Open Access Week 2009 セミナー「Open Access "Friday & Night" 2009」
すでにイベント終了からだいぶ時間が経ってしまいましたが・・・
タイトルの通り、日本のOpen Access Weekを締めくくるイベント、Open Access Friday & Nightに参加してきました!
- 公式ページ(当日のスライド資料等がアップされています)
- 当日、ustreamで映像を配信されていたomoonさんのページ("Archived Video"から映像が見られます。分割されているので注意)
今回はすでに上記のようにスライドも公開されているし、USTで中継もしていたしで特に自分がメモ取る必要ない気がして、あまり詳細にメモは取って・・・なかったのですが、後半だんだんテンションが上がりどんどんメモが細かくなっています(苦笑)
なお、もはやテンプレのようでもありますが例によって例のごとく自分が聞き取れた/理解できた/タイプで来た範囲でのメモとなっており、かつ今回はかなりラフにとった内容でもありますのでその点ご理解いただいた上で閲覧いただければ、&誤り等にお気づきの方はご指摘いただければ幸いです。
では以下、当日のメモ。
「welcome to Open Access "Friday & Nitght" 2009」(坂東慶太さん、My Open Archive)
- Open Access Week
- 昨年はOpen Access Dayだった
- 今年は期間が伸びた。
- 世界では昨年は130、今年は200を超えるイベントが開催されている
- 来年はOpen Access Month? Open Access Year?
- openaccessweek.jp
- 本家の翻訳と日本のイベント情報のサイト
- 本家の許可は得ている
- PLoS
- 本家サイトのパートナーとして選んでもらっている
- PLoSのDonna Okuboさんにいろいろお世話になっている。グッズを貰ったり
- DonnaさんからJohn Willinskyのビデオレターを日本向けに預かってきた
- John Willinsky:スタンフォード大のOAに関する著名な教授
- Science CommonsのJohn Wilbanksのビデオレター
- 日本語訳をあとでopenaccessweek.jpに公開されるそうなのでそちらを参照
- OAの多様な可能性について、学術情報やデータ、教材をオープンにすることでどういうことが起こるのかを一緒に考えていきたい
「オープンアクセスとは何か」(倉田敬子さん、慶應義塾大学文学部)
- 「なぜこういう形で会を開くにいたったか」だけを話す。皆さんの前座
- OAと言えばBOAIの定義、査読つき学術雑誌論文をオンラインで無料で制限なくアクセスできること、が一般的かと思う
- 学術雑誌論文対象
- 査読済みの、確立したものこそが対象になるべき
- 無料で、発表後即時に、オンラインで入手できること
- Willinskyの考え:「知識へのアクセスの改善・増大こそが基本」
- 学術出版者や図書館の理念そのもの
- Elsevierの書誌事項提供だってOA
- 経済基盤、社会基本、文化の障害の方が問題
- OAの可能性
- 今までの語り口より広い文脈におけば、もっといろんなものが見えるのでは?
- 雑誌論文に限定されない学術情報:雑誌論文は外せないがそれ以外もあってもいい
- OAの目的/範囲:2つの観点がある?
- 1.公的な情報へのアクセスはできるようになって然るべき
- 2.研究、教育の推進・発展のためにある
- 通常はまじり合っている
- 制約なしのアクセス:もう少しいろんな考えがあってもいいのでは?
- あるよりない方がいいのはわかるが、全ての場合に全く制約がない方がいいのか? エンバーゴをどう見る?
- 対象の拡大・・・論文以外にもたくさんある
- 商業出版/学会誌/国内誌/紀要誌/図書/会議録etc…
- 全部webで手に入るようになる世界の課題はいろいろあるはず
- 研究データ
- 再利用/追試できるようにする方向性に進んでいる
- 誰のためのどのような共有が考えられるか? 研究者にインタビューすると、「実験していない人間が見てもわからない」、「枠を決められること自体が耐えられない」という意見が出てくる
- 商業出版/学会誌/国内誌/紀要誌/図書/会議録etc…
- オープンアクセスの目的:「知る権利」
- 特に米国で納税者の意識/権利として発している
- 医療・医学の流れの中で誰もがアクセスできるようにすることを求める動きは広がっている
- 研究・教育は推進される?
