ひらがなの哲学

2012-08-05

サンタさん、何もいりません

こどもの作品展を
見に行った。

そのなかの
サンタさんあての手紙に
こころをうたれた。


サンタさん

地球温暖化について、どう思いますか?
ぼくは、地球温暖化というのは、世界のみんなにあたえられた大きな問題だと思います。
しかし、温暖化はどんどんひどくなっていって、今この時何か手をうっておかないと、地球がだめになってしまいます。
サンタさん、ぼくは一生何もいりません。
だからどうか地球を助けて下さい。
世界では地球温暖化があるというのに、つまらない戦争やけんかをしている国があります。
その人達にぼくはいいたい。
地球がだめになろうとしているのに、ぼくがここにいることにもありがたいのに、止めなくていいの?」と。


なんて、まっすぐなんだ!

2012-07-31

きれいな時間で

7月。
バスのまんなかへんの座席に
すわっていた。

笹をもったこどもが
おかあさんといっしょに乗ってきて
後ろのほうにすわった。

話し声が聞こえてくる。
近くの年配の人が聞いているらしい。

「きょうは七夕ね。
短冊こしらえたの?」
こどもの返事は聞こえなかった。

そのかわりなのか
少しして
うたっているのが聞こえてきた。


ささのは さらさら
のきばに ゆれる


「じょうずねー」
と、さっきの女の人。

こどもは、つづけてうたっている。

そのリズムにあわせて
わたしの前のおじさんの頭が
かすかに
右左に揺れている。


おほしさま きらきら
きんぎん すなご


きれいな時間で
なみだが出そうになった。

わたしね!

4月のはじめ
地下鉄の乗り換えの通路で
エスカレーターに乗ったとき。

後ろから
女の子、乳母車を押したお母さん、
女の子のおじいさん、おばあさん
が、歩いてきた。
エスカレーターに順番に乗ろうとしている。
とつぜん
女の子が
「わし、歩いてこ!」
そういって
エスカレーターのわきの階段を
かけあがった。
わたしが
エスカレーターをおりるころには
女の子は先に着いて
上でみんなを待っていた。

「はやいねえ!」と、
わたしがいうと、
女の子は近づいてきて、
誇らしげにいった。
「わたし、1年生になったんだよ!」
「へえ、やった!」

さらに歩き
つぎのエスカレーターに乗ると、
すぐ後ろに
さっきの女の子がいる。
「○○小学校って、知ってる?」
と聞いた。
「知らない。
よさそうな学校じゃない?」
そうこたえると
「今日、学校行ったんだ」
「もう、勉強したの?」
「ううん。おはなし聞いたの。
あのね、先生がギターひいて、
これをつかうのは
どうしてだと思いますか?
って聞いたら、
おださんが、
指が切れちゃうからあ〜っていったんだよ」

もっとくわしく聞こうとしたら
女の子の家族が
呼んでいる。
すぐ左が、地下鉄の乗り場。
わたしはさらに先の乗り場に歩いていく。

お別れだ。
もっと話したかった。

うしろで声がした。
「さよならあー!」
わたしもさけんだ。
「さよならあー!」

人なつっこく、りこうそうな女の子。
とてもたよれるかんじがした。


知らない人と
心を開いて話すことって
なんだろう?
こどものほうが
それがうまくできるのは
なぜなんだろう?

あったかくて
小さくて
大きな
しあわせな気持ちになれる。
なれるのに。

ともだち

スイスの友人の家で
彼女の男の子の小学1年生と
そのクラスメイトの女の子と
4人でお昼ごはんを食べていた。

メニューは友人がつくってくれた
野菜ピッツァ
ズッキーニブロッコリー、ナスなどが
のっている。
めいめいの皿に取り分けてもらって
食べ終わり
あとは
男の子のお皿に
野菜だけが残っている。

「たべてしまいなさい」
と、おかあさん。
男の子は
「あとでたべる」という。
「じゃあ、夜ごはんにたべなさいよ。
取っとくから」

女の子の両親は
今日は一日中お出かけなので
夕飯もいっしょだった。
スパゲティとサラダが取り分けられたテーブルには
男の子のお昼のお皿も出ていた。
チーズにまみれ
見るからにまずそうな野菜のかたまり。

みんなが
おおかたたいらげたころ
男の子の野菜の皿だけ
まだ、手つかずのままだ。

向かいあわせに座った
男の子とおかあさん。
すごい緊張感。
冗談など、入りこむすきまはない。

男の子は
ブロッコリー
フォークの先でつっついている。
どうしても食べられない。
「たべるといったでしょ」
攻防戦はつづく。

重苦しい空気が流れている
そのとき
男の子の隣に座っていた女の子が
とつぜん、
「わたし、たべたげる!」
そういうや
あっというまに
パクリと
食べてしまった。
数秒間のことだった。

わたしは
あっけにとられ
感動した。
たすけるとは、こういうことなのか。

「こどもって、ときどき
こういうこと、するのよね」
友だちはそういって
わらった。

その時には
ふたりは
なにもなかったみたい。
ふざけあっていた。

2012-07-30

台風さん

大型の台風が上陸。
被害にあった家族が撮ったビデオが
ニュースで流れていた。

画面には
一面、濁流が映っている。

男の子とお父さんの声。
父「うちの車、ぜんぶ水につかっちゃったよ」
男の子「すごいですねえ」
父「どうしよう………」
男の子「いつまでいるつもりなんだろう、台風さん」
父「………」  
男の子「おさかな、つろっかあ?」
父「ええっ!」

お父さんを
元気づけてあげようと
思ったんだ。

なんていいんだろう!

こどものこえきけば

おむかいのおばあさんは、
からだの調子がずいぶん悪いと
いっていた。
このごろは
なかなかおもてに出ることもないという。

少し前の夕方、
わたしは
降り込んできた雨の中を
帰ってきた。
踊り場で
おばあさんが立っていた。
「こんばんは」といいあったあとも
おばあさんは
手すりにつかまって
むこうを見ている。
その先には
おむかいのこどもが
おかあさんと
玄関先で
シャボン玉をしているのが見える。
こどもは
まだ話すことができないらしく
シャボン玉が飛ぶたび
あーあーと
からだを思いっきり揺らして
声をあげている。

「いいわねえ」
おばあさんは、しみじみいった。

加減が悪いのに
こどものたのしげな声を聞いて
どうしても見たくて
おもてに出てきたのだろう。


うつらのなかで聞こえる
こどもの声は
射し込む一条の光なのだ。


ようやく立っているといったようすなのに
かまわずいつまでも見ていた。
ふきこむ雨といっしょに。