かたつむりは電子図書館の夢をみるか このページをアンテナに追加

2010-10-17

[][]「徹底的に新しい手法で新しい図書館を創るために:第12回図書館総合展キハラ株式会社主催フォーラム『図書館をデザインする−情報デザインと主題プロデュースの手法』に向けて」(岡本真×有元よしの×李明喜×内沼晋太郎×洛西一周



*本エントリは2010-10-12に発行されたAcademic Resource Guide No.448*1に掲載された記事を、編集長である岡本真さんの許可を得て転載したものです。

座談会開催の数日前に突然記録係を依頼されたのですが、内容が非常に興味深かったのでこのブログにも転載させて貰えるよう、お願いした次第です。


ブログに転載するにあたり、一部表記方法をはてな記法にあらためる等していますが、基本的には同誌掲載内容をそのまま転載しています。

当エントリの内容を紹介される際には出典として上記メールマガジンを記載いただきますよう、お願いします。


また、当日の記録係と元原稿の作成はソースにもあるとおり自分ですが、メールマガジン掲載にあたり内容のチェック・記述の修正等を座談会参加者の皆様とアカデミック・リソース・ガイド株式会社が行われています。

また、座談会本編のまえがき部分もアカデミック・リソース・ガイド株式会社によるものです。



とまあ、まえがきはそれくらいにして、以下本編!



座談会「徹底的に新しい手法で新しい図書館を創るために:第12回図書館総合展キハラ株式会社主催フォーラム『図書館をデザインする−情報デザインと主題プロデュースの手法』に向けて」(岡本真×有元よしの×李明喜×内沼晋太郎×洛西一周 記録:佐藤翔)


11月24日(水)から26日(金)にかけてパシフィコ横浜で開催される第12回図書館総合展。例年行われるフォーラムでは、毎回各所で熱い議論が交わされています。

さて、本年、キハラ株式会社主催、日本図書館協会後援、アカデミック・リソース・ガイド株式会社協力という枠組みで、図書館総合展3日目の最終日に「図書館をデザインする−情報デザインと主題プロデュースの手法」というフォーラムを企画しました。

2010-11-26(Thu) 10:30~14:30

すでに参加申込を受け付けておりますが、ここにあらためて企画の狙いを伝えるべく、総合プロデュースを担う岡本真(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)とその補助にあたる有元よしの(筑波大学、アカデミック・リソース・ガイド株式会社インターン)、コーディネーターを務める李明喜(デザインチームmatt*2)、パネリストとして登壇する内沼晋太郎(numabooks*3)、洛西一周(Nota, Inc.*4)らによる座談会を行いました。その内容を極力当日の雰囲気を残す形で掲載します。

参考

なお、当日の記録は佐藤翔(筑波大学大学院)が担当し、初稿に対して座談会出席者が適宜校正を行い、最終的にはアカデミック・リソース・ガイド株式会社の責任において編集しています(以上、敬称略)。




この座談会の狙いは?
  • 岡本:

既に本フォーラムの申し込みが始まっています。このフォーラムは、96名しか募集しないのであっという間に定員に達すると思いますが、後半はワークショップ形式なのでそれなりにやる気がある人じゃないと辛いでしょう。そこで、どういう意図でこのフォーラムを行うのか、座談会形式でまとめて、参加者がフォーラムに参加するための事前の参考資料にしてもらおう、というのがこの座談会の狙いです。


このフォーラムを思いついたきっかけ
  • 岡本:

まずは、そもそもこのフォーラムが生まれたきっかけから話しましょう。図書館総合展の運営を何年か手伝ってきた結果、フォーラムをいくつか企画できることになりました。そこでキハラと仕事をすることを思いつきました。社長の木原一雄さんが社長室長だった頃から知り合いで、知り合った頃から「じきになにか一緒にやろう」という話をしていました。木原さんが社長になったこと、私も情報空間だけでなく図書館の実空間に関わることがしたいと考えたので、キハラと何かやろう、ということになったのです。

フォーラム開催にあたり、人選はすぐ思いつきました。まずは李さん。d-laboのトークセッション*5 *6で知り合って、それからよく会うようになり、人となりやお仕事を体感して、李さんがもっと図書館の人たちとつながったほうがいい、と思っていました。まずは李さんとキハラをつなぎたいと思いました。キハラでは別途企画も進行中だったみたいなのですが、この話をしたら「面白いからやろう」ということになりました。そして話が動き出したんです。私から李さんにどう話をしたかは記憶のかなたなんですが(苦笑)……。