- 研究についてはわからない。成果が入手できなければ研究出来ないのは当然だが、今困っている人は二極化している。全然困っていない人と困っている人
- データ共有はもっと分野によって違う
- 教育・・・すべては要らないが教育の場に必要な、生かされるデータの再利用は当然あり得る/データそのものがどこまで役に立つかは?
- 制約はあり?
- オンラインであることは前提条件。全ての前提条件
- 一般公開は遅れてもいいとか、再利用に条件をつけることもありでは? CCとかSCと関わるあたり
- 機関リポジトリやOA雑誌以外の、教育に目的を限って公開を進めるとかe-researchの方向性、実践的データというものも考えられる。OAの多様な可能性とはこれらすべてを含むもの
- 今日のスピーカーはこれらすべてに詳しい人。並べてみると何が見えるか
- 質疑
- NIMS・轟先生:研究データで公的情報って、台風の進路情報とかインフルエンザの分布図とかどうだろう?
- インフルエンザの情報で何人が感染とかいうのではない。データと言う意味ではもっと生の研究データまで行くと、なんなのかわからない。もう一段加工しないと公的情報として流せない、となるのかも知れない。CDCのデータそのものは私たちにはわからないが、それをお医者様が解読した結果が流れた方がいいかも知れない。公的記録として残る研究データってあるのかはよくわからない。
- NIMS・轟先生:研究データで公的情報って、台風の進路情報とかインフルエンザの分布図とかどうだろう?
「eScienceとしての材料研究リポジトリ "NIMS eSciDoc"の可能性」(高久雅生さん、物質・材料研究機構 科学情報室)
- NIMS eSciDoncの可能性について話す
- eScience/eResearch
- eSci・・・ネット環境を通じて情報を共有し学術研究を推進する
- 機関のビジビリティアップ/広報・・・機関リポジトリ的な役割
- Lab内の情報共有ツール
- 相互補完的に進められる活動を狙っている
- eSci・・・ネット環境を通じて情報を共有し学術研究を推進する
- NIMSとeSciDocの説明
- ここら辺、うちのブログ読んでいる人ならもういいよね? 詳しくは過去エントリ*1参照
- PubManの説明
- 版の管理が自動的に可能(min2-flyコメント:いやこれマジで羨ましい。うちもあればいいのに)
- アクセス統計機能・・・アクセス統計の可視化ツール/論文・著者・機関等の粒度で見られる
- 外部サイトで論文情報を自動展開できる
- FACESの説明
- 研究者の活動に寄り添ったリポジトリの研究開発
- 機関内の成果を効果的に発信したい、というニーズから、走りながら実現に取り組んでいる
- eScience情報は新の試みの広がり
- いくつかの機関を巻き込めること/気軽に発信できる環境の構築
- 質疑
- CC・野口さん:どこまでオープンにするかはどうしている?
- 研究者自身がチェックして公開/プライベートを分けられる仕組みがある。基本はできるだけ公開にして欲しいが、公開できない範囲もあると思うのでラボ内だけとかログインすればとか。CCのようなライセンスも付けられるが、どこまでどのレベルでつければいいかを悩んでいる。
- どれくらい皆さんオープンにする?
- 今は「出せるものを」と言っているので100%オープン。グレーゾーンのデータをどう得るかは難しい。
- 林:PLoS Oneで研究者がデータを公開する義務が投稿時にあったのに全然公開してくれないという話があって、まずは出せるデータからという先手を打っているのはいい。
- CC・野口さん:どこまでオープンにするかはどうしている?
