノに向かう時の、物思いに耽る憔悴しきった表情の積み重ねが、ラストに生きるのです……。ああう。PSHの大きな丸い背中がフレームアウトしたあのショット、車体の曲線と虚空に呆然。自分の信念と正義感を貫き通す男が何処へ向かうのか。ううう。ここに焦点を合わせたアントン・コービンの演出たるや!
いかにもな映像美の連続ではなく、王道的に切り取りながらも時折ささやかに胸を突くシーン(不透明のビニールシートに紙飛行機コツン、とか)を挟み、GANG OF FOURやD.A.F.がかかるところにニヤリとしました。んでもってトム・ウェイツ
それにしても国際政治の舞台裏を映画の世界とはいえ見てしまうと、現実の日本で目に見える政治の世界が幼すぎて不安になる・・・。んでも舞台がドイツでPSHもドイツ人役ってのがすぐ掴めなくて、ちょっと混乱した。。。スミマセン。


帰り道はハロウィンにかこつけて仮装してはしゃぐ若者が目に付いた。似たような仮装が多いのは量販店で大量展開されている既製品なのだろうか。
アントン・コービンジョナサン・グレイザースパイク・ジョーンズの新作"映画"が同時期にスクリーンでかかり、ミシェル・ゴンドリーの作品が”美術館”で上映する2014年の10月最後の夜。フィリップ・シーモア・ホフマンが演じた役柄に対してと彼自身に対してと、ダブルの意味でやるせない気持ちでいっぱい……。
そんな気持ちになってもやっぱりおなかが空くのだなあ、パルテノプレーンを買って帰宅。