かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「基盤は進化する:WebcatからCiNii Booksへ 紙onlyから+電子リソース管理へ」(「大学図書館と共に拓く 新たな学術コンテンツ基盤の地平」 国立情報学研究所平成24年度オープンハウス ワークショップ)


毎年6月は国立情報学研究所のオープンハウスの時期ですよ!


ということで現在自分は特別会議室で開催中のセッション「大学図書館と共に拓く新たな学術コンテンツ基盤の地平」に参加中です(概要については上記リンク先参照)。


午前の部では「Part1:基盤は進化する〜 WebcatからCiNii Booksへ 紙onlyから+電子リソース管理へ」と題し、最近も新機能がリリースされた*1CiNii BooksとそのAPIの活用事例、プロトタイププロジェクトがはじまった電子リソース管理データベース(ERDB)構築プロジェクトとその可能性に関するご発表・質疑がありました。
既にTogetterがまとまっているくらいなので(汗)、自分があらためてブログをまとめる必要があるのかは謎ですが・・・会場からは「期待」って声もいただきましたし、アップしていく方向で!
幸い会場に公式無線LANも入れていただいていたので、午前の部については昼休みのうちにアップです(笑)
例によってmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での記録となっております、ご利用の際はその点、ご理解願います。
誤字脱字、表現の違い、事実誤認等、お気づきの点があればコメント等にてご指摘いただければ幸いですー。



司会:森いづみさん(NII学術コンテンツ課副課長)

ワークショップの趣旨説明(尾城孝一さん、NII学術基盤推進部次長)

  • 会に先立って今日のワークショップの主旨、背景を少しお話ししたい
  • はじめに・・・NIIの歴史を紐解くと昭和51年発足の東大・情報図書館学研究センターにまで遡る
    • 東大総合図書館の上の方にあった。NIIはそもそものはじまりから大学図書館と切っても切れない縁があった
    • その後・・・東大文献情報センター⇒学術情報センター(NACSIS)と変遷
    • NACSIS時代が一番長く、組織としても急速に発展
    • 平成12年にNACSISを廃止し国立情報学研究所(NII)へ
      • NACSIS時代にも研究部門はあって、教員が所属していたが、コンテンツやネットワークの事業を担う部門よりも規模が小さかった
      • 研究所に変わることで比重が逆転。現在では研究部門の方が大きい
    • 平成16年に国立大学と同じく法人化。大学共同利用機関法人情報・システム研究機構の一員に
  • 組織形態の変化に伴ってネットワーク・コンテンツの事業関係予算がだんだん厳しく
    • 人もどんどん減ってきている/それに伴ってNIIでの仕事の進め方/大学図書館との関係も見直す必要に迫られている
    • 見直しの一環・・・学術基盤推進部に4つの「室」を設置
      • コンテンツシステム開発室はそのうちの1つ
      • 教員が配置されている/職員と教員が一体となって色々な事業を進める体制ができつつある(今年の4月から正式に)
      • 室長は皆さんご存知、大向一輝先生。職員といったいとなって色々なサービスの開発を行なってきている
      • CiNii Booksもこの開発室が中心になって開発してきた
  • 一方、大学図書館との関係は?
    • 従来・・・NIIの事業に大学図書館が参加/協力する関係
      • 誤解を恐れずに言えば、NIIは「お上」。下々の図書館の皆さんに上意下達で仕事をやってもらってきた
      • しかしNIIも研究所となり、予算も人も厳しい。大学図書館も同様。もう上意下達の関係なんて成り立たない、変えなければいけない
    • 両者のリソースを持ち寄って、出しあって、平等な立場で連携・協力していく関係構築の必要
      • 大学図書館・NII関係者で話し合い、国公私立大学図書館協力委員会との間で一昨年、協定を結ぶ
      • 電子ジャーナルや機関リポジトリ、電子リソース管理・提供等の課題に取り組んでいくことを協定書中で確認
    • そのための体制も整備しつつある・・・連携・協力推進会議の設置
      • 会議を中心に色々な課題に取り組んでいく
      • 大学図書館コンソーシアム連合JUSTICEもこの下に置かれる形
      • 「電子情報資源を含む総合目録データベースの強化」に取り組むために、「これからの学術情報基盤システム構築検討委員会」を設置、昨日会議を開いた
        • 「これからの〜」委員会の下で電子リソース管理(ERDB)に取り組む
      • 機関リポジトリのこれからの推進母体も、この連携の中に位置づけていく
  • NIIと大学図書館の連携・協力の活動の場をいろいろ作って行きたい
    • 情報・課題を共有しながら、一緒に取り組む事業を行う
    • その場の中での活動を通じてこれからの図書館・学術情報基盤を担う人材を育てていきたい
    • 本日のワークショップは今後の大学図書館・NIIの連携協力を進化させ、学術コンテンツサービスの未来を拓く第一歩。小さくても第一歩となれば、主催者としては嬉しい
  • とはいえ、何はともあれ本日のプログラムを楽しんでいただきたい!

CiNii Books

「NACSIS WebcatからCiNii Booksへ」(関戸麻衣さん、NII学術コンテンツ課)

  • 今日の話・・・はっきり言って「大学図書館の方へのお願い」
    • NACSIS Webcatは2013年3/8(金)の昼で終了。ぜひ早めの乗り換えを
    • WebcatPlusは継続します
  • CiNii Booksとは?
    • NACSIS-CATデータをCiNiiで利用できる。従来出来なかったような検索もできる
      • 特定の地域/図書館、所蔵一覧からの絞込み等も実現!
    • 2011.11に公開。アップデートを重ねてきた
    • 最近のアップデート:
      • 認証機能の追加。CiNiiを契約していると所蔵館リストで一番上に契約館の所蔵が出てくる
      • OpenURL設定すればリンクリゾルバも表示できる
      • 一昨日公開。書影やソーシャルメディア連携、Mendeleyへの書き出し実現等
    • 連携状況のまとめ:
      • 図書館での設定がいるもの・・・OPACやリンクリゾルバ等
      • 設定すればGoogle⇒CiNiiに来た人を自館のリソースに導いたり出来る
    • CiNii Booksは便利! ぜひ乗り換えを!
      • リンクだけではなく名称の書き換えも!
    • CiNii Books API
      • これまでWebcatでできなかったような活用もできる
      • 詳しくは飯野さんから
  • CiNiiは日々進化し続ける
    • ご意見・提案も受け付けている
    • これからの図書館サービスを一緒に作って行きましょう!

