かたつむりは電子図書館の夢をみるか このページをアンテナに追加

2008-02-22

[][]ケータイ小説はどこの大学にあるのか? -あるいは、ブックハンティングの副産物? もしくは、GO! WEST-


承前

先日、ベストセラーランキングとWebcatによる大学図書館の所蔵状況を照らし合わせてみる、というエントリーを書きましたが(ベストセラーは普通に大学図書館に所蔵されている - かたつむりは電子図書館の夢をみるか)。


もともとその記事を書くきっかけになった、id:humotty-21さんの記事(それはブックハンティングだから選ばれたのか? - 図書館学の門をたたく**えるえす。)のブックマークコメントの中で、id:myrmecoleonさんがこんなことをおっしゃってました。

どうでもいいけど所蔵図書館マップ使って欲しかった(ぁ

(はてなブックマーク - myrmecoleonのブックマーク / 2008年2月18日)


所蔵図書館マップがどんなものか、ということについてはmyrmecoleonさんの以下の記事を参照。


ISBNを入力すると、欲しい本を所蔵している図書館大学図書館都道府県図書館等)がGoogleマップ上に表示されて一目でわかる、という非常に面白いツールです。

確かにこれを使って色々調べてみるのも面白いかも。



本題

ところで、前述のベストセラーの所蔵に関するエントリを書いてる最中、ずっと感じてたことがありました。

・・・なんか、ケータイ小説所蔵してる図書館、西に偏ってないか???*1

どうも同じ名前を良く見ると言うか、近畿地方九州の大学名ばかり見ている気がする・・・気のせいか?

そういやそもそもの発端だった、朝日新聞の記事(朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?)では思いっきり「西日本に広がる」って言ってたな・・・

あるいはちょっと前に学生による選書で話題になってた(学生自ら選書 ケータイ小説や占い本も)崇城大も九州だし。

ってことはやっぱりあれか。

西に偏ってるってのは、そういうこと(ブックハンティングで選ばれている)なのか?


しかし待て、今のところの「西に偏っている」というのはあくまでざっと見の感想であるし、そもそも日本の大学は各地方に均一に分散しているわけではないことも考慮に入れないといけない。

もしかすると単に西日本に大学が多いから結果も西日本に偏っているだけかも知れない。


ってことで、実際に調べてみることにしました。

使うのはもちろん、no title

しかしやっている最中にサーバ落ちたのかアクセスできなくなってしまったので(悲)、本当はライトノベル編もやりたかったけど今回はとりあえずケータイ小説編だけでやってみようと思います。


その他に使うものはこちら:

トーハン 2007年ベストセラー発表 単行本-文芸部門(上半期/全体)

所蔵を調べるケータイ小説のタイトル取得に用います。

今回は両ランキングのうち、min2-flyから見て確実にケータイ小説であることがわかる、ゴマブックス及びスターツ出版の以下の5タイトル(上下巻あるものはまとめて1タイトル扱い)を選出。

赤い糸 上

赤い糸 上

赤い糸 下

赤い糸 下


もしもキミが。

もしもキミが。


純愛

純愛


クリアネス―限りなく透明な恋の物語

クリアネス―限りなく透明な恋の物語


君空

君空


普段なら絶対貼らないような書影がこんだけ並ぶと壮観ですな(笑)

ちなみにあえて『恋空』本編を外したのは、あいつは所蔵館数が100超えているのが前回の調査でわかっているので、調べるのが面倒だったからです(爆)

所蔵図書館マップ使うと日本が真っ赤になるんだもん。

(でも一応、マップで見るだけは見て、主要な都道府県については状況もチェックしてはある)。



平成18年度学校基本調査 都道府県別学校数および学生数

大学系の調査をやるなら基本中の基本の一、文部科学省の学校基本調査から、各都道府県大学図書館数をゲットします。

こいつを地方ごとに整理した上で、所蔵図書館マップとの検索結果と照らし合わせれば「そもそも東北に大学なんか少ししかねえじゃねえか!」みたいな問題も回避できます。


で、集計結果がこちら(中部=甲信越および岐阜を含む、三重近畿に含める)。

地方大学数割合*2
北海道36 5%
東北45 6%
関東24233%
中部12717%
近畿15120%
中国49 7%
四国16 2%
九州7110%
沖縄7 1%
合計744100%