  • 李:

なんて言われましたっけ?細かくは覚えていないのだけど、とにかく「(李さんに)いつか図書館を設計して欲しいので、そのきっかけになるようなプロジェクト」をすると言われました。「マジでか」と思いました。僕自身、設計の仕事を始めたときに5つ、設計すると決めていたものがあって、図書館はその一つなんです。図書館はユーザとしても好きだし、図書館の持つ意味が、いま、情報とフィジカルなものの接合点として、可能性、不可能性、問題点含めてさまざまなものが出てきているのかな、と思います。そういうことに関心があり、意匠ではなくシステムとして図書館を設計したいと考えていました。


  • 岡本:

その後、「ワークショップを」という話はすぐに出ました。以前からキハラのフォーラムだけでなく図書館総合展の運営全体に関わっていて、「偉い先生を呼んで話を聞くだけの受動的な参加ではあまり意味がないんじゃないか」と考えていたんです。参加者が手を動かさないと駄目じゃないか、って。

去年のCiNiiウェブAPIコンテスト*7はけっこう良かったと思っています。それはやはり参加者が事前に手を動かしたからでしょう。ましてキハラはものづくりの会社なんだから、手を動かすフォーラムの方がいいと思いました。過去の図書館総合展でもキハラが実施した製本講習会が人気を集めていて、そこに答えがあるのではないかと考えました。

ただ、いきなりワークショップじゃ難しいし、情報デザイン、空間デザインは図書館の現場の人にすとんと落ちるものではないと思います。そこで李さんの考えを伝えるトークセッションを最初にやろう、と。それはまさしくこのお店でのブレストを通じて決まったんですよね。



洛西さん、内沼さんに声をかけたわけ
  • 岡本:

ちょうどその後、カーリル*8公開イベントがあって、そこで洛西さんと内沼さんと面識ができたんです。それに内沼さんと李さんは前から面識があったから。

じゃあそのへんかな、と。「カーリルは知名度あるし」という下心もある。争奪戦になりそうなので早めに抑えちゃえ、と思って。


  • 李:

誰を呼ぶかの話のとき、内沼さんと同業の方も候補にあがっていたんです。選書業をやられている方は何人もいるが、情報環境も含めて、本の環境を、作ることも含めて考えているのは内沼さんだろう、と思っている。カーリルは出た瞬間「やられた!」とも思っていたのだけど、軽やかにつぎつぎ作って公開して行くところは非常にリスペクトできると思っています。必然的に、こういう内容ならこのお二方以外考えられないかな、と。


  • 有元:

内沼さんはどうやって口説かれたんですか?


  • 内沼:

李さんにばったり会ったときに「今度お願い」と言われたんです。時間帯が被っているフォーラムにも参加するけれど、そこは移動してどっちも出るつもり。


  • 岡本:

実は私もカーリルをLibrary of the Year*9に推薦したんですが、Library of the Yearは推薦人がプレゼンターをやることが多い。だけど考えてみたら、自分が出られないので、「内沼さんがいいんじゃないかな」と推薦したんですが、考えてみたら内沼さんはこっちともかぶっていたんですよね。


  • 洛西:

Library of the Yearよりキハラフォーラムの方が面白い、と?


  • 内沼:

いやいや(笑)。


  • 岡本:

それぞれ、話が来たときの印象は?


  • 内沼:

最初の企画書では何をやるのかよくわからなかった。ただ、お話を聞けば聞くほど、面白そうだ、と思いました。李さんと洛西さんと図書館についてしゃべるだけで、そりゃもうヤバいでしょ、と。その後、キハラの会社のことやpingpong*10のプロジェクトについても知って、そこではそうとう最前線の、図書館の未来みたいなことを言っていました。

役割も違えば方向性も揃えられる3人で話せるのは、ヤバい。こんな豪華なセッションでいいのか。自分で言うのも何だが、ヤバいと思っています。


  • 洛西:

相談をもらったときはキハラのキの字も聞いたことなかったんです。でも岡本さんはカーリルの営業してくれているし、やるしかないか、と。


  • 岡本:

自分の講演のときにカーリルのステッカーを配りまくったりしています。


  • 洛西:

最近、どこ行っても皆さん、ステッカー持っている(笑)。でも李さんの話を聞いて面白そうだな、と思いました。カーリル的な手法をそのまま建築でやろうとしている人がいる、と。pingpongプロジェクトに関わっている江渡浩一郎さん*11は僕の大学の先輩でもあるんです。


