HOLGAをもって、ガンダムを撮りに!

ゆるふわ系の人もすなるHOLGAといふものを、カメラマニアなわたしもしてみむとて、するなり。――というわけで、買っちゃいましたなHOLGAです。被写体は、、、ガンダム

HOLGA片手にサイド7潮風公園へ潜入です!




2009年は中判写真を始めよう、というのが去年立てたわたしの抱負だったのですが、不景気で収入が激減したので中判カメラなんてとても買えなくなっちゃいました。でも諦めるのは悔しいなぁ、と、慰めまでにプアマンズ中判カメラとして HOLGA を買ってみたりしたのです。このあたり HOLGA の本来の思想に乗っ取っているような、微妙な気分(トイカメとして名を馳せている HOLGAですがもともとは 中国の人のための廉価カメラとして開発されたのでした。ターゲットには売れず先進国で別の意味で売れちゃうあたりも含めて、ネットブックみたいです)。

・・という切っ掛けはともかく。この子で写真を撮ってみて、なるほど親父が熱中するわけだ・・・じゃなかった、HOLGAがこれだけ流行るわけだと実感しました。こりは、愉しいかも。

HOLGAというとゆるふわ系というか、失敗写真みたいなのを大量生産して喜んでいるそんなイメージがありましたが、実際つかってみると印象が一転、これは写真術の王道というか、写真術の面白さを味わうベストなプラクティスに思えてきます。普通の写真愛好家こそ、一度は自分の手で愉しんで欲しいし、写真趣味者じゃくても写真の面白さを体感するために遊んで欲しいとか思っちゃう。

んー、魅力的な文章でぞわぞわワクワクさせられればいいのですが、わたしにはそんな文才がないのが恨めしいところ。

で、そうだ、HOLGA をもってお台場へガンダムを撮りに行ってもらう、というチュートリアルはどうでしょう!・・と思いました。百聞は一見にしかずですよ!

用意するもの

用意するモノはこれだけです。

  • よいお天気
  • HOLGA
  • ブローニー版(120版)のフィルム。ISO100 と、念のため ISO400 も持って行くこと。(リバーサルフィルムが綺麗ですが、ネガのほうが失敗しにくいです。わたしは 100がリバーサル、400はネガにしてみました)

やること

お台場にいきます。ガンダムについたら、空を見て 晴れてたら ISO100、万が一 曇っちゃったらISO400 のフィルムを入れます。HOLGA は F11くらいの絞り値に、1/100秒くらいのシャッター速度で固定されているので、露出はフィルム感度で調節するくらいしかできません。6×6フォーマットで 12枚しか取れないカメラなので「天気をみながらフィルムで調節」は、思うよりは実用的かな、と思います(ちょっと強引?)。

フィルムを入れたら、あとはレンズを山マーク(無限遠)にあわせて、写真を撮るだけです。

注意事項

蛇足ながら失敗しやすいこと。

フィルムの巻き上げとシャッターチャージが連動していないので、うっかりしてると多重露光してしまうので注意してください。撮ったら直ぐに巻き上げるようにしましょう。また1コマ巻き上げたら自動的に巻き上げにストップが掛かったりもしないので、裏蓋に開いている窓(赤窓)でフィルムに印刷されたコマ番号を見ながら自分で丁度良い分だけ巻き上げる必要があります。うっかり通り過ぎないように気をつけましょう。

6×6フレームだと12枚、6×4.5フレームだと16枚とれます。窓の横に16、12 と数字が書いてありますから、入れたフレームに合わせてスライド遮光蓋の矢印をこの数字に合わせます。というわけで、書かれた数字の横がその数字用のカウンタ窓じゃないことに注意です!あくまで矢印マークを合わせる先(つまりふさがれる方)なのです。

ファインダは見えている範囲の二周り〜三周り広い範囲が写ります。これだけ広さが違うので、当てにしないで下さい。ただ、このレンズは画面周辺にピントが合わないのでファインダに収まる範囲がピントがだいたいOKな範囲と思ってよいかな?と言う参考になるかも。

シャッターは底にあるスイッチでB(バルブ:シャッターを押している間はずっと開いている)と N(約1/100秒シャッター)が切り替えられますが、動きやすいのでスイッチなので意図せず B になっていなか、小まめに確認しましょう。(シャッターを押した感触やシャッター音ではわかりません)

撮れた写真

ブローニーのフィルムを読み取れるフィルムスキャナを持っていないので、取れたポジをライトボックスに置いてデジカメで適当にパシャパシャして PC に取り込みました。なので歪んでたりするのがご容赦です。





意外にシャープに写るんです。色も普通でしょ? 5.6cm四方の大きな像は、見てるだけで愉しくって「はふぅ」ってなります。

HOLGA のレンズの特徴として周辺部分にピントが合わないという、まぁ値段なりのへっぽこさがあるのですが、これを上手く使うと どことなく ミニチュア風な画が得られます。実は HOLGA を買った動機は、せっかく 1/1 のプラモデルがあるうちに このHOLGA の写りをガンダムで試しておきたい、というのも大きかったり。


以上!(`・ω・´)ゞ


* * *


買ってみて感じる、なるほど人気になるわけだ、というHOLGAの面白さ。上手く伝えられないのですが、箇条書きすればこんなかな?

