かたつむりは電子図書館の夢をみるか このページをアンテナに追加

2008-03-13

[][]50万冊の資料を利用可能な状態で一時的に退避させる方法を考えよ。ただし新しい図書館を建てることは不可能とする。



筑波大の中央図書館耐震工事を行う必要があるとのことで、しばらく一部の資料が使えなくなるとのこと。



「一部」って言っても1.5階層分の資料がまるまる使えなくなるとのことで、東京教育大から引き継いだ資料と製本紀要などを中心に、50万冊くらいの資料が2〜3年使えなくなるそうな。

その間、これらの資料は箱詰めにして学内外に収納され、利用請求があっても取り出すことはできなくなるとのこと。

対応のため、教員については冊数無制限の長期貸出が出来るらしい。学生も使いたいものがあれば先生に頼んで借りてもらうようにして欲しい、とのことなのだが・・・まあ、どの資料を使いたくなるかなんて先に予測しておくのにも限界があるだろうしなあ。

で、「それじゃ困る!」という教育系の院進学を考えている友人に「なんとか使えるようにする方法はないか?」という話を持ちかけられたのだけど・・・


・・・いや、うちの図書館全体の蔵書数からみれば全体の1/5程度とはいえ・・・50万冊、だからなあ。

日本の大学図書館の平均蔵書数が21万冊ちょっと*1

中央値もだいたい20万冊付近だったので*2、だいたい中程度の大学図書館2館分を超える資料が中に浮くわけで。

それを利用可能な状態で保存、ってのはなかなか・・・難しいよなあ。

その他の各分館で引き受けようにも、体芸図書館が蔵書23万冊強、医学図書館16万冊強、図書館情報学図書館23万冊、大塚図書館5万冊*3・・・という状況を考えると、分散させたところで各図書館に50万冊を引き受けるスペースがあるとは考えにくい。

っていうか所蔵資料がある日突然倍近くにまで伸びる、なんて状況に対応できるだけの収容能力を持つ図書館なんて新設館以外は無理だろう。


かと言って、例えばJCCみたいに資料保管を請け負うアウトソーサーに出すにしても。

上記のサイトによれば、1箱につきだいたい30冊くらいの資料が入るとのことなので、50万冊預けようと思うと・・・1万6〜7千箱?(汗)

箱数が多くなると若干の割引が効くっぽいので正確な料金は見積もりでもしないとわからないと思うが、だいたい50箱で年間16万円ちょっとくらいかかるそうなので、1万6〜7千箱だと・・・年間5千〜5千5百万円?(滝汗)

3年で1億5千万円以上の金がかかるわけで、しかもそこまでやっても必要な資料の取り寄せには注文から1日程度はかかるし、しかも返送時は箱単位で帰ってくるのでうまく詰めないとえらい面倒なことに。

当然送料も箱単位でかかり、作業量とあわせると1回につき700円以上、往復だと1,500円くらいにはなる、と・・・そりゃ、普通にILLで他大学から借りた方が(時間はかかるかも知れないが)送料自己負担でももうちょっと安いぞ。

そもそもJCCにいきなり50万冊請け負う保管能力があるのか、って点も含めて、まあこいつはちょっと現実的ではないな。


結局、ブラウジングが出来るとまでは言わなくても、せめて必要な資料の実物がその日のうちに手に取って読めるような状態で保管するのでなければ(つまり学内で/書架に入れて保管されているのでなければ)ILLで他大学なり国会図書館から借りるなりできる資料を利用できる形で保管するメリットがあまりないんだよなー。

かと言って50万冊・・・しかも発行年の古い、比較的利用の少ない資料、ということを考えると、わざわざ新しい建物を建てるのも難しいし。

その中にどれだけ筑波大にしか所蔵のない図書が含まれているのかはわからないが、まあ今回の附属図書館の対応(先に冊数無制限で借りられるようにする/あとはILLなり複写で対応、利用可能な形態での資料保管はしない)は妥当なところなんじゃないだろうか。

この50万冊を使えるようにするためにコストをかけすぎて新しい資料が購入できなくなったりしたら目も当てられないしね。


ローコストで資料を利用可能な形態で保管できる方法があれば話は別なのだが・・・改修特別貸出を利用して、学生1人あたり50冊ずつ資料を預かれば、一応50万冊すべてが利用可能にはなる・・・かな?