「リンクリゾルバとCiNii Books API」(飯野勝則さん、佛教大学

  • 司会・森さんより:実際にサービスを作っているGood practiceが飯野さんからのご発表
  • 佛教大学ではCiNiiにお世話になっている
    • 特にAPIのヘビーユーザ
    • CiNii Articlesに比べるとまだBooksのAPI活用は少ないらしい。そこで一例として佛教大学の話をする
  • 前提:なぜCiNii Books API
    • 佛教大学・・・去年の4月にディスカバリサービスを導入
      • 本、冊子、論文等を一つの窓からワンクリックで探せるシステム
      • その検索結果から、正しく一次情報にたどり着くシステムが必要と気づく
      • そのキーがリンクリゾル
    • 従来のリンクリゾルバそのままでは機能が足りない・・・API
    • ディスカバリサービスの課題:
      • 購読中の電子ジャーナル・ブック
      • 所蔵する冊子
      • リポジトリ
      • 学外機関のリソース、それぞれどう提供するか?
    • 従来のリンクリゾルバでは最初のものだけ対応
      • ほかにどう対応するか・・・APIの可能性を実験
    • 購読中の電子ジャーナル・ブック
      • リンクリゾルバならデフォルトで解決できる
      • 検索結果にリンクリゾルバへのリンクが出る⇒クリックすると中間窓⇒さらにそのリンクのクリックでコンテンツへ
    • 冊子体の雑誌・図書の所蔵がある場合
      • 書誌情報/書誌へのリンクを登録することで解決
      • OPACのURL等を登録すればいい。デフォルトではできないが解決
      • ここまでは工夫をすればCiNiiがなくてもできたのだが・・・
    • リポジトリ(CiNii Articles)
      • CiNii Articlesにどうリンクする?
      • リンクリゾルバデフォルトではCiNii Articlesのコンテンツへリンクできない
      • そこで書誌情報からArticlesのAPIをリアルタイムで検索⇒リンクを表示させてみた
      • CiNiiへのディスカバリサービスからのシームレスな誘導が可能に?
      • APIの動的利用でリンクリゾルバが活用できる!
    • 学外機関所蔵の冊子体の雑誌・図書
      • CiNii BooksのAPIでもArticlesのそれと同じことができる
      • 書誌情報からAPIを使ってCiNii Booksを検索、他大学の所蔵情報をリンクリゾルバに表示!
      • APIによってリンクリゾルバを動的なものに。ダイナミックリンクリゾルバ!
    • ネットワークがつながったのでデモを
      • (実際の画面を見つつデモ)
  • BooksのAPI組み込みで色々なことが変わった:
    • 通信教育課程・・・自宅周辺の所蔵を確認できる
    • 本学未所蔵のものへのシームレスなリンク
    • リンクリゾルバの強化
    • APIには大きな可能性がある

質疑応答

  • Q. 大学図書館員。飯野とはお付き合いもあって色々、アイディア使いたいとも思っている。ただ、飯野さんは私立大学の図書館員としては特殊。私立大学では図書館にずっといるわけではなく早ければ2-3年で異動する。腰を据えてプログラム開発、とはいかない。国立大学中心に出てくるアイディアを私立大学とも共有できないか。APIのソースは色々あるのだろうが、まるで積み木を重ねるように、「こういうものが欲しければこう」というライブラリを作ってくれると嬉しい。
    • A. 飯野さん:実はまさに午後、そういう話をしようと考えていた。ネタを取られた(笑) 午後も詳しく話すが、APIの活用をNIIも願っている。敷居が高い部分はあるので、その水平展開の仕組みは必要。詳しくは午後。
  • Q. 司会・森さん:NII中心のライブラリがいい? コミュニティ中心がいい? 関戸さん、どうでしょう?
    • A. 関戸さん:自然にコミュニティができあがることは期待したいが、NIIでできること、景気づけみたいなこともできるといい。他のNIIの方のご意見は?
    • NII・大向さん:API普及のために、Articlesではコンテストを2回開催したりもした。その載ったものはNIIでリスト化してほしい、とお話があったのでリストを出している。そういうことはこちらでやっていきたい。もちろん情報交換・サンプルコード共有となっていくとコミュニティの力によるところが大きいと思うので・・・という話をパネルディスカッション(午後)にしようと思っていたんだけど(笑)
  • Q. 大学図書館員。CiNii Booksについて。学生に利用もさせているのだが、WebcatPlusは存続するということで、そちらとの使い分けへの意識をお聞きしたい。
    • A. 関戸さん:WecatPlusは学術コンテンツ課はノータッチの別プロジェクトで、一般の方向けに幅広く本の情報を集める。CiNii Booksは学生・研究者向けにお使いやすいものになっていくと考えている。
    • 森さん:NACSIS-CATのデータをうまく使いつつ、対象ユーザは違う別サービスと考えていただければ。
  • 森さん:APIについて、皆さんどんなアクションをすればいいか、ピンと来ましたか? API、聞いたことある・・・人は多いけど会場、活用できる人は・・・ぐっと減りましたね(会場に聞いて)。飯野さん、どうしましょう?
    • A. 飯野さん:僕自身活用しきれているとは言えないし、そういう部分はコミュニティの力なのかな、と思う。
  • 森さん:図書館員が手作りでやることも難しいと思う。本日、会場の半分はベンダー。なにかできるサポートの話などない?
    • 会場・ベンダーの方:開発者の立場からすれば色んなことができると思うが、図書館システムってけっこう大きくて、「こういうことだけできますよ」というのがどれだけ嬉しいのかよくわからない。コミュニティでメーリングリストとかがあれば、そこに「こんなことできますよ」と投稿するのは敷居無く出来ると思う。いきなりベンダだとお金の話になったりしそうで頼みづらいのでは、と思う。コミュニティみたいなものがあれば、空いた時間にベンダからコメント、なんてこともできるかと思う。
    • 森さん:敷居を下げる、ということがキーワードかと思う。コミュニティによって敷居が下げられればいい。午後のパネルでも飯野さんに登壇してもらうので、その話もできれば。

ERDB

「電子リソース管理データベース(ERDB)プロトタイプ構築プロジェクト概要について」(田邊稔さん、NII学術コンテンツ課)

  • 結論から言うと:NIIでこれから各機関、JUSTICE、出版社、ベンダと協力して電子リソース管理のためのデータベースを作る、という宣言をします
  • ERDB:電子リソースの書誌情報・契約情報を一元的に管理した、電子リソースの総合目録
    • 一言で言えば電子版のNACSIS-CAT。そういったものを作る
    • 図書館・電子担当者の契約等の業務負担の軽減・支援
    • 利用者のアクセス支援。各種情報源への最適なパスを導くことを支援したい
  • 構築概念図:
    • 各ベンダの情報を収集・名寄せして書誌情報のショーケースを作る
    • そこに各大学図書館の契約情報を取り込んで紐付ける
    • それらの情報をOPACやディスカバリサービスに提供する
    • 紙・電子双方を扱うアクセスを利用者に提供!
  • 今年度・・・そのプロトタイプを作る
    • これまでNIIでもERMS実証実験だったりヒアリングだったりアンケートだったりをしてきたが・・・
      • ERMSを作ろうとしているわけではない
      • 特定商品の検証でもない
    • あくまでプロトタイプの作成と実験
      • 12機関から協力をいただいて検証していく
      • ナレッジベースの質保証や名寄せ、コスト試算などをやっていく
      • 今年度中に事業計画を作る⇒次年度からはきちんとした事業としてやっていけるように
  • スケジュール:
    • プロトタイプα版を作ってみんなで検証
      • 段階的に良くしていく
    • 年内には最終取りまとめをする
      • 来年度以降への改善点をまとめる
  • さらに詳しいシステム概念図を用いた説明
    • (これは図なしでは記録しづらいので興味がおありの方はUstream映像の確認を)
  • まとめ:
    • 電子リソース管理・有効活用にはERDBがいる
    • NIIだけではできないので大学図書館との連携がいる
    • ERDBプロトタイプ構築プロジェクトは今後の学術情報システムの基盤を作る、息の長い活動の最初の一歩

