kindle paperwhiteのレビュー

Kindle Paperwhite 3G (第5世代)
昨年末にkindle paperwhiteを買って、しばらく使ってみたのでレビューします。
全体を通しては、非常に納得感が有ったので満足しています。ただ、もう少し、もうかなり、本の種類が増えて欲しい所です。それさえ抑えられれば文句ないかなあ。今はよっぽど好きな本のジャンルが多いとか、はやりの本が読みたいとかじゃないと、種類で不満が出そう。

ハードウェア

電池持ち
すごい持つ。一週間は通勤で使っても全然大丈夫。電池減ったよ〜って警告出てから余裕を持って充電すればOK。でも「本」を「充電」って、なんか「納得いかねー!」感じがする。
画面明るさ
明るさも暗さも十分かと思った。操作は画面操作で行うけど、操作ボタンはメインメニューにあるので、本を読みながら変更するのも簡単。
画面の綺麗さ
初めての電子書籍だけど、十分に綺麗だと思った。白は白!って感じ。黒は濃い目の灰色、みたいな感じだけど。
ページ更新のチラツキ
ちょっとチラチラすると想う。使い難いというより、物として安っぽい印章を受けるので、なんか残念。本を読む機能には全く影響ないんだけど。あとページを進めたのか戻したのかわからず、サッと変わってしまうのは不便だった。
重さ
普通。軽めの文庫本よりは重いけど、重い文庫本よりは軽い感じ。カバーつけて使ってるけど、通勤の電車の中で重いと思ったことは無かった。

ソフトウェア

操作感
レスポンスは悪くない。もう少し早くても良い気がするけど、イラつくほどでもない感じ。ただ日本語入力はレスポンスも変換能力もイマイチ。あんまり使わない機能ではあるけど。
3G通信
便利。特に購入した本をそっちのけでWikipediaを読み耽ることも多い。小説読みながら付属の辞書じゃ足りない部分をWikipediaで調べつつ読めるのも嬉しい。ただしアンテナ感度はあんまり良くないね。遅いし。
辞書機能
殆ど使わないので分からない。

ショップ機能

本の豊富さ
少ないの一言。今の10倍は欲しい。自分が元々ベストセラーを追いかけるような読み方じゃなくて、自分の好きなジャンルを購入するタイプだから、余計に本が見つからない。コレはかなり厳しい。
購入しやすさ
すごい簡単。最初にAmazonのアカウントをセットしたらあとはkindleのメインメニューから辿れるストアで、本を調べて1クリックするだけ。特に3Gモデルを使ってるから、WiFiなくても小説なんかは買えてしまうし。漫画はWiFiじゃ買えないらしいし、3Gなしモデルだと、また使い勝手が違うかも。
値段
自分はカバーあわせて1万6千円くらいだった気がする。カバーが3千円もして高かった。3千円て、豪華過ぎるだろー。雰囲気で買った自分のせいだけれども。本の値段はあんまり安い気はしない。セールの本はあるけど、欲しい本じゃないし。元の本がハードカバーか文庫本か?で値段がぜんぜん違うんだけど、ページ単価として考えると納得感が薄い。同じページ数なのに3倍くらい値段が違うとねえ。

犬をめぐる裁判/ラフェットの備忘録

昔、一回だけ読んで、その後忘れてたんだけど、時々緒思い出してはネットで探して読み直す文章。とても好きなので引用させてもらいます。

「ラフェットの備忘録」より「犬をめぐる裁判」
http://blogs.dion.ne.jp/f081026/archives/10135090.html

ベストは心をこめて次のように語った。

陪審員のみなさん。
この世の中では親友でさえあなたを裏切り、敵となることがある。
愛情こめて育てた息子や娘も、深い親の恩をすっかり忘れてしまうかもしれない。
あなたが心から信頼している、もっとも身近な愛する人もその忠節を翻(ひるがえ)すかもしれない。
富はいつか失われるかもしれない。もっとも必要とするときにあなたの手にあるとはかぎらない。
名声はたったひとつの思慮に欠けた行為によって、瞬時に地に墜ちてしまうこともある。
成功に輝いているときにはひざまずいて敬ってくれた者が、失敗の暗雲があなたの頭上を翳(かげ)らせた途端に豹変し、悪意の石つぶてを投げつけるかもしれない。
こんな利己的な世の中で、決して裏切らない、恩知らずでも不誠実でもない、絶対不変の唯一の友はあなたの犬です。

あなたの犬は富めるときも貧しきときも、健やかなるときも病めるときも、つねにあなたを助ける。
冷たい風が吹きつけ、雪が激しく降るときも、主人のそばならば冷たい土の上で眠るだろう。
与えるべき食物が何ひとつなくても、手を差し伸べればキスしてくれ、世間の荒波に揉まれた傷や痛手を優しく舐めてくれるだろう。
犬は貧しい民の眠りを、まるで王子の眠りのごとく守ってくれる。