でもそれだって受け持ってる人を通じてしか借りだせなくなるわけで、やっぱあんまりメリットはないか。

っつーかつくづくどんな冊数だよ50万冊って。

単純に回収作業期間中の移動のコストを考えただけで頭がふらふらしてきそうだ。


これはもういっそ、GoogleかOCAとでも組んで電子化するくらいしか手がないんじゃないか、と言う気もしてくるが・・・

耐震工事は平成20年度からはじめにゃいかん、ってことらしいしなー、今からじゃちょっと無理か。


いっそ保管場所でついでだから細々とスキャニングを続けていくと、ちょうど工事が終わる3年目頃には電子化し終わってるんじゃないかね?

・・・ってそれじゃダメじゃん(苦笑)

*1:参照:http://www.jla.or.jp/statistics/2007univ.html

*2卒論がらみでデータ整理してた時の値。こっちのソースはweb上にはない

*3https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/pub/outline/statistics-2006.pdf

ceekzceekz 2008/03/13 18:24 今よりも良い環境で保管できないのであれば、いっそのこと電子化を進めるというのは解の一つとしてアリだと思います。きっかけ重要ですし。保管場所を Google にするとかだな…。

保管コストとか購入コストを考えると、やっぱ他館からのレンタルが良いんじゃね?となりがちかも。図書館を中心とした、大学研究共同利用機関法人とか無いのかなぁ。

ceekzceekz 2008/03/13 18:30 あとは、書いてる通り「筑波大学にしかない蔵書」があれば、それだけ別保管とかかな。数にもよるけど。

min2-flymin2-fly 2008/03/14 00:31 >ceekzさん

やはりこの機に電子化、というのは考えたいところですよねー。
問題は東京教育大資料だとまだ著作権が生きているのがけっこうありそうなことですが・・・切れてる分だけでも、ついでに、とか・・・まあ自力でやるとなると金の出所がないのでどこかと組まなきゃ厳しいでしょうが・・・


>図書館を中心とした、大学研究共同利用機関法人

他館からのレンタル、ってことだと旧NACSIS、現NIIの提供するNACSIS-ILLで相互貸借ネットワークが実現しているので、基本的にはほとんどの大学図書館にある蔵書は借りられるはず。
送料やコピー代は実費負担なので、場合によっては買うより高くつく懸念もありますが・・・旧東京教育大蔵書となるともう入手できないものも多そうですし、やはりILLかな、とか。あと洋書は買うとべらぼうに高かったりするので、ILL便利ですね。


>「筑波大学にしかない蔵書」があれば、それだけ別保管とか

そこですよねえ・・・実際、誰かその点の確認してるんでしょうか。生データに触れればそこまで難しくないと思うんですが(いや実際はどうだろうか・・・)。

myrmecoleonmyrmecoleon 2008/03/14 09:43 >ceekz さん,min2-flyさん

>電子化

製本雑誌全論文(論文単位で著作権が働きます)の著作権を確認し,確認がとれないものについては断念,とかになりますて。
またその調査を行う期間,利用可能な状態で確保しておく施設が必要になりますし,通常の職員以外にもそのへんの調査のための人手が必要。


電子化→図書館改築 はありですが,
図書館改築→電子化 はこの規模だと難しい。


ちなみにマイクロフィルム化,とかなら公衆送信権からまないので31条でクリアできます。電子化だとその点でNG。
単に保存を考えるだけなら,全部マイクロフィルム化して廃棄,とかオススメ。金はかかりますけどね。
あるいは倉庫に積み上げるとか。


