「市場原理」に対する民意

★ 「市場原理導入」政党の躍進の背景
 小泉首相の目指す方向が民間活力導入で効率アップを図ることは疑う余地はなく、郵政民営化もその理念の上にある。その彼が、なぜこれだけの人気を集めたのか考えてみたい。
 そもそも、田中派支配の日本の社会は、やや誇張して言えば「弱者を守り強者にたかる」、そんな社会ではなかったか。所得税は極端な累進課税であり、国の許認可権のもと規制が多く、新規業者の参入は難しかった。税金は列島改造計画のもと地方にばらまかれた。
 経済政策の面では、かつての自民党支配下では、実は国家統制経済という面では共産主義国家にかなり近かったのではないか。土地が国有か私有かの違いはあるが、各官庁は許認可権と行政指導を最大限に活用し、企業を統治することで、経済をコントロールしてきたのである。
 官僚たちが、天下国家のための政策を考えていた時代はよかった。しかし、1980年代以降、官僚は自分たちの利益を確保することが第一義になってしまった。天下りする先の特殊法人を作ることが出世の条件というのでは、最適資源配分など望めない。
 バブル崩壊とともに、戦後の制度疲労の弊害や国際競争力が落ちるなどさまざまな問題が噴出する状況に、国民世論は改革を期待した。この期待に答えたのが小泉首相であった。

★ 現在の国会の勢力図
 市場原理か統制経済かという観点からは、国会の勢力図は大きく変わったのではないか。自民党はかつては既得権益保護だったので、統制経済の側面も強かったが小泉首相により競市場経済政党に変質している。その変質を郵政反対派議員の追放という形で国民に明確に伝えたのが、今回の選挙である。
 この点からは民主党も基本的に市場原理政党である。官僚支配を民間の自由競争に委ねようとしているからである。政党発足当時は唯一市場経済政党であったので、その風をうけて順調に勢力拡大したのに今回は敗北したのは、ライバルが似た考え方に転向して立ちはだかったからである。
反対の軸にあるのが、共産党社民党である。新党大地や郵政反対派の議員もこの仲間なのであろう。
 こうして見ると、民意の大多数は市場原理による競争社会を選択したことになろう。