「オープン・アクセスとオープンコースウェア」(山内祐平さん、東京大学情報学環)
- OAというと研究情報の話が多いが、教育もと言うとどういう課題があるかを皆さんと共有したい
- OCW:授業・講義資料(シラバスとノート、テストなど)を皆に見えるようにする
- 授業映像などの関連情報も含まれる
- MITで2002年に開始。2009年現在ではMITでは1925コースの資料が公開されている
- 2005くらいから世界中でコンソーシアム化・・・日本ではJOCWに19校が参加
- Open Education Movementの中では最大規模
- UT Open Course Ware・・・実演
- アクセスする側はただだが、される側はお金がかかる
- 公開しているのは授業の素材
- 本当にそれだけで学べているのか?
- MITは「教育の提供ではない」と明言・・・素材を提供しても教育は保証しないし単位も与えない
- しかしアクセスできるんならもう一歩欲しい・・・学習/教育サービスをもっと積極的にできないか?
- 何が「アクセス」?
- TODAI.TV・・・一般向けのシンポジウムなど/OCWよりアクセス多い(東大の授業は難しすぎて聞いてもわからない?)
- 教育のOA・・・どういう範囲でどこまで保証するかを悩んでいる
- 研究の方でも綿密に話し合って、歩調を揃える必要があるのではないか?
「オープンアクセスと著作権」(野口祐子さん、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン 専務理事/国立情報学研究所 客員准教授/森・濱田松本法律事務所 弁護士)
- OA実現の課題はいろいろ・・・技術的/心理的/経済的/組織的、といろいろ絡まっている
- 法律的な問題もある。
- OAで問題になる法律問題:著作権と契約
- 著作権:実は非常によく知っている人間は少ない。特に理系の研究者は「事実、データ、アイディアには著作権はない」ことを知らない。「10年かけて富士山の高さが3776mと明らかにしても著作物ではないのか?!」みたいなことを聞かれるが、価値はあっても著作物ではない。著作物は論文等の具体的な表現
- 著作権はひとたび発生すれば権利者の許諾がなければ人前で話すことすら許されない。本を読みあげることすら著作権。事実に著作権があるとなると行きすぎる
- 事実やアイディアはどんなに大変で、お金がかかっても、人類の共有すべき財産になる。「民主党が選挙に勝った」は著作権はない、それを書いた記事の文章や単語の選び方は保護してもいいが事実自体は独占させてはいけない
- 論文の盗作を著作権違反で訴えた例もあるが、だいたい著作権では負けている。アイディアは著作権ではなく研究者倫理や別のところで対処すべきこと
- 難しいのはデータベース・・・ヨーロッパではデータベース権がある。DBを作ったことに権利が発生/日米は情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものにのみ、著作権が成立
- OAでも契約でいける(「このデータを使ったら謝辞に名前を挙げること」など)
- 著作権:実は非常によく知っている人間は少ない。特に理系の研究者は「事実、データ、アイディアには著作権はない」ことを知らない。「10年かけて富士山の高さが3776mと明らかにしても著作物ではないのか?!」みたいなことを聞かれるが、価値はあっても著作物ではない。著作物は論文等の具体的な表現
- OAのライセンス
- なぜ必要なの?・・・「なんでもやってくれていいのに」⇔「最低限名前を挙げてほしい」とかは本当にないのか? 「自由に」の間には研究者と利用者で幅がある。「スライドを使っていいか」と聞かれて、倉田先生は加工して使うのかと思ったら全くそのままのスライドを使用された、など。
- 法律はそうした認識の違いを防止するのが目的。
- 利用者にしてもやってから文句を言われるより、最初からできること/できないことが明確な方が悩まなくて済む
- で、どんなライセンス?
