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民衆史研究会 公式blog このページをアンテナに追加 RSSフィード

お知らせ

民衆史研究会は年2回の機関誌・会報発行、及び年1回の総会・大会シンポジウム開催を行なっており、本ページではそれらの情報をお知らせしていきます。


<更新記録>

[]『民衆史研究』第96号 2018年12月発行予定

特集 近世民衆の生活と道徳規範

・菅野則子 「表彰の「表」と「裏」 ー「善行」を考えるー」

・早川雅子 「幕末維新期の江戸町方住民における孝行と自己意識」

・上野大輔 「書評 柴田純著『考える江戸の人々 自立する生き方をさぐる』」

論文

・早田旅人 「二宮尊徳にみる富者の貧者救済論」

書評

・金井静香 工藤敬一著『中世熊本の地域権力と社会』(高志書院、2015年2月)

・長谷川賢二 近藤祐介著『修験道本山派成立史の研究』(校倉書房、2017年11月)

・宮信明 須田努著『三遊亭圓朝と民衆世界』(有志舎、2017年8月)

・友田昌宏 小川原正道著『西南戦争と自由民権』(慶應義塾大学出版会、2017年7月)

・高田雅士 道場親信著『下丸子文化集団とその時代』(みすず書房、2016年10月)

2018年度大会シンポ広告

[]幕末維新期の民衆・地域社会と軍事

2018年12月9日(日) 13:00〜

会場 早稲田大学早稲田キャンパス22号館201教室

当日資料代を頂きます(300円程度)。また、終了後には懇親会を設けます。

※同日11:00〜12:00に総会を開催いたします。

大会シンポジウム

13:00〜 趣旨説明

13:10〜 「幕末期の京都警衛における夫人足徴発」(仮)

                       ・・・岩城卓二氏

14:25〜 「幕末維新期の海防・開港をめぐる大坂町奉行と地域社会」

                       ・・・高久智広氏

15:30〜 コメント             

                       ・・・中野良氏

16:15〜 総合討論

〈開催趣旨〉

本企画では民衆生活を深く規定する「軍事」という要素について、近世史・近代史研究双方の成果をもとに理解を深めることを試みる。

幕藩制国家から明治政府への移行は様々な点で進行したが、なかでも軍事と民衆との関係は、近世的軍役体制を前提とした関係から、「国民皆兵」を基本理念とする徴兵制を基盤とした関係へと、社会構造と密接に関わるかたちで変化した。近代社会において、徴兵制は兵士としての経験だけでなく、制度を支えるさまざまな社会的システムや軍事施設を通じた地域的・日常的関わりを通じて人々の生活に深く組み込まれており、近代民衆史を考える上では不可欠な要素であったといえる。一方、「兵士となる」ことに限らなければ、近世社会も戦闘の際の夫役をはじめ、城下町での生活や交通関係の諸役などを通じて、人々が直接的・間接的に「軍事」と関わる社会であった。体制が変化するなかで、兵役以外の点、言い換えれば軍事を支える社会システムや地域的相互関係の次元において、軍事と民衆との関係はいかに変質し、または継続したのだろうか。そのことは、軍事という視点から民衆の経験した幕末維新期を考えるうえで、どのような論点を提示しうるだろうか。

 当該期の民衆・地域社会と軍事の関係に関して、近代史研究においては、民衆思想史や運動史研究が新政反対一揆に注目し、伝統的民衆世界の論理に基づいた兵役負担への反発という移行期の様相を描いた。だが、兵役負担を中心に論じたため、一方で兵役という回路以外の軍事−民衆関係における近世−近代の連続/断絶への言及は弱かった。90年代以降には、軍隊や徴兵制の問題を兵士の目線や地域社会との関係から捉える動きが活発化し、「天皇の軍隊」を兵士=民衆に寄り添って内在的に批判検討していく視点や、徴兵制を支える社会システムに注目し、協力や動員の側面から軍事経験を解き明かそうとする視点が提示され、近年では地域と軍隊の相互的な影響関係を都市史や地域史の視点から論じる研究も盛んである。だが、近代軍隊と人々の恒常的な接触から生み出される関係に注目するこれらの研究は、必然的に、徴兵制施行後、対象地域への軍事組織設置後が対象となり、また軍隊側が社会との交渉を重視し始める日露戦争以降に分析の比重が置かれている。