九州大学の取り組みから見た必要な基盤構築」(香川朋子さん、九州大学

  • 紙から電子へ:
    • 購読では紙と電子(電子の方が多い)の差はより広がってきている
    • 利用面でも紙は安定しているが電子リソースのフルテキストダウンロードは伸び続けている
  • 電子リソース管理のワークフロー:
    • 紙と電子でフローは異なる。契約方法や管理項目が違う
    • それぞれのリソースに適した管理が必要である
  • そこで九州大学では電子リソース管理の基盤整備を進めてきた
    • Serials solutionsのシステムを使って情報を一括管理
    • そのシステムから出力したデータに書誌情報を紐付けてディスカバリサービスに取り込む
    • 利用者はそのディスカバリサービスからリンクリゾルバを介して本文へ
  • ERMシステムの利点
    • ERMSがない場合・・・Google等のサーチエンジンで探すと出版社サイトは上位に出るものの、クリックするまで購読の有無が不明
      • OA情報はなかなか見つけにくい
    • ERMSによって・・・利用できる電子ジャーナルのリンクが出る
      • そこから簡単にアクセスできる!
      • タイトル単位、OA、アーカイブ、パッケージ・・・その機関で利用できるすべてのオプションが表示される
      • さらにILL可能性等の利用条件も表示されるように
  • さらにERMSを基盤にサービス拡充の可能性も:
    • エンドユーザから見ると・・・一般的なサーチエンジンでは学術情報以外も出てくる/求める資料にたどり着けるかは・・・
    • 必要な検索サービスを欲しい情報に応じて選ぶ必要
    • ERMSでも、国内の電子ジャーナルや論文情報は管理できていない/単独では限界がある
    • 対応1:ディスカバリサービスの提供
      • 利用者はそこにだけアクセスすればいい
    • 対応2:国内の電子コンテンツの網羅的収集の仕組み
    • 対応3:ERDBとの連携による電子的なコンテンツのアクセス精度向上
  • ディスカバリサービス
    • 九州大学では今年から開始。うち1つがCute.Catalog
      • さらにディスカバリ・インタフェースとしてのCute.Searchも運用
    • ただし構築・運用にはかなりの労力と時間
      • ディスカバリサービスへのデータ収集のプロセス・・・それ自体の構築にも時間がかかるし他にも色々な調整がいる
      • 一大学でやるよりも大学の枠を超えて整備する仕組みがあればいい
  • 国内ナレッジベース
    • 現状・・・国内各所に散らばる電子コンテンツは網羅的に収集されていない/大学によって収集・提供状況が違う/提供元によってデータ品質が違う
    • 1つの仕組みで網羅的に収集することで、手間の重複排除/一元管理によるデータ品質向上が期待される
    • さらに海外のグローバルなナレッジベースへも登録しやすくなり、国際的な国内電子リソースの価値も高まる
    • NDL・JSTの取り組みも組み込めばさらに価値の高いサービスに!
  • ERDBとの連携
    • 今年度、NIIでERDBプロジェクト開始中・・・
    • 電子リソース管理から利用者向けサービスまで応用できることを検討しているという
    • そのメリット1:複雑な利用規定を管理することで各大学がコンテンツ情報入力の労力を省力化できる/JUSTICEによる全国調査にも利用できる/電子リソースの利用統計も収集できるのでコンソーシアムの交渉にも役立つ
    • メリット2:単独では作りにくいディスカバリサービスが実現できるしみんなで作ることでよりよいものになる/管理コストの削減にも

質疑応答

  • 司会・森さん:会場にはプロジェクト参加者も幾人かいますが、参加者の視点から何か補足は?
    • 大学図書館員・プロジェクト参加者:国内ナレッジの実現は私も興味がある。国内リソースはリゾルバの精度も良くないし、それ以前に何があるかもわからない。ERDBで皆さんが利益を享受できるようにすれば、国内ナレッジの整備も進むと考えている。ぜひERDBのプロジェクトを進めていきたい。
  • 森さん:その点について補足があれば。
    • 香川さん:海外製品は日本のコンテンツに弱くて、利用できるはずなのに使えなかったり、国内タイトルはデータの整備自体進んでいなくて、たとえば同じ名前のタイトルがあるせいでISSNが入っていないと違うものにリンクしてしまったり、ということがある。
  • 森さん:我々、図書館は25年かけてNACSIS-CATを作ってきた。そこにも電子リソースは登録できる。しかし今回、別に電子の世界のNACSIS-CATを作るようなものだということであったが、そういう方向になった経緯は? 人に振ってもいいが。
    • NII・高橋さん:色んな考え方があったと思う。CATに電子リソース情報を入れる考えもあったし、別物でやった方がとか、いろんな議論をする中で、今はCATは紙、ERDBは電子、という。ただ、一緒に検索できないとおもしろくないので、CiNii Coreのようなものを作って一緒に検索できるようにしましょう、ということを考えている。電子について弱かった部分を大学の皆さんと一緒にやりましょう、という状況。
  • 森さん:コミットしたい人はこれからどうしたらいい? 見守っていたらいい?
    • 田邊さん:今まではそういうケースも多かった。NIIだけ突っ走る。そういったことがないよう、スタート時点から大学さん、ベンダさん含めて巻き込みたい。国内ナレッジについてはNDL、JSTさんも巻き込んで、さらにはシステム連携も考えるならシステムベンダも巻き込みながらやるといいものができるのでは、と考えている。
  • Q. 私立大学の方。ERDBの中に書誌があって、そこに利用条件や契約情報をリンクする形だったが、利用条件は大学によって異なることもあるのでは? 利用条件は一対他のリンク?
    • 田邊さん:ここは概念図を曖昧に書いていて、基本的には一対他。
  • Q. しかし条件については、参加機関によっては「この条件はうちだけ」みたいなものもあると思うがどうする?
    • 田邊さん:「ある大学さんではこう」というような、所蔵情報のような見せ方になるかと思う。見せ方についてはこれから検討していく。
  • 森さん:そういった具体の疑問に関する情報交換をしながら進めていきたい。お2人とも午後のディスカッションにも登壇されるので、続きは午後に。



Part1参加者の皆さんはそのまま午後にも参加され、パネルディスカッションに登壇される方もいらっしゃいます。
午後分のアップはおそらく夕方になるかと思いますが、そちらもぜひ、あわせてお読みいただければ幸いですー。
では、自分は記録作成作業に戻ります!