- 標準化とカスタマイズの問題
- オープンソースの分野・・・広く使えるライセンスを長く公開(ライセンスの互換性)/どれでもつなげられる方が便利
- A, B, Cさんが皆違うライセンスをつけている場合、それらの整合性を取るのはみんな挫折する。オープンにしても広がらない
- 同じルールを皆使えた方が便利じゃん
- 一番良く使われる例がCreative Commons License
- でもみんな気に入らない条文がある/「いじれない?」←いじった途端に意味がなくなる。みんなが使っているのが大事、ベストでなくても我慢できるかが鍵になる
- カスタマイズライセンスを使う意見もある
- オープンソースの分野・・・広く使えるライセンスを長く公開(ライセンスの互換性)/どれでもつなげられる方が便利
- Science Commons
- 論文はCC-BYでの公表を提唱
- データはCC0(権利放棄)を提唱。著作権も放棄して契約もしない。ライセンスの整合性を考えるコストが高すぎる。
- データ共有の条件で何がベストかを考えるプロジェクトがかつて立ち上がる・・・10人の弁護士で議論したら毎日、喧嘩になる。
- 弁護士でそうなのに研究者にできるのか?⇒無理だろう
- もろ手を挙げて皆が賛成しているわけではない。CC0を採用しているプロジェクトもあるが、そうでないものもたくさんある。
パネルディスカッション(司会はSPARC Japanセミナーに続いて日本化学会の林さん)
- まず質疑
- 京大・古賀先生:野口先生がお話の法律問題について、高久さんと山内先生に困っているところを聞きたい
- 高久さん:データと文献でだいぶ違う。実践で一番困るのは、研究者は著作権を理解していない。CCも理解していない。これは究極的には地道にやり続けないと駄目だと思っている。自分は「これはここまで」とかできているが、それがどこまで浸透して、どういった形で意識しているかはかなりグレーゾーン。かなり割り切ってやっている。データについては運用が動き始めた段階なのでこれから様子を見ながらやっていく。
- 山内先生:UTOCWの利用条件はCCライセンスはつけていない。MITが2002年当時つけていたライセンスとほぼ同じもの。教員のハードルも高い。TODAI.TVはここまできついライセンスじゃないのでそこら辺の使い分けが。
- 京大・古賀先生:山内先生に。OCWはリポジトリ以上に教員を巻き込みずらい。どうやって巻き込む?
- 山内先生:MITでは教員は協力するとお金がもらえるが、日本だとなかなか難しい。今はUTOCWでは学生を送り込んでいる。いかにも日本的なやり方だが比較的機能する。
- 野口さん:一般論として、ライセンスを考えるときは凄い真面目に考えるが、実際に運用していて細かいところが問題になることはめったにない。まず大きなところから。改変を許すか否かは抵抗もあると思うが・・・MITは「変えたときには『変えた』と書いてくれ」としている。変えられることで一番心配なのは変えられたときにおかしくなった中身を「あの先生のもの」と思われること。変えたときはオリジナルが別にあることと、変えたことを明記することを要求できる。そのあたりで折り合いをつけている、というのがMIT。データの方は、CC0を採用したプロジェクトで研究者よりもファンだーが強くプッシュしている。お金をかけた人はそこから採取したデータが一人の人が全部見られないようになる。そうなると、最初の1〜2年で使い切れなかった分は他の人も見られた方が最大限世の役に立つのではないのか、ということ。ファンダーはお金を出す条件としてもそうしている。
- NTTコミュニケーションの人:学術的なこともやっているがプライベートで研究会もしている。OAは学術情報についてのものだが、そもそも学術ってどこを定義しているのか? 研究と教育目的ならそうなのか、ローカルなものまで含めるのか? 組織に紐づくのか? 査読によるのか?
- 倉田先生:「広く考えている」と言う意味では全部。世の中で行われている学術活動全てを含むものだと思うが、それが全てOAの対象とは思っていない。特に研究者同士で交わされるインフォーマルな情報までオープンにしなければという話ではない。オープンにしろと言われてもできないし、しても文脈がわからない人間に話し合いの場の一部がオープンになったからと言って意味があるとも思えない。そうではなく、今後の研究・教育にあたりアクセスできる、再利用する意味ができるレベルでなければ、次の研究・教育を利するところにいかない。なんでも学術情報だが全部をオープンにすべきとは思わない
- ではクオリティの担保は? あるいは間違った情報は排除できるのか?
