かたつむりは電子図書館の夢をみるか このページをアンテナに追加

2009-03-01

[] いっそ住みたいと思うような多摩美図書館で新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会に参加してきた


2/28に多摩美術大学図書館で開催された「新しい時代の図書館研究会」第2回研究交流会に参加してきました。


目的:「Web 2.0」に代表される多角的なインターネット利用の時代を迎え、先進的な図書館、美術館・博物館など公共文化施設、大学等の教育研究機関は、アーカイブのデジタル化にはじまりウェブなどを最大限活用した活動やサービスを模索しはじめています。

本学(神戸芸術工科大学)におきましても、図書館を核とした新しい教育研究活動と情報発信のあり方について研究するべく、おくればせながら2008 年4月に「新図書館構想ワーキング」を立ち上げ、先進的な活動を行う諸機関へ見学やヒアリングなどをお願いし、その研究を進めてきております。まだ、調査を始めたばかりですが、先進的な諸機関の実験的取り組みや特色ある活動を知るにつけ、目指す方向は同じであってもさまざまな試行と多彩な展開があることを強く感じ、このような取り組みについての自由で活発な意見交換や情報交換の場が持たれれば有意義ではないかと考えるに至りました。


新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会を多摩美術大学図書館八王子キャンパス)にて開催いたします。2009年2月28日(土)14:00〜17:00

人と情報の接し方が大きく変わり、

図書館設計にも新たな考えが導入されている。

そこにもたらされた人と「本」との新たな関係は、

図書館の新しい「使い方」を誘発する。

新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会では

多摩美術大学図書館の事例から、

大学図書館の未来系を考える。


すでに研究会参加レポートをid:yashimaruさんがアップもされています。


新しい図書館研究会については第1回研究交流会*1の話を聞いて「次は参加する・・・!」と思っていたところであり。

しかも開催場所がひるねを公に認められている図書館と聞いて「うらやましい!」と思っていた*2多摩美術大学図書館となれば、これは行くしかないだろうと言うことで行ってきたわけです。


会の流れはid:yashimaruさんも既に書かれているとおり、施設見学+設計にかかわられていた中山英之さん・庵原義隆さんによる解説、多摩美図書館の渡邉朋也さんによる利用状況についての事例報告、ディスカッション⇒懇親会、という感じでした。

ふつうに行ってもわくわくして何時間でもいられそうなところでしたが、中山さんたちの解説つきだと「すげー」でスルーしてしまいそうなところのひとつひとつに意図や理由があるんだな、と知ってあらためてみると「おお、確かに・・・」とか思ったりしてますます楽しくなりました。

多摩美大の図書館は1階の床が斜めになっている(20分の1=20m進むと1m上がる勾配で傾いている)のですが、なんでそんな風になっているのかとか。


家具もひとつひとつ凝っていて、とりあえず目についた椅子とかソファは全部座ってみましたが使い心地超良さそうでした。

中でも「これは・・・!」と思うのは、図書館の家具の中でも有名であるところのこの家具

座ってもよし寝てもよしだそうで、多摩美図書館の森田さんのお話によれば常時学生4-5人はここで寝ているとのこと。

自分も参加者の目から隠れつつ寝てみましたが・・・なんかうねうねした不思議な形をしているので自分なりにしっくりしたお気に入りの場所を見つけるのが楽しそうです。

とりあえず自分は一番低くなっているところから頭を高くして外の景色を見る感じで寝るのが好きでした(たぶん人気の寝床に違いない)。

あれでごろごろしながら論文とか洋書読んでると賢くなったような気分とごろ寝気分が同時に味わえそう。


2階は2階で、カーブを描いた書架にデザインとか美術系の図書がおさまってたり、その書架と書架のはざまに隠れるようにしてテーブルがあったり、頭より高い位置まで本がおけるような(本の壁をつくれるような)書架があったり(この写真の左側の書架で、手が届かないような位置に講談社現代新書が置いてあるところとかありました)、窓際は全部テーブルでところどころに不思議なくぼみがあったり*3なんていうかもうビブリマニア発狂!

編集者の人とか先生たち(多摩美の先生=アーティストとか芸術家とかの人)がお仕事をされている姿もよく見かけるとのことですが、そりゃあそうだ。

自分だって自分の大学にこんな場所があれば(かつ近ければ)毎日通うもん。

っていうか住むわこれは。マジで。


床にしかれたカーペットが吸音効果のためにやや長めのものになっているそうなんですが、これがまたさわり心地がよく、学生の中には(ソファとかいろいろあるのに)直接床に座って本を読んだりしている人もいるとのことですがわかるわかる。

変な格好したくなるんだ、何かを読んでいると。


そんな感じでまず図書館に熱狂し、設計者の方々のお話に感心し、渡邉さんの事例報告で出てきた「アジール」と言う言葉に「おおっ!」と思い*4ディスカッションではいつ発言したもんかうずうずしている間に終わってしまってました(苦笑)

ディスカッションや懇親会自体もそのアーケードギャラリー*5で行われていましたが、ここについて中山さんが「ストア」という言葉を用いられていたのは得たり、と思ったり。

やっぱ大学にはストアとかアゴラとかフォルムとか、そいういう場所が必要でしょう!