近世史研究では、体制変革という問題関心に基づき、封建的軍隊の解体と近代軍建設の動きが身分制・近世的軍役体制の崩壊という側面から注目され、それと関わるかたちで、兵賦徴発とそれへの反発、諸隊や農兵組織等の動きなど、主に「兵役」の変容に関係する諸事象を中心に論じられてきた。90年代にはいると、軍事動員体制、すなわち軍事・戦争遂行を支える兵站等の社会的仕組みの変容が持った意義を重視する軍事史研究の視角が提起された。こうした流れをふまえ、近年では幕末に活性化した軍事的諸要請と既存の社会システムとの関係を、地域史の視点を踏まえて論じる研究も進められている。このほか、戦場の社会史的研究や戦没者慰霊の問題など、幕末の地域社会・民衆と軍事との関係はより多角的に論じられるようになった。

 以上のように、近代史研究と近世史研究はともに兵役に限らない民衆・地域社会と軍事との関係を扱いつつも、国家体制の変化と徴兵制移行という断絶の存在により、関心や論点が二分化している傾向があるように思われる。だが、近世史研究の成果が示すように、幕末の民衆・地域社会と軍事との関係のあり方が一面において「近代的」軍事様式と当時の社会構造との軋轢に規定されていたとするなら、そこには両研究が協同して検討しうる課題が残されているのではないだろうか。こうした検討を通じて、結果的に、徴兵制への移行という民衆生活と深く関わり、かつ近世と近代を分かつ変化の意味をもふまえた議論が可能となろう。

 そこで本企画では、幕末維新期において民衆・地域社会と軍事とがどのようなかたちで関わっていたのかについて、畿内周辺を対象とした二つの報告を用意した。岩城卓二氏報告では、従来円滑に機能したとされる京都警衛における夫人足徴発について、徴発の実態レベルに着目し、当該期の畿内社会における夫人足をめぐる諸問題と、そのなかでも徴発が可能となった仕組みを検討する。盖彙匚氏報告では、「将軍の港」として整備されていく兵庫を対象に、幕府の諸政策が地域社会との関係が変化するなかで進められていく様相を、近代との連続面と不連続面に着目しながら検討する。

以上の近世史を対象とした報告に対し、中野良氏コメントにより近代史の立場から論点を提出することで、幕末維新期における民衆・地域社会と軍事との関係を、近世・近代史研究双方の視点から考えていきたい。

徴兵制が存在しない現在においても、自衛隊の存在や技術開発、物品供給、基地問題などを通じて人々は間接的に「軍事」と関わりながら生活している。国際情勢の変化や憲法改正をめぐる議論が活発化する昨今、民衆・地域社会と軍事との関係を今一度問い直すことは、なお重要な意義を有するだろう。

[]民衆史研究会2017年度大会シンポジウム

下記の通り、民衆史研究会2017年度大会シンポジウムを開催いたします。会員、非会員の方にかかわらず、広く皆さまのご参加を歓迎いたします。ふるってご参加ください。

「御救」と近世社会


報告

  • 福澤徹三

     「近世後期的「御救」の構造ー金融政策を中心にー」(仮)

  • 栗原健一

     「越境する「御救」ー天保期の信州松本藩領を事例にー」(仮)

  • コメント:早田旅人

開催趣旨

本シンポジウムでは、近世日本において、民衆の生活の成り立ちを担保していた社会の構造とその歴史的変遷について、その矛盾も含めて理解を深めることを試みる。


経済のグローバル化が進行するなか、現代日本は、バブル崩壊以降、経済成長への明確な見通しが得られない時代が長く続き、私たちの生活基盤はますます不安定なものとなっている。社会のなかで広がる格差や貧困を前に、国家や社会がどのように向き合っていくかが、いっそう問われている状況にある。