  • 李:

江渡さんとはpingpongで共同で論文を書いたり、議論もさせていただいています。「パターンランゲージ」が再注目されるきっかけにもなった、『パターン、WikiXP』という本を江渡さんが書かれていますが、この本が僕自身がパターンについて考える大きな契機にもなりました。もちろんそれはpingpongにも繋がっています。

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

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コメンテーター図書館業界、図書館建築界の大物
  • 岡本:

そんな風に話が進んだところで、キハラから日本図書館協会の常世田良さんと、筑波大学の植松貞夫さんをぜひ絡めたい、という話が出ました。これはポジティブに解釈すれば、「面白くなってきた」ということ。ただ面白いだけじゃなくて、若い人たちを図書館建築デザインの現場に引き込んでいく橋渡しをしてくれたんだろうな、と思いました。

日本図書館協会図書館建築の賞も出しているのだけど、そこがこのフォーラムのような試みを保障している、「新しい道を模索している」という印象を与えてくれようとしたのかな、と思いました。

常世田さんは有名な浦安市図書館の館長だった方だし、いい意味で空気を読まずに、ズバッと本質を突く発言は業界一。常世田さんが来てくれたらどんなコメントが来てくれるか面白いし、植松先生も大家中の大家なので。ある面では従来の建築に対する建設的な批判に対して、植松先生がどう反応するのか。

ご本人がいるところでやった方がフェアだろう、と思ったんじゃないかな。


  • 岡本:

あとキハラからさらに、図書館建築の大家である柳瀬寛夫さん(岡田新一設計事務所)、鳴海雅人さん(佐藤総合計画)を招こう、と提案されました。これは一線で活躍する図書館建築家と李さんと引き合わせる機会にもなる。

キハラに李さんがコンセプトを伝えてきて、相互理解が進んでいって、それぞれが何をすればいいのか理解した結果、従来の図書館建築が持っていない大きな流れを図書館建築にきちんと出会わせる、それも本質的な時間・空間を共有する方向にキハラが動いてくれたのは面白いと思いました。若手だけでぶいぶい言わせていると「面白い、勉強にはなった、けど……」となって終わったかもしれないですね。


  • 李:

それにプラスして、内沼さんや洛西さんが関わる意味も、我々は共有しているけれど、実際はかなりハイコンテクストだと思います。来ている参加者わかってもらうためのきっかけ、フックはいるかも。


  • 岡本:

今日みたいな企画をやってコンテンツとして配信することもそうだけれど、事前に見ておいて欲しいものも示していきたいと考えています。ただ参加して先生の講演を聞くだけではなく、ちょっとは自分の中で何か持ってきてほしいし、そのためにコンテンツを流すことは当日まで考えないといけない課題だと思っています。



リアルスペースとしての図書館は知的好奇心の渦に
  • 李:

ここで本番に向けて、内沼さんからコメントをお願いします。


  • 内沼:

いま、電子書籍とかの話題は非常に盛り上がっています。その議論についてコメントを求められることもあるし、開発・編集に関わることもあります。そうなると「本って何か」、「本屋ってなにか」という話題にぶつかって、盛り上がるんです。

でも「図書館」はもう一つ足りない。というか、いままで会わない、閉じた場所にあるという感じがします。出版業界とかも比較的閉じているが、まだ顔は見えるんです。電子書籍の話題になってからだんだんほぐれてもきたのだけど、図書館はまだ全然みえてこない。業界の人ともあまり会ったことがないですね。


  • 内沼:

僕は図書館の位置付けってこれから変わってくると思っています。リアルな図書館が持つべき役割とか。電子書籍の時代にどう本を手に取るかとか。

リアルな本屋が数として減る中で、公共図書館はいままでリアルの本屋さんが担っていた意味もある程度、担わないといけない、知的好奇心の渦になっていかないといけないと思っています。それはリアルスペースだから。

地域の人々の知的好奇心とか、あるいは観光目的で行った図書館で、その周りの情報とか。最近は聖地巡礼と観光がどう違うかも考えているんだけど、巡礼はその土地、背景に対して興味、知的好奇心があるんですよ。あるものについて凄く興味を持ってしまったから行かないと気が済まない、そこの歴史とかにも興味がある。そうすると、その巡礼先の図書館に地域の情報が集まっていたりすればいいと思います。