- 倉田先生:評価や担保は別問題。それはOAとは全く別の話。それは現在学術雑誌が出版の中で、査読としてやっている。その形と、オープンにして皆が検証できることで意味ができるものは峻別すべき。OAですべてが保証されるとか信頼できるとかとかは、別の問題として考えた方がいい。
- 林:OAのやる/やらないはパトロンがどう考えるか、科研費なら公開しろとなるし企業研究なら隠すはず。学会はOAに困っている、研究成果はOAにしたいが査読やプロモーションにはお金がかかる。良い情報があるとアピールしないと読まれない。それにコストがかかるんだけどただで出さなければいけないことに学会出版は困っている。商業出版は開き直ってビジネスにすればいいのだが・・・
- ?・小宮さん:CCの野口さんからCCライセンスだと困ることがあるという話があったが、CCで具体的に困ることってあったら、他の御三方にお聞きしたい
- 高久さん:CCの意味が非常に難しい。CC-BYって何か。CCに何の意味があるかの説明は時間がかかる。基本的に研究者はCCという習慣もない。Citationは皆さん関心があるが、表示等はどこまで通じるか、制度的にやらないと難しいかも。
- Creditの表示はすっとできても、それ以外のシェアライツ等が難しい?
- 高久さん:だいたいはそう。引用自体が表示に当たるのかは私もわからない。
- 山内先生:OCWはCCをつけている。一般論としてCCをつけたときの反応は、基本的には極端に反応が分かれる。「ライセンスなんかいいから適当で」って先生と、訴訟リスクを聞いてくる先生。根っこは同じで、今まで縁がないのでどうしていいかわからない。研究者になるときにこういう授業があったわけでもないし、ほとんどの大学で知財権は必修ではない。時間はかかると思うが、研究者になるべきは皆知るべきとして授業に組み込むのが重要。
- 野口さん:CCの採用の有無で悩まれて・・・逆にOAの分野だと改変を許すか否かが悩まれる。先生方は自分の正確な表現まで心を配っていることもあって、勝手に要約されることに恐怖感を持っている方もいる。その中で改変禁止のライセンスで落ち着くことも多いが、それとMITとメジャーどころがみんな使っていて標準化できることのメリットもある。一方、商業出版社で一番問題になるのはDRM。CCライセンスで公表されたものでもDRMでロックがかかっていると法律的にできても技術的には出来ない。日本ではあまり聞かないが、CCはアメリカ発祥の運動なのでライセンスは世界中で標準化している。主導権はアメリカが持っていることもあって、アメリカでは2001〜2002年頃にDRMの是非であるとか、議論になった。DRMをライセンスが許していることに反するようなものはつけてはいけないと条文にあり、商業出版社としてはオープンにしたいが、信頼のできる人のダウンロードは許しても一般閲覧ユーザはダウンロードできないようにしたいとかもある。そこでDRMをどう考えるかが一つある。あとは、CCの分け方は営利/非営利とか改編の可否とかでわけているが、それをもっと細かくしたいとするとCCでは難しいかも。
- ヤグチさん:OAの理想的なイメージは色々あると思うが、そういうものが実現したら論文を書くとか研究する、研究活動がどう活発になるとかの具体的なイメージはあるのか? 具体的なビジョンを。
- 高久さん:基本的には誰でもどこからでも論文や研究情報にアクセスできること。我々は特にeScienceがらみで言えば、実際のラボの中で動いている情報がオープンになること。それが進めば誰でも研究活動にすぐにコミットできるようになる。他のグループでも国からでも入れるようになれば、やっている活動がよりよく注目等がされることがメリット。そういう意味では顕著にイメージがわくのは共同研究がより活発になること。
