まんがライフ2017年2月号

まんがライフ2017年2月号の感想

『めんつゆひとり飯』 瀬戸口みづき

 新連載。主人公、面堂露の高橋留美子感および新沢基栄感。
 めんつゆ手抜き料理漫画ですが、夏場における素麺のヘビーローテーションへの誘惑が乗り越えられるか。
 めんつゆ料理といえば、前田敦子がめんつゆ料理を覚える映画『モヒカン故郷に帰る』もおすすめです。

『おじょじょじょ』 クール教信者

 すみません。『ポプテピピック セカンドシーズン』のピピ美のエピソードを思い出しました。

『紡木さん家の場合』 碓井尻尾

 タコあげと蛸ハゲ。

『白衣さんとロボ』 柴

 108ページ右 2人分だけのおせちは作れないから、近所に配ったりしていそうです。ゆえに年賀状も増えると。
 111ページ 凧をなくすほどの強風であることを、白衣さんの髪の乱れだけで表現するセンスの良さ。
 112ページ左 裃だと思ったら白衣でした。

『眠り姫と起こさない王子』 渋谷一月

 今回は、4コマ漫画での画面構成に、やや苦戦している印象を受けました。4コマ漫画とストーリー漫画では、コマの中での視線誘導の方法論が、かなり異なってきます。そのあたりが把握できると、コマ割りの苦労が多少減ずるのかな、などと思いました。
 これを機会に、僭越ではありますが、4コマ漫画における視線誘導について、自分として考えていることを、以下ですこし整理してみたいと思います。

ストーリー漫画との視線誘導の違い

 当たり前のようですが、下図のように、4コマ漫画とストーリー漫画では、コマを読む方向が違います。


 たったそれだけのことですが、読者の視線の動きには変化が生じます。
 ストーリー漫画では、横方向にスキャンをしていきますので、上下ジグザグに台詞を並べていけば、コマの中の絵をまんべんなく見てもらえます。
 それに対して、4コマ漫画では、読者は縦方向にスキャンをしていきます。そのため、下図に示したように、一回下がった視線は、上へは戻りにくい傾向があります。右上と左下に台詞を配置した場合、左上には視線が上がりにくくなります。そのため、何か手を打たないと、左上が死角になってしまう場合があります。


 『眠り姫と起こさない王子』での例を示します。この2つのコマを横に並べた場合、1コマ目の王と王妃の表情は、自然に目に入ります。構図は自然であり、問題は生じません。
 しかし、これを縦に並べると、1コマ目の王の顔が、目に入りにくい位置になってしまいます。このような配置では、王の表情をよく見ないままに、次のコマへと読者の視線が移ってしまう恐れがあります。


 4コマ漫画は、ただでさえコマが小さいので、なるべく死角を作らず、1コマで表現できる情報量を確保する技術が必要となります。

4コマ漫画における漫画とのN字型の視線誘導

 そのための代表的なテクニックのひとつが、N字型の視線誘導です。これは、下図のように、視線をA→B→C→Dと移動させていく方法です。


 このようにコマを使えば、コマの全体を、くまなく見てもらえます。また、そのコマで一番見せたい絵を、B→Cの経路の上に配置すれば、読者に強い印象を与えることも可能となります。
 N字型の視線移動のテクニックは、多くの4コマ作家が用いています。このことは、本誌の他の作品を読んでいただければ、ご理解いただけるでしょう。
 ただし、ストーリー漫画においては、全てのコマでこのような視線移動をさせると、くどくてうるさい表現となってしまいます。その意味で、この技術は4コマ漫画特有のものと言えるでしょう。

B点からC点への視線の誘導方法

 このうち、A→BとC→Dの下方向の視線移動は、比較的自然に行えます。しかし、B点まで落ちた視線をC点まで持ち上げるのには技術が必要です。そのための手段の例を以下に示します。どの技術も、広く使われているものです。


 なお、本誌の作品のなかでは、『白衣さんとロボ』での構図が、とてもきれいなN字型になっていましたので、例として示すことにいたします。

台詞の長さが果たす意味

 B→Cへの視線移動と比較して、A→Bへの視線移動は比較的自然に行えますが、その場合にも注意が必要な点があります。
 左右に大きく台詞を設けた場合、読者の視線は、右の台詞の終りから、左の台詞の始まりまで移動します。そのため、右の台詞の終りの位置をうまくコントロールしないと、狙いどおりの視線移動をしてもらえません。下図のようなことを理解する必要があります。


 台詞の長さや、改行の位置は、物語において重要であるとともに、視線移動のコントロールのうえからも重要な要素となります。台詞はテキストであるとともに、構図を設定するツールでもあるのです。
 以下に、『眠り姫と起こさない王子』での例を示します。同じ構図であっても、台詞が終わる高さが違うだけで、かなり印象は変化します。


 定石となる技術は、必ずしも使う必要のあるものではありません。ただ、定番の手法を知っておくと、重要でないコマで構図に悩む必要がなくなるので、省エネルギー化には寄与するのかな、と思います。