友がひとり残らずあなたを見捨て立ち去っても、犬は見捨てはしない。
富を失い、名誉が地に墜ちても、犬はあたかも日々天空を旅する太陽のごとく、変わることなくあなたを愛する。
たとえ運命によって、あなたが友も住む家もない地の果てへ追いやられても、忠実な犬は、ともにあること以外何も望まず、あなたを危険から守り敵と戦う。

すべての終わりがきて、死があなたを抱き取り、骸(むくろ)が冷たい土の下に葬られるとき、人々が立ち去った墓の傍らには、前脚の間に頭を垂れた気高い犬がいる。

その目は悲しみに曇りながらも、油断なくあたりを見まわし、死者に対してさえも忠実さと真実に満ちている。

また、ジョージ・グレアム・ベストのWikipedia(en)
George Graham Vest
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Graham_Vest

人生でいちばん大事なこと:ボー・バウマン

人生でいちばん大事なこと (プチ・プレザンシリーズ)
ずーっと、欲しい欲しいと思って探していたのに見つからなくて、半ば諦めていたところで発見。あるアメリカの少年と母親の会話から始まった、世界中の人々への質問。これはその回答集になっています。芸能人も政治家も、宗教、スポーツ、俳優、先生、会社員、目に付く様々な人から貰った回答が詰められています。
人生でいちばん大事なこと。簡単な様でいて難しい質問への回答は百人百様で、人間との関係性もあれば黄金律もあり、愛に自分に、コメディのような内容も。ただ、それそれの回答者の職業・肩書きと合わせて読むと、その人なりの人生が透けて見えますし、皆が本当に真摯にこの問いへ答えを用意した事がわかって、元気をもらえるような気持ちになります。
例えば、自分がこの質問を貰ったらなんて答えるでしょう?ちょっと答えに詰ると思います。人生で一番大事なことなのに、自分の中からは直ぐに出てこないんですね。私達がスポーツマンや俳優に惹かれる一端に、迷わず生きている、と言うものがあるかも知れません。きちんと自分の『人生でいちばん大事なこと』を把握して、そこからブレない。今生きている人生をより充実したものにする為にも、自分のソレを考えてみたいな、と思いました。

本を読むこと――本はきみをはるかか遠くまで連れていく。ひとを愛すること、与えること、ものをつくること――理由は本のと同じ。
ボニー・バウマン、アーティスト、ニューヨーク

あれ?ご本人?ちゃっかり宣伝みたいになってる!
【お勧め】★★★☆☆(プレゼントに最適ではないでしょうか)

訳者解説:山形浩生

訳者解説 -新教養主義宣言リターンズ- (木星叢書)
これはちょっと変わった本。いつもの山形浩生だけど、翻訳ではないし、時事に絡めた教養話ではない(そういった面もあるけど)。これは彼が翻訳してきた本の要素をまとめてコメントをつけたような本。彼はいつも長い後書きとも補章とも言える様な文章を付けるけど、ついにはそれがまとまって一冊の本になってしまった、と言えます。確かに翻訳される本は情報がぎっしり詰ったページたっぷりですので、こういった本で「次何読もう?」と道先案内してくれるのはありがたいですね。
ただ、そんな事は全体としては小さいです。僕にとっては。
山形浩生が翻訳する本、特に経済、環境などの分野の物はハッキリと「事実を正直に捉え、意図を割り込ませずに判断しよう。その結果新しい結論を見つけられるだろう。」と言うメッセージが詰ったものが多いと思うのです。ロンボルグもレッシグも。
これはきっと彼の生き方で身に着けたメッセージを、翻訳と言う形を通して伝えてきているんじゃないのかな?と思います。
確かに日々生きていると、その場その場の感情や、これまでに積み重ねてきた物だけを大事にして、本当にすべき事を見なかったり、気付かなかったりする人に沢山出会います。
ある意味、人間の限界を見せられているような気分になりますが、山形浩生はこれに我慢がならないんじゃないかな?と思わせます。
これは決して彼が冷酷な人間と言うわけではなく、本当に大事な事の為なら、一時の感情や過去にとらわれることなく、真実を見つけて行動すべき、と言うことなんだと理解しています。(ただ、それが他者から理解されないせいで、結局喜んでもらえない、なんて事もありがちですが)
翻訳解説としても面白く、有用ですし、1冊では見えにくい訳者の考え・理念に触れられる、と言う変わった本だと思います。
【お勧め】★★★☆☆(3.5点これから買う人も、読んだ人にも良いと思います)

