和田寿郎氏逝去のニュース

和田寿郎氏が2月14日に亡くなりました。
脳死臓器移植」という問題、さらには日本における「生命倫理」の歴史を考えるうえで、重要な位置を占める「和田心臓移植」の執刀医として、文献・資料等を通してでしか知りませんが、ご冥福をお祈りしたいと思います。

以下に、ネット上で読める和田氏のお悔みのニュース記事のリンクをまとめておきます。
毎日新聞の2番目の記事には、米本昌平渡辺淳一、福嶌教偉の各氏からのコメントがあります。
産経新聞の2番目の記事では、馬原文彦、大久保通方、小柳仁の各氏のコメントがあります。
また、和田寿郎氏の業績の一つである「和田カッター弁」(人工心臓弁)について言及されているのは、時事通信の記事のみの模様です。

バランスを取ろうとした毎日新聞脳死臓器移植の問題に対して相対的には「推進派」に色分けされる方々のみのコメントを載せた産経新聞、「心臓移植」だけではない和田氏の業績に目配りをきかせた時事通信、マスコミの論調が変化したことにも言及している朝日新聞北海道新聞、など細部は様々です。

1980年代から90年代にかけての「脳死臓器移植」をめぐる社会的議論の「歴史」を調べてきた者としては、近年のこの問題をめぐる論調や議論のされ方の変化を思うと、1つの時代が終わったのかもしれない、と感じてしまいます。

毎日新聞毎日jp
http://mainichi.jp/select/person/news/20110215dde041060033000c.html
http://mainichi.jp/select/person/news/20110216k0000m040131000c.html
朝日新聞asahi.com
http://www.asahi.com/obituaries/update/0215/TKY201102150243.html
読売新聞(YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/national/obit/news/20110215-OYT1T00620.htm
産経新聞MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110215/bdy11021513040004-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110215/bdy11021521010007-n1.htm
共同通信(47NEWS)
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011021501000339.html
時事通信時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/c?g=obt_30&k=2011021500384
北海道新聞どうしんウェブ
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/273144.html


追記(2011.02.17 17:30)
和田心臓移植の詳細について、一般向けに書かれた入手しやすい書籍では、以下があります。
凍れる心臓』には関係者へのインタビューと当時の検察による捜査資料の要約があります。和田心臓移植について知る、調べる際には必須のものと言っていいのではないかと思います。
小松美彦脳死・臓器移植の本当の話 (PHP新書)』の第六章、中島みち『新々見えない死―脳死と臓器移植』の第一章では、それぞれの調査に基づいて和田心臓移植について再構成されています。
やや入手困難かもしれませんが、吉村昭神々の沈黙―心臓移植を追って (文春文庫 (169‐9))』は「ドキュメンタリー・ノヴェル」とされるものですが、8節以降で和田心臓移植について登場人物も実名で書かれています。また和田心臓移植が行われた時期に札幌医大の整形外科講師だった渡辺淳一による『白い宴 (角川文庫 緑 307ー4)』は、小説ですが和田心臓移植のドキュメント的性格をもつとして紹介されることの多いものです。この両者は、和田心臓移植が行われた直後に朝日新聞紙上で論争したことでも知られています(1968年8月12日朝日新聞夕刊9面に吉村昭、同年8月17日朝日新聞夕刊9面に渡辺淳一)。
和田寿郎氏本人の著作としては、最近のものだと『「脳死」と「心臓移植」―あれから25年』『ふたつの死からひとつの生命(いのち)を』などで「和田心臓移植」について書かれています。

凍れる心臓

凍れる心臓

脳死・臓器移植の本当の話 (PHP新書)

脳死・臓器移植の本当の話 (PHP新書)