もちろん、これまでの近世史研究は、格差や貧困の問題に鋭く切り込んできた。幕藩制構造論や人民闘争史は、近世社会で階級間に横たわる構造的矛盾を検出し、闘争による社会変革への道筋を見出だそうとしたものであった。やがて、そこで支配構造と階級利害が強調され過ぎた結果、見落とされてきた諸問題の克服が目指されるようになる。村落史研究は、近世の村が、単に村請制の貫徹した末端支配機構だったのではなく、共同体として様々な機能をもち、これを基盤とした土地所有や金融の慣行を発達させていた点を明らかにした。百姓一揆研究は、「御百姓」が公租を納めている限り、領主は「御救」に代表される「仁政」を施して「百姓成立」を保障しなければならないという、支配−被支配間の関係意識を見出だし、階級利害とは異なる社会通念のあり方を明らかにした。「御救」は、経済史の概念から、広く国家社会の仕組みを象徴するキーワードとなった。

こうした研究の上に、現在では、近世後期、領主が財政難により「御救」機能を弱めて村へと負担を転嫁していき、村も貨幣経済の浸透により共同体的な機能を弱めていくと、貧富の格差が拡大し、民衆は打ちこわし騒動のなかで、富裕層へ施行を求めていくようになると同時に、篤農家を核とした農村復興運動も起こってくる、という時代の流れが提示されている。また、こうした状況下で領主と民衆の板挟みに合った中間層が、明治維新の制度変革を希求したという見解も出されている。


しかし実際のところ、領主ごとにつくられる「御救」政策のあり方や、民衆を取り巻く社会環境は、地域差・時期差をはらんで多様である。この多様さに見合った歴史像を描くには、未だ研究の積み重ねが必要であろう。その際には、単に「御救」政策の推移や、村の機能などの局面を見るだけでなく、それらを規定する諸条件を含めて一つ一つの事例を位置付けていく、視野の広さと分析の緻密さが求められる。

そこで本シンポジウムでは、「御救」を多様な視点から捉えなおすことを意識しつつ、民衆生活の成り立ちを担保していた国家・社会のあり様を考えていきたい。


右肩上がりの時代はとうに過ぎた。だが、過激な闘争による社会変革も現実味を失って久しい。今や格差や貧困という問題に向き合うには、国家、社会の諸アクターが、どんな機能をどこまで果たすのかを緻密に擦り合わせ、より良い社会を模索していくことが求められている。多角的に「御救」論を広げていくことは、こうした時代の要請にも応えうるものとなろう。活発な議論を期待したい。

[]『民衆史研究』93号、2017年5月

  • 特集 古代の仏教受容と在地支配 ―地域社会と村堂―
    • 民衆史研究会委員会「特集にあたって」
    • 藤本誠「古代村落の「堂」研究の現状と課題」
    • 堀内和宏、濱村一成「竹松遺跡と西日本の村落寺院」
    • 川尻秋生「古代東国の在地社会の仏教 ―村落寺院・開発・双堂―」
    • 山口えり「古代の在地における仏教施設 ―精神的紐帯としての選択―」
    • 中村憲司「討論要旨」
  • 書評
    • 澤村怜薫「渡辺尚志編『相給村落からみた近世社会―上総国山辺郡台方村の総合研究―』」
    • 泉正人「椿田有希子著『近世近代移行期の政治文化―「徳川将軍のページェント」の歴史的位置』」
    • 大門正克「藤野裕子著『都市と暴動の民衆史―東京・一九〇五〜一九二三年―』」
  • 新刊紹介
    • 児玉憲治「渡辺尚志編『移行期の東海地域史 中世・近世・近代を架橋する』」