マクドナルド、仏マクドナルドのゲイCMを米国内では放映せず

マクドナルドの重役ドン・トンプスン(Don Thompson)氏が、ゲイのティーンエイジャーが登場する仏マクドナルドのCMアメリカ国内では放映しないと発言したというニュース。放映しない理由は、「文化的規範」の違いだそうです。

問題のCMはこちら。字幕のだいたいの意味は、こちらをどうぞ。

以下、このCMについてトンプスン氏がChicago Tribuneとの電話インタビューで語った内容です。


シカゴ・トリビューン「ゲイの10代少年とその父親が登場するフランスのTVコマーシャルが議論を引き起こしていますね――フランスではなく、アメリカで。それについて話していただけますか?」

トンプスン「これは世界では購買者層や文化がとても異なるという一例です。(たとえば)私は自分がクリスチャンであるという事実を避けたことはありません。私には個人的信念がありますが、それを他の誰にも押しつけたりはしません。私は国民の大部分が神を信じないか、または無神論者かもしれない国々にいたことがあります。大部分がイスラム教徒の国にいたことも。もしくは、大部分がずっと若くて偏向している国にいたことも。このようなあらゆる違いを見ると、私は事の善悪について裁いたり審査したりはできません。それでもやはり、マクドナルドには、私たちの根幹をなす価値基準があり、世界はずっと狭くなりつつあります。だから私たちはたくさん会話するのです。私たちはしばしば間違いを犯します。世界のある地域では言外の意味を持つのに、他の地域では文化的な規範となる(物事について、私たちは話します)。そして、そう、こうした物事から、私たちは多くを学ぶことができます。でも、よろしい、あのコマーシャルは合衆国内では放映しません」
Tribune: A French TV ad featuring a gay teen and his father has stirred some controversy ― not there, but here. Can you talk about that?

Thompson: It is an example that markets, cultures are very different around the world. (For instance), I've never shied away from the fact that I'm a Christian. I have my own personal beliefs and I don't impose those on anybody else. I've been in countries where the majority of the people in the country don't believe in a deity or they may be atheist. Or the majority of the country is Muslim. Or it may be the majority is much younger skewed. So when you look at all these differences, it's not that I'm to be the judge or the jury relative to right or wrong. Having said that, at McDonald's, there are core values we stand for and the world is getting much closer. So we have a lot of conversations. We're going to make some mistakes at times. (We talk) about things that may have an implication in one part of the world and may be the cultural norm in another part of the world. And those are things that, yes, we're going to learn from. But, you're right, that commercial won't show in the United States.

ええと、あたしの訳がまずいってことももちろんあるんですけど、それにしても随分とっちらかってませんかこの論理……?

なぜゲイCMの話で、個人的信念の押しつけだの無神論者だのキリスト教だのイスラム教だのの話を持ち出さなければならないのか皆目わかりません。「あのCMは放映しないけど、多文化主義を気取りたい」「リベラルな企業と思われたい」というスケベ心が見え見えで気持ち悪いわ。

ただ、米マクドナルドの重役がこういう発言をしても、まったくおかしくはないと思うんです。というのは、アメリカのマクドナルドは、過去にこういうことをやらかしているから。

以前からこういうニュースを耳にしていただけに、あんまりLGBTフレンドリーな企業ではなさそうだという印象はあったんですよ。だからこそ仏マクドナルドがあのCMを作ったと知って「おお!」と思ったのに、本国ではいまだにこんなもんだったんですね。偉いのは“フランスの”マクドナルドであって、マクドナルドそのものではなかったわけ。

Advocate.comのコメント欄が興味深かったので、ざっくり訳しておきます。


なるほど、このCMのもともとの意図がみごとに台無しにされている。これで、悲しいことに、あのような洗練はアメリカの外でしか得られないという観念がさらに強化されてしまった。でも、他の企業はここ合衆国でゲイ広告を出すだけの度胸があり、ミッキーD(訳注:マクドナルドの俗称)はどのみち健康に悪いんだから、こんな会社くそくらえだ。マクドナルドはまずいゴミを出し続け、なんでも配達したいものを「クリスチャン」の太った客たちに配達していればいいんだ。
Well, that's a great way to kill the original intention of this ad. That is just sad, reinforces the notion that sophistication is only available outside my country. But the again, other companies have the balls to do gay ads here in the states, and MickyD's are unhealthy anyway so screw them. They can keep their tasteless crap and they can cater all they want to their "Christian" fat costumers.
このコメントにはかなり共感できるかも。
普段ほとんどマックに行かないあたしですが、あのCMに免じてコーヒーぐらいは買いに行こうかと思ってたんですよ。その矢先にこのニュースだもんなあ。日本のマックの一連のラジオCM(野村義男が登場する『ギターマン』シリーズは笑ったわー)は、とても好きなんですけどね。どうしよう。

単語・語句など

単語・語句 意味
shy away from 〜を避ける
jury 審査する
relative to O 〜に関して
Having said that そうはいうものの、それでもやはり、たとえそうでも