本の電子化が進めばたいていの情報はインターネットで検索できるようになるかもしれないけれど、それでもリアルな図書館がある意味は人だと思います。文字に書かれた情報以外のものもリアルな図書館にないといけないんじゃないかなと。あるいは本を介した人と人との出会い。

巡礼だったら、わざわざ出かけていった先の情報がネットで探せる情報では意味がないでしょ。ネットで検索できない情報は人、人の頭の中。そういうものまでカバーして行くような、リアルな場所で知的好奇心が集まる空間ってどういう場所なのか、考えないといけないと思います。



「本を置き去りにする」アプリ
  • 洛西:

内沼さんと企画したアプリをいま開発しているんです。それは、場所に紐づけて本がおけるというもの。iPhoneを持っていると、その場所に紐づいた本が出るとか。漱石の小説の舞台になった場所とか。「これは内沼さんが失恋したときに読んだ本」とかも出てきてもいいと思います。何を投稿してもいい。


  • 内沼:

本をGPS上のある場所に置き去りにする、というアプリです。


  • 李:

僕は「リアルアマゾン試論」というテキストを書いたことがあって、まさにいまみたいなことを描いていました。それが少し違うのは、書架での移動もGPS情報とつなげることで追体験できるとかかなぁと。あとは聖地巡礼で言えば、それは昔からあったことなんだけど、いま面白いのは、『らき☆すた』の鷲宮のような拡張聖地巡礼。歴史をフィクションが補って、さらに共有記憶がCGM的に生成されていく。それがきっかけで地元の人とコミュニケーションしたり、ということが実際に起こっています。

歴史性もそもそもは記憶に紐づいているもので、その記憶の形態がいろいろ変容しているものです。それを呼びおこす環境がどんどん変化していて、そこから本や本屋や図書館の在り方も変わっていくんじゃないかなと思います。アプリやカーリルもその流れかと。

そういう更新がいろんなところで起こりつつあるのは間違いなくて、そこでキハラみたいな図書館業界で実績を築いてきたところが動いているのは意味があると思います。


  • 岡本:

フォーラム主催者であるキハラにおもねているわけではなく、本当に面白いと思うのだけど、キハラは今年で創立96周年を迎えるんです。そして、100年に向けて更新して行こうとしています。図書館の世界では大手なので、いままでどおりでもいいはずなのに、100年企業が自らを更新してこのフォーラムをやろう、と言ってくれたのはすごくいいことだし、意味のあることだと思っています。

100周年で社屋を建てる、とかいうんじゃない。これをできるってことはキハラという会社がメーカーでありながら、見えない価値を考えてくれる会社なんだな、と思わせてくれる。このフォーラムが、キハラ100年に向けた最初のスタートになればいいと思っています。


  • 内沼:

本をセレクトする人間としての観点も当日は提供したいと思っています。


  • 李:

キハラのブースでは内沼さんのセレクトした本も展示します。


  • 洛西:

内沼さんはアイディアも凄いので、それも是非見たい。


  • 内沼:

図書館に来ない人を来させるためのアイディアとかも更新しないといけないと思います。


  • 洛西:

どこかの図書館がやってた福袋*12みたいな?


  • 内沼:

それも僕のアイディアが元ネタ。パクってもらっていいんだけど、そんなのだけじゃないと思う。現代の図書館に人を呼び込むときに、いまは読み聞かせのイベントくらいしかないけれど、それも更新しないといけないと思っています。


  • 岡本:

そこは企画としても挑戦したいですね。毎年、図書館総合展の課題は、フォーラムは人がいるがブースは閑散としている印象を受けます。フォーラムに来た人がブースにも来るようなしかけをつくりたいですね。

いまお願いしているのだけど、キハラのフォーラム登壇者がブースに来るだけでも違うでしょう。また、フォーラム参加者にブースを先に見てきて、とお願いしておくとか。あとは、内沼さんの本はフォーラムに来る前に読んできてほしいと思います。来る人には読んで、持ってきてもらえればサインも貰えるでしょう。


  • 内沼:

『パターン、WikiXP』も持ってこなくていい? 


