Web>>>越えられない壁>>>ゲーム・アニメ

非常に個人的なヒガミですが、ゲーム&アニメ業界のこれからは "Web業界にいかに若い人を取られないか" にかかってると思います。

最近身の周りで、

  • ゲーム会社で同僚だった人が、気がついたらWebの仕事をしてる orz
  • ゲーム→アニメ業界と生きた10年選手クラスのアニメーターがなんとWebデザイナーへの転身を成功させた orz
  • ゲーム専門学校へ行っていたはずの子と名刺交換したら名刺がWebの会社 orz
  • ↑それがもう5〜6人とかのレベル orz
  • IGDAなどのイベントで会う学生さんがほぼ院生。Webのイベントへ行くと普通の学生さんがゴロゴロいる。


といったことが気になって仕方がない。
なんら数値的裏付けもない、マクロもミクロも調査してない、ただの超直感だが、


やばい。
これはやばい。
若い人が目指してない。
俺が命かけてきたジャンルが学生さんのアウト・オブ・眼中。


Web業界の仕事人が持つハツラツさはXOOPS Cubeの活動を通じて身近で見てきた。確かに魅力的な仕事だが、ゲーム業界やアニメ業界も、バイタリティ、熱さ、面白さ、技術などの要素において、勝ることはあっても劣ることはないと信じている。しかし、十代の方はそうは思ってないだろう。なぜなら Web 業界はその仕事のよいところ、勤めている人間の魅力を Web にうまく乗せて、若い人の目に留まるところにあるからではないだろうか。

終電に揺られながら、前々から感じていた「アピール度の違い」について不用意にまとめている。

Webの人はWeb発信が上手い

Webの方々はネットツールに精通しており、真似できないほど上手に使いこなし、オープンな場でクールに情報発信している。これが若い人に与えるインパクトはとてつもなく大きいと思う。

"Webの仕事ってなんなのか" "Webで働く俺たちはこんななんだ" という情報がたくさんある。僕は頭が悪いので、たまに Web ばっか見てると、日本の就労人口の5割くらい Web 業界なんじゃないかという錯覚さえ持つ。

10年以上前の話だけど、僕もネットが使えるようになった学生の頃、必死でネット上のゲームの仕事の話題を探したが、当時はパワートダイくらいしかなかった。

日記の中身が役に立つ

Webの方はオープンソースを使う機会が多いため、日記のネタに使いやすく、技術日記ひとつとっても驚くほど実がある。あれぞブログだ。僕なんかゲームで種蒔いて芽出してるだけ(比喩ではありません)

Webの方は気づいていないかもしれないが、これは大きなアドバンテージだと思う。プロの技術や実践が読めるのだから読者にとってはたまらない。

これは組み込み系やコンシューマゲームプログラマには真似が許されない。「今日はWii FitAPIをうまく使う方法をご紹介します」とか絶対書けません。
↑そんな例え話を書くだけでも僕は今ちょっとドキドキしている。

組み込み系も同じじゃないだろうか。「ブルーレイの制御ボードにおけるテクニック」とか紹介しても、 Wii Fit 話と同様、ニッチな人しか興味もたないうえに会社クビになるでしょうから、いいこと何にもありません。

しかしこれは言い訳せずできるだけPCの技術にキャストして扱えたらと思う。ゲームの分野は幅広いのだから会社でやらせてもらえない分野の技術を勉強がてら書けばいいし、アニメーターはイラストに挑戦してもいいんじゃないかと。でもそういうこともなかなか難しいんですよね……

Web 業界の人は勉強日記みたいなのもよく書いてる。同業者からしてみれば何てことないかもしれないが、すごく面白い。

生き方の情報発信

Webな方は技術日記以外でも、ネット社会や現代社会について語ったり、他社のサービスについて批評するといったこともよくやっている。それが悔しいことに実に板についている。技術話を含めて、Web業界人がそういう良い情報発信をすることが評価される風習さえあるようにも見える。どこの会社に所属してるか明言してる人が、他社のサービスを評論するのがすごすぎるけど……もうそういう文化を確立させちゃってるのだろう。

