2016年のテレビアニメ傑作回を振り返る

鬼斬』 第3話 「博多炎上」

何がシン・ゴジラだ、こっちは全長570mだぞ。立ち向かう対策本部が行き着いた作戦は、限られた時間の中で襲来怪獣の性質を的確に分析したうえで立案されたことにおいてヤシオリ作戦に勝るとも劣らない。宙吊りにされたワインボトルに(で)乾杯。「有効物質の経口投与」という意味ではシン・ゴジラと同じ。
ロボットアニメパロディ回(第12話「気焔万丈」)も秀逸で、特撮パロをやってもロボアニメパロをやっても結局鬼斬が優勝という2016年の現実。「OPアニメーションなるもの」のおよそ全てが詰め込まれた完璧なOPアニメーション(&曲)もあいまって、今年の「作品賞」というのを選ぶならぶっちぎりでこの『鬼斬』だろう。

ラクエンロジック』 第4話 「自由か束縛か」

「遮るものの」と「くぐり抜ける/ほどくもの」と置かれていく言葉とが絶え間なく交差して生み出される運動=アニメーション。
これついては前に書いたのだけではいささか心残りなのでもう一度まとめて何か書こうと思ったけど、結局年内には書かなかったね…。こんなにも凄いのにほとんど話題になってなくて(1〜3話も結構凄いのに…)「分かっちゃいたけど、世界のアニメジャーナリズムは"死んで"るんだよねェ…」ってなった。「今年作られた」「アニメーションで」と絞らずとも、今年見た映像作品の中でベスト。作品総体として見ても8話まではやっぱり凄いと思うんだけどなぁ。7話の入浴シーンは今年のベストオブアニメ入浴シーンだろうし(『アンジュ・ヴィエルジュ』は入浴"シーン"とかいう問題でもないので)。

この素晴らしい世界に祝福を!』 第4話「この強敵に爆裂魔法を!」

「こちら」「向こう」…距離と反復のドラマ。これは作品自体が放っといても割とみんな面白いって言ってるやつなので、改めてあんまり言うことを思いつかない(逆になんでこれゾンとかはダメなの?って訊きたくなる)。作品を通してのコメントになってしまうけど、エロい事との距離感が絶妙というのはあると思います。

アンジュ・ヴィエルジュ』 第10話「零れた想い」

"「特別訓練はこれにて終了である!」""「"状況"を開始する!」"
世界=浴場から締め出されていた姉妹の挿話が挿話である事を止め、全ては湯けむりへ(弾丸は湯の中へ)と融解する…。(今年じゃないけど)『Z/X IGNITION』『ラクエンロジック』そしてこの『アンジュ・ヴィエルジュ』…TCG世界観(=非プレイヤードラマ)アニメに駄作なし。いいね?

※追記(ツイート引用)


Bloodivores』 第4話「犠牲」

なかなか人の姿が現れないファーストシークエンスにおいてはじめて現れるそれは、ドアの隙間から差し出される破片に映し出されたものだった…。美しいシークエンスから始まったエピソードが、やがてこの作品のトレードマークたる鈍くさくて生命力のある(鉄パイプが支えきれなくなって反動で吹っ飛ぶまでの流れなど)アクションへと流れ込む。4〜5話の1個のグレネードの行方を巡ってああいう風に見せていくのとか、「そう、これなんだよ!」という感じでほんとに凄い。
そして(この回のラストのホテルのシーンとか)作品を通してひたすら堆積していく、話や主題の根幹に関わっているのか単に瞬間的にエモくしたいだけなのか、とにかく何に機能させるつもりなのか皆目検討がつかないが故に予定調和的な機能を超越してしまっている(ように見える)無償のムーブメントの数々。これを前に、俺(視聴者)たちはどうすればいいんだ…。活路は己で切り拓け。「見る事は冒険だよ」その事を改めて教えてくれたBloodivoresもといハオライナーズに感謝。

まとめ

その他『霊剣山』1話、『CHAETING CRAFT』6話なども結構凄かった。
こうしてみると今年は4話が凄いアニメが多い年だったのだな。