>図書館を中心とした、大学研究共同利用機関法人

医学系だと十年以上前からそういう話は医学図書館協会あたりであって動いてたりもするんですけどね。NLMみたいなのを日本に,と。
実現する見込みはないなあ。


>「筑波大学にしかない蔵書」があれば

ILL業務をしているとわかりますが,大量にあります。最近のものはわりとあちこちで持っていますが,古いものほど一部の館でしか持ってないものです。あと学術雑誌は入手ルートが限られてる場合が多いです。なので「過去の製本雑誌」は最大の地雷原。
あと,最近あちこちの大学で古い雑誌は捨ててますので,その比率はどんどん増えているでしょう。どこの大学もスペースが厳しいところが多いので,このへんはチキンレースみたいになってますね。全滅したら怖いけど「その本を所蔵する最後の一館」にはなりたくない。うっかりハンドル切り損ねて国内には存在しなくなる雑誌もちらほらあるのでしょう。
筑波あたりがドバっと捨てると,地方大学も自棄になって捨て出してクライシス,とかは起こりうるでしょうね。


大学図書館内部でも「他館を頼ればいいんじゃね?」って話はよく上の方とかから来ますし,きっとどこの大学も似たようなことを考えてると思いますが,自館もまた「よそから頼られてる他館」であることは忘れちゃダメだと思ってます。もちつもたれつ,ひとつ倒れたら全滅。そして疲弊しきって大きいところだけ生き残る(ぁ

ceekzceekz 2008/03/14 12:13 > myrmecoleon さん
いまいちよく解らないのですが、HDDやCD-ROMからの読み出しでも公衆送信権が絡むんでしょうか?電子化を進めた上でも、その利用方法は様々なものがあると思います。単純話、画像化してCD-ROMに保存とかは、ダメなのかなぁ(ネットワーク利用は制度改正や期限切れ待ちで)。

図書館の充実度の指標として、その図書館にしか無い蔵書の割合とかも面白そうだなぁ。どこかに統計があったりするんでしょうか…。

myrmecoleonmyrmecoleon 2008/03/14 14:52 >ceekz さん

>HDDやCD-ROMからの読み出しでも公衆送信権が絡むんでしょうか?


もちろん,その場合は公衆送信権は関係しません。
端末でCD-ROMから閲覧する分には,あまり問題視はされないでしょう。
ただし,その選択肢はあまり有効とはいえません。


31条の「図書館資料の保存のため必要がある場合」に関わる複製は法解釈上,かなり狭く解釈されるものとされ,複数の複製や二次複製物を作ってはいけないと考えられています。つまりバックアップは作れません。
複製を作成したら原本を処分しなければならない,という解釈もあります。これに沿った場合,CD-ROMに電子化したが最後,それが劣化してデータが読み取れなくなれば二度とその資料を読むことはできません。


複製を制限されバックアップや多重化ができない場合,いずれにしても電子化は保存において有効な手段とはなりえないのです。(ちなみに,マイクロフィルムは数百年もつとされ,すでに数十年の実績はある)
このため,単に電子媒体などに複製するような対応は保存上あまり考慮されないか,権利者の許諾をとってバックアップも残しながら行うのがほとんどですね。


個人的には,マイクロ化して原本廃棄して,その後に保護期間が過ぎたらマイクロフィルムから電子化して公開,あたりが無許諾で行うなら一番妥当なラインだと思っています。ただ,原本もどこかで持っているべきなので,国会図書館とかじゃここまで思い切ったことはできないでしょうね。

myrmecoleonmyrmecoleon 2008/03/14 15:02 ああ,著作権法31条の「図書館資料の保存のため必要がある場合」に関わる複製が何かに似てると思ったら,コピーワンスに似てるんだ。
技術的にでなく法的に,似たように保護される。

min2-flymin2-fly 2008/03/14 15:37 myrmecoleonさん、ceekzさん、コメントありがとうございますm(_ _)m

>電子化/マイクロ化
CD-ROMやDVDの保存期間についても諸説ありますが・・・読めなくなった場合の危険を考えると、確かに順序としてはいったんマイクロ化⇒著作権切れを待って電子化、が良さそうですね。
ただ、筑波の場合も今回は工事のからみでスペースとれなくなったことが原因ですが、普段は土地にだけは困らない(建物には困るけど)大学なので・・・少なくとも図書については、一時的に倉庫にしまうだけで工事が終わればまた現物を長期保存&公開に入るのではないかな、と。
となると、一瞬使えなくなる時期のためにマイクロ化ってのもコストがかかりすぎるので、著作権の切れた分は現物⇒電子、残りはあきらめる・・・って感じでしょうか(実際には電子化している時間もなさげですが)。
そこら辺、東京教育大蔵書(1968年くらいまで)という中途半端さがなんとも・・・師範学校の頃のならけっこう著作権切れてるんじゃないかとは思うんですが・・・


