なぜ創作物の中のレズビアンやバイセクシュアル女性は色情狂として描かれがちなのか

これ、ずっと、「女が好きな女=レズAVの登場人物みたいなエロエロの存在」という偏見のせいかと思っていたんですが、もっと根深い理由に思い当ったので、メモ。

創作物の中のレズビアンバイセクシュアル女性が「24時間、女と見れば相手構わず欲情するセックスモンスター」みたいに描かれてしまいがちなのは、とどのつまり、「この社会の中では、女性は、女性相手に欲情している瞬間以外は自動的に異性愛者だと判断されてしまうから」なんじゃないでしょうか。
たとえばですね、

  • 朝マックで朝食をとっているOLさん
  • 自転車漕いで学校に向かう女子中学生
  • 淡々と授業を受けてる女子高生
  • コンビニでレジを打つ女性アルバイトさん

……なんていう、特に誰に向かっても欲情を示していない状態にある女性は、たとえセクシュアリティについて何の表明もしていなかろうと、全員自動的に「異性愛者である」と判断されてしまいがちなわけですよ、この「人類皆ヘテロ教」がはびこる世の中では。
で、そうなると、ヘタレな創作者は困るわけですよ。「このキャラはレズビアン(あるいはバイセクシュアル女性)という設定なのに、誰にも欲情せずにのほほんとフツーの生活をしていたんでは、異性愛者にしか見えないじゃないか! とにかく始終女に言い寄らせなければ!」と。

かくして、「女と見れば誰彼構わず口説いたり触ったり押し倒したり痴漢行為やのぞき行為に及んだりする」みたいな、ありがちな色魔のレズビアンバイセクシュアル女性キャラが誕生するというわけ。バイセクシュアルの女性キャラが、両性愛者という設定にもかかわらずなぜか女性に言い寄るシーンばっかり描かれがちな理由も、おそらくこれと同じなんじゃないでしょうか。「女が男に魅かれるのは当然だから、特に男性に言い寄るシーンを入れなくても男性も好きだとわかるはず」という、ヘテヘテ*1作者とヘテヘテ読者との暗黙の了解が背後にあるからでしょう、これは*2

こうした安易なキャラクター造形によって「女性が好きな女性は、常に女性全般に欲情している」みたいなネガティブイメージが撒き散らされる(そして再生産されていく)*3のは、本物のレズビアンである自分にとっては非常に迷惑です。うちらだっていちいち一日中発情なんかしないでボケーっと朝マック食べたり、淡々とチャリ漕いでたりするんだかんね。あと、「今彼女いないけど、当分恋愛はいいやー」と思ってるレズビアンバイセクシュアルだって当然いっぱいいますし、それにだいたい、人類には異性にも同性にも欲情しないAセクというカテゴリに属する人だってけっこういるはずです。「同性への欲望が前面に打ち出されていなければ、その人は異性を欲望する人に決まっている!」みたいなおかしな価値観はいいかげんなくなってくれるといいなと思います。

*1:「ヘテへテ」:ここでは、「異性愛至上主義的な」の意。

*2:あとひとつ思いつく理由として、「バイは許せるけどレズまで行くと気持ち悪い」みたいな偏見のせいもあるかもですね。それで設定だけでもそのキャラを両性愛者ってことにしておくとかさ。

*3:「不特定多数の女性を相手に始終発情するレズビアンバイセクシュアルキャラを描くこと」自体は別にいいと思うんですよ。問題なのは、「そのパタンばかりが好まれて何度も何度も繰り返される社会のありよう」です。