「大学図書館とNIIの連携がもたらすもの:OJT(実務研修), JUSTICE, そして」(「大学図書館と共に拓く 新たな学術コンテンツ基盤の地平」 国立情報学研究所平成24年度オープンハウス ワークショップ)

午前分に引き続き、NIIオープンハウスのセッション「大学図書館と共に拓く新たな学術コンテンツ基盤の地平」参加記録、午後分です。


午後はNIIでの実務研修に昨年度、参加された方々の体験談の報告からはじまり、さらにNIIと大学図書館の関係について・・・というか「NIIってなんかなんでもやってくれそうな凄いところと思ってるかもしれないけど、実際には地方国立大学図書館における一係分くらいの人数でOCLCとかGoogleとかと対峙しているものすごい大変なところなんで、あまり頼り切らないで+一緒に参加して!」という感じの(笑)パネルディスカッションです(実際にNII/大学図書館双方を実務研修で経験した方々のお話もあって説得力抜群)。
会場の熱も徐々に高まっていき、自分も記録取りながらなのでTwitter経由なのですが一部参加していました。


では以下、例によってmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での記録となっております、ご利用の際はその点、ご理解願います。
誤字脱字、表現の違い、事実誤認等、お気づきの点があればコメント等にてご指摘いただければ幸いですm(_ _)m



司会:森いづみさん(NII学術コンテンツ課副課長)
  • 午後はまずNII・実務研修を平成23年度に受けられた方々の発表から。
  • 目的

国立情報学研究所における実務を経験することにより、高度の学術情報システムの環境に対応しうる知識と技術を修得し、学術情報流通基盤整備の中心的役割を担う。

  • 到達目標

OJT(On the Job Training)を通じて、学術情報流通基盤の構築に向けての企画・立案・実施等の手法と、対応する知識と技術を修得して、総合的かつ長期的視野を持つ。

  • 受講対象者

大学・研究機関等において、図書館、電子計算機及びネットワーク等の業務に従事する職員。

  • 受講の前提となる知識

学術情報流通基盤の構築、運用及び管理等の概要を理解している。

...

実務研修報告

「オンライン共同分担目録方式の最適化に向けて:国立国会図書館「公共的書誌基盤」活用可能性の検討」(山本豪さん、鳴門教育大学

  • 昨年度、実務研修生として活動させていただいた
    • その内容について発表させていただく
  • 御存知の通り、NACSIS-CATの運用については高いコスト等の問題が指摘され、外部書誌データの活用を検討すべきという提起が上がっている
    • 外部書誌データを最大限活用してCATに登録するとどうなるか、その課題を検討した
  • 現行CATにおける図書目録業務・・・
    • 現在の業務フローの説明
    • 平成22年度にCATで作成された国内書誌件数は約14万件/JAPAN MARCに追加された書誌数は18万件
    • しかしJAPAN MARCの書誌を使っていたのは約2万5千件、利用されていない。
    • その背景・・・書誌作成にNDLでは納本から30-40日かかる遅さ
  • 公共的書誌基盤・・・迅速性に大きな課題
    • そこで・・・まず出版情報から納本された資料について「新着書誌情報」を作って提供
      • あとで作成完了書誌を提供、の2段構えに
    • 現在の書誌データフロー
      • NDLサーチではMARC形式のデータは落とせない
      • 新着書誌情報はNDLサーチでしかとれていない
    • 運用イメージ:
      • NIIはNDLサーチから新着書誌を取得、CAT形式に変換して新着書誌として登録
      • NDLで書誌作成が完了したらNIIもそちらを取得、反映
    • そこでの問題・・・NDLサーチではDC-NDL形式でしかデータ提供がない
      • DC-NDLからCATP形式に変換するためのマッピング表を作ること、その変換について検討することを研修中の自分の課題とした
  • 検討結果:
    • CATPに必要なデータはだいたいマッピングできる
    • 全てを今までどおりにやる、ということはあきらめなければいけない。何を変えるべきか/変えてはいけないかの検討、どういう書誌・目録が望ましいかの検討はしていかなければいけない
  • 4ヶ月間学んだことは非常に多い。このままNIIで働きたいくらい
    • このような機会を与えてくれたNIIと理解を示してくれた鳴門教育大学に感謝したい
    • 多くの方がこの制度を活用/新たな学術情報基盤を担う人材へ、ということを願う
質疑
  • 司会・森さん:この話のエッセンスは?
    • A. だいぶエッセンスをしゃべったつもりなんですが・・・あふれている情報をもっと活用すればいいものを作れる、という話
  • 森さん:大学で目録をとっている方、会場にいらっしゃいます? ・・・今手を上げた方から、感想でもいいので「これが実現したらいいなあ」というようなお話を
    • Q. [twitter:@itonotaisuke]:簡単に感想を。年間200件くらい新規書誌を作成しているのだが、最近、Amazon等を見ていると、CATはこのままでいいのかな、と・・・色々なルールに基づいて書いているが、その内容がこれでいいかと考える機会が増えた。その点はどうだろう?
  • 森さん:メタデータに必要な質とか記述がありもので利用に耐えられるか、ということ?
  • Q. それもあるし、今ある項目が本当に利用者のニーズを満たすものなのか。それから目録同士の約束事の差異もあると思うのだが、CATのcoding manual等・・・その差異についてはどう思う?
    • A. 今回もそうだし、普段も、例えば「この注記はなんのために」というようなことを思うことはある。ただ、内容細目を入れるなど、利用者の利便性を高めるためにも、既にあるものを使って労力を削除して・・・ということがいるのでは、と思う。
  • 森さん:まずありものを使って省力⇒それにリッチなものを足す、と。ただ実運用には課題もあったし、山本さんは今後も考えていかれるだろうし、皆さんも考えなければいけないことかと思う。