  • キハラ:

ブースに置いておけばいいですね。

ここで内沼さんは所要のため退場


「面子が豪華だから、で参加して欲しくはない」
  • 岡本:

ここで企画に関わっている超若手、ARGのインターンである筑波大学の4年生有元さんから。この案件に関わって5ヶ月くらいになりますが……


  • 有元:

もう1人のインターンと相談して、どうしようか……と話したときに、いままで出会った人とコミュニケーションネットワークをつなげるのが楽しいのでは、と言われたんです。今年の2月にあったARGカフェ*13でお会いした李さんと仲良くしたいな、と思って、この企画に関わることにしました。


  • 李:

ありがとう。有元さん(笑)。


  • 岡本:

実際、有元さんは、この件をかなり担当していて、企画全体の元締めは彼女に移っています。そこで、ここまでやってきて率直な感想を聞きたいです。

私が少し危惧しているのは、若手がベテラン建築家ワークショップするのは面白いと思うのだが、学生の視点から突っ込みはないか、っていうこと。

逆に言えば大学の学期期間中で、下手したら講義抜けて金払ってまで来る魅力が、このフォーラムにあると思いますか?


  • 有元:

魅力あるものにはしたいし、豪華な面子の集まっているフォーラムだと思っています。このフォーラムは第1部トークセッション、第2部はワークショップ形式で参加者の皆さんにも手を動かしてもらう、新しい形式のフォーラム。

やっぱりフォーラムって話を聞いて帰るだけ、が多かったのだが、トークショーで話を聞いて、そこから何を考えてワークショップでやるか、というのが大事だと思っています。

面子が豪華だから、で参加して貰いたくはないし、ワークショップに積極的に参加するような強い意志が必要じゃないかと思います。面子が豪華なので集客は見込めるとは思いますが、そんなんじゃつまらない。


  • 洛西:

大学の講義で似たようなことはやっていないんですか?図書館情報学で学生は何を学んでいるの?岡本さんみたいな人が先生?


  • 有元:

淡々と座学かなぁ。


  • 洛西:

図書館のデザインが変わってきている、というような授業もあるんだろうし、学生の間で議論したりしないの?


  • 有元:

うちの大学の問題とも思っているのですが、学生同士が話をする機会と場所はなかなかないんですよ。今年図書館ラーニングコモンズが出来て学生同士が自由に議論する機会を提供したいとも思っているのですが、うちのキャンパスの学生はすぐ授業が終わったら家に帰ってしまって、横も縦もつながりがないんです。

今年の6月に図書館情報学若手の会という会も作ったのですが、それまではARGカフェみたいな機会だけで集まって、それでつながりが終わっているんです。

図書館業界には凄い人もいるのにつながる機会がない。もったいないなぁ、って。そこでつながる機会を提供したいし、知らないからそういう機会に飛びこまないのだと思うので、もっと色んな人に現状を打破するようなパワーが生まれたらいいと思っています。


  • 李:

2月のARGカフェで僕も筑波に行ったんだけど、業界に詳しくない僕でさえも図書館情報学の閉鎖性と外からの視線がそこにあらわれていたと感じました。一方でそれは筑波大学の中の構図にもなっていると思います。

環境としても場にそれが出ていて、そこが僕が関心を持ったきっかけなんです。そういう場所だからこそpingpongワークショップで学生に関心を持ってほしいと思ったのだが、実際やってみたら、最初は思った以上に学生のみなさんの志向・行動が内向きにみえました。これは、長い時間を経た環境と個人のインタラクションの結果なのだと思います。

その中でラーニングコモンズは凄い頑張っていると思います。行くたびに少しずつコミュニケーションがあの場で生まれている感じがするんですよ。そういう試みとpingpongみたいなのをうまく使っていただいて、それにキハラフォーラムもつなげることができたので、図書館情報学図書館を変えるきっかけになればいいと思ってます。


  • 岡本:

今回、キハラのご厚意で学生に対する優先枠もあります。有元さんたちが中心となっている図書館情報学若手の会ALISなどでアクティブに活動している人になるべく来てもらおう、と思っています。そこから新しい風が吹くと面白いよね。

イベント運営者としては不謹慎かもしれないが、ある程度まとまりかけたところを最後に、どこかに予定調和の雰囲気が生まれていたら、若手が「ぬるいこと言ってるんじゃねえ」くらいの発言をして崩してくれてもいい。その方が参加した人たちの本当の満足感、「いい話聞けてよかった、手を動かせて良かった」を持って帰れるかと思うな。


  • 有元:

参加者には納得しないで帰って欲しい。


  • 李:

それはよくわかります。たった1日のフォーラムで納得できるような問題は大したことじゃない。そこからアクションを起こすきっかけ、スタートになれば十分。いわゆるビジネスセミナー系は何かを持って帰らないといけない、みたいなことを言うのだけれど、1日で持って帰れるようなものなんて大したことじゃない。