飛べ!「やはぶさ」小惑星探査機60億キロ奇跡の大冒険:松浦晋也

飛べ!「はやぶさ」 小惑星探査機60億キロ奇跡の大冒険 (科学ノンフィクション)
買ったけど、途中まで読んで止まっていた本。理由は最初の説明の部分が冗長で、飽きてしまったからなんですね。これは僕が本の対象読者じゃない上に、はやぶさに関する知識を一通り身につけていた為なんで、本の良し悪しとは関係ないのですが。
本自体はいつもの松浦晋也らしく、丁寧に技術的背景を説明しながら時系列と登場人物を描写する形。今回の特色は対象読者が小中学生に設定されている事だと思います。漢字にはすべてルビが振ってありますし、例えは全て小中学生でも理解できる内容になっています。技術用語は若干減らしていると思いますが、無闇に用語の置き換えなどはしておらず、この本を元に別情報に当たったときでも困惑しないような配慮がされていて、安心して子供達に読ませる、一緒に読むことが出来る本です。
構成としては前半がはやぶさ探査機が出来るまで、後半が打ち上げから帰還までとなっています。その他の本と異なり、探査機の解説に半分近くを裂いている部分が特徴かも知れません。これは著者なりの、基礎知識を手に入れた上で読んでほしいと言う意図だと思います。
ただ、もしかしたら2部をベースに1部の説明を挟み込むような方が、興味を持続できて良かったのでは?とも思いますね。実際、自分も1部の最後辺りで一旦本を閉じてしまったので。
とは言え、2部の面白さは素晴らしいと思います。1部でしっかりと説明しているお陰で、説明を簡易に出来るので、ストーリーにリズムがありますし、描写が凄くよく理解できます。これはどっちの方法もありだな、と思わせますね。きっと宇宙に興味を持ち始めた小中学生なら、一気に読みきってくれるという、著者の考えがあるのかも知れません。
【お勧め】★★★☆☆(興味ある小中学生なら★プラス1つ!)

はやぶさ/HAYABUSA


そう言えば、映画になるんだったなー。なんか商業主義っぽくて嫌かもなあ、なんて思いつつも釣られるような気持ちで鑑賞。

いやいや、すっごい面白かったし。映画化にありがちな、ソコジャナインダヨ感が極力抑えられていて素晴らしかったです。
自分たちのような宇宙機ファンだと、川渕や、的場等のモデルがいる人は本人を知ってるわけですし、直接知らなくても各登場人物が持つISASっぽさ、研究肌みたいな感覚が分かるのですが、それがスポイルされないで演じられていたのは嬉しかったですね。勿論、映画的な演出はあるんですけど。

また、ISASを知ると言う意味で、日本の宇宙探査の過去と現状を描いてくれたことも良かったです。お涙チョーダイ映画にするなら、ここまでの理解は要らないだろうに、製作者側の宇宙探査に対する敬意を感じられました。特に、火星探査機「のぞみ」の火星軌道投入失敗の事例を踏まえている所も素晴らしかった。

全体的にはドラマチックなドキュメンタリーと言った風情で、とにかく泣きたいんですみたいな日本映画好きとか、突入の華々しさが気になってるハリウッド映画好きなんかには薦められないですね。とにかくある程度のハヤブサに関する興味があって、2010年6月に感動していたなら、見て損したとは思わないんじゃないでしょうか。だから、どっちかと言うと映画好きでない人のほうがいいかな。

あと、WEB上にあったいくつかのエピソードもちゃんと抑えられていて、誰に見せたい映画なのか?が伝わるのはいいですね。生瀬は正直居なくてもよいキャラクターでしたけど、でも監督から見たら登場させたかったんだろうな。応援してる人も一つの登場人物なんだと思います。

そうそう、監督はトリックの人なんですよね。確かにそんな空気が出てました。悪い意味じゃないですけど、視聴時の肌触りのような物に現れるんですね。この人はハヤブサと、それを取り巻く世間の空気感をわかったんだなあと感嘆しきりです。

映画『はやぶさ/HAYABUSA』公式サイト 10.1 ROADSHOW

【お勧め】★★★★☆(他の映画見ようかどうか…w)

のぼうの城:和田 竜

のぼうの城
これがエンターテイメント!って感じの一冊。うだつの上がらぬ城主が実はキレモノ?とかコンプレックスまみれだけど腕は一級の名わき役とか、強敵だけど清々しい悪役とか、キャラクターの配置が絶妙です。
歴史ものなので、ある程度の基礎知識は必要だけど、書き手が意識しているのか、特段詳しくなくてもすんなり入っていけますね。
昔がこんなに気持ちの良い戦ばかりだったとは思いませんが、昔の打算的過ぎない、名誉と言うかロマンというか生身の人間が見える戦は、それだけで心を動かすものだなあと。

惜しむらくは、お姫様をもっと前面に出して欲しかったな、甲斐姫は伝説も多い人だし、劇中でもかなり多彩で面白い扱いだったし。
あと、史実にあわせようとして一部違和感を感じる部分もあったので、それを味とするか寧ろエンターテイメント!と言うことで思いっきり都合よく解釈しても良かったんじゃないかな。や、これがその解釈の結果なのかもしれませんが。

【お勧め】★★★☆☆(3.5点、普通の人にならだれでも!)