若い人はWeb業界の仕事だけでなく、そういうWeb業界人にも憧れてるんじゃなかろうか。タレント性を持ってる人がけっこういる。まぁ、それくらいWeb業界は仕事や生き方の魅力をWeb自体に乗っけて伝えている。もちろん、ネガティブな情報も多いが、またそれが若い人を引きつけてやまないのではないだろうか。

その点、確かにこっちの仕事は、日記で書けることはほとんどない。しかしせめて仕事が楽しい!とか、毎日が充実してます!とか、マスターアップ以外は土日は休めます!程度の話は細かく書いてもいいんじゃないだろうか。検索したら見つかる程度には。

今は辞めたから、あんまり無責任なことは言えないが、アニメ業界もすごく楽しかった。

技術の相性(本が良い)

アニメはまず会社に入るまでは1本作れるチャンスがなかなかないし、今はゲームも非常に技術が多岐にわたっていて、3Dゲームを一本作るには大変な労力が必要になっている。これは今や学生さんの興味を削ぐのに十分な障壁になっている。

Web は本を一冊買えば、本を読み終わる頃にはまがりなりにもアプリケーションが一本動いている。昔はゲーム開発の入門本(数はなかったけど)もそうだった。本を一冊読んだらシューティングゲームができていた。しかし今は画面にモデルを出すところが限界だったりする。そこからパッド入力を入れて、タイトル画面をつけて、スコア処理を入れて、一本遊べて友達に見せられるようになるまで、どれだけの時間と勉強が必要だろう。

諸意見あるだろうが、プログラムを勉強するにしても、まずものを完成させて楽しまないといけないと思う。ゲーム本はいまだにほとんどの本がベクトル計算からですよ。それに対して、今は Web はすごく魅力がある。比較的短期間で作れて、友達に携帯やPCで見せられる。ネットサーフィンすればプロの情報発信があり、勉強会に行けば色んな人と話ができる。目の前で大人が名刺交換している! そうやってどんどん Web の世界にはまっていき、就職もそちら……みたいな感じになるんじゃないだろうか。

この点、海外は "Mod" があるからいい。日本もコンストラクションツールは必須だと思う。言語は本人の情熱があればすぐ覚えられるし、いくらでも会社で鍛えられる。でも、 Mod だろうがツールだろうが、まず一本のエンターテイメントを作って動かすということを体験できないと、その情熱もしぼんじゃうんじゃないのか。

Web アプリ制作入門本はそういう意味で学生さんと相性が良い。見よう見まねでコードを書いてサンプルアプリを作り、そこに自分なりの改造を加えていきたいという過程でプログラムをどんどん覚えていく。

ゲーム制作入門本のほとんどはこれがない。最後までやってもモデルかポリゴンが出る程度で、船乗り場から無人島への片道切符みたいなところがある。固定パイプラインからシェーダ技術へ時代が移って状況がさらに悪くなった。

Web の現象を「スクリプト言語だから習得コストが低い」というふうに見ては危険だと思う。スクリプト言語だから極端に簡単ということはない。僕は本格的なプログラムはアセンブリから入ったが、楽しかったことしか覚えてない。当時のアセンブリがどの程度難しかったかということもあるが、「学校から学習を強制された」ケース以外では、若い時分には学習コストなんか全く関係ないと思う。

余談

あと、たまに「学生のころからゲームプログラムができる人は、癖がついているので、会社が嫌がります」みたいな話をして、就職活動のための技術獲得に命を燃やす学生さんの出鼻をくじこうとする人がいるが、あれはなんの都市伝説なんだろう。

仮に「学生の頃からゲームプログラムを意欲的に行っていて、独自の癖があるので、弊社は採用しません」という判断をくだされたなら、そんな会社に行かずに済んだと喜ぶべき場面だと僕は思う。もしグラフィッカーがスケッチ作って持っていったら「あなたは独自に絵の技術を勉強し、すでに max も習得しているので、採用しません」と言われるのか。いったいどんな人だったら採るのか気になる、そんな会社が実在するなら。