そこからどう行動を変えていけるかが重要だと思います。有元さんが言っていることもまさにそういうことだと思うので、学生がそう言ってくれると心強いです。



カーリルにとって図書館建築とは? 建築図書館の関係とは?
  • 李:

洛西さんに。カーリルみたいなことをやっている人は、図書館建築みたいなものをどう考えているんですか? それとは離れたところでサービスを動かしているわけですが。


  • 洛西:

中津川iPad実験*14などもやっているので、外部者の視点で面白いと思ったことを実験的にやっています。「自分たちに図書館は変えられるんだ」という感想を持って帰ってもらいたいなぁと。

館内で検索できるシステムはあるが、あんなのは我々に任せてくれればもっとよくなるのに……とか。あと我々はソフトの開発は得意なので、図書カード作るとか、そのデザインを活かして何かできたら、とか。


  • 李:

図書カードは作りましょうよ、キハラで。それと建築シームレスに、重ねて考えずにはいられないものだと思っています。いままで建築図書館と関係ないところで巨大化した産業で、社会における図書館の役割が色々変わってきたり、変わらなかったりとは無縁だったんですね。名目上は色々な言い方をするが、発想はかけ離れていたんです。

図書館フィジカルと情報が重なる場で、建築は環境の一部でしかないと思ってます。いま、pingpongプロジェクトの一環で都市の地図にpingpongマップを重ねて見ているのですが、それを観察すると分かるのは、もう建築が基本モジュールではないということ。フィジカルなものも情報も一緒になったネットワークが時々刻々変化している。それを僕たちは動きの中で体験しているのです。

そうなると当然設計やデザインの方法も変わるし、それができるのは我々のようなチームなのでは、と思います。


  • 洛西:

カーリルは社内に2つの強みがあるんですよ。技術的なところとインタフェースなどのちゃらちゃらしたところ。そっちはメディアとしての役割があると思ってます。

スタンプラリーとか、ある本を日本中から全部借りる企画を考えたりとかしてます。もし借りられていない図書館があったらTwitter上で情報を共有して参加者が借りる、とか。いままでの若干、硬いイメージの図書館に、どんどん気づきを与えていきたいなぁと思います。



フォーラム・図書館総合展メディア戦術
  • 洛西:

フォーラムの話を聞いて、このフォーラムは図書館総合展においてナンバー1ワークショップにはなれると思うけれど、さらにメディアにもアピールできるような、テレビ取材とかは考えているんですか?


  • 岡本:

何がナンバー1かはいろいろ請け負っている関係上、明言し難いですね(苦笑)。ナンバー1よりオンリー1の時代(笑)ですから。でも、メディアについては、今回、図書館総合展放送局というUstreamの中継が入るので、トークセッションの現場とワークショップの現場はきちんと記録したい。最低限それはやるつもり。

同時に、ネウェブプロデューサーとしてこういうのもなんだが、ウェブでできることには限界もあります。今回、図書館総合展には総務大臣である片山善博さんが来るんです、国会が大変でなければ。元鳥取県知事で、当時、鳥取図書館を改革した人です。

政策的に図書館の重要性を考えている人が、はじめて総務大臣として話すので、メディアからの注目度も高まるでしょう。便乗と言ってはなんですが、本フォーラムの事務局としてもメディア向けにアピールしていこうと考えています。



3年後には1つ、徹底的に新しい手法で図書館をつくろう
  • 洛西:

行政系、自治体のビジネス設計にこれから使えるだとか、っていうキーワードが要るのではないでしょうか。司書がこの話題を持って帰って……とか。


  • 岡本:

本当に来てほしいのは、このテーマなら図書館員ではなく他の自治体職員なんですよね。個人的に横浜市の人は呼ぶが、他にもパイプのある自治体から招いて、そういう人たちが持ち帰って自分たちの自治体でもう1回ワークショップをやってくれるとかいいなぁと思います。


  • 李:

ずっとお伝えしているように、今回のフォーラムの時間内でpingpongのワークショップすべてをやるのは不可能なんですよ。正直、新しい方法の紹介、予告体験くらいにしかならない。関心を持ってくれたところとキハラが取り持ってくれる形で、本格的なワークショップにして見せるのも重要だと考えています。