- 倉田先生:いろんなレベルがあると思う。具体例としてはゲノムのデータはデータアーカイブとして見られるようになっているが、凄い卑近な例でいえばデータがあることは論文の保証になっている。データがあることで疑うなら自分で確かめてみては、と言うのができるということではScienceのデータ部分から不正を防ぐ。データ部分まで公開してできることは意味がある。もう一つは、膨大なデータは主たる分野以外の研究はできていないことがあるのではないかと思う。他人のデータで全く違う人がオリジナルなデータを出したという話は聞かないが、いろんな形のデータが大量に出てきた場合は再分析とか新たな発見がある可能性もあるのではないかと思う。あともう一つは、データを全部出すことは一般の人にわからないと言ってしまったが、今は難しすぎて多くの人には解釈できない可能性はあるが、それが常時出ているとなれば教育やいろんな所に使われて啓もうが進み、そういうデータまでも一般の人が理解できるレベルで教育や一般の人の水準も上がるのではないか。OAはそういう方向を目指すべき。
- 轟先生:研究結果が検証可能であるのがOA、研究者の立場から言えば逆にOAでなければ限られた人しか検証できない。また検証する人がどれだけいるかということもあるが。
- 林さん:夜空の星のデータは最初からOAで、天文少年みたいな人もいる。台風も同じでは?
- 野口さん:オープンにするとはたくさんの人に機会を与えること、その先に何が起きるか予測できないのが面白い。GoogleのAPI公開で想像もしないようなサービスが現れたのと同じようなことが起こるのでは。分野によっても違って、ライフサイエンスは研究予算の何分の一かは解析の機械を買うためにある。その機械を持っている人しか研究出来ないが、そのデータを使い古しでもみられればお金はなくても研究出来た人が何か発見するとか・・・
- 轟先生:そういうデータがあることがわかれば共同研究も出てくるだろう。
- 林さん:Science Commonsの日本版をなんとかしようという話があるらしい
- 野口さん:坂東さんはじめ何人かのボランティアで始めることになったとか。SCはアメリカでは非常に大きなプロジェクトになっているが、日本では情報発信がされていないということで、とりあえず日本語に翻訳して発信していこう、と。問題がわかりにくいという声もあるので少しずつ充実させて発信していきたい。
ここで時間切れでパネルディスカッション終了、以降は夜の部に入って行きました。
そちらはさすがにメモの取りようがないので、そっちに関しては参加者特権ということで(笑)
個人的な感想としてはOAにかなり近いところにある(はずだけどあまり国内で接点のない)Open Course WareやCreative Commonsの話とからめたイベントということでもともと期待していたのですが、やっぱり面白かったです。
特にCCの野口さんの、ディスカッション中の発言にあったDRMの話とか・・・「あるあるあるある!」みたいな。
リポジトリコンテンツでDRMついていることはさすがに見たことないですが、オープンになっているはずなのにPDFファイルが「コピー禁止」設定になっているとか、「お前それどんなだorz」みたいなことはありますし。
再利用できないのはもちろんのこと、それじゃ機械翻訳なんかもしづらいことこの上ないっていう・・・
Budapest Open Access InitiativeにおけるOAの定義って、どうしても国内だと「無料で、誰でも、制約なく、オンラインで」と(今回の倉田先生のご発表でもそうでしたが)いう感じに紹介されがちだけど、ここでいう制約なくって原文準拠だと
「あらゆる合法的な目的のもとに、インターネットにアクセスできることそれ自体を除くいかなる金銭的、法的、技術的障壁なく」*2
利用できること、だぞっていう。
どうも技術の部分は軽視されがちなのが気になる。
「法的にはOK!」って言いつつ使いづらい状態にしておくとかは、コスト面から仕方なく・・・っていうならまだしもそもそも気づいていないとかもありそうで*3。
あとはせっかく研究者でもなんでもないはずの坂東さんたち主催のイベントと言うことで、「研究や教育に携わる人間以外にとってもこんなに嬉しい」ってお話がもっと出てくると面白かったかなあと思いますが・・・これは完全に時間の関係がありそうですね(汗)
