神狩り2感想:ドラクロア「民衆を率いる自由の女神」

山田正紀 神狩り2 リッパー
以下ネタバレあり

神狩り 2 リッパー
山田正紀
徳間書店 2005-03-19


by G-Tools


ISBN:4198619905

(煙草に火を付け深く吸い吐く)
ふうぅ
…。




本作は「神狩り」のまごうことなき続編である。
まずこの時点で驚くべきことだ。
約30年前の200枚ほどの商業誌デビュー作の、5倍を越える完全な続編!
(ちなみに俺は30年越しに続編が書かれた小説を寡聞にして知らない。)
物語はまったくの地続きで旧作の登場人物は有形無形に登場する。
そしてテーマは同じ。
「絶対にあの野郎だけは許せない」


さて、神狩り2、「面白さ」は少なく読みにくいです。というのも中盤、大半がレクチャーに費やされるからです。
奴は何をしたか?それは何故なされたか?
という問題提起に始まり
奴は何をたくらみ、俺たちはどう位置づけられているか?奴と俺たちはどういう関係にあるか?
翻ってにんげんの考察に入ります。
それを経て
奴の地平に立ち
奴に備えて武装
奴と戦うため
の視点と手段を追いかけていきます。
(この講義の進め方は、作中にも登場する存在教祭司の未完の主著と重なります)
なんと言っても相手が相手だけに、ストーリーそっちのけで延々とさまざまなアプローチが試みられます。講義が状況を説明し、状況の打破に講義が用いられます。
そんななかでひとびとは突き動かされ考え行動し絶望し足掻きやがて出会い共謀し最後のマリアが誕生します。

圧巻。圧倒。

面白がる余裕など、俺にはありません。
熱に浮かされるように遮二無二文章に喰らい付いていき何度か振り落とされた後、残り数十ページに達した時・・・
準備が整ったようです。俺の中に。
怒涛のクライマックス。
ああ。
じいさんたちも
男たちも
女たちも
子供たちも
ああ。
「想像できないものを想像する。それは可能だろうか?」と問いかけた若者は
プレステより貧弱なコンピューターで神に挑んだ若者は
長い長い長い戦いの末に
なんと美しい弾丸を生み出したことだろう。
我々の魔弾は自由の女神は世界の外でなんと雄々しく笑い放つことか。

蛇足。あるいは「あと20年は現役でいる」

以下やはり違う意味のネタバレ
神狩り2
どえらいものを読んだ。もうすでにあれは娯楽小説とは呼べないような。読むの辛いし。
さて山田正紀氏のあとがき。
「1600枚を削って削って1100枚にした。本当は1000枚にしたかった」
おいおいじいさんもちつけ。これを書いたのが新人なら「勢いはあるが詰め込みすぎ」てなもんよ。
あんた最高だ。
本作にしたって、気負いがない。
ファンの俺から見れば大いにメモリアルな作品となるはずなのにあなたにとっては単なる作業、仕事のひとつでしかないのですね。
あなたが大好きです。
言うに事欠いて、
「カッコいい」SFに回帰したい
うむ。ハイペリオンの読みすぎ。
しあわせだ。俺はしあわせだ。
正直、もしも本作が今年2005年の国内ベストSFになるようなら、SF業界ゴロは腹を切って死ぬべきであると思う。