これを起点にして、キハラが本格的に1つ、図書館を作らないと説得力がないんですよ。「言っていても、やってないじゃない」では身も蓋もないですよね。

どこか1つでもやることで「ほら、できるじゃん」と言わないとね。岡本さんがキハラのコンテンツとして、今回のワークショップのフルバージョンをパッケージングするのがいいのではと思いますが。


  • 洛西:

フィードバックとパターンに基づく」ワークショップ、というのは?「作ったんだけど、もっと変えて欲しいのに」というのは建築の先生も言っていましたよね。コミュニケーションロスがあるのかも知れない、図書館の人は変えたいのかも知れないがどうやったらいいのか、……という。


  • 李:

建築の人は建築で変えることしか考えないが、図書館アーキテクチャとコンテンツの重なる場だと考えれば、やりようもあると思いますよ。


  • キハラ:

図書館が変えるのは蔵書があふれたときで、書棚が増えるだけですね、現状は。


  • 李:

現状からの連続性の問題はあると思います。たまった蔵書や、ぐちゃぐちゃだが生きているシステム。それをゼロにはできないですよね。それを考えたときのフィードバックは必要で、pingpongは、ああいうシステムを埋め込めば、図書館を作るときだけでなくずっと使えるし、システム自体も変えられると思います。それと環境をつなげば基本的なプラットフォームになる、それを建築の中につなげることが重要だと考えています。そうすれば建築におけるフォードバックとも言えるんじゃないかと。


  • 岡本:

ネーミングも含めて、ワークショップを1つの手法に設計して、それがキハラの仕事に入っていって、3年後には建物が1つは立っているのが成功イメージかと思います。現実を1つでもいいから変えないと何も変わっていかないですよね。


  • 李:

全部でなくて、ある部分だけでもいいと思いますよ。ただそのかわり、そこは徹底的に新しい手法でやった、というのが必要になると思います。


  • 岡本:

大きくなくていい。公民館図書室レベルでいいから、刻んでおかないと何も変わらないですよ。フィードバックの話で行くなら、フォーラムに参加する人のフィードバックも受けるわけだし、2〜3回目もやりながら実際に作るといいかと。公共図書館でなくてもいいから何か1つ現実を変える、それをみんなの共通のゴールにしたいですね。


  • 李:

キハラが本気を出せば1館は出来るでしょう。ディレクションからでしたらすぐにでもできますよ。設計事務所さんと協同でできますよ。


  • キハラ:

柳瀬さんは食いついていたので、むしろ奪い合いになるんじゃないかと思いますよ。


  • 岡本:

建築のお2人、柳瀬さんと鳴海さんは李さんの話を凄い面白がっていましたよね。


  • 李:

僕らはキハラ・岡本ラインについていくので(笑)


図書館のデザインを体感できる貴重な機会
  • 岡本:

最後に李さんと洛西さんから来場者へのメッセージを。


  • 洛西:

図書館をデザインできるのはこのフォーラムぐらいしかない。それを自分で体感できる貴重な機会。カーリルもユーザ参加型なので、そういう意味での裏話、開発手法やコンセプトはどんどん伝えていきたい。ワークショップでは僕もグループの1つに参加するので楽しみ。あと、今回持ち帰ったことは図書館の場ではなくても、Twitterで呟けば広がっていくイメージ。そういうのが今回、体験できるといい。自分が発信者になって体感できるのは凄い機会。その一部になりましょう。


  • 岡本:

私は登壇者を見ていて、図書館あるいは建築家の人の中で洛西さんだけオンラインの人、と見えてしまうんじゃないかと危惧しています。しかしそれはいまの時代ナンセンスだと思います。

デザイン、という切り口で迫ればどこでどういうデザインをしているかは本質ではないんですよ。洛西さんの手法や内沼さんからの手法から学ぶことはあると思います。来場者には誰の話を聞くかは慎重であって欲しいと思っています。

「洛西さんはまあいいや」と思ったらめちゃめちゃもったいないですよ。このフォーラムの登壇者は、揃っているようで散らかった面々で、いい感じに散らかったおもちゃ箱のよう。

その中での洛西さんの振舞は面白いんじゃないかと思います。洛西さんはLibrary of the Yearの授賞式に出ないでこちらに出てくださる。フォーラム終了時点で大賞をとって盛り上がる、という流れになるといいな(笑)。


  • 李:

くす玉とか用意しておこう(笑) 。


  • 洛西:

カーリルはブースでも色々やります。ネタ・ベタともに。地べたをはった営業をします。


  • キハラ:

いろんな小道具を用意しましょう。


  • 洛西:

はっぴを用意しましょう(笑)。



皆さんも含む我々で、新しいものを作っていきたい
  • 李:

自分はいままでの流れでほとんど言いつくした感じがあるけれど、この集まり自体がキハラを含めて、複数のインタラクションみたいな感じだと思います。

それぞれ1つによっていくのではない、このメンバーでしかできないものがあると思います。

それが共有出来つつあるので、さっき洛西さんが言ったように何かキャッチーなキーワードは必要だと思っています。そこは考えましょう。

で、あとは、来る人に対してはさっきも言ったとおり、フック、きっかけはいっぱい用意します。それを皆さんが状況や個人的な関心からどう活かすのかは皆さんの判断です。

ただ、きっかけの多様性は他のブースやフォーラムには負けません。登壇者がどう、ではなく、コンテンツとして負けないものが用意できると思っています。

それを体験して、それに参加者がアクションを起こすことが図書館全体を変える契機になる。このフォーラムだけではなく、われわれ、参加者や図書館ユーザーの皆さんも含む我々で新しいものを作っていきましょう!




自分が一切会話に出てこないのはずっと記録係していたからです(笑)

多くは語りませんが、見出しにする箇所を選んだのは自分なのでそれでどこを面白いと思ったかはわかって貰えるのではないかとー。

図書館総合展のフォーラムだけでは終わらない、「3年後には1つ、徹底的に新しい手法で図書館をつくろう」という方針を示しているあたりも含めて、大注目の企画ですっ。

*1ACADEMIC RESOURCE GUIDE [まぐまぐ!]

*2matt | atlas ver.beta

*3numabooks|内沼晋太郎

*4Nota Inc.

*5:2009年2月から4回に渡りスルガ銀行d-laboで開催された、長尾真国立国会図書館長のシリーズ対談企画「図書館は視えなくなるか?―データベースからアーキテクチャへ」。シリーズを通じ李氏がコーディネーターを務めた。

*6:これは出典にはない注。対談シリーズの記録については次のエントリ等も参照: トークセッション『自律進化するデータベースはつくれるか』(長尾真 × 池上高志)を聞いてきました - かたつむりは電子図書館の夢をみるか, 「構造化すべきものを選ぶことが図書館の役割」、「Googleのケツをなめるべき」、「電子図書館しかない」etc...印象的な言葉の飛び交うトークセッション『もう、「本」や「図書館」はいらない!?』(長尾真×山形浩生) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか, 「書かれたものをばらばらに組み合わせるとお前のものというのをどう越えられるか」/「書店はなくなる可能性はある」、「(本も)おそらくなくなる」、「専業の書き手もいなくなる」?!...トークセッション『言語とはなにか:書く、伝える、遺す』(長尾真×円城塔) - か, 「主役は人間からメタデータの次元に」、「個人の知の世界と、全体の知の世界とのギャップをどう解決するか」、「『図書館』から『図書環』へ」・・・トークセッション『これからの知―情報環境は人と知の関わりを変えるか』(長尾真×濱野智史) - かたつむりは電子図書館の

*7:詳細は国立情報学研究所webページを参照:http://ci.nii.ac.jp/info/ja/web_api_contest_2009.html

*8カーリル | 日本最大の図書館蔵書検索サイト

*9:これからの図書館のあり方を示唆するような先進的な活動を行っている機関に対して、NPO法人 知的資源イニシアティブ(IRI)が毎年授与する賞。2006年より毎年、図書館総合展のフォーラムとして開催されている。2010年はカーリルのほか京都国際マンガミュージアム神戸大学附属図書館デジタルアーカイブ事業が大賞最終選考対象に残っている。公式サイトURL:http://www.iri-net.org/loy/

*10データベースエラー

*11独立行政法人産業技術総合研究所社会知能技術研究ラボ研究院。プロフィールの詳細は研究紹介ページ参照:http://eto.com/lab/

*12:2010年1月に兵庫県宝塚市立西図書館で、子ども向けに「本の福袋」の貸出が行われた。詳細はカレントアウェアエネスE「図書館司書が選んだ「本の福袋」の貸出」等を参照http://current.ndl.go.jp/e1007

*13:2010年2月13日に筑波大学春日エリアで開催された第7回ARGカフェ。参照:http://d.hatena.ne.jp/arg/20100215/1266224187

*14:詳細はカーリル公式ブログ等を参照:http://blog.calil.jp/2010/05/ipad28.html

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