「NII事務研修報告」(柴田育子さん、一橋大学

  • 昨年9月〜今年3月の7ヶ月、実務研修性としてJUSTICEで働いた
  • JUSTICEの活動詳細は配布資料にもあるが・・・
    • 主に海外出版社との交渉、参加館への調査、コンソーシアム連携、電子資料サービスの拡大・連携など
  • 簡単に自己紹介:
    • 民間を3年経験。国内出版社の編集部⇒製薬会社⇒図書館員になったのは2007年から
    • 最初の2年半は目録担当。2010年から雑誌担当
    • 図書館に勤めて5年のうち半分は目録で電子と無関係。雑誌に移った後も目録をとっていたのが、突如JUSTICEで実務研修を受けることに
  • 実務研修の内容:
    • 事務局業務を通してのOJT
    • 個別研修課題への取り組み・・・「電子ジャーナルバックファイル等の国レベルでの整備に向けた調査・企画」
  • 事務局業務を通じてのOJT:さまざまな情報交換の機会
    • 国内最大規模のコンソーシアム。他国のコンソーシアムと比較をしたり、情報を得ることが重要
    • その活動で印象に残ったこと・・・海外コンソーシアムとの情報交換。最新情報入手+一層の調査
    • カナダのコンソーシアムについて情報を得るための交換会に行ったり、国際図書館コンソーシアムICOLCへ参加したり
  • 個別研修課題への取り組み:バックファイルの整備
    • 国レベルでのバックファイル購入検討はこれまでにもあったが、その検討材料の調査が必要ということで3つの柱を立てての調査
      • 出版社の製品調査
      • 海外での国レベルでのバックファイル整備調査
      • 参加館のバックファイルへのニーズ調査
    • 細かい点は触れられないが・・・
      • 成果の1つとして、JANUL・NII・JUSTICE共催のシンポジウムで、独仏日のバックファイル状況についての発表素材に
  • 研修を終えて
    • 得たもの:
      • 学術情報流通の今を全体的に捉える視野・・・海外との関わりによりグローバル市場の動きへの敏感さを
      • JUSTICEにより小さい大学〜大きい大学まで見渡す視野が身につく
      • これからの日本の出版社の電子化の動きにも注目したい、その事実に気付いたことも成果
      • あとはもちろん、交渉術とその可能性/限界・・・参加館が大きいので交渉力はついた一方、モデルが硬直化しがちなので難しくなる、でもあきらめないこと
    • 課題:
      • これまで3-4年、目録をしていて電子とは無縁だったのだが・・・今は電子が当たり前の世界が目の前にあって、自分は取り残されていたことを実感
      • 実際に自分の図書館に戻ったとき、知識の共有や意識の底上げが急務と気づく
        • 特に大学の若い世代はデジタル・ネイティブだったりして、働いている人間より先をいってしまう。図書館はどんな貢献ができるか?
      • そのためにも行って終わりではなく継続的な経験・知識の取得、継承をしていきたい
質疑
  • 司会・森さん:柴田さんの派遣元からお客様が来ているのでお話を・・・
    • 一橋大学・小陳さん:現在の上司だが着任は4月なので、大きくなって戻ってきた柴田しかしらない。使用前を知らないので説得力に欠けるかもしれないが・・・一般に研修は成果がわかりづらいが、柴田を見るといい経験をしてきたことがわかるし、周囲にもいい影響をもたらしている。職場にとっては1人分、数カ月間穴があくのは事実だし、本人もいきなり見知らぬ場に身を置く不安などもあるだろうが、どういう条件なら送るか、われわれ管理職が決断をして送ることでよいのでは、と思う

「NII事務研修報告」(藤江雄太郎さん、大阪大学

  • 自己紹介:
    • 2009年に大阪大学附属図書館着任
    • 最初は雑誌の契約・目録を担当
    • 2011.4から生命科学図書館で文献複写の受け付けを担当
    • 5ヶ月間、JUSTICE事務局にて実務研修
  • JUSTICEでの研修:OJT+個別研修課題への取り組み
    • OJTについて詳しく紹介・・・打ち合わせ・交渉への参加
      • 相手:海外出版社の日本支社・事務局の方
      • 出版社によってスタンスが違う/海外と本社の関係等もかいま見える
      • 交渉術も色々みられた・・・値切るだけでなく「こういうモデルならもっと売れるよ」と提案する等
  • 個別研修課題の検討
    • これまでの電子資料との関わり・・・
      • これまで紙の雑誌担当で電子はわからない
      • 複写担当では電子ジャーナルからのILLもあったが・・・
      • 電子資料とかかわる機会は増えてもいろんなことがなんとなくしかわかっていない
      • 専門用語/電子ジャーナル契約でしか出てこない用語/出版社による利用条件や価格設定の違い・・・とっつきにくさに?
    • 研修課題の決定と取組み
      • 初任者向けの電子資料契約に関するマニュアル作成を課題に
      • 5ヶ月間での作成ということでスケジュールはきつめ・・・内容骨子作成⇒執筆⇒なんとか3月に電子版公開・4月に冊子送付
    • 『電子資料契約実務必携』
      • http://www.nii.ac.jp/content/justice/news/2012/0329143847.php
      • PDF本文
      • 「説明に役に立った」等の反響。携わったものとして嬉しい
      • 500以上、JUSTICEには参加館があるが、数だけでは交渉力/発信力=真の強さは持てない
      • 真の強さのためには参加館の現状共有が必要。それに実務必携が役立てば
  • 研修を終えて:
    • 個々の大学図書館に悩みはあるが、かぶっている部分も多いことに気づく
    • 自分たちの中だけでなくよそに目を向ける必要の再認
    • 海外との情報交換から・・・日本で悩んでいることは海外も悩んでいる/海外にもできるだけ気を配ることの重要さ
    • 事務局内では情報共有が徹底されている
      • 色々な情報を共有/必要ならば話し合う場も。その重要性も感じた
    • NII/JUSTICEともに日本のこれからを考えている。長期的なビジョンの必要性
      • 現場では毎日、文献をコピーして送って・・・で毎日終わってしまいかねない。そうじゃない、どんどん電子化が進む、授業も変わるという中で、利用者=学生、研究者のニーズにアンテナをはり、それに対応するためのサービスなど、長期的なことを意識的に考えていけない、とあらためて感じた
  • みなさん5ヶ月間お世話になりました! お越しの皆様もありがとうございました!
質疑
  • 森さん:JUSTICE参加館の皆様、挙手を。実務必携見た方は? ・・・では見た方、一言。
    • 会場・図書の目録/受入をしている方:図書の目録や受入なので紙と付き合ってばかりで電子は個人的な興味と長期的な展望へのアンテナとして、勉強していた。なので、用語集・・・JUSTICE等も知らないできたのだが・・・藤江さんご作成の実務必携は、予習/前準備として見た。用語集をプリントアウトして今日も持ってきている。例えば「バックファイル」という前の発表での言葉がわからず、さっそく参照させていただいた。大変役に立っている。
  • 森さん:このように今現在、実務を担当していなくても使える。改定なども必要だろうが、今後も皆さんとともにやっていきたい。