やっぱ東北とか中国四国は大学少ないなあ、っていうか大都市圏に多いなあ、なんてのはまあわかってたから良いとして。

以上の各地方ごとに、所蔵図書館マップを使って各ケータイ小説を持っている大学数を調べて、各地方の大学数から所蔵率をあわせて算出します。

「所蔵図書館マップはWebcatPlus使っているから高専・短大も含まれる〜」問題は、眼で見て4年生大学の所蔵のみについて確認していくことで対応*3

実際には分館があるとかの問題があるんだけれど、とりあえずざっと見たところ同じ地方内で複数分館がカウントされている例はなかったので、問題ないかと。

ではちゃきちゃきやってみようー。

(つながらなくて見れない可能性が高いが、一応所蔵図書館マップの検索結果URLもあわせて掲載)。


赤い糸

地方全数4大所蔵率*4
北海道338.3%
東北112.2%
関東820.8%
中部743.1%
近畿985.3%
中国636.1%
四国100.0%
九州868.5%
沖縄100.0%
合計44273.6%


もしもキミが。

地方全数4大所蔵率
北海道000.0%
東北212.2%
関東200.0%
中部653.9%
近畿864.0%
中国212.0%
四国216.3%
九州634.2%
沖縄000.0%
合計28172.3%


純愛

地方全数4大所蔵率
北海道000.0%
東北212.2%
関東320.8%
中部653.9%
近畿621.3%
中国100.0%
四国100.0%
九州434.2%
沖縄000.0%
合計23131.7%


クリアネス-限りなく透明な恋の物語

地方全数4大所蔵率
北海道112.8%
東北000.0%
関東431.2%
中部321.6%
近畿742.6%
中国312.0%
四国216.3%
九州534.2%
沖縄000.0%
合計25152.0%


君空-koizora another story-

地方全数4大所蔵率
北海道100.0%
東北512.2%
関東841.7%
中部1164.7%
近畿15117.3%
中国9714.3%
四国4212.5%
九州757.0%
沖縄100.0%
合計61364.8%


考察

よくわかった。

ケータイ小説は西に多いんじゃない、関東の大学にないんだ。

ここでいう関東とは茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川の1都6県。

ここに実に日本の大学の3割が集中している(東京に1.5割くらい、他にもう1.5割)のだが、そこにまだケータイ小説が全然食い込んでいない。


基本的に各地方、コンスタントに毎回顔を出す大学がいくつかあって、九州で言えば先の記事で出てきた崇城大も良く出てくるし、あとは九州産業大がよく持ってる。

近畿も同じく帝塚山大とか、特定の大学がコンスタントに持っているのと、時おり他の大学が混じる。

帝塚山もそうだが、他に阪南大など最初の朝日の記事でブックハンティング実施大学として紹介されたところも混じっている。

中部もしかり。

中国四国はコンスタントに・・・ってところはあまりないが、岡山大などはブックハンティングやってるところとしてこれも紹介されていたな(まあ1回しか顔出していないが)。

関東も、持っている大学は完全に特定の数校に限られている感じ。

東北はこれもほとんど常連の1校がたまに持っている程度で、他はほとんどなし。

北海道はあったりなかったり・・・まあ、北海道四国沖縄はそもそも母数が少ないからなあ・・・


とにかく関東にはケータイ小説がない。

特に東京はヤバイ。

東京都単独で大学数130、実に国内の4年制大学の17%以上が東京都1か所に集中しているのだけれど、今回調べた中でケータイ小説所蔵しているのは『君空』を持っていた東京女子体育大学の1回だけ。

あとの129大学は持っていない(「東京」と名がつく他県の大学では持っているところもある)。

基本的に所蔵率0%、高くても0.1%に届かないという・・・なんだこの回避率。

さすがに『恋空』は5大学くらいで所蔵があって逆にほっとしたが・・・それでも4%行ってないもんなあ。

ちなみに大阪府の所蔵は11大学・20%、愛知県は6大学・12%、福岡県6大学・18%強(以上すべて30以上大学のある府県)。

その他に30大学以上を有する道府県としては、兵庫県で7大学所蔵・18%、京都府3大学・10%、北海道6大学・16%強。

30以上の大学がある都道府県で、『恋空』の大学図書館所蔵率が10%切ってるのは東京都だけ、という・・・なんかのプライドの表れかねこれは?