  • 実は結構ちゃんと写る
  • 恐ろしいほどプリミティブ
  • 適度に欠陥品である
  • それでいて独特の非現実感が漂う

見ての通り実は結構ちゃんと写るカメラです。HOLGA というと、四隅は暗ぁく落ち、描画はボケボケ、発色はなにやらサイケデリック・・みたいなイメージがありますが、それはそう言う楽しみ方がある、というだけ。「結構ちゃんと写る」から「恐ろしいほどプリミティブ」が俄然面白くなってきます。

HOLGA を見ていると、なるほどカメラって普通の人が作れるモノなんだぁと思ってしまう。何ともおおざっぱで、適当なカメラです。カメラというのは本来、「精密」機器ではないのね、ということを実感させてくれます。135判のような極小フォーマット用にカメラを作るから、精密な機械と光学が必要になるのね。


たとえば、シャッターは穴の開いた円盤が、簡単なバネの力でクルっと一回転する仕組み。巻き上げは本当にスプール(フィルムを巻き取る軸)を回す仕組みだけで、一コマ分で巻き上げをストップする仕組みすらありません。巻き戻しも必要ありません。これはブローニーフィルム(120判)が 普通の35mmフィルム(135判)より原始的だから。この原始的なロールフィルムも面白さの一端。

ブローニーフィルムは、遮光紙に裏打ちされたフィルムが糸巻きのようなスプールにただ巻いてあるだけで、取り終わったら巻き上げもとのスプールに全部巻き取られてしまう仕組み(だから巻き戻しは必要ない)。巻き上げきったら、切手みたいに端をペロっと舐めてピッと貼ってとめておしまいです。この遮光紙にはコマ番号が印刷してあるから、このHOLGAのように 単なる巻き取り軸だけの構造でOKになります。レンズも、虫眼鏡のレンズと50歩100歩と思ってしまうくらいの大雑把なレンズです。周辺にはピントが合わないですし、大して性能もよくない。けれどフィルムサイズが大きいので拡大率が低いので、それでも写真として実用的な画質が得られます。なんというか、このフィルムの想定しているカメラは 35mmフィルムが想定するカメラとしがって原始的なんです。

そんな原始的な道具を手に、いろいろ使い方を工夫したり、道具に改良を加えて使うのは愉しいモノです。

プリミティブだからこそ写真の仕組みがよく解るわけで、写真術そのものを愉しめます。今時のカメラではやらないような写真術に思わず手をだしてしまったりもあるわけで、例えば多重露光をしてしまう事故から、ちょっとこれで作品を作ってみよう・・ですとか、あるいは 長時間露光 をしてみようですとか(夜間室内の場合 ISO100・2秒で適正露出だったりすれば、やってみようとか思ってしまう)。1/50相当の露光量が欲しいのでシャッターを2回押してみる、とかね(w フィルムにレンズを通した光を当てて像を得るという化学実験のような愉しさ。わくわくします。



そして、プリミティブであることに加えて、HOLGA は欠陥品です。

有名な話として、HOLGAには 2段階の絞り切り替え機構が付いているのですが、機能してません。また旧世代の HOLGA だと、フィルム巻き上げの際「巻き太り」という現象が起きてしまい、ゆるゆるに巻かれたフィルムの隙間から光りが入って感光してしまう・・という事故があったそうです。こういう欠陥を何とかすること自体が愉しいのが HOLGA です。トライアンドエラーというか、実験とか工作の愉しさですね。例えば巻き太りを防止するためにフィルム部屋にスポンジを貼ってフィルムを押さえつけつつ巻き取るようにするという改造も定番でした(現行型では最初っから貼ってあります)。

と言う風に、適度に(?) 欠陥があり、かつ、プリミティブで「手に負える」と実感できるカメラだから、改良が愉しくなります。ここらへんは 古いプラモデルのような「モナカキット」を改造するのが愉しい のと、どこか通じる愉しさだと思います。


最後に、見たままじゃないものが写る愉しさです。今時のカメラはとても性能が高いので「写真」の名に恥じない、本当に見たままが写っちゃいますが、HOLGAのレンズのような収差バリバリのレンズは、それを通して現実を歪めたものが写真として残るので、写すとき「これをこのカメラで撮っちゃったらどうなっちゃうのかな?かな?」というワクワクがあります。


写真術って、化学実験のようでいて画を描くような、そういう不思議な面白さがあると思います。撮るときの「やってみよう面白実験」みたいな愉しさ、その結果得られる画が素敵であるように頑張る面白さ。実験の失敗すら愉しいですし、そこから今度はこういうのに手を出してみよう・・となったりします。けれど、結果として残るのはどれも画であって、その画を追求していくもう一つの軸も愉しい。

写真術というワザそのものの愉しさ。もちろんHOLGAじゃなくったって愉しめますが、HOLGAはそういうのを愉しみの一線を越えさせてしまう、そんな魅力があるカメラです。