「NII事務研修報告」(西脇亜由子さん、明治大学

  • 2011.12-2012.3の4ヶ月間、比較的短めの実務研修だった。その報告を
  • 自己紹介
    • 2004年に明治大学へ。最初は洋書目録を担当。
    • 現在はレファレンス/マルチメディア業務を担当
      • 中でもリテラシー教育等に関わる・・・「図書館活用法」という教員と協力しての授業を担当したり、授業の評価活動を行なっている
  • 実務研修について:
  • OJT
    • 私立から研修を受けるということで、国公私横断組織で働くことについて取り上げたい
    • 国公私協同の枠組み、一定期間同じ職場で仕事ができる、それぞれの背景を持った上で、ひとつの場所で仕事を通じて、互いの背景・課題であったり、機関を超えた問題を一緒に考える時間が持てたのは非常に貴重な経験
  • 個別課題:「電子リソース利用統計のコンソーシアムによる活用に向けた調査・検討」
    • これまでの経験・・・学生に実際にものを教えたり、授業を担当したりさらにそれを評価する中で・・・自分のこれまでの活動を評価することの重要性を実感
      • しかしマルチメディアサービスの方は、電子資料を提供するのだが、その評価にはデータをきちんと集める必要があり、そのデータ集めだけでも苦労する状況
      • コンソーシアムとして電子資料評価のツールを提供出来れば非常に有効なはず/交渉力強化のためのデータにも
    • 具体的には・・・webや実際の業者への問い合わせ
      • 図書館職員による取り組みや課題の聞取り調査
      • コンソーシアムによる利用統計提供についてのイギリスの事例調査
        • サブコンソーシアム・・・追加課題。全国規模のコンソーシアム中に置かれたより小さなコンソーシアムの運営に関する調査
  • 実務研修を終えて:
    • 業務において、対応する可能性、自分の中で広がりが出てきたのでは、と思う
      • 普段はサービス部門、実際に利用者に接する場所にいる。そういった人間には電子資料は見えにくい。導入〜利用の全体像のイメージが今回の研修でしやすくなった
      • サービス部門にいる人間でも実務研修は大きな意味がある
    • 大学にいると「その大学のために」業務を行うが、色々な大学と関わる中でそれ以上の課題があったり、全体の中で浮彫りになる自分たちの課題に気がつけた
    • これまでコンソーシアムに直接的に関わっておらず、課題や問題への意識もなかった
      • 実務研修によって一見、関係のないような業務も密接に関わっている場合があること、そのことを意識できることの意味を感じた。自分の中でつながってきた
  • 実務研修をどう生かすか(それぞれの立場で)
    • ライセンシング業務・事務局業務・・・未経験者にも貴重な経験
    • 様々な人間関係・・・業務上おおいに活用
    • 大学側の研修にも活きる
    • 事務局にとっては・・・統計・調査等、継続的に行うべき業務を課題として設定して後に使えるかも
  • 実務研修、おすすめします
    • 個人向け
      • やる気がある/チャレンジしたい/図書館の今後を考えたい
    • 管理職向け
      • 職員をもっと育成していきたい
質疑
  • 森さん:パンフレットを受付で配布しているが、「私立大学のあなたでも」という西脇さんのメッセージが印象的。もっと知りたい方はサイトや私達へ!

パネルディスカッション

  • モデレータ:岡本真さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社/NII産学連携研究員)
  • パネリスト:
岡本さん

ここに至るまでの森さんの捌き方がすごくて、「司会変わったとたんつまらなくなった」とか言われないようにがんばりたい。
今、インターネット中継でも100人以上が見ていて、関心の高さを感じている。
今日のパネルの中身についてはそれほどストーリー性はなくて、わいわいがやがややっていければ。
会場の方も中継ご覧の方も、ご質問おありであればハッシュタグをつけて、@argでtweetしてくれれば、「これは」というものは拾う。


それでは、最初にまずこれまでお話のなかった大向先生に自己紹介をいただき、次に飯野さんに再度、デモを、その後で杉山さんへ。

大向さん

わたしは研究者として採用されたはずなのだけれど、今となってはCiNiiはじめコンテンツサービスを、システム的には全部やるコンテンツ開発室の室長をおおせつかっている。Articles、Books、NACSIS-CAT、ERDBプロジェクトなどなど、たくさんやっています。
今日は午前中、昔はNIIがお上で下々の大学図書館を・・・っていう話があったが、僕はその時代を一切知らない。今、感じるのはいかにNIIのコンテンツ課がかわいそうなところか。「助けてください」とひれ伏してお願いする立場。うるわしき誤解と幻想とそれを抱えるNIIのプライドがあっていろいろないまぜになっている中、実務研修やこういうフォーラムが新しい、よい風を吹かす機会になればと思う。

杉山さん

なんかいきなり登場したが、わたしは今日の発表者より1年先に実務研修をした。なので報告せず、この場にいる。
報告はするなと言われているのだが、自己紹介がてら感想を述べたい。実務研修ではjunii2、大学図書館の機関リポジトリとNIIのデータ交換フォーマットの課題をやっていた*1。研修に行く前まではNIIに行けばなんでも教えてくれるだろうと思っていて、質問をしてもまともな回答がないので半分切れかけていた。
しかし実際にNIIに来て驚いたのは、職員が凄い少ないこと。静岡大の職員も20名ちょっとだが、それよりも少ない。地方大の図書館より少ない人数で、全国の学術情報基盤を扱っていることに驚いた。
やっている内容にさらに驚いたのは、OCLCやGoogleなどのビッグネームと、日本の代表として対峙していること。しかも対応しているのは特別な訓練を受けた人ではない。ちょっとイメージして欲しい。大学図書館の方なら、今の自分の係、数人でOCLCに対応できるか。それを現実にやっている[のがNII]。「ああ、NIIは図書館サポートセンターではないんだ」とはっきり気付いた。
3ヶ月、図書館とNIIの双方の立場に立って、NIIが大学図書館とのコミュニケーションに凄い苦労していることがわかった。大学図書館員はNIIに対してすごい受け身。言われたことをやる雰囲気になってしまっている。そうじゃない、一緒に積み上げるコミュニケーションをなんとかできないか、と考えながら過ごした数カ月だった。

実務研修の前と後ではっきり変わったこと。「NIIに何かしてもらおう」って思っちゃ駄目。NIIが駄目ということではなく(笑) NIIの中の人は少ない人数ですごいがんばっている。大学図書館連携の核であるNIIに力を与えていく、ってことを図書館員は考えて行かないといけない。実務研修の成果の1つずつもそれなのかなあ、と考えている。

岡本さん

会場からもご意見いただければと思うが、図書館の方はシャイなのであと5分ほど考えていて欲しいw
そのあいだに午前中、うまくデモがいかなかった飯野さんに再度のデモをやっていただきたい。

飯野さん:デモ再演・・・気になる方は映像あるいは実際のサイトへ!
岡本さん

それではディスカッションに入って行きたい。
まず登壇者に一言ずついただきたいが、情報学研究所の田邊さん。最近、関東の有名私大からNIIへ移動されたが、田邊さんどうですか? 規模の大きい私立大学から来てみて、元々の印象と実務に入って感じる落差など、お気づきの点があれば。

田邊さん

この場にいること自体が不思議で、こういうストーリーが待っているとは思わなかった。もともと僕は慶應の図書館にいって初めて図書館というものを体験したのだが、ちょうど入ったのが1998年で、システム改編期、MARCフォーマットをUS-MARCにしたためにNIIと距離のある関係だった。
どっぷりつかっていたわけではなかったので・・・情報は色々得ていたが・・・当時の印象としては「強いNII」というか。今は人も少なくていっぱいいっぱいだが、当時は強いNIIの印象だった。そのぶん、みんなは期待しちゃう。でも期待されてもそのとおりにはならない。色々な勉強会に行くが、みんな「最後はNIIにお願い」という。NIIかNDL、どっちかやってよ、と。期待はされるんだが、やりたいことは自分たちでやっていかないといけない。独自路線というか、早稲田・慶應、九大さんも自分たちで独自の電子の世界を切り開いている。
NII V.S. 大学図書館、というのはもうやめたほうがいい。もっとフラットに。ぶらっとNIIに立ち寄って気軽に話ができるような。こちらも場づくりはしなければいけないし。私立大学・国立大学関係なくフラットに、シームレスにいける環境づくりが必要なのかな、と感じている。