>過去の製本雑誌
ここはやはり地雷原ですか(汗)
普段なら「筑波にしかない」って言われると「えへへー」とでも照れ笑いしたくなるような気分になるんですが、今ばかりは・・・まずいですよねー。
過去の製本雑誌分だけでもどっかスペース見つけてきて利用できるようにしておけないものか、とも思いますが、そうは言っても大層な量だろうしなあ。
「周囲の大学で分散」って言ってもまわりに筑波学院大とつくば国際大くらいしかないし・・・いっそつくば市内に星の数ほどある研究機関の図書館・図書室で分担保存とか・・・

ceekzceekz 2008/03/14 17:40 > myrmecoleon さん
理解しました。確かに、電子化による保存は、複製の複製が許可されない限り、有効ではありませんね…。たとえ CD-ROM の劣化速度が速くとも、多重バックアップを行いやすいという点で電子化のメリットが発揮できますし。

結局のところ、現法制化では、図書館によるデジタルアーカイブ化は現実的ではなく、如何に現物を適切に長期間保存するかに傾きがちなのでしょう。やっとデジタルアーカイブを可能にするための法改正検討が始まりましたが、今まで行えなかった業務という事もあり、図書館側からどれだけ積極的な提言を行えるかも疑問があります。

cyanocyano 2008/07/20 17:08 50万冊をいきなり追加で負担できないというのは理解できますが、全体の1/5でしかないのなら、より重要度の低い(利用頻度が低く、かつ容易に他図書館で借りられる)資料をまず倉庫行きにすべきでは?
最もレアなものから順に使用不能にする(あるいは散逸させる)というのはおかしい気がします

min2-flymin2-fly 2008/07/20 23:52 >cyanoさん
コメントありがとうございますm(_ _)m

>より重要度の低い(利用頻度が低く、かつ容易に他図書館で借りられる)資料をまず倉庫行きにすべきでは?

ここら辺が一番難しいところと言いますか・・・「容易に他図書館で借りられる資料から倉庫へ」と言う点では確かに旧東京教育大蔵書が倉庫行きになるのはおかしいのですが、「利用頻度が低い」という点では(フロア別に考えた場合)真っ先に倉庫行きになるのは旧東京教育大蔵書かな、と。
もちろんフロア別に見るのではなく個別の資料の利用頻度を測れば旧東京教育大蔵書より利用頻度の低い資料もあると思いますが、個々の資料の頻度を測ったり、あるいは棚ごとの資料の利用頻度を計って倉庫行きを決める、というやり方で50万冊選ぼうとすると時間とコストばかりかかってかえって作業期間中、資料が使えなくなる時間が長引くという問題もありますし。
それを回避するためにはやはりフロアもしくは資料群の単位で移動せざるを得ず、そうなると筑波大開学以前の資料しか集まっていない旧東京教育大蔵書が(図書館一般の、もちろん筑波大にもあてはまる法則として、「古い資料ほど利用回数は少なくなる」というものがあるために)倉庫行きに選ばれるのも妥当なのかな、と。

もちろん、「古いものほどレアになる」分野もあって、それらの人にとって古いものが使えなくなることが、他の分野(特に工学や自然科学など、図書よりは雑誌を使う分野)の資料群が丸ごと使えなくなるのとどっちがクリティカルか、というのはかなり難しい判断を要するところではあるのですが。
ただ他の分野の資料でも、図書なんかを主に使うのは学生なので、それを倉庫にしまって容易には使えないようにする、と言うのも・・・旧東京教育大蔵書との利用頻度(統計がとれているのは貸出回数だけですが)の差はケタ違いだろうとも推測でき(自分は利用データ触らせてもらえる立場じゃないのであくまで推測ですが、筑波だけ取り立て異常な動きを見せていることはないはず)、やはり反発を招くだろうな、とか・・・。
本当、難しいところなんですけどね。

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