公衆の場と言うか、公共の場で行われる知的な活動って聞いてずきゅんと来るのは自分の習性なのかも知れませんが・・・

それこそディスカッションしていたときにも後ろを普通に利用者が歩いていたり、アーケードギャラリーを使って公演をしていればガラス壁の向こうを歩く人も立ち止まって人だかりができるといいますが、なんて素晴らしい。

一方、ゲート内部の構造についても中山さんが何度か「セレンディピティを高める」というようなことをおっしゃってましたが、これもとても面白いし、美術系の大学にとってなくてはならない機能なのではないかと思ったり。

なんていうか、はじめて訪れて興奮しているせいなのかも知れませんが、全体に「何かが起きるんじゃないか」と思う図書館なんですよね。

新しい/予期せぬ出会い(それが誰かとのなのか情報とのなのか何かの事件とのなのかはわかりませんが)起こりそうな感じ。

別に緊張感を伴うようなものでもなく日常的に使えそうに思うんですが、でもなんか起こるんじゃないか、と。

いるだけでそう思えるってのはなかなかないことなので(特に研究室⇔自宅の生活を送っている限り絶対ないことなので)・・・新鮮でした。


ディスカッションの中では先日の長尾館長×池上先生のトークイベントで進行をされていた、mattの李さん*6から「新しい時代の図書館研究会」だからあえて、と前置きして情報環境が大きく変化することがわかっている(携帯電話で全て済ます世代が現実に大学にいる、李さんによれば多摩美の学生の中にも!)時代に図書館が持つ意味について問いの投げかけがあって、かなり白熱したのですが、自分は(上に書いたような)「何か起こるんじゃないか」って感覚とか、ストアのような役割を持つ場ってことでは多摩美図書館はひとつそれに対する答えになりうるものなんじゃないかな、とか思ったり。


さんざんほめた後で落とすわけじゃないんですが、これまで書いたように多摩美術大学図書館はとんでもなく魅力的だと自分は思いましたし、利用できる環境にあれば毎日でもそこに通うだろうと思いますが、じゃあそこで図書館資料も良く使うようになるかと問われれば「ノー」だろうと思います。

それは自分が図書館情報学研究者だから美大には利用したいものがない、ということではありません。

仮にあそこに図書館情報学図書館の資料が詰まっていても、自分の資料の利用頻度は今の筑波大の図書館情報学図書館に対する程度とまるで変わらないであろうと思います*7

じゃあ毎日行って何をするかと言えば、たぶんどこかで印刷してきた電子ジャーナルの論文読んだり、ノートPCいじったり、携帯いじったり昼寝したりしてるんじゃないかと思います。

アトリエにこもっていた学生が煮詰まったときに気分転換にくる」という話がありましたが、よくわかります。

資料があるからとか図書館として利用したい理由があるからじゃなくて、なんとなくとか居心地がいいからとか来たいから、とかいう理由で来たくなる図書館だ、とその場にいて感じました。

なので、言ってしまえば「図書館」じゃなくても別にいいのかも知れませんっていうか別にいいでしょう。

それをなんて呼ぶのかはわかりませんが・・・単なるリフレッシュの場、ってだけでも決してない(セレンディピティとかストアとか)わけで・・・

そういうことも含めてトータルで情報の生産をサポートする場?

うーん・・・


ただ、この資料があるから/情報があるから利用するわけじゃない、ってのは今後の図書館(特に短期的に言えば大学図書館)にとってはかなり重要だと思います。

現実に資料の電子化は著しいですし、分野によってはほとんどの用は電子ジャーナルで足りるので図書館に行くってのは電子化されていないものがあったとかそういうときくらいのもんだったりもしますし。

それが図書に進むのも方向性として間違いないでしょうし、印刷物による情報流通とそれを支える図書館、って構図は現に崩れてもう止まらない。

もちろん図書館にはレファレンス機能もあるわけですが、こっちだってチャットでもメールでもいけるわけですし、そもそもそういうもののために「図書館に行かなきゃいけない」ってのは利用者にとってマイナスではあってもプラスではない、とかなんとか。

そこで「紙であることの意義」を説くのは蔡倫に向かって「竹簡最高だろjk」って言うようなものであんまり意味はない(現状のデバイスとしての各種ディスプレイが紙に勝ててないのは認めますが)。

じゃあだからって図書館いらないのかと言うとそうではなくて、今まで「資料の利用」に縛られてあまり注目はされてなかったけど重要な効能があったりしてそっちを高めていくと面白いんじゃないか・・・っていうのの一例を多摩美図書館に感じたわけですが、あんまりうまく言葉にできないなあ。

そういうところでは建築家とかデザイナーとかにまるでかなう気がしないと思った「新しい時代の図書館研究会」でもありました。

*1アート&デザイン情報図書館 » ページが見つかりませんでした

*2 多摩美大の図書館の話を聞いてうらやましかったこと - かたつむりは電子図書館の夢をみるか

*3404 Not Found

*4多摩美大の図書館では学内のほかのところでは呼べないようなエッジの利いた人を呼んできて1階のアーケードギャラリーで講演とか公演して貰ったり、学生が自主的にやっている活動に場を提供したりしているそうです

*5こういうところ。ちなみに床は斜め

*6matt | atlas ver.beta: profile アーカイブ

*7:むしろ資料の利用と言う点では多摩美の配置より図書館情報学図書館の方が自分にとっては便利でしょう(雑誌のバックナンバーと新着号と複写機の距離感とか

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