岡本さん

今日も例えばハッシュタグは「#NIIと大学図書館」。この場合の「大学図書館」はいわゆるResearch library、高等教育機関あるは研究機関の図書館、と捉えればいいのだろう。どうしてもNIIが頂点にいると捉えがちだが、そうではない。そこまでNIIに期待するものでもない、というのが・・・「そういう結論でいいですかね?」と聞いてみたいところだが、その前に、実際にNIIとか関係なく進んでいるのが九大だと思う。
Code4Libに行ったときにも「Cute.Catalogは? Cute.Searchを語れるやつ来てないのか? あれが知りたい!」と言われた。
そこで香川さん、九大から見たNIIについてお話を。

香川さん

九州大学は突っ走っているとよく言われるが、私たちは自分たちがよければいいというのではなく、利用者から見たときに何がいいかを最優先したために独自の取り組みが増えた。
前まではeリソースの管理をしていて、そのときは目の前の課題が山積みで、他の職員とは情報共有ができない、数人しか担当がいないので、他の大学とも共有できたらな、と思っていた。今回、ERDB構築プロジェクトができたので、その枠組で、NIIさんや他の大学さんともいいものを作っていければ、モデルケースになるのではないかと思う。

岡本さん

NIIいらないくらいのことをおっしゃるかと思ったが・・・なあなあの結論に持って行きたいわけではないのだが、NIIとどう連携・協力していくか。会場の方が同意できるかも聞いてみたいが、NIIは親ではない。大学・研究図書館はNII、公共図書館はNDLがなんとかしてくれる、という甘えの構図がある。わかりやすく言えば「たまにお小遣いをくれる田舎のおじさん」くらいの関係ではないかと思う。頼り切るものではないと思うのだが、「そんなの建前だ! 九大みたいなところだからだ!」とか、「NIIのこの支援は欠かせない!」というのがあるのかどうか。
・・・と言っても手はあがらないだろうから勝手にさして行っちゃおうと思うが・・・Webcatにお世話になっている人は手をあげっぱなしで・・・あ、あなた!

会場・国立某研究所の図書室の方

まだ来て2年ばかりで基本的なことがわかっていない。NACSIS-CATが3月になくなってCiNii Booksになるという理由がよくわかっていない。CiNiiは以前、大学図書館で働いていたときも利用していて、和論文の利用に便利と思っていたが・・・

岡本さん

ちなみにいまの図書館って職員何人?

会場・国立某研究所の図書室の方

私を入れて3人。

岡本さん

本当に小規模なところとして考えなければいけない。館内での研修や経験の蓄積が本当に困難になっている。そこはNIIやそれ以外のネットワークがサポートするところとして考えなければいけない、課されている役割を気づかせてくれたように思う。ではいまの質問について大向さん。

大向さん

なぜやめるか、という話から。これは今年1年かけて全国各地に行って説明しなければ、と思う。
Webcatのような存在は今風にいえば、図書館に対するクラウドサービス。一極集中でデータを抱えてサービスを提供する。10数年はうまくいった。
ただし、一極集中であるということは、そこのシステムの良し悪しが利用者サービスへのクオリティにものすごく影響してしまうし、クラウドサービスである以上、そこが変わる気配がない限り、永久に同じサービスが続けられてしまう。
僕は後から来た人間で、webの研究をしていて、本当にどんどん良くする可能性を持ちながら変わっていないプラットフォームだった(Webcatは)と思っている。
変わらない理由はいろいろあって、長い年月でどんどん増築してきたので非常に複雑になっていた。どこかを変えようとすると過去の歴史をほじくって・・・から全ての作業がはじまる。世の中のwebサービスがどんどん良くなる中でこれでは遅れてしまうし、メンテナンスや維持にかかるお金も・・・最終的には税金でやっているサービスなのでコストパフォーマンスを上げないといけない。システムは改良した方がいい場合もあるし、一から作った方がいい場合もある。
そこでコストを抑えつつ新しいサービスをするために、CiNii Booksへ移行した。

「論文はCiNii、本はWebcat」と言っていたところが移行するのは大変という意見もあると思うが、「名前1つにまとまって覚えやすくなった」という意見もある。
今、混乱を招いたのは申し訳ないと思うし、今回の件でもうちょっと事前にコミュニケーションを取らなければいけないことも痛感した。どんなサービス・機能がいるか、お話しながらやっていけるように基盤を整備しているところ。

田邊さん

現場がどう使っているか。ところによっても違うだろうし。ERDBでも現場でどう使われているかにリーチしながらやっていくことが必要かと思っている。


岡本さん

NIIがナショナルセンターになる方が合理的な場合もあるが、現場でどう使っているか、現場からすると困る、みたいな話もある。Webcatもそうだった。
私は研究図書館等で働いている身ではなく双方と付き合っているのでときどき不思議に思うのだが、「言えばいいじゃないか」。
NIIの方はいろいろあちこちに行っているのに大学図書館はコミュニケーションをしていない、というかしているところとしていないところの落差が激しい。
逆にコミュニケーションできてそうな飯野さんに聞きたいのだが、どういう風にコミュニケーションしている?

飯野さん

NIIの方ごめんなさい、そんなにいっぱいはコミュニケーションしていない。
最初に申請したっきりで好き勝手に使っていた。フィードバックしなければいけないところをできていないのはまずいかな、と思っていた。心苦しい。
ほんとうの意味でコミュニケーションをとる方策はいっぱいあるが、若干、僕ら私立大学の人間から見ると遠い気がしていた。そこを近づける努力をしなければいけなかったな、というのは思っている。
ここに来てよかったな、と思うのは、例えばNIIさんが種としてAPIを出す。それを周りの我々が「こんなこともできる」ということをする。それをNIIさんにフィードバックする仕組みができたら我々も嬉しい。独り占めしようなんて思っていないし、オープンソースという概念もあるが、ソースをオープンにすることでいいことがある。そういう思いをわれわれは今持っている。

大向さん

コミュニケーションという話だが、APIについて僕は飯野さんと話したことはなくて1週間前にはじめてお会いした。
話すだけがコミュニケーションだとは思っていない。CiNiiのAPI公開は1つのコミュニケーション様式。それを佛教大学さんが使っている、という例は僕らは非常に見ている。見た結果、「あ、これがないからこの機能はないんだな」というのは見ている。一言もしゃべっていなくても通じあっている気がすることはある。
CiNii Booksは出してすぐ、「あれが足りない/これがない」と意見をいただいた。それもコミュニケーション。Twitterでもブログでも書かれたが、書かれて良かった。それによって足りなかったものがわかる。
システム移行期についやっちゃうのは「全く同じにして」。これは何がいい/悪いがわからない。いるもの/いらないものを仕分けしないと良いシステムが作れないが、こちらから投げかけたものに反応がないといいものにならない。
Twitterとかめちゃくちゃ見ている。業務のうち1時間くらいは見ていた時期もあった。ぼそっとひとりごととしてつぶやかれたことが重要だったりする。いろんなコミュニケーションチャンネルを用意する。いっぱいつぶやいて下さい。

田邊さん

例えば誤った使い方をされていて、それをベースに運用がされていた場合。そのときの「なくなっては困る」と言われても、その運用は変えないといけない。運用を変えることに抵抗感があるのはわかるが。現場でどう使っているかわからないが、正しく使っていれば問題ないはずなのに・・・ということもある。そういうときに反応が見られればいい。

岡本さん

わたしも最初はブログ等で一方的に言及していた。大向さん着任以前はあらゆるCiNii改変をブログ記事にしていた。中の人的には触れられることだけでも意味がある。皆さんがぼそっと何かを表現したり、APIを使ったりということもコミュニケーション。逆にNIIから示されることもあるだろう。一方的に発信するだけでなく自分たちにどんなリクエストがあるかも見ていて欲しい。
そんなこと言っても「こういうところがネック」とかある?