「ブックハンティングは西で拡大している」っていう報道と、関東ではケータイ小説所蔵率が低く、中部以西では所蔵率がやや高いという傾向、それに実際にブックハンティングを実施している大学でケータイ小説を所蔵している例が多く見られることを照らし合わせると、ケータイ小説の有無とブックハンティングの普及の有無はなんらかの相関があると考えられるのかも知れない。

少なくとも、「ブックハンティングで学生が選ばなくとも、今の日本の大学図書館にはベストセラーが普通に入っている!」という前回のエントリーの主張について、ケータイ小説に関する部分は見直す必要がありそうだ。

全部がブックハンティングによるものではもちろんないとしても、ブックハンティングが大学図書館におけるケータイ小説普及に一役買ってるのは間違いなさそうだし。


ふーむ、しかしこうなると逆になんで東京の大学にはケータイ小説が入らないのか、それがブックハンティングの有無によるものとすればなぜブックハンティングは関西から広まっているのか、と言う点について深く考察していくとなんか面白いことになりそうな・・・。

もちろんケータイ小説だけじゃ素材が足りないからもっと色々な分野の資料についての所蔵傾向を漁る、って感じになるんだろうが・・・大学の規模や学部数、国公私の別なんかによる傾向の差があるのは当然だろうと考えられるが、「地方による蔵書傾向の差」なんてものが生まれる背景っていったいなんだ・・・?

普通だったら帰無仮説にでも立てるような仮説な気がするが、とりあえずケータイ小説には実際に差があるしなあ・・・はてさて?




まとめ

大学図書館ケータイ小説が読みたかったら東京の大学には入学するな、関西へ行け!

・・・こんだけ引っ張っておいて結論はそれかい・・・

*1:ちなみに別にmin2-flyはケータイ小説を目の敵にしているわけではなく、単に指標としてこいつが一番一般にもわかりやすそうだから取っている。ライトノベル指標にしてもかまわないんだけれど、自分がそれを指標にすると話がディープになりすぎる・・・というかライトノベル内での傾向とか探しちゃいそうだし。でもいつかはやりたい

*2:小数点以下は四捨五入

*3:ちなみに短大・4大が同じ図書館を使っている場合には、4大としてはカウントしない。附属学校とセットで「〜学園」を形成している場合にも同様

*4:小数点以下2桁で四捨五入

ふとふと 2008/02/23 01:06 図書館情報学が東高西低なのとか、いわゆる貸出至上主義が西に多いとか、関係してたりと邪推してしまいましたわ。

110kA110kA 2008/02/23 08:53 学生の読書活動に対する大学図書館依存度も関係するのかなぁ、とか思ってみました。
想像ですが。専門書に限らず本を読むのに大学図書館しかまともに入手できない土地と、通学圏内に本屋や公共図書館がゴロゴロあるような土地では、大学図書館に対する要求も違うのでは。
本屋がない町の公共図書館の在り方とも、関連しそうだけど。

min2-flymin2-fly 2008/02/23 18:35 >ふと さん(?)
>図書館情報学が東高西低
>貸出至上主義
うーん、でも愛知淑徳のある中部でもけっこう所蔵率が高いことを考えると、一概にそうとも・・・
あとは他の分野も見てみないと、とか。
今回はケータイ小説に限りましたが、例えば他にライトノベルでも同種の現象があるのかどうかとかを見ていくと面白そうではあります。
・・・そっち系は少し漁ってみようかなー、とか。

>110kAさん
>想像ですが。専門書に限らず本を読むのに大学図書館しかまともに入手できない土地と、通学圏内に本屋や公共図書館がゴロゴロあるような土地では、大学図書館に対する要求も違うのでは。

それは自分も考えたのですが、そうなると大阪府等での所蔵率の高さとの説明がうまくつかないんですよねー・・・もっとも、東京に西の奥の方があるのと同様に、大阪だからって都市圏ってわけではなさそうなので確認が必要ですが。
書店、って意味では全国でも書店が少ないことで有名な鳥取県(書店数:http://www.1book.co.jp/cat_42.html、日本で一番人口の少ない都道府県であることを勘案しても、人口比に対してもやっぱり少ない漢字)を見たら面白いかもー・・・と一瞬思いましたが、大学も2校しかないので厳しいという・・・orz

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