林さんから「天文少年みたいに、台風少年とか・・・」って言うお話がありましたが、世の中案外コアな人はいるというか、例えばPEPSI NEXが好きだというだけの理由でアスパルテーム(人工甘味料)に関する原著論文読もうとする図書館情報学徒とかも約1名いますし、そういうのが仮に100万人に一人の変人だとしてもネットに接続している人口考えりゃけっこうな需要になる気もしますし。
Wikipediaの参考文献に原著論文上がってるとかもあったり・・・どうしても専門的な情報については「そのままでは民間の人に使えないのでなんらかの対応を」みたいな話がついて回るんですが、個人的には「それはそれとしてとりあえず公開しておけば誰か勝手にやるかもしれないし、いいじゃんそのまま出しておけば」と思ったり*4。
逆にデータのOAについては、今回かなり盛り上がっていましたし大変面白い話でもあると思うんですが、いきなり論文のOAと同じ土台で語る前にまず分野の研究者内でのデータ共有の仕組みづくりが先かなあ、という気はします。
現状、学術論文や各種の研究成果は多くがpublishされたものとして流通していてかつ基盤も存在する、それをOAにしろというのは今使えない人も見られるようにしろってだけの話ですが。
研究データ(それも生データ)は(一部の分野・領域を除いて)多くが研究室内部や関係者以外は触れられないようになっていて、流通体制が確立しているわけでもないところも多い。
それをオープンにしろってのは一足飛びっつーか論文のOAとは次元違う話だよなあ・・・とかなんとか。
「追試可能性の確保」とかってレベルでいいなら別にOAじゃなくても学会とかで登録制のデータベース作ってそこにアップしておくとかの方がやりやすそうでもあるし。
その他、つらつら思うところもありなんかNightの後のShinyaではかなり熱くなってしまっていたのですが・・・
とにかくOA Weekが無事終わり、Friday & Nightも大盛況ということで関係者の皆さん本当にお疲れ様でしたm(_ _)m
そんなこんなでOAづけの一週間も終わり、来週からは・・・
・・・いやまあ、研究テーマ自体がOAがらみの自分は来週以降もずっとOAづけなわけですが(汗)
坂東さんの最初のスライドで「去年はOA day、今年はOA Week、来年はMonth? Year?」というお話がありましたが、その感じで行くとmin2-flyはこの1年がすでにOA Yearです。
先にあるのはOA Decade(仮面ライダーみたいだな)かOA Centuryか・・・さすがにOA Millenniumは自分の人生が終わっていますが*5。
っていうかDecadeレベルとまでは言わないまでもCenturyが過ぎる頃にはもうOAが当たり前で言葉自体死語になっていそうでもあるし・・・
まあそんな先のこと考えても仕方ないので、とりあえずは目の前のevery OA weekを楽しみつつこなしていきましょう。
*1:RIMS研究集会「数学におけるデジタルライブラリー構築へ向けて」・ 2日目 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*2:Budapest Open Access Initiative | Read the Budapest Open Access Initiative
*3:コスト的に・・・ってところでは例えばNightの部で山内先生とお話した際に、「UTOCW、凄いいいんですけどReal PlayerかiTunesないとみられないのなんとかならないですかね? もっとYouTubeとかみたく気楽に見られるといいんですが」と聞いてみたところ、やはりエンコードのコストが・・・というお話があったり。UTOCW開始時にはまだflvが主流でなく、誰でも見られる形式と言うとreal playerが一般的で・・・という事情もあるそうな。再利用可のライセンスなのでみんなでダウンロードしてエンコードしてアップするといいかもしれないですね
*4:データは別。アップする時点で色々とコストが厄介っぽいし
*5:Centuryも終わっていそう。Decadeはさすがに生き延びたい