会場・国立大・教員の方

今の話でも思うんですが、図書館に向かって「API公開しました」と言っても、Geekは食いつくけど一般の方はそもそもどんな文句を言っていいかすらわからないのでは?
役立つ愚痴や文句の言い方を公開したほうが・・・「こういう愚痴の言い方いいですね」とかないと、今のままだとプログラム大好き/Webアプリ大好きの人にはいいコミュニケーションだと思いますが。

大向さん

おっしゃるとおりで、API公開はAPIがわかる人向け、Twitterは使っている人向け。各方面にそれぞれチャンネルがある。つい最近もソーシャルボタンをつけてみたが、あれもさんざん、色んな人から欲しいと言われていた結果。いい愚痴/悪い愚痴はあって、「それこっちの仕事か」とかもあるが・・・いろいろ難しい。クラウドサービスになりかけているので、データの持ち主、本当にデータを作っているのは図書館の方なので、「このデータおかしい」とかは最終的に特定の図書館にたどりついたりもする。
「このハッシュタグはみんなで見ましょう」とすればいいのかも。#ciniiを見ていると実は言われていたのは自分たちのこと、ということもあるかもしれない。

岡本さん

ご質問の点に触れると、確かに図書館の方はずいぶん変わった、比較的デジタルに強い人が増えたりFacebookは使うようになったとか・・・ちょっと前ならインターネット苦手、と明言する人が多かったが、世代交代してきた感はある。
それでも様々なコミュニケーションの形はありえて、NIIのPRのつもりではないが、研修制度等はデジタルと違うコミュニケーション・スタイルだろうし、意思疎通の機能になるだろうと思う。NIIに研修にいらしていたときは密にコミュニケーションがあったと思うが、その後は? オフィシャル/アンオフィシャルにどんなコミュニケーションが有効? >杉山さん

杉山さん

有効かはわからないが、無茶ぶりは増えた(笑)
ただ、CiNii Books公開についても、ほとんどの大学図書館員はぱっと出てきたもの、と思っただろうが、アンオフィシャルにでもコミュニケーションをとっていたものはその姿はぼやっと見えていた。フォーマルなコミュニケーションは案外、役に立たないもので、顔と顔が直接あうコミュニケーションを、ときどき交わしておくだけでも違う。「こっちを見たらいいのかな」とか、そういう形で断絶的に続くのがいいし、実務研修でなくてもそういう場が今ないのかな、と思う。

会場・大学図書館で業務委託を受けて目録業務にあたっている方

CATは目録を作る中で利用しているが、電子化の流れの中で紙媒体の目録をつくる仕事はこのままでいいのか、と思ってここに来た。
大学職員は委託職員に何を求めているか/研修制度は委託スタッフにあまり開かれていないがその対応はなにかあるのか、ということを聞きたい。

岡本さん

「顔の見えるNII」として誰か偉い人。

NII・高橋さん

NACSIS-CATについては、これも出来た頃からの歴史を考えると・・・昔は大学図書館、それも国立大学が一緒に作ろうとはじまり、20数年かけて発展してきた。
規模はどんどん拡大するし、国大⇒公私大⇒専門機関、と機関も増えるし、目録をとっていた人も正規職員から派遣の方やアルバイト、非常勤、と変わってきている。大学図書館の問題でもあるしNIIの問題でもあるし図書館界全体の構造変化の問題でもある。
それを実際、どうするとみんながハッピーに目録をとれるのか/作れるのか、あるいはどれくらいシステムでうまく処理できるのか・・・というのはこれから、構造を変える話なので、一緒になって考えていくことが大事かと思う。

会場

やはり委託スタッフは無理?

NII・高橋さん

NIIには色々な研修がある。今日、クローズアップした実務研修はずっと大学にいる職員向けだが、CAT研修であれば正規/非正規には限っていない。

NII・学術コンテンツ課長・鈴木さん

研修制度は色々ある。実務研修も去年は多かったが普段は年1−2人で制度の周知も足りなかったかも。実務研修は学術情報基盤の企画・立案という話だったので、大学図書館職員として働いている人を・・・ということになっている。

岡本さん

今、min2flyさんも「直接大向さんのドアをノックしたら」とtweetしていますが。


一方では確かに組織の問題もある。一方で、学びの場は職場にこだわらず機会はある。そういう機会を作ること、そこにNIIの方に声をかけていくこともいるのでは。
時間が来てしまったのでそろそろ締めに。NIIは総元締めではない、皆さん自身がいかに使っていくかということ。各大学図書館・研究図書館の独立性・自律性とも関わる問題。どういうコミュニケーションをしていくかも、別に全てNIIが中心である必要はない。九大は九州として活動してもいる。その地域、ジャンルでパートナーを作っていく、その中にNIIも入っている、というのがいいのではないか。うまく関係を作ってバランスをとっていくのがいいのではと思う。


閉会挨拶(鈴木秀樹さん、NII学術コンテンツ課長)

フロアからたくさんのご意見・ご質問をいただき・・・一部無理にとったところもありますが・・・多少の緊張感を持って過ごしていただけたのでは、と思う。
午前中はNIIの最新動向を、午後は実務研修に来ていただいた方に報告をいただき、最後はNIIと大学図書館の関係についてのパネルディスカッションを行った。
これからNIIも大学図書館と連携協力をしながらやっていくことが大事と考えている。そのためには現状を知っていただくことが一つ大事、と思っている。
ERDBはじめ、電子情報資源への取組はこれから大事な課題になる。サグラダファミリアという話もあったが、NIIのコンテンツ事業は大きなターニングポイントを迎えているのかも、と思う。
引き続き実務研修の活用含め、ご協力いただきたい。
最後にパネリスト、報告者、モデレータとしてご協力いただいた皆さんに感謝を申し上げて閉会の挨拶としたい。



会場に無線LANがあったおかげで即日アップができましたが、電源が残り20分なのであまり長い感想はかけず(汗)
大向先生*2もおっしゃっていましたが、CiNiiへの要望はじめNIIに対してはあらゆるチャンネルが開かれていて、コミュニケーションできる環境は整ってきている気がします。
あとは公式の場を用意されずとも話していこうという姿勢がとれるかどうかで、それがとれると(杉山さんもおっしゃってましたが)公式以上に役に立つこともあるかも??


・・・ってところで電源がー・・・

*1:http://www.nii.ac.jp/hrd/ja/jitsumu/h22/index2.html

*2:ディスカッション中は他の方にあわせて「さん」表記にしていました